ヘタレ投資家ヘタレイヤンの読書録

個人投資家目線の読書録

2023-01-01から1年間の記事一覧

言語哲学がはじまる

野矢茂樹 岩波新書 2023.10.20読書日:2023.11.20 19世紀末から20世紀にかけて、フレーゲ、ラッセル、ヴィトゲンシュタインらがたどった言語哲学の潮流について、著者の考えを述べた本。 言語とは不思議である。人は初めて聞いた(読んだ)文でもその内…

イラク水滸伝

高野秀行 文藝春秋 2023.7.30読書日:2023.11.23 チグリス・ユーフラテス川の河口の湿地帯はメソポタミア文明が興った地域であるが、5千年の昔から現在に至るまで敗れた者や迫害された者が逃げ込む地域でもあり、辺境作家の高野秀行が中国の水滸伝になぞら…

無人島、研究と冒険、半分半分

川上和人 東京書籍 2023.9.10読書日:2023.11.18 人の手がまったく入っていない文字通り手付かずの無人島、南硫黄島での10年ごとの生物調査に赴く研究者たちの奮闘の記録。 この本に書かれているのは2007年と2017年の調査であるが、わしは2017…

ドゥルガーの島

篠田節子 新潮社 2023.8.20読書日:2023.11.14 (ネタバレあり。注意) 建設会社に勤めているもうすぐ50歳になる男が、インドネシアで未知の文化遺産に出会い、これを人生後半の生きがいにしようと奮闘する話。 篠田節子って名前だけ知っていたけど、どん…

ナマコは平気! 目・耳・脳がなくてもね! 5億年の生命力

一橋和義 さくら舎 2023.8.10読書日:2023.11.11 失恋の結果、ナマコの研究を始めたという著者が、ナマコの魅力を物語とコラムでつづった本。 むちゃくちゃ簡単な生物でも、生物って分からないことだらけ。なので、もちろん、ナマコも謎だらけです。 ストレ…

わたしたちが光の速さで進めないなら

キム・チョヨプ 訳・カン・バンファ ユン・ジヨン早川書房 2020.12.15 (ネタバレあり。注意) 1993年生まれのキム・チョヨプが2017年の18歳のときに出した、かなり衝撃的なSF短編集。 これはもしかしたら最近読んだSF短編集の中でいちばん面…

なぜヒトだけが老いるのか

小林武彦 講談社 2023.6.20読書日:2023.11.2 動物は死ぬ瞬間まで老いない事が多いのに、ヒトだけが老いるのは、老いることで種としてメリットの方が多かったからだと主張する本。 動物は老いないんだそうだ。たいていの動物は死ぬ直前までばりばりの現役で…

電鉄は聖地をめざす 都市と鉄道の日本近代史

鈴木雄一郎 講談社 2019.6.1読書日:2023.10.31 私鉄の電鉄は都市と郊外とを結んで、郊外では住宅地を売り、住宅地の通勤、通学の客を運ぶことをビジネスモデルにしていると思われているが、鉄道を作った最初のビジネスモデルでは寺社を中心とした参詣と物見…

賃金の日本史 仕事と暮らしの一五〇〇年

高島正憲 吉川弘文館 2023.9.1読書日:2023.10.30 賃金とは生活そのものであるから、賃金を通して過去の生活の水準や質を考えるとともに、その分析方法に種々の方法があることを伝える本。 そもそも古代の賃金をどうやって測定するのか、とか、その水準や質…

トヨタのEV戦争 EVを制した国が、世界の経済を支配する

中西孝樹 講談社ビーシー 2023.7.25読書日:2023.10.25 トヨタは1000万台の車を売り上げる巨大企業であるが、EV化への事業構造転換は、過去のしがらみなく最初からEVを前提に事業を組み立てられるテスラ、BYDなどの新興企業と比べてはるかに難し…

新冷戦の勝者になるのは日本

中島精也 講談社 2023.6.19読書日:2023.10.27 グローバリゼーションの間、日本に不利だった状況が新冷戦の世の中になってすべて逆転し、日本は勝者になると主張する本。 ほんの数年前まで、わしは日本の景気が良くなるという本は好んで読んでいたものである…

戦争とデータ ―死者はいかに数値となったか

五十嵐元道 中央公論社 2023.7.10読書日:2023.10.22 戦争中に死者の数を一つ一つ数えることは不可能で、とくにタグをつけている兵士たち以上に文民の犠牲者の数を数えるのは至難であるため、統計的に解析する方法が開発されて来た経緯を述べた本。 19世紀…

スターメイカー

オラフ・ステープルドン 訳・浜口稔 国書刊行会 1990.5.20初版 2004.1.30新装版読書日:2023.10.26 (ネタバレ注意) イギリスのヒースの丘に座っていた「わたし」は、霊体となって地球を飛び出すと宇宙を飛び回り、宇宙の端から別の宇宙すら覗き込み、テレ…

なぜ燃やすのか シバター伝

シバター KADOKAWA 2022.5.26読書日:2023.10.23 YouTuberのシバターが、これまでの生い立ちと意外に堅実な人生観を披露する本。 なぜこんな本を読んだかと言うと、息子が格闘技ファンで、面白いから読んだほうがいいとわしに回してくれたか…

無料の読書三昧

最近、世の中は無料、というか、おまけの読書にあふれています。ネット小説とかではなくて、ちゃんとした本です。(ちゃんとした本とは、編集や校正とか、普通の出版の手続きを踏んでいる本のこと)。 無料の読書といえば筆頭は図書館でしょう。 無料と言っ…

