巨大噴火リスクにどう備えるか/技術論と文明論(77)
10月8日午前1時46分ごろ、熊本県の阿蘇山で爆発的噴火が発生した。
熊本・大分地震の記憶が生々しい。
気象衛星ひまわり8号の観測によると、噴煙は高さ1万1000メートルの上空まで上がった。気象庁は阿蘇山の噴火警戒レベルを「2」(火口周辺規制)から「3」(入山規制)に引き上げ、火口から2キロの範囲での噴石の飛散や火砕流に警戒するよう呼び掛けている。
阿蘇山で、一定以上の爆発や空気の振動を伴う爆発的噴火が起きたのは1980年1月26日以来、36年ぶり。噴火に伴う火山性微動で、熊本県南阿蘇村で震度2の揺れを観測した。阿蘇山で火山性微動により震度2以上の揺れを観測したのは95年以来36年ぶり。気象庁は噴煙の高さから予測して、約380キロ離れた兵庫県南あわじ市まで10県の100以上の市町村に降灰予報を出した。
阿蘇山噴火 気象庁「同じ規模、起こりうる」警戒呼びかけ
「破局噴火」という言葉がある。
石黒耀が2002年に発表した小説『死都日本』で考案した用語である。
作中の設定では、南九州の加久藤カルデラが約30万年ぶりの超巨大噴火を起こし、火山噴火予知連絡会はこれを「じょうご型カルデラ火山の破局“的”噴火」と発表したが、NHKの臨時報道番組のキャスターが「破局噴火」と間違えて連呼したことにより、日本国内のみならず海外においても「近代国家が破滅する規模の爆発的巨大噴火」を Hakyokuhunka と呼ぶようになったとされている。
⇒2016年4月15日 (金):熊本の地震と『死都日本』のメッセージ/技術論と文明論(48)
『死都日本』は現実の火山学者からも超巨大噴火をリアリティーを持って描いた作品と評価された。
阿蘇山はかつて4回のカルデラ巨大噴火を経験しているが、今回の噴火をきっかけにして破局的な噴火を引き起こす可能性はあるのだろうか?
巨大カルデラ噴火を起こした火山は7つあるが、そのうちの4つが九州に集中している。その中でも最大のものが、東西18キロ、南北25キロの阿蘇カルデラである。そう、先日の熊本地震で活発化が懸念される、あの阿蘇山だ。もし、阿蘇カルデラで巨大カルデラ噴火が起こったら、日本はどうなるのか。
まず、最初のプリニー式噴火によって、中部九州では場所によっては数メートルもの軽石が降り積もって壊滅的な状況に陥る。そしてクライマックス噴火が始まると、巨大な噴煙柱が崩落して火砕流が発生する。軽石と火山灰、それに火山ガスや空気が渾然一体流れる火砕流は、キノコ雲状に立ち上がった灰神楽の中心から、全方位へと広がって行く。数百℃以上の高温の火砕流はすべてのものを飲み込み焼き尽してしまう。そして発生後2時間程度で700万人の人々が暮らす領域を覆い尽くす。
九州が焼き尽された後、中国・四国一帯では昼なお暗い空から大粒の火山灰が降り注ぐ。そして降灰域はどんどんと東へと広がり、噴火開始の翌日には近畿地方へと達する。
大阪では火山灰の厚さは50センチを超え、その日が幸い雨天ではなかったとしても、木造家屋の半数近くは倒壊する。降雨時には火山灰の重量は約1.5倍にもなる。その場合は木造家屋はほぼ全壊である。
その後、首都圏でも20センチ、青森でも10センチもの火山灰が積もり、北海道東部と沖縄を除く全国のライフラインは完全に停止する。水道は取水口の目詰まりや沈殿池が機能しなくなることで給水不能となる。
現在日本の発電量の9割以上を占める火力発電では、燃焼時に大量の空気を必要とするが、空気取り入れ口に設置したフィルターが火山灰で目詰まりを起こすために、発電は不可能となる。これにより、1億2000万人、日本の総人口の95%が生活不能に陥ってしまう。
同時に国内のほぼすべての交通網はストップする。5センチの降灰により、スリップするため、道路は走行不能となる。従って除灰活動を行うことも極めて困難を極めるだろう。主にガラスからなる火山灰は、絶縁体である。この火山灰が線路に5ミリ積もるだけで、電気は流れなくなり、電車はモーターを動かすことができなくなるし、信号も作動しなくなるのだ。
さらに言えば、現在最も一般的なレールは15センチ程の高さしかない。従って北海道以外の地域では、そもそもレールそのものが埋没してしまう。
このように、交通網が遮断されてしまうので、生活不能に陥った人たちに対する救援活動や様々な復旧活動も、絶望的になる。巨大カルデラ噴火の発生による直接的な被害者は、火砕流と降灰合わせて1000万人程度であろう。しかし、救援・復旧活動が極めて困難な状況下で生活不能に陥った1億人以上の人々は一体どうなるのだろうか?
人間は断食には比較的耐えることができるようだが、水は生命維持には必須である。最低で4~5日間水分の補給がないと、私たちは生きることはできない。救援活動がほとんど不可能な状態では最悪の事態、つまり1億人以上が命を落とすことを想定しておく必要があるだろう。
阿蘇山「カルデラ噴火」が、日本を壊滅させる
まさに日本沈没である。
阿蘇山は日本を貫く巨大な活断層である「中央構造線」のほとんど真上に位置している。
熊本地震が発生してから、中央構造線付近を震源とする地震が増えており、ほぼ線上に伊方原発が立地しているのだ。
伊方町長選では原発容認派が勝ったが、伊方町だけの問題ではない。
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