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  • 大喜利の考え方 あなただけの「面白い発想」を生み出す方法

    坊主 ダイヤモンド社 2024.2.27読書日:2024.7.25 X(旧ツイッター)で大喜利を主催している坊主さんが、大喜利の優秀者の作品をもとに、面白い発想が生まれる極意を伝える本。 なんか最近、この系統の本を読むことが多い。その内容はトークだったり、脚本だったりするんだけど、なぜか時期が重なってしまう。本を読んでいるとこういうふうに同じ時期に同じようなテーマに手を出すことが多い。たぶん、心が求めているんだろう。 というわけで大喜利なんだけど、そもそも人は、「何か面白い話をして」と言われても何も思いつかないという。そりゃそうだ。ところが、何か制約条件を与えられると頭が回りだして、いろいろ思…

  • その島のひとたちは、ひとの話をきかない 精神科医、「自殺希少地域」を行く

    森川すいめい 青土社 2016.7.14読書日:2024.7.22 精神科医の著者が、自殺が少ない地域を旅して、共通する地域の特徴を述べた本。 日本は世界的に自殺が多い国で、心のケアをする精神科医の著者は当然ながら自殺をした知り合いがいる。そんなわけで、自殺が少ない自殺希少地域があるという話を学会で聞いて、衝撃を受ける。そしてさっそくその地域を旅をして、その地域の印象を書き留めたのがこの本である。なんら学術的な本ではないのであるが、けっこう心に刺さる部分がある。 著者は、そういう地域は単純に心の優しい人たちが濃密な関係を築いてお互いにケアしあっている癒やしの空間なのだと思っていた。ところが、そ…

  • トークの教室 「面白いトーク」はどのように生まれるのか

    藤井青銅 河出書房新社 2024.2.28読書日:2024.7.15 伊集院光やオードリーの地味な方の若林さんをブレークさせたことで有名な放送作家の藤井青銅が、面白いトークの極意を伝える本。 藤井青銅さんは主にラジオで活躍している人。ラジオは当然トークしかないからトークについての経験が豊富だ。特に若いアイドルの担当をすることが多く、トークの素人にトークをさせる必要がある。 でも、面白いトークってそもそも何なのだろうか。藤井さんによれば、それは「笑える話」ではないという。ひとに興味をもってもらえる話が面白いトークなのだという。普通の人がなかなかできない経験をすれば、もちろん興味を持ってもらえて「…

  • 書いてはいけない 日本経済墜落の真相

    森永卓郎 三五館シンシャ 2024.3.20読書日:2024.7.15 森永卓郎がメディアの仕事をしていて、触れてはいけないとされたジャニーズ事務所、財務省、日航機123号の墜落、について書いた本。 ジャニーズ事務所についてはBBCが報道してからいかにメディアが報道を自主規制していたかが明らかになり、財務省についてはすでに森永氏本人が「ザイム真理教」という本を出しているが、日航機123便については今回初めて書いている内容である。 これがどんな内容かというと、日航機123号の事故はボーイングの隔壁の修理ミスではなく自衛隊のミサイルあるいは標的機の追突によるものだという、驚くべきものである。これが…

  • ANNA アナ・ウィンター評伝

    エイミー・オデル 訳・佐藤絵里 河出書房新社 2023.11.20読書日:2024.7.18 雑誌ヴォーグの生きる伝説的な編集長アナ・ウィンターの評伝。 全身ユニクロで固めているわしはファッションにはほぼ興味はない。雑誌ヴォーグを見たこともない。だがアナ・ウィンターのことはさすがに知っている、というか映画「プラダを着た悪魔」のモデルとして知っているだけだけど。 アナの父親チャールズは、イギリスのイブニングスタンダードという新聞の編集長として成功した人物で、その娘も好きなファッション分野(というか完全にオタク)の編集者として成功を目指す。それが最初からヴォーグの編集長となることを目指していて、そ…

  • ブレードランナーの未来世紀 <映画の見方>が分かる本

    町山智浩 新潮社 2017.11.1読書日:2024.6.30 映画評論家の町山さんの代表作(たぶん)で、1980年代のサブカル的なカルトムービーの数々を取り上げた本。 この本は出版社を変えて何度も出版されている。2006年に洋泉社から出版され、2017年に新潮社にうつり、最新刊は2024年に朝日新聞出版から発売されている。わしが読んだのは2017年の新潮社版だが、このように出版社は変われども絶えることなく出版されているわけで、名作ということになるのであろう。 1970年代の映画は作家主義の時代だったのだそうだ。しかし、そうした作家主義の映画は陰鬱なリアリズムの世界で、お客を呼べなかった。ロッ…

  • 鈴木敏夫×押井守 対談集 されどわれらが日々

    鈴木敏夫、押井守 DU BOOKS 2024.3.3読書日:2024.7.11 鈴木敏夫と押井守の過去の対談を収録したもの。 たぶん過去のほぼすべての対談を集めたんじゃないかと思われる。ここでびっくりなのは、アニメージュの編集者だった鈴木敏夫が、毎週のように土曜日に押井守の部屋にみかんを持って押しかけて、(お酒が飲めないので)みかんを食べながら映画の話を朝までしていたということである。このとき押井守は結婚していたが、一部屋だったので、押井守の妻も朝までつきあわされたという。これが1980年代の話で、かれこれ40年にわたって二人の濃い関係が続いているのだ。 なぜこんな事が可能だったかというと、決…

