負けたチームは今シーズンが終わる大一番。中盤まで2-2の同点で、勝負のポイントはロッテ先発の種市を「どこまで引っ張るか?」だった。前日の試合で益田、沢村が打たれているだけに、好投している種市の代え時は難しかった。7回裏のピッチングを振り返ってみよう。

ここまでは88球。球数的にはまだ余裕があるが、接戦での大一番で疲労度は大きい。カウント2-1から、先頭打者・万波へ投げた4球目、外角低めのフォークがボールと判定され、あまり表情を変えない種市の顔がゆがんだ。個人的にストライクだと思ったが、この判定のショックを引きずってしまったのだろう。1発のある万波に投げたフォークは低めへのボールになり、先頭打者への四球となった。

続く郡司の送りバントは、ピッチャー正面の強めのゴロになった。二塁はアウトのタイミングだが、送球が高くなってセーフ。種市はやや一塁寄りに処理しにいったため、反転して送球すると高めに抜けやすくなる。疲労もあったのだろう。手痛いミスになった。

もう限界だろうと思ったが、上川畑の送りバントがキャッチャーゴロで併殺。息を吹き返すと思ったが、田宮へのフルカウントから投げた真っすぐが大きく抜けて四球になり、2死一、二塁。痛かったのは水野を2ストライクに追い込んでからの1球だった。外角へウエスト気味に外してボール。左打者に対し、右投手が外角へ大きく外しても、ボールゾーンからボールゾーンに外れるため、打者は簡単に見逃せる。特に体力的に余裕のない種市には、無駄な1球になる。結局、フルカウントから真っすぐ勝負し、決勝タイムリーを浴びてしまった。

投手出身の吉井監督だけに、種市の粘投に託したのだろう。投手だった私も、思わず応援してしまったが、やはり限界だったのだろう。試合状況が激しく変わっていったイニングだけに、代え時を見失ってしまった。

勝った日本ハムも強いチームに成長している。特に同点の2点タイムリーを打った清宮は、3回2死二、三塁のチャンスで初球のスライダーを仕留めた。第1打席も初回2死二塁のチャンスで初球のスライダーを打ち損じてセカンドゴロ。甘く入ったとはいえ、ちゅうちょせず、果敢にスイングした結果が殊勲打になった。プロ入り後、ファーストストライクを見逃してばかりいた清宮の成長の証しだろう。前日の試合で同点弾を放った万波と同様、新庄監督が厳しく育てた2人の若手が、強さの根源を作っている。

CSファイナルではぶっちぎりで優勝したソフトバンク。今試合では送りバントの失敗が目立っただけに、しっかり練習をして準備を整えてほしい。勢いがあり、若さを生かして戦えば、勝機はあると思う。(日刊スポーツ評論家)

日本ハム対ロッテ 試合後、日本ハム清宮(左)をねぎらう新庄監督(撮影・江口和貴)
日本ハム対ロッテ 試合後、日本ハム清宮(左)をねぎらう新庄監督(撮影・江口和貴)
日本ハム対ロッテ ヒーローインタビューで涙を流す清宮(撮影・黒川智章)
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【イラスト】クライマックスシリーズ、日本シリーズの日程&結果
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【イラスト】日本ハムのプレーオフ(04年以降)、CS成績
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