原発のしくみと事故/技術論と文明論(9)
原発と火力発電はどう違うか?
原理的には、蒸気タービンで発電機を回すことは同じである。
蒸気を発生させる熱源が、石油や石炭などに化石燃料か核燃料かの違いである。
小倉志郎『元原発技術者が伝えたいほんとうの怖さ』彩流社(2014年7月)
原子力ボイラーをもうちょっと具体的なイメージで示すと下図のようになる。
基本的なしくみ
日本の電力会社が使っている商業用原発の代表的なタイプには、沸騰水型軽水炉(BWR)と加圧水型軽水炉(PWR)がある。
事故を起こした福島第一は沸騰水型軽水炉(BWR)である。
沸騰水型軽水炉(BWR)のしくみ
原子炉内を流れる1次冷却水を直接沸騰させて、その蒸気でタービンを廻す。
放射能で汚染された1次冷却水を直接利用しているため、事故の際に放射能漏れを起こしやすいし、タービン室なども汚染される。
加圧水型軽水炉は下図のようである。
加圧水型軽水炉(PWR)のしくみ
原子炉内を流れる1次冷却水を直接沸騰させず、2次冷却水を沸騰させて蒸気をつくる。
1次冷却水は、加圧器で約150気圧もの圧力をかけられているため、沸騰しないまま約300度の熱水になって蒸気発生器の中に流れ込む。
蒸気発生器の中には、直径約2センチの蒸気発生器細管が約7000~1万本以上も通っている。
1次冷却水はこの細管の中を通り、外を流れる2次冷却水を沸騰させて、再び原子炉に戻る。
蒸気になった2次冷却水はタービンを廻したあと、「復水器」で海水によって冷やされて再び蒸気発生器へ戻る。
蒸気発生器細管は、穴や亀裂から放射能が漏れたり、細管が突然ちぎれる事故が起きている。
端的に言えば、お湯を沸かすのに核燃料を使うのが原発である。
安倍首相などの原発推進派は、CO2を発生させないクリーンエネルギーという神話を語っているが、CO2に相当する「核のゴミ」の処理の目途が未だ立っていないのである。
⇒2012年6月11日 (月):電源構成と核燃料サイクル/花づな列島復興のためのメモ(83)
⇒2014年1月 6日 (月):核燃料サイクルをどう考えるか?/花づな列島復興のためのメモ(290)
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