  • タテ社会と現代日本

    中根千枝 講談社 2019.12.1読書日:2024.7.7 日本のタテ社会の構造を発見した中根千枝の入門書。 いちおう入門書的な扱いになっているけど、まあ、これで十分な内容が含まれているんじゃないかな。社会生態学者の中根千枝がタテ社会について発表したのは1960年代のようだけど、まったく古びていなくて新鮮に読める。いまの日本に起こる社会的な事件にも十分対応できる、歴史の風雪に耐えてきた理論なのである。 タテ社会とはなんなのだろうか。 同じ場所にいる少人数がつながって構成している社会のことで、ひとつの集団の人数は6、7名なんだという。日本の会社では課に当たるくらいの人数である。そこでは階級とか…

  • ザイム真理教 それは信者8000万人の巨大カルト

    森永卓郎 三五館シンシャ 2023.6.1読書日:2024.6.4 財政均衡を絶対視する財務省はほとんどカルト集団と化していて、国民のほとんどが財務省に洗脳されていると主張する本。 わしは完全に森永卓郎の味方である。財務省の増税路線を憎んでさえいる。 わしの周りの人にもまったく理解していただけないけれども、政府は基本的に赤字が正解である。民間にお金を回すと政府が赤字になるのはマクロ経済の正しい姿である。逆に政府が黒字になると、民間は不況になる。なので、これでいいのである。 そもそも国債を帳消しにするのは簡単だ。嘘だと思ったら、日本銀行が持っている国債を全部、政府に納めさせればよい。これで政府の…

  • マチズモの人類史 家父長制から「新しい男性性」へ

    イヴァン・ジャブロンカ 訳・村上良太 明石書店 2024.3.15読書日:2024.7.5 家父長制というシステムが何万年もの間人類を支配していたが、フェミニズムの発展により女性の権利が拡大され、さらに男性にとっては挫折しやすい社会になり、新しい男性性を模索すべきだと主張する本。 フェミニズムの方にはあまり興味がなくて、じつは家父長制に興味があってこの本を手に取ったのだった。題名に「人類史」と入っているところが、わしにとってはポイントだった。 わしは家父長制の起源が気になっているのだ。多くの人類学者と同じように、わしはもともと人類は家父長制ではなかったと考えているので、なぜ家父長制が人類の主流…

  • 妻の実家のとうふ店を400億円企業にした元営業マンの話

    山中浩之 日経BP 2023.10.23読書日:2024.6.24 差別化が難しく地元密着の企業が多い豆腐産業で、妻の実家のとうふ店に就職し業界No.1の400億円企業、相模屋を作り上げた、ガンダム語を使う異色の経営者、鳥越淳司さんの話。 わしが相模屋のことを知ったのは、やっぱりザク豆腐の発売だろう。まあ、実際に商品を見たことはないのだが、ずいぶん話題になったので、その存在だけは知っているというくらいだ。 ザク豆腐の発売は2012年のことで、それから12年経ったわけだが、その時、売上130億円くらいだったのが、いまでは400億円企業である。むちゃくちゃ成長したのである。豆腐の市場規模は5〜60…

  • すばらしい新世界

    オルダス・ハクスリー 訳・黒原敏行 2013.6.20 光文社 2013.6.20読書日:2024.6.12 (ネタバレあり、というか内容はだいたい知ってるよね?) 2540年の未来、戦争はなく平和な時代で、人類は安定的な階級社会を作っている。子供は工場で生産され、睡眠学習による条件付け学習で自分の階級は幸福だと洗脳され、気分はソーマという薬でコントロールし、死ぬまで若さを保てて、特定のパートナーを作ることなくフリーセックスが推奨されている。そこに、工場ではなく人間から生まれたジョンがインディアン居住地で発見され、「すばらしい新世界」のイギリスにやってくるのだが……。幸福な全体主義の世界を描い…

  • タモリと戦後ニッポン

    近藤正高 講談社 2015.9.1読書日:2024.6.22 1946年生まれのタモリの足跡をたどれば、戦後日本の歩みもたどれると主張する本。 上記の主張は間違ってはいないけど、そもそもどんな人の評伝であってもその時代の国の歩みの影響を必ず受けるものである。だから、それはすべての評伝について言えることである。タモリの評伝自体は多数出ているそうだから、きっと何らかの差別を付ける意味で、このような主張をしているんじゃないかと思うが、内容的には単純にタモリの評伝でございました。 というわけなのだが、タモリのデビューのきっかけとかブレークしたあとのことはよく知られているけど、わしはデビュー前の福岡での…

