170414_ryukyu

第22回タイムス杯争奪沖縄県サッカー選手権大会
決勝:4/9 (日) 14:00KO
会場:沖縄県総合運動公園陸上競技場
FC琉球 6-1 海邦銀行SC

全国各地で天皇杯の県代表が決まる週末。沖縄県も県大会の決勝が行われ、J3のFC琉球と九州リーグの海邦銀行SCの試合を見に行ってきました。



以下、つづきです。


久しぶりの試合観戦


天気は晴れているけど、今年の沖縄は気温が上がらない。本土の気候が涼しい(寒い)影響を受けているらしいけど、おかげでこの日は、暑すぎず心地よい風が吹く絶好のサッカー観戦日和となった。

今回は家族を連れてのサッカー観戦。2代目にとっては1月22日に西崎陸上競技場でニューイヤーカップを観戦して以来のサッカー観戦となる。話を聞いていると、2代目はサッカー観戦=(イコール)サッカーの応援と思っているみたいで、車中でも「りゅきゅうおれーえー」とテンション上がりっぱなし。

もうすぐ3歳になる2代目は色々な事に好奇心を持つようになってきていて「なんで?どうして?」と質問攻めをする時期に突入している。アンセムが流れる沖縄県総についてからは「ここがサッカー場?なんでここ?」と前回の西崎陸上競技場とは違う「雰囲気」を感じたようで、何度も何度も質問を繰り返しながら小走りに会場内へと向かった。

感じ取った変化



コンコースを抜けて緑の芝生が目に入ってくる瞬間は、サッカーを見に来たという高揚感に包まれる最高の瞬間だ。2代目も「きれいだねー」とにこにこしている。前回連れて行った西崎陸上競技場はコンコースが無く、スタンド裏の階段を上がってスタンドに入る。座れる席を探して座った後に、やっとピッチに目をやれるが、ピッチまでの距離が遠く視点も低いので、2歳の子供にはピッチ上で何をやっているかが分からなかったのだろう。試合中のほとんどはFC琉球サポーターグループ、琉球グラナスの方を向いて応援のマネをしながら遊んでいた。

ピッチでは両チームの選手が練習していて、私達が会場内に入った時には、距離を長くとってロングキックの感覚を確認をしていた。

「足でボールをぽーーーーんてしてるねー」

と、2代目は興奮気味に話していた。ライブで見るサッカーの素晴らしさはこういう所にもあると思っている。音、匂い、距離感や空気感、その場にいなければ分からない感覚は、言葉で説明しても中々伝わらない。とくに小さい子供に伝え、理解させることは難しい。ライブでの刺激は何事にも変えられない学びの場だというのを改めて実感した。実際に、家に帰ってから「ぽーんてできないんだけど」と考えながらボールを蹴っていた。プロの試合を見ることに意味がないと切り捨てる4種の指導者もいるようだけど、試合を見ることでしか得られない感覚的なところはもっと大切にしてあげてほしい。


沖縄県総合運動公園の駐車場がどこも満車に近かったので、どれだけの人が集まっているのかと思ったが、何か別のイベントが同時開催だったようで、私がスタンド入りした時には300人から400人くらいの人が入っていたように思う。 



これまでの天皇杯予選は無料開催ということもあって、観戦者のためのというより競技者のための大会だと感じることが多かったが、今回の試合はFC琉球がグッズ等の物販を出していた。些細なことかもしれないが、FC琉球が変わったなと感じる出来事だった。購入した小旗はデザインもサイズ感も良く、値段もワンコインで購入できる、お土産にも最適な一品だ。ビジョンも使い物販もある。少しだが観客よりの対応をしてくれているのが嬉しかった。


今回もFC琉球サポーターグループ、琉球グラナスの近くで観戦させて頂く。琉球グラナスの皆さんは、2代目を見かけると大きくなったなぁと歓迎してくれた。本当にありがたい。

