歴史の周期性と「幻の東京五輪」/アベノポリシーの危うさ(82)
歴史の周期性ということがいわれる。
例えば、地震である。
江戸時代末期の安政の大地震が1855年、関東大震災が1923年で約70年後だった。
さらに約80年後の2011年には、東日本大震災が起きた。
まあ大規模地震の場合には、プレートの運動に伴う歪みが限界に達する時間ということで納得できなくはない。
社会的な現象についてはどうか?
例えば、景気変動について、さまざまな周期性が言われている。
キチンの波と呼ばれる40ヶ月平均の消費(在庫)循環、ジュ
グラーの波と呼ばれる10年の設備投資循環、クズネツの波という20年の建設循環、そしてコンドラチェフの波と呼ばれる50年の技術革新(イノベーション)循環などである。
景気循環の4つの波
当然波の周期には幅がある。
例えばコンドラチェフの波は、Wikipediaでは以下のように説明されている。
約50年の周期の循環。長期波動とも呼ばれる。ロシアの経済学者ニコライ・ドミートリエヴィチ・コンドラチエフによる1925年の研究でその存在が主張されたことから、シュンペーターによって「コンドラチェフの波」と呼ばれ、その要因としてシュンペーターは技術革新を挙げた。第1波の1780 - 1840年代は、紡績機、蒸気機関などの発明による産業革命、第2波の1840 - 1890年代は鉄道建設、1890年代以降の第3波は電気、化学、自動車の発達によると考えた。この循環の要因として、戦争の存在を挙げる説もある。
「幻の東京五輪」と呼ばれる五輪計画があった。
1940年のオリンピックは東京で開催することが決まっていた。
所が1937年7月に盧溝橋事件が起こり、その後日本軍と中華民国国軍の戦闘区域が拡大し「支那事変」(日中戦争)と呼ばれるようになると、陸軍が軍内部からの選手選出に異論を唱えた。
1938年に入ると日中戦争の長期化が予想されるようになったために、鉄鋼を中心とした戦略資材の逼迫を理由に、軍部が「木材か石材を使え」などと無理な注文を出した上に、陸軍大臣・杉山元が議会においてオリンピック中止を進言するなど、反対の態度を鮮明にした。
軍部からの圧力を受けた内閣総理大臣・近衛文麿は、閣議で戦争遂行以外の資材の使用を制限する需要計画を決定し、この中にオリンピックの中止が明記されていたことから、事実上オリンピックの開催中止が内定した。
幻の東京五輪である。
ゴタゴタ続きの東京オリンピック・パラリンピック準備を見ていると、この過去が頭を過ぎる。
1940年だから、2020年はちょうど80年後にあたる。
平均寿命くらいの時間である。
世代で言えば、2.5世代くらいであろうか。
かつて、人生50年と言われていたので、コンドラチェフの波に相当しようか。
技術革新が要因とすれば、より短縮されているとも考えられるが……
そもそもの発端は、招致活動時の安倍首相の虚言であろう。
安倍首相はオリンピック招致のプレゼンで、福島原発事故の影響について、「状況はコントロールされている」「汚染水は港湾内で完全にブロックされている。健康問題は今もこれからも全く問題ないことを約束する」とスピーチしたのである。
⇒2013年9月24日 (火):「嘘も方便」首相と日本の将来/花づな列島復興のためのメモ(264)
承知に係った猪瀬直樹前東京都知事と本来ならば準備の中心となり開幕を迎えるべき舛添要一都知事が不名誉な形で辞職した。
新国立競技場は設計し直したが、当選した案が聖火台を想定していないなど、大丈夫かと危惧せざるを得ない。
自民党の農林族からは、イスを木製にせよという要求が出ている。
私もゼロベースなら賛成するところだが、あれやこれやで予算オーバーになっている現状では賛成しかねる。
重要なのは、招致活動そのものの正当性であろう。
裏金が動いていたことで、フランス当局が捜査中とのことである。
⇒2016年5月18日 (水):東京五輪の裏金が示すもの/アベノポリシーの危うさ(67)
アマチュア精神が建前に過ぎないにしても、余りに生々しい利得が見えてしまうと、しらけるのではなかろうか。
電通のキーマンは安倍政権とも近いようである。
週刊文春6月23日
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