  • 科学と哲学と魔法

    このまえ20代の社員に、ある光学部品の動作原理がわからないから説明してほしい、と頼まれた。これがちょっとだけ面白かった。 その人はいちおう工学部の出身だったのだが、波面という波の概念すら知らなかったので、納得してもらうのに1時間ほどかかってしまった。 「ホイヘンスの原理って知ってるでしょ?」 というと、 「初めて聞いた」 というレベルだったので、まあ、仕方がない。 いちおう説明が終わって、 「波って不思議だよね。たとえば海の波も、海水はその場から動かず、波だけが動いていくんだから」 というと、 「そんな哲学的なことはどうでもいいです」 という反応。思わず、 「哲学じゃなくて、科学だよ」 と答え…

  • なぜ働いていると本が読めなくなるのか

    三宅香帆 集英社 2024.4.22読書日:2024.6.16 仕事を始めると本どころかあらゆる趣味をする時間的余裕がなくなってしまう、という著者が仕事に全身全霊を捧げることを止めるよう主張する本。 読んでいて困ってしまった。 著者はとても真面目な人らしく、就職すると仕事が頭から離れず、時間があってもじっくり本を読むことができなくなり、スマホで動画を見て暮らすようになったんだそうだ。そしてそれをつぶやくと多くの賛同が得られたのがこの本を書くきっかけになっているのだという。 な、なんて真面目な。 なにしろ自分の過去を振り返ってみると、残業はまったくせず、仕事中も仕事していない時間が多かったからな…

  • サブぃカルチャー70年 YouTubeの巻

    押井守 東京ニュース通信社 2023.12.26読書日:2024.6.14 70歳になった押井守がはまったYouTubeのチャンネルについて語り尽くすもの。 押井守はゲームの攻略法を探しにYouTubeの世界へ行ったのだが、そこで多様な番組に惹かれてハマったのだそうだ。 押井守は何かにハマるとそのことに時間を蕩尽するような人で、「Fallout4」というゲームではPCを新しくしてから、気がつくと7000時間をゲームに費やしていたそうだ。それが幸福と思っているような人なので、別にいいのだが、このような人がYouTubeの何かのチャンネルを気にいると、過去にさかのぼってすべてチェックして、その後の…

  • サーキット・スイッチャー

    安野隆弘 早川書房 2022.1.20読書日:2024.6.7 (ネタバレあり。注意) 2029年、自動運転プログラムを開発する会社の社長の坂本は首都高を走る自動運転車内に拘束される。彼を拘束した男は、坂本の自動運転プログラムがマイノリティの命を軽視していると主張し、それを証明するというのだが……。 どうも最近、日本のSF小説が良くなっている気がする。というわけで、第9回ハヤカワSFコンテストで優秀賞を受賞し、世間の評価(注:アマゾンレビューのこと(笑))もなかなか高いこの本を読んでみることにした。 面白かったんだけど、たぶん、読んだ誰もが思ったのではないか。これってSF? SFっぽいところは…

  • 円安はどこまで進むのか

    円安が進んでいる。 わしはかねてから円安に賛成で、好ましい傾向だと思っている。 しかし、世間では円安がどこまで進むのか不安視する声が多い。ではいったいどこまで進むのだろうか。 ここからは、個人投資家としての感覚でお話させてもらう。理論的な裏付けはなしである。しかし、言わせてもらえれば、為替が理論値通りになったことなどいまだかつてないのである。これはすべての金融商品について言えることで、相場が絡むと(=人間の心理が絡むと)理論通りにはならないのだ。実体経済と必ず時期的なずれが生じ、さらにはオーバーシュートが生じるのだ。 さて円安とは、円の価値が下がることである。株で言えば、最高値を付けた銘柄が下…

  • 世界は経営でできている

    岩尾俊兵 講談社 2024.1.20読書日:2024.6.7 人生で起こることはすべて価値創造するという経営の思想で良くすることができると主張する本。 ここで取り上げられる人生の問題は、貧乏だったり、家庭のことだったり、恋愛だったり、勉強だったり、虚栄だったり、心労だったり、就活だったり、仕事だったりという人生で起こる様々な出来事なのであるが、対策は一貫している。 これらの問題はすべて何らかの管理をされないといけないのではあるが、著者は、これらは単なるマネジメントの問題ではないと主張している。つまり、ゼロサムの限りある資源を他人と奪い合うという発想ではだめで、パイを大きくするような新たな価値創…

  • カーテンコール

    筒井康隆 新潮社 2023.10.30読書日:2024.6.4 筒井康隆の最後の短編集と言われているもの。 まあ、これが最後ということですので、読んでみたわけですが、これまでのいろんなパターンをとりあえず取り揃えてみました、という感じでしょうか。残念ながら、わくわくしながら読むようにはできておりません。 この辺が、筒井康隆の衰えなのか、それとも安易な方向に流れないという巨匠としての矜持なのかは分かりませんが。 昔からのファンが喜ぶようなことは、表題の「プレイバック」でしょうね。時をかける少女の芳山和子とか、唯野教授とか、富豪刑事の神戸大助とか、パプリカとかが病院にいる作者のところに挨拶に来る。…