それぞれのロマンス





ロマンスはここでは「物語」と定義したい。

全国には、チームによって様々なロマンスが存在する。創設の意図、背景、目指す場所、温度感はそれぞれ違っている。最近、サッカーファンのチームへの思いの深さは、ロマンスへの共感度合いに比例するのでは無いかと思っている。

Jリーグは、アメリカのショービジネス的なものではなく、ヨーロッパ型を目指しているが、まだ文化と言えるほどには根付いていない。Jリーグを含めた今の日本のサッカー界の現状は、それが文化として定着するように様々なロマンスを積み重ねている状態だと思う。

今回対戦するFC琉球と海邦銀行SCは、ロマンスがまったく異なるチームだ。

FC琉球はJ3に所属しているプロサッカークラブで、県リーグからスタートしてJリーグにたどり着いた沖縄県唯一のJクラブとして、J2、J1へとカテゴリーアップを目指している。沖縄県サッカー界のフラッグシップであり、天皇杯では、本大会で一つでも多く勝ち抜いてクラブの知名度を上げることが目的となるので、この試合は「通過点」と捉えているだろう。

海邦銀行SCは、地域リーグの九州リーグに所属し、沖縄県内ではFC琉球に次いで実力のあるチームだ。この天皇杯予選では、昨年から話題を集めている高原直泰氏がオーナーを務める沖縄SVにPK戦までもつれる苦戦を強いられたものの勝利し、沖縄県におけるアマチュアNo.1の座は譲らなかった。

海邦銀行SCは海邦銀行を名乗っているが企業チームではなく、クラブにとっては遠征費や活動費を援助してくれるスポンサーである。海邦銀行は沖縄で琉球銀行、沖縄銀行に次ぐ地方銀行であり、対象顧客が沖縄県民であるという企業的な立ち位置を考えれば、試合の様子が沖縄県内のローカルニュースで大きく取り上げられ、大勢の沖縄県民に「海邦銀行」の名前が届くこの県予選決勝の舞台に立っている意味はとても大きい。

地域リーグの沖縄開催試合では、海邦銀行SCの試合に声出しファンも含めて、いつも50人程の熱心なファンが駆けつけているが、この天皇杯県予選決勝には200人近い青いTシャツのファンが駆けつけていた。企業動員があったかもしれないが、いつもとは違う段幕、幟旗、マスコット?、試合後の大掛かりな写真撮影を見れば、この試合がクラブとして大きな意味を持つ「晴れ舞台」だということがよく分かる。

全国のアンダーカテゴリーのクラブがそうであるように、海邦銀行SCのロマンスに共感を得るためには、少し説明が必要なのかもしれない。でも、それに共感したファンが歌うチャントからは、選手を鼓舞し、家族の背中を押すような、何か温かいものを感じた。FC琉球のサポーターのチャントも種類が豊富で、ユニークで、温かみを感じるものが多い。

家族連れが多く見えるスタンドが、とても笑顔が多いのが印象的だった。この居心地の良いスタンドを作ってるのは間違いなく、両チームサポーターがチームに向けて歌うラブソングだ。

私は、何よりもその感じがたまらなく嬉しかった。

試合を振り返る




試合は、海邦銀行SCが先制するという、まさかの展開に会場もTLも一時ザワついたが、FC琉球は慌てることなく、富所と田辺のダブルコンダクターがゲームを作り、サイドを起点に1点ずつ丁寧に得点を積み上げていく。終わってみれば6-1とカテゴリーの差がそのまま現れたスコアとなった。

今季初めてFC琉球のサッカーをじっくり見ることができたが、金監督が言う「2点取られても3点取って勝つサッカー」、このスタイルは、金監督就任初年度にメンバーが大幅に入れ替わり、経験のあるDFがいないために導き出されたスタイルなのかもしれない。海邦銀行SCに取られた点も流れの中から取られたもので、俗に言う油断とかそういった類のものではなく、ディフェンスの強度の問題で取られただけだ。琉球の戦術を支えるのは、富所と田辺のボランチコンビ。キックが上手く多彩で正確なボールを蹴ることができる彼らは、お互いの位置を確認しながら頻繁にゴール前まで顔を出し、3人目の選手としてゴールに絡む事も多い。

