miyazaki

2017年シーズンの地域リーグには何かが起きている。

有名監督や有名選手の獲得が相次ぎ、弊ブログでも主だったところをまとめた記事を作成しました。
 

記事でも取り上げましたが、九州リーグ所属の宮崎県の2チーム、テゲバジャーロ宮崎とJ.FC MIYAZAKIは、共にJリーグを目指すことを表明し、今季は共に大型補強を行い、J.FC MIYAZAKIは与那城ジョージ氏を監督に招聘し、テゲバジャーロ宮崎は石崎信弘氏を監督に招聘、元日本代表の森島康仁、J2岐阜から高地系治選手等、元Jリーガーを多数獲得しました。

4月8日、9日に行われた第21回 宮日旗・NHK杯宮崎県サッカー選手権大会[決勝大会](天皇杯宮崎県予選)の準決勝、決勝を観戦したdaiさんが、宮崎県の状況についてご自身のブログに記事を掲載されておりました。より広くご紹介したいと相談させて頂いたところ、弊ブログへの記事掲載をご快諾頂きました。是非、ご一読ください。

コミュサカ@管理人

はじめに

4月8日、9日と宮崎にて天皇杯予選に当たる宮日旗・NHK杯の準決勝・決勝を観に行った。

宮崎と言えば、Jリーグ入りを目指す2つのクラブが存在する。

テゲバジャーロ宮崎とJ.FC MIYAZAKIだ。

テゲバジャーロ宮崎は、門川クラブ→Andiamo門川→MSU FCと名を変え、現在の名称になったのは2015年。

個人的に知っているのはMSU FC時代からだが、当時は宮崎産業経営大学(以下、産経大)の控え部員+地元の社会人選手で構成され、2010年に九州リーグ昇格を機に社会人チームへ移行するも、リーグで苦戦した事から産経大の控え部員を補強して何とか残留するというのを繰り返していた。

2012年に一度、県リーグへ降格するも、2014年に復帰。

2015年に本格的にJリーグ入りを目指すクラブとして現在に至る。

代表を務める柳田氏がかつて産経大でコーチをしていた事があったらしく、当初は産経大の卒業生等も在籍しており、テゲバジャーロになってからは鹿児島ユナイテッドFCセカンドの選手も加えていた。

ところが、今シーズン、昨シーズンの選手補強から察するに、産経大とのルートが潰えたようにも思える。

おそらくではあるが、J.FC MIYAZAKIの存在によるものだろう。

そのJ.FC MIYAZAKIは2014年に鵬翔高校サッカー部監督だった松崎氏が発起人となり設立。

このクラブの歴史は、かつてJリーグを目指していたプロフェソール宮崎であり、後にサン宮崎FC、エストレーラ宮崎と名前を変え活動するも2010年に解散。

その後は産経大のサテライトチームに当たる「宮崎産業経営大学FC」として活動していた。

2014年は産経大の控え部員で構成され、2015年は産経大の控え部員に加え、県内の社会人リーグでプレイしていた選手で構成されていた。

昨シーズンからは産経大の控え部員は登録から外れ、大卒選手を中心に大型補強を行い、九州リーグ優勝を果たす。

一度叶わなかったJリーグ入りへ向けて再び動き出す形である。

※産経大と鵬翔高校は同じ大淀学園が運営している。

両クラブの歴史をざっくりとだが紹介した所で、次は今シーズンへ向けた補強と宮日旗・NHK杯で抱いた印象について話そうと思う。

テゲバジャーロの補強

テゲバジャーロ宮崎の補強の目玉と言えば、Jリーグでも指導経験豊富な石﨑信弘氏の招聘に加え、Jリーグでも経験豊富な森島康仁、髙地系治の加入だろう。

このネームバリューのあるメンバーの加入はコミュサカ界隈に衝撃を与えた。

また他にもカマタマーレ讃岐より加入したGK石井健太、アスルクラロ沼津より加入の宮田直樹、ファジアーノ岡山ネクストから加入した藤岡浩介に加え、J.FC MIYAZAKIから井原伸太郎、井福晃紀が加わっている。