  • うつ病 隠された真実 ―逃れるための本当の方法

    ヨハン・ハリ 訳・山本規雄 作品社 2024.2.20読書日:2024.5.30 うつ病に悩まされてきたジャーナリストのヨハン・ハリが、プロザックなどの抗うつ剤に科学的根拠はないという驚くべき事実を知り、近年のうつ病は社会的な原因によるものが増えており、その解決策は人の絆を回復させることだと主張する本。 ハリがうつ病について調べ始めたとき、シンプルな解答を求めていたんだそうだ。たとえば、最新の抗うつ剤の〇〇を飲めばオーケー、みたいな。ところが取材を始めていきなり抗うつ剤には科学的根拠がないという事実を知り、驚くのである。 プロザックなどの抗うつ剤で言われていることは次のようなことである。脳内で…

  • クジラと話す方法

    トム・マスティル 訳・杉田真 柏書房 2023.11.10読書日:2024.5.20 動物の話す言葉を解析する最新の科学を紹介する本。 2015年、カリフォルニアの沖でカヤックに乗っているときに、ザトウクジラのブリーチング(海から飛び出してダイブすること)に巻き込まれ、海に投げ出された著者のマスティルは、クジラに魅せられ、クジラと話してみたいと思うようになる。 このときマスティルは最近の技術進化を体験する。 クジラは多くがデータベースに登録されている。そして今どこにいるのか、目撃情報からたどることもできるのだそうだ。著者を巻き込むブリーチングをしたクジラも、その様子がそばの船にいた乗客のスマホ…

  • 運転者 未来を変える過去からの使者

    喜多川泰 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2019.3.30読書日:2024.5.17 (ネタバレあり。注意) 人生の全てに行き詰まっている修一は一台のタクシーに乗るが、そのタクシーは謎のポイントをメーターに表示し、そのポイントが残っている分だけ、修一の運命を変える場所に運んでくれるのだというのだが……。 謎のタクシーに乗って、運転者の言うとおりにすると、いつの間にか運が好転しているというこの小説だが、読んでいてちょっと考えてしまった。 運転者のアドバイスは、上機嫌にしていないと身近にある運に気が付きませんよ、とか、幸せのきっかけを掴んでもその効果はすぐに現れない、とか、運は知らないうちに蓄…

  • シン・日本の経営 悲観バイアスを排す

    ウリケ・シェーデ 訳・渡部典子 日経BP、日経新聞社 2024.3.8読書日:2024.5.13 失われた30年と言われているが、日本経済は遅くとも着実に体質転換を図っており、悲観することはないと主張する本。 わしは日本経済について悲観したことはないのではあるが、こういう本が出るともちろん喜んで読む方である。 この本ではまず経済複雑性ランキングについて説明している。これはどれだけニッチな市場を押さえているかという指標なのだが、日本はこの指標で30年以上も1位を確保している国なのだ。これは市場規模は小さくても、世界で日本の企業しか持っていない技術がいかに多いかを示している。 この指標に関しては、…

  • 森の力 植物生態学者の理論と実践

    宮脇昭 講談社 2013.6.1読書日:2024.5.16 植物生態学者の宮脇昭が、スギ、ヒノキ、マツの林は偽物だと主張し、全国の植生を調査した結果からその土地にあった森を再生していく実践の様子を述べた本。 ともかく、宮脇さんは現場第一主義のひとらしい。日本中どころか世界も飛び回っていたらしい。 宮脇さんによれば、日本の山に生えているスギ、ヒノキ、マツなどは戦後の建築用の木材が足りなくなったときに植えられたもので、本物の森ではないという。その証拠に、人間が常に手入れをしないといけないような人工の森なのである。このような植物は、本来は照葉樹林の森の中での競争に負けて、条件の悪いところに生えていた…

  • 変態的読書

    自分の読書が普通の人からはずいぶん離れていて、変態的なのは知っています。 会社でも昼休みに本を読んでいるので、他の本好きな人から、どんな本を読んでいるの?、などと聞かれ、それがもとでお互いに読んでいる本を教え合ったりします。読書離れが著しい現在では、なかなか得難いことです。 わしは、柄谷行人の「力と交換様式」を読んだとき、ものすごく感激して、これは超傑作、絶対読むべき本だ、と力説しましたので、その人はこの本のことを覚えていたのでしょう。数ヶ月前に、図書館で借りたそうです。しかし、目次を見ただけで借りたことを激しく後悔したそうです。とうぜん、まったく読まずに返したとか(笑)。 まあ、仕方ないです…

  • サピエンスの未来 伝説の東大講義

    立花隆 講談社 2021.3.1読書日:2024.5.14 立花隆が1996年に東大で行った講義をまとめたもので、テイヤール・ド・シャルダン(1881−1955)の進化に対する考え方に基づいて、人類の進化の進んでいく方向を述べたもの。 未来のことに興味があるわしではあるが、なにしろ進化の話である。もしかしたら数万年後の未来のことかもしれない話だ。しかし、シャルダンによれば、わしらはすでに次の進化のとば口に立っているんだそうだ。 では、立花隆を通してシャルダンの考えを見ていこう。 シャルダンによれば、生物の進化は宇宙や物質の進化と地続きである。どういうことか。 熱力学の第2法則によれば、エントロ…

