岡田監督が阪神の監督として歴代最多の515勝目を挙げたその瞬間、マウンドには岩崎優投手(33)がいた。走者を2人出したが、表情一つ変えずに1点リードを守り切った。

なぜ岩崎が今年も不動の守護神なのか。その理由が少し分かる出来事があった。6月5日、岩崎はいつもより早起きした。ナイターが行われる甲子園に行く前に、2軍練習場の鳴尾浜に車を走らせていた。

ハビー・ゲラが不振のため2軍再調整に入った。その初日だった。“盟友”は突然の来訪を喜んでくれた。「体は大丈夫と言っていました。ちょっと独特の言い回しで…『脳に水をやらないといけないね』と言ってました」と、ゲラとのやりとりの一端を明かした。メンタル的にも技術的にも、少し整理する期間が必要だったようだ。

初来日の右腕はクールだ。ブルペンでもロッカールームでもグチや弱音は言わない。精神的な安定感も、ストッパーを任された要因だろう。ブルペン最年長の岩崎も相談を受けたことはなかった。「感じるものは少しありましたけどね」。毎日、一番近くにいて開幕当初より調子を落としていることは分かっていた。

開幕から「ダブル守護神」として、ともにマウンドを守ってきた。シーズン序盤の厳しい戦いを拾えたのは、ブルペン陣の踏ん張りが大きい。その立役者の1人がゲラだ。

それにしても、岩崎の行動には驚かされた。これまでも1~2カ月に1度は鳴尾浜を訪れてきたそうだ。「シンプルに、2軍にいるメンバーのことが気になります。リハビリ組はどんな感じかな、調子が上がっていない選手は今どうかな、と」。今年は開幕直前に訪れ、湯浅らの話を聞いた。今回もゲラ以外に、復活を目指す高橋遥人ら多くの選手と会話した。「みんながリハビリとかを頑張っているのを見たら僕も勇気づけられますから」。

投手陣だけでなく、チーム全体を俯瞰(ふかん)。表面的ではなく、精神的にも結びつきがある強固なスタッフで戦いたい。そんな意識が垣間見えた。【阪神担当=柏原誠】

阪神岩崎優(2024年7月2日撮影)
阪神岩崎優(2024年7月2日撮影)