フキダシ論 マンガの声と身体

細馬宏通 青土社 2023.6.20読書日:2023.10.19 マンガにおける声(内言を含む)を示すフキダシについてあれこれ考察した本。 マンガは日本人のほとんどが日常読んでいるもので、フキダシについて特に思うことはなかったのですが、こうしていろいろなパターン…

日本の死角

現代ビジネス編 講談社現代新書 2023.5.20読書日:2023.10.17 講談社のウェブマガジン「現代ビジネス」に掲載された論考16本をまとめた本。 どれもウェブマガジンに掲載されたもので、短いものだ。深く考えるには足りないけれど、新しい視点を得られて、気…

アナロジア AIの次に来るもの

ジョージ・ダイソン 監訳・服部桂 訳・橋本大也 早川書房 2023.5.20読書日:2023.10.7 ライプニッツの唱えたデジタルの世界が現在あふれているが、今後はアナログの世界が復権するという主張をする目論見に無理やり自分の体験を組み込んだ本。 デジタルから…

ケトン食の名医が教える 糖質制限はしなくていい ―エビデンスにもとづいた科学的に正しい食事

萩原佳祐 ダイヤモンド社 2023.2.28読書日:2023.10.15 痩せるために無理に糖質制限をすると筋肉が落ちてしまうので、適度に糖分を摂取しつつ、ケトン体質を目指すべきだと主張する本。 わしは血糖値が高かったため糖質制限の食事を行っているのだが、こんな…

影の王

マアザ・メンギステ 訳・粟飯原綾子 早川書房 2023.2.25読書日:2023.10.14 (ネタバレあり。注意) 1935〜41年、イタリアがエチオピアに侵攻したとき、祖国防衛に立ち上がった女性兵士たちの物語。 内容はフィクションだが、女性兵士がいたことは事実…

資本主義に出口はあるか

新谷大輔 講談社現代新書 2019.9.1読書日:2023.10.11 近代の歴史を、ロック的なもの(自由)とルソー的なもの(平等)で読み解けば理解ができ、どちらにもとらわれない資本主義の次の時代も見えてくると主張する本。 本の中でも述べられているが、この2つ…

熱烈中華食堂 日高屋 ラーメンが教えてくれた人生

神田正 開発社 2009.9.28読書日:2023.10.9 日高屋を創業した神田正が自分の人生を振り返る本。 わしは日高屋が好きで、愛用している。わしが住んでいるところはラーメンの激戦区であるが(さいきん、激戦区でないところってあるのかしら?)、ラーメンは日…

習慣と脳の科学 どうしても変えられないのはどうしてか

ラッセル・A・ポルドラック 監訳・神谷之康 訳・児島修 みすず書房 2023.2.10読書日:2023.10.4 習慣が根付く原理というものが分かってきたが、習慣は恐ろしく固着的で、一度身につくとそれを変えるのは困難で、とくに依存症の場合は難しくなるが、一方では…

シンプルで合理的な人生設計

橘玲 ダイヤモンド社 2023.3.7読書日:2023.9.28 金融資本(資産)、人的資本(収入)、社会資本(評判、人間関係)の3つの資本を備えた人が幸福だと定義する橘玲が、人生設計を指南する本。 橘玲はこの手の本を20年ぐらい前から数年おきに出していて、感…

ぼくはあと何回、満月を見るだろう

坂本龍一 新潮社 2023.6.20読書日:2023.9.27 2023年3月に亡くなった坂本龍一が、2009年の「音楽は自由だ」以降について語った回想録。 音楽家と思えないような端正な文章で、インタビューだから編集者の腕もあるんだろうけど、坂本龍一の話す言葉…

誰も語らなかったジブリを語ろう 増補版

押井守 構成・渡辺麻紀 東京ニュース通信社 2021.818読書日:2023.9.24 押井守がジブリについて語った2017年版に、押井守作品のプロデューサーをやっているプロダクション・IG社長の石川と、ジブリの鈴木敏夫の懐刀と呼ばれた高橋望との鼎談、それに鈴…

プロジェクト・ヘイル・メアリー

アンディ・ウィアー 訳・小野田和子 早川書房 2021.12.20読書日:2023.9.22 (ネタバレあり。注意) 自分の名前すら忘れた記憶喪失状態で目覚めたぼくは、自分が宇宙船の中にいて、どうやら別の星系にいるらしいことに気がつく。どうやら人類の危機を救うた…

ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く

ナオミ・クライン 訳・幾島幸子・村上由見子 岩波書店 2011.9.8読書日:2023.9.17 ミルトン・フリードマンの唱える新自由主義は自由のみに価値を置く過激な経済思想だが、過激すぎるゆえに民主主義の世界では受け入れ不可能で、最初は独裁国家のみで実現され…

植物に死はあるのか 生命の不思議をめぐる一週間

稲垣栄洋 SBクリエイティブ 2023.7.15読書日:2023.9.7 植物学を教える大学教授のところに植物をめぐる質問メールが一週間にわたって届くが、いずれもすぐに答えるのが難しい問題で、教授がいろいろ考えを巡らせる本。 この本の最初の質問は植物と動物の違…

台湾漫遊鉄道のふたり

楊双子 訳・三浦優子 中央公論新社 2023.4.25読書日:2023.9.6 (ネタバレあり。注意) 太平洋戦争前に植民地だった台湾を訪れて、気兼ねのない鉄道と食事の旅を望む女流作家の青山千鶴子は通訳として似た名前の王千鶴に出会うと、王千鶴は通訳の枠を越えて…

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