  • 自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体

    石井暁 講談社 2018.10.16読書日:2024.5.13 自衛隊の中に首相も防衛大臣もその存在を知らない、旧日本陸軍の流れを継いだ情報部隊「別班」の存在を世の中に知らしめた著者による、取材の経緯を書いた本。 ほとんどの人は別班のことは、テレビドラマ「Vivant(ヴィヴァン)」で知ったのではないか。わしもそうで、てっきりフィクションと思っていたけど、本当に存在しているとは。 共同通信の記者である著者は、2013年にこのことを記事にして、その記事は全国の新聞の一面を飾ったのだそうだ。当時は自衛隊の「特定秘密保護法」の国会審議中で、審議に一石投じる思いで記事にしたのだが、いろいろ調整している…

  • クリエイターワンダーランド 不思議の国のエンタメ革命とZ世代のダイナミックアイデンティティ

    中山淳雄 日経BP 2024.2.26読書日:2024.5.7 エンタメは社会の矛盾を心理的に昇華させる逃避世界だという著者が、アップロードネイティブ世代であるZ世代(1995〜2010生まれ)のエンタメについて語った本。 日本は世界に冠たるエンタメ大国なんだそうだ。Z世代が作り出した日本のエンタメは日本独特の環境から生まれた。それは二次創作である。自分が好きなオリジナルのコンテンツを使って、派生的な作品を作ることだ。著作権とかも無視するようなグレーなゾーンだが、多くのアマチュアが参加し、コミケやニコ動などの動画共有サービスを通じて楽しんだ。 特徴は、参加している人たちの熱量がものすごいことで…

  • ここはすべての夜明け前

    間宮改衣(まみや・かい) 早川書房 2024.3.10読書日:2024.5.1 (ネタバレあり。注意) 機械の体になる融合手術を受けて歳を取らない身体になったわたしが、亡くなっていった家族の話を語り、本当の自由を得るまでの物語。第11回ハヤカワSFコンテスト特別賞受賞作。 近頃、純文学の分野ではちょっと不思議な感覚を出すためにSF的な発想を加えることが普通になっている。SF的なものが蔓延していると言ってもいい。それ自体は喜ばしいことなのであるが、一方で、これぞSF、と言えるものがなかなか出てこなくなったような気がする。(あんまり小説を読んでいないわしが言うのもなんですが)。 この作品はSFコン…

  • 世界のニュースを日本人は何も知らない5 何でもありの時代に暴れまわる人々

    松本真由美 ワニブックス 2023.12.25読書日:2024.4.30 元国連職員でロンドン在住の松本真由美が、日本人に知られていない外国のニュースや実際に体験したことをもとに、日本人がありがたがっている他の先進国もじつはダメダメで、日本のシステムがいかによいかを主張する本。 うーん、読んでみて、このフォーマットを開発したことに感心した。つまり、あまり良く知られていない外国のニュースや事情を話して読者の好奇心を満たしつつ、外国をディスって、最後は日本スゴイと持ち上げるという。まあ、最近のTVのバラエティによくある形態なんですけど、このフォーマットでシリーズ43万部突破だそうですから、大したも…

  • プロトコル・オブ・ヒューマニティ

    長谷敏司 早川書房 2022.10.25読書日:2024.4.25 (ネタバレあり。注意) バイク事故で右足を失ったコンテンポラリー・ダンサーの後藤恒明は、AI搭載の義足で再起を決意するが、義足はダンサーの思うように動いてくれない。はたして、AIは非言語的なダンスの良し悪しを判断できるようになるのだろうか。 これは面白かった。万人向きとは思わないけど。 いちおう2050年代の近未来の設定なのでSFなのであるが、現代と言われても気が付かないかもしれない。なにしろ、義足がAI付きで、自動運転の車が実用化されているというところ以外は、現代とほとんど変わらないのである。 現代と同じように、芸術家は貧乏…

  • 料理研究家のくせに「味の素」を使うのですか?

    リュウジ 河出書房新社 2023.10.20読書日:2024.5.3 よく「味の素」を使うので批判され、そのたびに反論してきたユーチューバーで料理研究家のリュウジが、味の素についての自分の見解をまとめた本。 味の素の主成分はグルタミン酸ナトリウムで、人間の身体の中に普通にあるアミノ酸だが、なぜか毒物扱いされて、いつの間にか家庭から消えていった。しかし、リュウジさんたち味の素支持派の活動で、徐々に復活しつつある。 リュウジさんは町中華をしていた祖父の影響で、普通に味の素を使っていた。ある時、納豆が祖父の家で食べているよりも美味しくなくて、聞いてみたら、「味の素を入れていないだろう」と言われて使っ…

  • 量子コンピュータ 超並列計算のからくり

    竹内繁樹 講談社 20052.20読書日:2024.4.23 量子コンピュータの計算の仕組みを解説した本。 量子力学関係の話って人間の普通の感覚に反する現象が起きるから、一度分かったつもりになってもすぐにまた分からなくなる。それでまた本を読むことになる。 わしは最近、量子コンピュータについて考えていて、分からなくなった。 量子コンピュータは複数の状態が重ね合わせで同時に存在できるから、超並列で一度にいろいろな状態について計算できるという。それはいいとして、その重ね合わせの状態を測定するとそのうちのひとつの状態しか測定できず、その他の可能性のある状態は測定した瞬間に消えてしまう。そうすると一度の…

