ピケティVS アベノミクス/アベノミクスの危うさ(48)
フランスの経済学者・トマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』が評判である。
⇒2014年12月24日 (水):『21世紀の資本』と富の偏在/アベノミクスの危うさ(44)
先日も高校の同級生と歓談したとき、「読んだ?」「読んでない」という会話があった。
私は手を出す予定はないが、解説がイヤでも目に入ってくる。
その主張は簡単に言えば、〈株や不動産などの投資で得られる利益率は、労働による賃金の上昇率を上回る。その結果、財産のある富裕層がさらに金持ちになり、格差拡大は止まらない。是正のためには、富裕層への世界的な資産課税強化が必要〉というものだ。
「21世紀の資本」著者ピケティ氏がアベノミクスに“ダメ出し”
「週刊ダイヤモンド」2月14日号が、『そうだったのか! ピケティ』という特集記事を組んでいる。
「そうだったのか!」は池上彰氏の決めゼリフであり、同氏の分かりやすい解説ということであろう。
特集の中で、約700ページの『21世紀の資本』を見開き2ページで解説している。
上記の部分は以下のように説明されている。
安倍首相は、ピケティの世界的な資産課税強化について、参院本会議で松田公太議員の質問に答え、「執行面でなかなか難しい面もある」とそっけなく否定した。
しかし、どう見ても安倍政権よりもピケティの方がうわてのようだ。
ところが、直後に側近から「人気の経済学者なので反論ではなく、アベノミクスの恩恵をアピールすべき」とアドバイスされたらしい。29日の衆院予算委員会での民主党・長妻昭氏との質疑では、「ピケティ氏も成長は否定していない」とまずピケティ人気にあやかったうえで「成長せずに分配だけを考えていけば、ジリ貧になる」と持論を語り、2日の参院予算委員会では「(アベノミクスは)全体を底上げする政策だ」と力説した。
だが、当のピケティ氏はアベノミクスに対してケチョンケチョンだ。 例えば、アベノミクスは富裕層・大企業への税を軽減する一方で、その穴を大衆課税である消費税増税で埋めようとしている。これは、ピケティ氏が主張する累進課税強化と真っ向対立している。
「あらゆる人にかかる消費税を引き上げることが、どうして日本の成長にとってよいことなのか。納得できない」(1月31日、東大講義で)。
1月29日のシンポジウム後半のパネルディスカッションでは西村康稔内閣府副大臣がパネリストとして登壇した。政府の「雇用者100万人増」や「トリクルダウンの試み」などについてパワーポイントの資料を何枚も使って説明し、「アベノミクスで格差が拡大しているというのはまったくの誤解」とドヤ顔を見せた。
しかし、データ分析ではピケティ氏の方が2枚も3枚も上手だった。
「確かに日本の格差はアメリカほどではない。しかし、上位10%の富裕層の所得は国民所得全体の30~40%まで上がってきており、さらに上昇傾向にある。しかも、日本はゼロに近い低成長なのに上位の所得が増えているということは、実質的に購買力を減らしている人がいるということだ。おまけに累進課税の最高税率も低い。国際的水準で見ても、日本の過去の税率と比べてみても。つまり、トップの所得シェアが増えているのに以前より低い税率しか納めていないということだ」
これを不平等といわず、なんというのか。西村副大臣はタジタジだった。
異次元金融緩和についても「紙幣を増刷することは(税制に手を着けるより)たやすいが、緩和したマネーがどこへ行っているかわからない。果たしてそれで適切な人が恩恵をうけるだろうか」「株や土地のバブルを起こすことはできるが、それでは正しい人に富が行き渡らないし、必ずしも経済成長にはつながらない」(同シンポジウムで)とバッサリ。
アベノミクス最大のキモは、まず富裕層を優遇して儲けさせ、その富の一部がやがて低所得者層にまで"したたり落ちてくる"トリクルダウン理論にある。ピケティ氏はこれを、「過去を見回してもそうならなかったし、未来でもうまくいく保証はない」(東大講義講義)と一蹴した。
世界が注目する経済学者・ピケティが来日して“アベノミクス“をケチョンケチョンに!
トリクルダウンが、レーガン、ブッシュの共和党政権で喧伝されながら、実際はそうならなかったことは既に実証されている。
得意げにトリクルダウンという言葉を振りかざす安倍政権は、共和党の悪しきコピーと言えよう。
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