上のカテゴリーを経験している選手、地域チャンピオンズリーグ(地域決勝時代含む)経験者等を加え、理にかなった補強をしている。

また、フィジカルコーチにヘッドコーチも加え、監督へのサポート体制も整えている。

多くの選手がチームを去ったが、試合に絡んでいた選手の流出は少なく、期限付移籍中の上田悠起は期限付期間を延長し、S.C相模原からレンタル中だった川上典洋も完全移籍で加わった。

面子だけを見ればJリーグへ向けての本気度が伺える。

テゲバジャーロの試合を観た雑感

試合は別記事(準決勝決勝)で書いているが、大まかに言えば「強くなっている。」だ。

過去2シーズンのテゲバジャーロは、勝ち試合を観ても内容が乏しく、強さを感じなかった。全国で勝てるチームには思えず、実際に九州リーグは2年続けて2位、チャンピオンズリーグにも出れていない。

圧巻だったのは準決勝、ホンダロックSC戦の後半に魅せたプレスの厳しさで、ロックのパスワークを封じ、ゲームを支配した。

カテゴリーが上のチームに対し、前半は一進一退の攻防を見せ、後半は内容も伴い勝利する姿はこれまで見たチームとは見違える程で、補強が当たったとも言える内容だ。

テゲバジャーロが抱えるデメリット

一方で、決勝戦は所々で「強さ」を見せる一方で、今後を見据える上で不安要素も垣間見た。

この大会は土日連戦。

九州リーグも集中開催は土日連戦で、全国社会人選手権は80分ゲームとはいえ、延長戦有りの最大5連戦、チャンピオンズリーグは90分ゲームの3連戦+3連戦。

テゲバジャーロは準決勝、選手交代を1枚もせずに終えている。

これについて公式のコメントでは、
「ディフェンスのリズムが良かったのでね、今日は必要ないかなと判断したよ。」
と述べている。

選手交代は必ずしもしないといけないというルールはない。試合の流れの応じてスタメン11人のままで良いと判断すればそのまま終わらせるのは1つの戦略でもある。

実際、観戦していて、交代の必要性を感じなかった。

しかし、連戦という日程を考えた場合、絶対にターンオーバーは必要になる。

地域リーグ界隈ではターンオーバーは禁じ手という話も聞くが、90分ゲームを連戦で戦うのに同じメンバーで戦い続けるのは通常は無茶な事であり、ターンオーバーをしながら勝てるチームを作るのが何よりも重要となる。

決勝戦も同じスタメンで挑んでいたが、動きの質は落ちていた。

そして、途中投入された選手が結果を残せなかった。

選手の頭数は多いが質という部分ではまだ層が薄いのかもしれない。

また、石﨑監督はJリーグでの指導経験こそ豊富ではあるが、連戦が当たり前の地域リーグでの経験はまだない。

その部分は今後、九州リーグを戦う上で気になる部分ではある。

持論ではあるが、「そのカテゴリーにはそのカテゴリーに見合った経験が必要」だと思っている。特に、連戦のある地域リーグではその経験値は重要となってくる。

そういった意味では、現役時代にホンダロックSCでJFL復帰に貢献した倉石ヘッドコーチや地域チャピオンズリーグ(地域決勝時代含む)経験のある藤岡、宮田、井福、井原、米田等の経験がカギを握るのではないか。

結論

ターンオーバーがハマり、ホンダロック戦の内容のゲームをコンスタントに出来れば、リーグ優勝の可能性は高い。それだけの強さを魅せた。

他地域の動向が分からないので、JFL昇格が出来るかどうかは分からないが、過去2シーズンと比べ、強さを感じさせる試合は出来ている。

今回、連戦を経験した事が石﨑監督にとっても今後を戦う上で良い経験となるはずだし、別記事でレノファを引き合いに出し、「無名の選手でもJ2であれだけ出来るのかと驚いた」という記事を見たので、控えの底上げはするはずだ。