面白いなと思ったのは、この2人は守備的MFと呼ばれる位置にいながら守備的な動きをしない。例えばDFの枚数補完のためにバックラインに吸収されたり、守備のスペースマネージメントのために走り回るということはない。もともと走り回る汗かき役タイプの選手ではなく、コンダクタータイプの2人の長所をどうやって活かすかというのが徹底されている。導き出された結論が2人の活動領域の軸を数メートル前に置いて作る作業に徹底すること。金監督は、チームの軸である2人に、セントラルMFとして、より相手のゴールに近いところでボールを保持することを求めているように見える。

コンダクターが2人というと、あっという間にJFLとJ3を駆け抜けたレノファ山口の庄司と小塚が思い出されるけど、レノファ山口のように、何人もの選手が連動して攻撃に絡み、勢いよくボールホルダーを追い越していく「波」のような攻撃をする感じではない。何よりレノファ山口には高さがあって強いCBがいた。

今のFC琉球には強いDFがいないため、相手の攻撃を受けるという選択はとらない。自分達で攻撃の時間を作りにいく。要所で起点を作り、+1の状況を生み出そうとする。極端な攻撃偏重に見える戦術は、常に失点の匂いがつきまとうが、逆にそのリスクをチームで許容して、長所を最大限に活かす戦術を選択している。

攻撃の枚数が相手の守備より常に1枚多いサッカー。打ち合いを土俵とする、劇場型の琉球スタイル。

実に面白い。

その時何を伝えるか


日本のスタジアムは安全だ。これは世界に誇れる特徴だと誰もが言っている。

FC琉球がJFLの時代にスタジアムで出会ったカメラマンは、声出しサポーターの隣に幼稚園の団体が座って楽しそうに一緒に応援しているのを見て、沖縄のスタジアムを、

世界一安全なスタジアム

と称した。

今回、2代目は終始楽しそうにサポーターグループの最後列で応援していた。途中、物販で小旗を買ってあげると、目を輝かせて嬉しそうにしていた。サポーターゾーンに顔を出して挨拶した時に、大きくなったねーと、優しく声をかけてくれた大人達が、試合が始まると耳がはち切れんばかりの大きな声を出し、太鼓に乗せて手拍子やジャンプをしている。

最初は完全に戸惑って座り込んでいた2代目も、じょじょに慣れて一生懸命手拍子したり、旗を振っている。ミスへの怒声など普段聞いたことが無い大人達の声にビックリし、私のズボンにつかまる時もあった。私はその度に目を合わせ、大丈夫だと合図を送っていた。

私は、これで良いと思っている。

スタジアムにいると、時には罵声とも思える野次に出くわすことがある。行き過ぎたものは決して容認しないけど、誰でも、目の前の出来事に大きな声を出してしまったり、怒ってしまったりというのはある。大人だって整理できないことはある。感情を爆発させることはあるんだということ。なぜ大人達がこれほど夢中になるのか。興味や疑問を持ってほしいし考えてほしい。勝って喜び、負けて悔しがる。時には涙することもある。私は2代目に、そんな大人達の人間臭さと向き合わせたい。

Passion Not Fashion
パッション(情熱)はファッションではない。

もし、私が2代目に、あえて何か言うことがあるとするならば、タイミングをみてたった一つだけ言ってあげたい。

失敗(ミスを)した人に怒るのではなく、頑張れと言える人になりなさい。

あとは、目一杯楽しめばいい。笑って、泣いて、ありのままの情熱を表現すればいい。

またサッカー見に行こうね。

いつまでもこの気持を大切にしてあげたい。

超「個」の教科書 -風間サッカーノート-

新品価格
¥1,404から
(2017/4/14 22:19時点)