  • ようこそ実力至上主義の教室へ

    衣笠彰梧 KADOKAWA 2015.5.13読書日:2024.4.24 (ネタバレはほとんどありませんが、いちおう注意) 平等とはなにか、本当の実力とはなにか、という疑問の答を得るために東京都高度育成高等学校に進学した綾小路清隆は、友達作りに苦労しながら、孤高の美少女、堀北鈴音や誰にでも気配りする櫛田桔梗らとともにDクラスに入る。この学校ではすべてがポイントに換算され、それに応じてクラスごとに毎月配給されるポイントが決定し、テストで赤点を取ると即退学というシステムだった。Dクラスは不良品の集まりと言われて、獲得ポイント0と退学者発生の危機に直面するのだが……。 ラノベはほぼ読まないのだが、こ…

  • 穀物の世界史 小麦をめぐる大国の興亡

    スコット・レイノルズ・ネルソン 訳・山崎由美 日本経済新聞 2023.10.13読書日:2024.4.19 帝国は穀物の通る道にできる、というネルソンが、ロシアとアメリカの小麦の生産とがとくにヨーロッパに与えた影響を述べた本。 たぶんこの本が翻訳されたのは、ウクライナ戦争の影響だろう。原著が発売されたのは2021年で、ウクライナ戦争の直前だった。そして、ウクライナ戦争が起きたとき、多くの人がウクライナの小麦はどうなるのだろう、と心配した。実際、小麦の輸出が滞ってしまい、アフリカ諸国が食料の確保に悩んだことは記憶に新しい。 というわけで、この本はほとんどウクライナとアメリカの小麦の話である。この…

  • 世界の取扱説明書 理解する/予測する/行動する/保護する

    ジャック・アタリ 訳・林昌宏 プレジデント社 2023.10.17読書日:2024.4.10 ジャック・アタリがその驚異的な知識により、2050年の世界の状況を予測し、読者の行動を求める本。 この本では2050年の世界について非常に多くのことが語られているが、大雑把にまとめると、次のようだ。2050年の世界は米国、中国ともに覇権を握れず、世界は中心のない世界になり、紛争が頻発し、非常に不安定になる。一方、地球の気候変動は待ったなしの状態になり、科学技術で人はさらに機械に近づく。危機を避けるためには一人ひとりの発想と行動を変えるしかない。 というふうにまとめると、なーんだ、よくある話じゃん、とい…

  • 汝、星のごとく

    凪良ゆう 講談社 2022.8.2読書日:2024.4.4 (ネタバレあり。注意) 伝統的な家族観を破壊する作風の凪良ゆうが、地方と都会と恋人たちというベタなテーマの物語に、なかなかあり得ない家族構成を絡めることに挑戦した本。 凪良ゆうはたぶん普通の家族というものを疑っている。というか、信じていない。なので、彼女の小説の登場人物たちは普通の家族ではなく、他の人から見ると眉をひそめるような関係の家族を作る。それは拡張した家族とも言えるし、便宜的に家族の名を語ったたんなる共同体とも言える。 この本でそのような家族を作るのは交互に語られる恋人二人のうちの女性の方、井上暁海(あきみ)で、彼女が最後にた…

  • レジリエンスの時代 再野生化する地球で、人類が生き抜くための大転換

    ジェレミー・リフキン 訳・柴田裕之 集英社 2023.9.30読書日:2024.4.8 「限界費用ゼロ社会」で有名なリフキンが、進歩と成長が絶対だった文明が終わり、レジリエンスの時代が来る、と主張する本。 まあ、この手の本は多いわけですが(苦笑)、リフキンが書いたということで読んでみようかと思ったわけです。「限界費用ゼロ社会」はいろんな費用がどんどんゼロに近づき、3Dプリンターでどこでも製造業ができるという話で、当時としてはぶっ飛んだ発想でした。わしはおおいに唸ったものです。 というわけで読みましたが、いまいちでした。理念先行で、それに当てはまるように見える現象をかき集めて並べてみましたという…

  • RISE ラグビー南ア初の黒人主将シヤ・コリシ自伝

    シヤ・コリシ 訳・岩崎晋也 東洋館出版社読書日:2024.4.2 ポートエリザベスのタウンシップ(黒人居住地)出身のシヤ・コリシが、食べるのにも苦労するような境遇からラグビーでチャンスを掴んで成功し、南ア代表チーム、スプリングボックスの主将に選ばれて、2019年ワールドカップで優勝するまでの自伝。 ラグビーが国民的スポーツである南アの代表チームの主将ということになると、単なる成功したスポーツエリートでは済まないのである。あまりにも影響が大きく、もはや南アの社会全体を代表し、国民を導くくらいの気概と高い精神性が求められるのは明らかなのだ。それは例えば、映画「インビクタス 負けざる者たち」に描かれ…