経営陣が身の丈を超えた運営さえしてなければポジティブなシーズンを送れると思う。

J.FC MIYAZAKIの補強

一方のJ.FC MIYAZAKIだが、こちらも与那城ジョージ氏とネームバリューのある監督を招聘した。

同氏は、FC琉球、ニューウェーブ北九州(現ギラヴァンツ北九州)の監督時代にチームをJFL昇格へ導いており、テゲバジャーロの石﨑監督にはない経験値を持っている。

選手では、足立丈卓(FC大阪)、無津呂武瑠(九州産業大学)、的野涼太(松江シティFC)、森島渉(FC岐阜SECOND)、山村欣也(国士舘大学)、松本文哉(桃山学院大学)、中村哲平(バンディオンセ加古川)、高妻賢大朗(九州保健福祉大学)、高橋暖人(MSGソニャトーレ)、長倉優貴、山口直大、渡邊正嗣(共にテゲバジャーロ宮崎)。

あと、九州リーグ公式では韓国籍の選手2名が登録されている。

JFL以上のカテゴリーを経験している選手が少なく、昨シーズンの主力クラスの多くがチームを去っている。チームをまた一から作り直している最中なのだろう。

その影響もあってか、宮日旗・NHK杯の準決勝では低調な内容に終始した。(試合記事)

この試合内容では、新日鐵住金大分や九州三菱自動車辺りに取りこぼしても驚かない。

J.FC MIYAZAKIの強み

与那城監督がニューウェーブ北九州を率いて九州リーグを戦っていた頃(2007年)、序盤は勝つには勝ったけど内容に課題を残したり、2節で三菱重工長崎に敗れる等、取りこぼしもしている。

それでも尻上がりに調子を上げ、最終的に九州リーグを優勝し、JFL昇格も果たした。JFLでもチームをJ2参入に導いており、やはりこの経験値はこのチームにとって強みとなりうる。

その中で、選手では山口直大に期待したい。

同選手は大学を卒業後、様々なクラブを渡り歩いている。決して順風満帆なサッカー人生ではないが、それでも腐らず、諦めずに現役に拘っている。

与那城監督が率いたニューウェーブ北九州もベテラン選手がチームを支え結果を残した。カギを握るのはベテラン選手になるだろう。

J.FC MIYAZAKIのデメリット

上記した与那城監督の件で矛盾した内容になるが、監督の手腕をどこまで信じていいのか分からないという点だ。

選手と同様、監督にも旬の時期がある。

かつて、現役時代は読売クラブ/ヴェルディ川崎等でプレイした戸塚哲也氏は、2006年にFC岐阜、2007年にFC Mi-oびわこKusatsu(現MIOびわこ滋賀)、FC町田ゼルビアをJFL昇格に導き、「昇格請負人」と称された。

しかし、その後に率いたS.C.相模原、レイジェンド滋賀FCでは成績が振るわずに解任されている。

厳しい言い方になるが、与那城監督が監督としての旬の時期を過ぎている可能性も否定できない。

結論

現時点では対抗馬にするのも厳しいという印象だが、昨シーズンも開幕戦は内容の乏しいゲームだった中で最終的にリーグ優勝を果たしている。

もちろん、優勝・地域チャンピオンズリーグを経験している選手も残っている。チームの伸び代はある。その伸び代に期待したい。

その他

宮日旗・NHK杯の決勝戦の観衆は270人台と300を切った。

Jリーグを目指すクラブが試合をするのに、だ。

ピッチ外では百年構想クラブ申請はどうするのか、観客を増やす努力はどの程度しているのか、そして、鹿児島同様に出てくるであろう統合の話。

そういった部分をクリアしていかないと「Jリーグを目指す」のが口だけになってしまう。

JFCはPRしていく中で、鵬翔高校の選手権優勝を引き合いに出しているが、その時に優勝したメンバーの3年生は今春、大学を卒業している。

高校サッカーもコンスタントに全国上位に顔を出せてない以上、いつまでも高校選手権優勝を出汁には出来ない。

ピッチ内では戦略がハマれば早い段階で結果として出るが、ピッチ外はそうはいかない。

宮崎からJリーグ、決して簡単な道のりではないと感じた。絶対的な熱量が足りてない。


※本記事は著者の許可を得て転載しています。


紹介
 鹿児島ユナイテッドFCサポーター。ヴォルカ鹿児島時代から応援し、ホーム・アウェイに関わらず試合会場に駆けつける。daiさんのブログ「NO 全攻切守 NO LIFE」は2008年から記事を更新し、学生サッカーから社会人サッカーまで広く網羅している。詳細な試合レポートと冷静な分析は秀逸だ。

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