インバウンドコラム
欧米に続き、多くの国、地域で入国規制の緩和を進めた東南アジアでは、昨今観光需要が急回復している。さらに、6月10日に日本が入国規制を緩和したことを受け、訪日観光熱も少しずつ戻り、日本と東南アジアを結ぶ国際線の運航再開、増便も相次いでいるようだ。今回は東南アジア諸国の中から、マレーシア、ベトナム、シンガポールの動きを紹介する。
マレーシア、外国人観光客数の上方修正、450万人を目指す
マレーシアの観光芸術文化省は6月21日、2022年の外国人観光客数と観光収入の目標を、それぞれ450万人、111億リンギ(約3408億円)に上方修正すると発表した。同国は当初、外国人観光客数の目標を約230万人としていたが、すでにその目標を達成している。特にインド、フィリピン、シンガポール、タイ、サウジアラビアからの来訪が多く、4月は56万7299人、5月は103万人、6月は(17日時点で)77万3925人の外国人観光客が同国を訪れているという。
マレーシアの主要観光地であるペナン島とランカウイ島の当局は、両島により多くの観光客を誘客するための観光協力の意向書に署名した。他州と協力することで、旅行者がマレーシアの他地域を訪れるように促し、旅行者の消費をマレーシア国内に留まらせることが目的だ。これにより、シンガポール、インドネシア、タイなど、近隣国との競争力を強化する。観光活動の回復が見られる中、ペナン州政府は7月1日より、新型コロナウイルス感染拡大の影響で2年間にわたって停止していた宿泊税の徴収を再開する。宿泊税は停止前と同じ金額で、4つ星と5つ星のホテルの場合は1部屋1泊あたり3リンギ(約92円)、3つ星以下のホテルの場合は、1部屋1泊あたり2リンギ(約61円)に設定される。
日本政府が6月10日に外国人観光客の受け入れを再開したことを受け、マレーシアのLCC、エアアジアXは日本便3路線を約2年ぶりに復活させる。同社は2020年から日本便を運休していたが、7月には首都クアラルンプールと羽田、関西、新千歳を結ぶ便を再開する。また、マレーシアの訪日旅行大手、アップルバケーションズは、7月中旬から日本行きのパッケージツアーを再開。同社は今月22~26日に新型コロナウイルス感染拡大後初となる旅行イベントを開催し、日本各地へ向かうパッケージツアーを販売した。同社の訪日旅行第1弾は7月18日に出発し、25人のグループツアーで北海道へ向かう。
ベトナムの2022年国内観光客数2019年比で26%増、航空市場も回復
ベトナムでは、新型コロナウイルスの新規感染者数の減少に伴い、観光需要が回復している。文化スポーツ観光省傘下の観光総局によると、2022年1~5月のベトナム国内観光客数(日帰りと宿泊観光者の合計)は、推計4860万人だった。新型コロナウイルス感染拡大前の2019年の同期比で26%増となっている。外国人観光客については、2022年3月15日から入国後の隔離が免除され、5月15日からは陰性証明書の提示も不要となっている。マレーシア国営ベルナマ通信社によると、2022年1~5月期にベトナムを訪れた外国人観光客数は前年同期の4.5倍に増加し、観光収入も34.7%増加した。
エアバスと国際航空運送協会(IATA)が行った分析によると、ベトナムの国内航空市場は2019年同期比で123%の成長率で回復していることがわかった。回復が著しい国としてリストアップされた25カ国のうち、ベトナムの国内航空市場の回復は第1位。次いで、メキシコ、ブラジル、ロシア、スペイン、トルコ、オーストラリアがランクインしている。東南アジアでは、インドネシアが8位、マレーシアが9位、フィリピンが13位、タイが24位だった。
ベトナム航空は運休していた日本との3路線のうち、7月1日からハノイ-羽田とダナン-成田の2路線の運航を再開。現在週2往復のホーチミン-成田線は、同日から1日1往復(週7往復)に増便するなど、往来需要の増加に備える。なお、ダナン-関西線の再開は未定とのことだ。
シンガポール、観光・航空業界の回復で人材雇用も再開。MICEにも注力
シンガポールでは、4月1日から入国規制を大幅に緩和したことに伴い、観光や航空業界が急速に回復している。5月には、外国人入国者数と航空会社の旅客数が新型コロナウイルス感染拡大以降で最多を記録し、玄関口となるチャンギ国際空港の5月の利用者数は、前月の193万人を大幅に上回る247万人となった。急増する航空需要に対応するため、航空産業に従事する労働者の数を年末までにパンデミック前の85%から90%まで取り戻す考えだ。
ビジネスイベントの開催地として定評のあるシンガポールでは、MICE業界にも回復の兆しが見られる。今年の第1四半期(1月〜3月)には150以上のイベントが開催され、3万7000人が参加した。今年の残りの期間でも、少なくとも66の国際イベントが開催される予定で、参加者数もさらに増える見込みだという。
シンガポール航空は、日本の入国規制緩和によって回復している旅行需要に対応するため、7月24日から東京とシンガポールを結ぶ路線を増便すると発表した。これにより、7月24日からは「羽田=シンガポール」線が毎日運航、7月26日からは「成田=シンガポール」線が毎日2便の運航となり、現行の週14便から21便に増便する。シンガポール航空グループのLCC、スクートも8月1日から「成田=シンガポール」線を毎日運航するほか、日本の航空大手2社もシンガポール路線を増便する予定で、ANAは7月1日から、JALは8月1日から「羽田=シンガポール」線を毎日運航する。
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