  • 常識として知っておきたい裏社会

    懲役太郎、草下シンヤ 彩図社 2022.4.21読書日:2024.3.31 裏社会のことを語っている人気バーチャルYouTuberの懲役太郎と裏社会の本をいろいろ書いている草下シンヤが裏社会について語る対談形式の本。 ここでは反社会勢力として、ヤクザと半グレ、外国人マフィアが出てくるんだけど、やっぱり伝統的なヤクザの生態が興味深い。 ヤクザは、トップのことをオヤジ、オヤジの彼女のことをアネサン、先輩のことをアニキなどと呼び合って、擬似家族を形成している。そして、上の言う事は絶対で、オヤジが黒いカラスを白といえばそれは白になる。そして、このルールを守らないと報復(逆縁というらしい)される。 なぜ…

  • デジタル奴隷、あるいはデジタルコインマー

    普段から、自分のプライバシー情報がどんどんグーグルに吸い取られているのを自覚していて、明らかにデジタル奴隷状態です。たとえば、わしは現在位置を常にグーグルに報告していて、いつどこにいたのかをグーグルは知っています。ときどき、初めてこの店に入ったなあ、と思っていると、前回何年前にこの店に来ました、とグーグルに教えられて愕然としたりします(笑)。 まあ、それでもいい。おかげでわしは過去の自分がどこにいたかのデータを得ることができるのだから。わしは特定の日の行動をマップ上に描くことができるから、常にアリバイが証明できる。(アリバイを証明しなくてはいけない目に会うかことがあるのか?(笑)) さて、最近…

  • 妄想感染体

    デイヴィッド・ウェリントン 訳・中原尚哉 早川書房 2024.1.15読書日:2024.3.29 (ネタバレあり。注意) 防衛警察(防警)の警部補サシャ・ペトロヴァは、元防警トップだった母親エカテリーナの七光から抜け出そうだと功を焦り、捜査に失敗して、僻地の植民惑星パラダイス−1の調査を命じられる。船長でサシャの元カレのパーカー、医師のジャン、ロボットのラプスカリオンとパラダイス−1の軌道に到着すると、いきなり攻撃を受ける。パラダイス−1の軌道上には100隻以上の船が惑星への接近を妨害しているのだった。さらにペトロヴァたちはその乗務員やAIが精神寄生体に感染していることを発見する。ペトロヴァは…

  • 私労働小説 ザ・シット・ジョブ

    ブレイディみかこ 角川書店 2023.10.26読書日:2024.3.18 (ネタバレあり。注意) イギリスの労働者階級についていろいろ教えてくれるブレイディみかこが、自分の経験したシット・ジョブに基づいて書いた短編小説集。 全般的にとても面白かったです。こういう体験を読むのはとても興味深い。ブレイディみかこはたくさんのシット・ジョブの経験をしたんですね。ちなみにシット・ジョブの定義は、お金のためだけにする低賃金の報われない仕事。 小説の形ですが、ブレイディみかこの半生がなんとなくわかるような構成になっています。ということで、知りませんでしたが、ブレイディみかこって大学を卒業していなかったんで…

  • 未来から来た男 ジョン・フォン・ノイマン

    アナニヨ・バッタチャリヤ 訳・松井信彦 みすず書房 2023.9.19読書日:2024.3.21 ハンガリー出身の数学の天才で、数学の力を量子力学、コンピューター、ゲーム理論、AIなど、純粋数学の枠を越えて貢献し、手がけた分野のすべてがその後大きく発展して、いまだに現代に大きな影響を及ぼして、未来から来た男と呼ばれたジョン・フォン・ノイマン(1903ー1957年)の評伝。 わしはなぜかジョン・フォン・ノイマンとクロード・シャノンをごっちゃにしてしまう。どちらも情報工学に関係があるからだろう。今回ジョン・フォン・ノイマンの評伝を読んだから、あとはシャノンの伝記を読めば、もうごっちゃになることはな…

  • 怪獣保護協会

    ジョン・スコルジー 訳・内田昌之 早川書房 2023.8.15読書日:2024.3.17 (ネタばれあり。注意) パンデミックで職を失いフードデリバリーをしていたジェイミーが、偶然得た仕事は、パラレルワールドのもう一つの地球で怪獣を保護する仕事だったが……というおばかSF。 スコルジーって「老人と宇宙(そら)」という本で有名なんだそうだ。知りませんでした(笑)。もともと小説には疎いが、たまに読むSFについてすら、ほとんど知らないんだね、わし。 まあ、それは置いといて、この人SFマニアらしくて(そうでしょうね)、スタートレック愛にあふれた作品とかも書いているんだとか。それで日本の怪獣映画について…

  • イーロン・マスク

    ウォルター・アイザックソン 訳・井口耕二 文藝春秋 2023.9.10読書日:2024.3.13 著名人の伝記を次々発表するウォルター・アイザックソンの最新作であるイーロン・マスクの伝記。 ウォルター・アイザックソンといえば、著名人の伝記を次々発表していて、いちばん有名なのはアップルの「スティーブ・ジョブズ」だろう。この本のおかげで、「現実歪曲フィールド(or空間)」という言葉が一般化してしまった。 最近では「コードブレーカー」という本でキャスパー・キャス9でノーベル賞を取ったジェニファー・ダウドナを主人公にノンフィクションを発表している。 驚くのは、主人公の周囲にいる人のほとんどすべての人に…

