酷暑続きの中、今年も7月27〜28日に開催された「鳥人間コンテスト2024」。ソフトバンクでは、コックピット内に設置したスマホを通し、パイロットの映像や声をリアルタイムで届ける人力プロペラ機部門のライブ配信に技術協力しています。
実は、このプロジェクトを任されているのは、入社1年目と2年目の若手社員なんです。昨年初めてプロジェクトに参加し、今年リーダーを務めた衛星企画部の飯田智之に、最大の敵となった暑さとの戦いや自身を成長させた取り組みについて話を聞きました。
ソフトバンク株式会社 テクノロジーユニット統括 プロダクト技術本部 衛星企画部
飯田 智之(いいだ・ともゆき)
趣味はテニス。仕事を始めてからゴルフも楽しみの1つに。好奇心旺盛なので、趣味は続々拡大中。学生の頃によく訪れた九州のもつ鍋が恋しくなる今日この頃。
目次
ライブ配信最大の敵は、“酷暑” によるスマホの発熱
2022年の大会から始まった人力プロペラ機部門のライブ配信も今年で3年目。配信が途切れることなく大成功だった昨年に続き、今年の成功にも期待が高まります。しかし、想定外だったのは過酷な暑さです。
昨年と比べると今年の暑さは異常ですよね。
今年は外気温が35度を超えるほどで、コックピット内は40度近くになっていました。昨年は外気温が約33度、コックピット内でも35〜36度。数字的に約3度の差は小さく見えても、実際に体感する差はかなり大きく、過酷な環境でした。
40度というのは、スマホの生死を分けるような温度と言っていい状態。端末をいくら冷やそうとしても、外の気温より自然と低くなることはないので、スマホの発熱が回避できない状況の中でやらざるを得なかったのは本当に想定外でした。
ライブ配信への影響はなかったのでしょうか?
昨年は気づかれないような若干の寸断はあったものの、ほぼゼロと言っていい状態でした。それと比べると、今年は配信断絶が少し発生してしまいました。その原因はネットワークではなく、やはり酷暑によるもの。ネットワークが原因の場合は映像が徐々に悪くなっていくのですが、発熱の場合は突然映像が消えるので、今回の現象は発熱によるものと断定しています。
事前に対策や実証実験なども行っていたんですよね。
2度目の挑戦となる昨年は、初めて実施した試みがどれも大成功だったのですが、その要因などを分析できていませんでした。今後に役立てられるマニュアル化に取り組むためにも、9つの課題要素の中で「熱対策」「通信対策」「遠隔制御」について昨年の実績を細かく分析し、改善点を検証することにしました。
エンジニア魂がうずく「なぜ」の先にある成功と失敗
本番を迎える前に、飯田率いる今年のプロジェクトチームは、東京湾と琵琶湖で4回の検証を行い、課題要素について改善を検討していきます。
東京23区とほぼ同じ大きさの琵琶湖。電波が届きにくいエリアもあるのでは。
そうですね。琵琶湖に浮かぶ沖島・竹生島周辺は電波が弱くなっているのですが、現地での実証試験で2.1G㎐も利用できると分かりました。大会では900MHzで対応していますが、900MHzが弱いエリアでも、バックアップ回線として2.1G㎐に遠隔で切り替えられるように準備することができました。
今年の酷暑に対応するため、何か特別なことを行ったのでしょうか?
発熱の対策として、コックピット内にスマホと、スマホ内蔵カメラとは別の配信用のカメラを設置し、映像データを配信する方法を検討していました。これは少しでもパイロットの視線の邪魔にならないようにすることと、カメラの取り付けをなるべくスムーズに行えるようにしたいという考えもあったんですよね。
うまくいきましたか?
残念ながら、結果としては思った成果が出せず諦めることに。どうしても映像にノイズが入ってしまって使えなかったんです。
このカメラを使うにあたって、台湾のメーカーとやり取りをしていたのですが、Android 端末で使用するには、カメラを検知するためのアプリが必要だと分かりました。アプリを作ったことはなかったのですが、試験する日程も決まっていたので、なんとか2日間で作成しました。
ご自身で作成された… ということですか?
はい、ChatGPTなどの生成AIを使って乗り越えました(笑)
基本的にはリスクなど全部考えてから手を動かすタイプの慎重派なんです。ただ、今回スピードを求められる中で、考えながら手を動かすということを意識してやってみたら意外とできちゃって。できたがゆえに、手を動かしながらでも考える大切さというのは、このプロジェクトで経験できたと思っています。
2年間のプロジェクトを通して学んだ、求められる働き方
昨年、初めてプロジェクトに参加しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
このプロジェクトには、毎年新入社員が手を挙げて参加しています。私も新入社員の技術研修が終わった直後にこの件を知り、参加を希望しました。大学では航空宇宙工学を学び研究していたので、通信の分野については全く知識がなく、プロジェクトを通して学ぶことがたくさんあると思ったんです。
本務をしながらというのは、なかなか大変だと思うんです。
両立できるか悩みましたね。ただ、上長やエルダーに相談したところ、「悩むならやってみれば」という後押しをいただき決意。上長からはすごく気にかけていただいたので、何かあればすぐに相談できる環境が整っていました。「細かいことでも気軽に相談してくれたら、何か意見を出せるから」と言ってくれて。すごくやりやすくて、助かりました。
1年目は右も左も分からないものの、会社でのプロジェクトの進め方を学べました。自分一人でやっているわけではなく、承認を得るためには上長に相談する必要があるし、分からないことはより知識と経験豊富な先輩に意見が聞ける。それができるフラットな会社なんだと。いい会社に就職したなって思いましたね。
2年目はリーダーとしてプロジェクトを引っ張る立場になりました。
2年目は本務も忙しく、最後までやるかどうか悩みました。統括部長から背中を押されたこともあり、やるだけやってみようと。
チームのメンバーは、おのおのモチベーションや考え方も異なります。リーダーとしてどう持ち上げていくのが正解なのか、相乗効果としてうまく働ける方法を考えながら進めていました。それには、やる理由や価値をしっかり伝え、一人一人が理解できるように説明する必要があります。チーム全体としてというより、一人一人を理解し、適切な教え方ややり方を提示するのが非常に難しかったですね。
入社2年目ではなかなかできない経験ですね。
1年目は作業を行うメンバーとして、2年目はプロジェクトをけん引するリーダーとして、両方の経験があるからこそ、自分より上の立場の方々と仕事をする際に、どういう気遣いをして、どう動けば喜ばれるか、やりやすくなるかを学びました。改めて振り返ると、自分が1年目のときに、そういう動きができてたかな、どうだったかなと考えることもあります。どんなプロジェクトでも共通する点だと思うので、これからもうまく実践していけるのではないかと思っています。
上へ上へと広がる好奇心。宇宙を学び衛星通信を担う
航空宇宙工学ではどのようなことに取り組んでいたのですか?
飛行機と宇宙のことを両方学べる学科になるのですが、私は宇宙を学び、大学院の研究室で衛星開発のプロジェクトに携わってました。もちろん飛行機の基礎的なことは学ぶのですが、今回の「鳥人間コンテスト」でいうと専門外かなと思うところもありました。
その経験が現在の仕事にも生かされていると言うことですね。
衛星企画部に所属し、「Starlink(スターリンク)」を利用した通信や、それに付随したソリューションの技術検証、利用方法や特性など技術マニュアルの作成を主に行っています。また、衛星通信にはさまざまな種類があるので、統括部全体としても常に最新の情報を収集しており、私自身が持っている衛星の知識を生かすことができていますね。
元々宇宙に興味があったんですか?
幼い頃はただの電車好き。それが飛行機好きになって、いつの頃か宇宙へと。成長と共に、どんどん空へと上がっていった感じですかね(笑) 好奇心旺盛で新しいことにチャレンジすることが好きなので、「あ、もっとこっちの方が面白いじゃん」ってなったんだと思います。
来年は新しいメンバーが「鳥人間コンテスト」を担っていくのでしょうか?
そうですね。私自身としては、アドバイザーとして来年のプロジェクトのサポートを行う予定です。
このプロジェクトの参加を通して、1年目は経験という意味での成長はあるものの、本当の意味での成長は2年目かもしれないなと実感しています。3年目はまた違う立場での学びがあるのかもしれませんが、自分ができるサポートを行っていきたいですね。
「鳥人間コンテスト2024」の模様は9月4日にテレビで放送!
ライブ配信を見逃した方もご安心ください!
9月4日(水)夜7時から、読売テレビ・日本テレビ系全国ネットで放送されます。夏の琵琶湖に舞う鳥人間たちの闘いを堪能してください!
(掲載日:2024年9月4日)
文:ソフトバンクニュース編集部
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