  • 日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか 増補改訂版『日本”式”経営の逆襲』

    岩尾俊兵 光文社 2023.10.30読書日:2024.3.4 日本発の経営戦略がアメリカ経由で逆輸入され、もともと持っていた経営戦略を日本企業が捨てている現状を憂え、日本自身が世界に広めなければいけないと主張する本。 日本で流行っているアメリカ由来の経営戦略には、もともと日本発のものがたくさんあるんだそうだ。なのに、日本人自身がそれに気が付かずにありがたがっている状況だという。 たとえば次のようなものだ。 (1)両利きの経営:既存のビジネスでしっかり稼ぎながら、新分野の探索を行う経営。提唱者のオイラリー教授とタッシュマン教授は、両利きの経営の典型例は「トヨタ生産方式」だと述べている。(ただし…

  • 同志少女よ、敵を撃て

    逢坂冬馬 早川書房 2021.11.25読書日:2024.2.21 (ネタバレあり。注意) 第2次世界大戦、モスクワ近くのイワノフスカヤ村にドイツ軍が現れ、村人が虐殺される。一人、生き残った少女セラフィマは、もと女性狙撃兵イリーナに導かれ、狙撃兵として訓練を積み、ドイツ軍への復讐を誓うのだが……。 2021年アガサ・クリスティ賞受賞作であり、2022年本屋大賞受賞作である。あんまり小説は読まないわしではあるが、まあ、読んでみようかな、という気になり、遅ればせながら手にとってみた次第。 ところで、第2次世界大戦の独ソ戦に参戦した女性兵士の話となると、どうしてもスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチが…

  • 再び窓の世界へ

    わしはあまりウィンドウズが好きではない。とはいっても、マックはもっと性に合わない。わしは垂直統合がそもそも嫌いなのだ。それならウィンドウズのほうがまだまし。そして、わしはCPUをぶん回すよりも、非力なCPUでサクサク動くことを喜ぶタイプなのだ。 そんなわしが数年前に3万円のChromebookを買った。このマシン、acer製だが、なんとCPUは格安スマホに使われているようなものだった。しかもタッチパネル機能付き。つまり、ざっくりキーボード付きアンドロイドタブレットのようなものだったのである。 しかしながら、大変サクサクよく動く。わしはすぐに気に入ってしまった。それにわしはグーグルの環境やアプリ…

  • 日本はデジタル封建制を楽に乗り越えられると信じる理由

    「新しい封建制がやってくる」では、超富裕層と有識者のエリート階級とそれ以外のデジタル農奴との階級が固定化して、「デジタル封建制」とか「ハイテク中世(by堺屋太一)」の時代が来るという。自由と民主主義を愛する人たちにとってはとんでもない事態で、危機感を抱くのはとても理解できる。 だが、この本を読んで、これだったら日本は大丈夫なんじゃないか、というよりも日本こそ次の時代のライフスタイルをリードするんじゃないか、という気がしてきたのである。 なにより、この本の著者自身が、最後にこう言っているのである。 「日本は、たとえ経済の成長が止まっても、その代わりに精神的なものや生活の質の問題に関心を向けられる…

  • 新しい封建制がやってくる グローバル中流階級への警告

    ジョエル・コトキン 訳・寺下滝郎 解説・中野剛志 東洋経済新報社 2023.11.14読書日:2024.2.24 一握りの超富裕層が世界の富の大半を握り、グローバル社会のなかで中流層は没落してデジタル農奴となり、このような状態が世襲化して引き継がれる結果、社会的な流動性がなくなり、階級が固定化して、中世の封建制に似た世界がやってくると警告する本。 まあ、このような格差が広がって、しかもそれが世襲されて固定化するという話は今では珍しくないのだが、それを中世の封建制と比較しているところが新しい。 ヨーロッパでローマ帝国崩壊後に封建制が誕生した経緯は次のようなものだったそうだ。ローマ帝国が滅びると、…

  • なるようになる。 僕はこんなふうに生きてきた

    養老孟司 聞き手・鵜飼哲夫 中央公論社 2023.11.25読書日:2024.2.25 養老孟司が自分の過去を振り返った語り書きの自伝。 養老孟司って、わしにとっては「バカの壁」で突然出てきた人のように見えていたけど、なぜ東大の解剖学の先生がこんな感じで世の中に出てきたのかさっぱり分からなかった。でも本当に養老先生って、子供の頃からずっとこんな感じだったんだね。笑える。東大引退後の虫を採っている養老先生の姿をテレビで見て、母親が、「お前は子供の時からちっとも変わっていない、安心した」と言ってたのだそうだ。 子供の時と同じように、いまでも多くの時間を集めた昆虫の標本作りに費やしている。本が売れて…

  • 恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ

    川上弘美 講談社 2023.8.22読書日:2024.2.4 アメリカからの帰国子女の作家、八色朝見が、アメリカ時代の友人たちとゆるく長い付き合いを続けながら、老境にいたる心境を綴ったもの。 小説としては、初・川上弘美である。エッセイは「私の好きな季語」というのを読んだことがある。「センセイの鞄」は小泉今日子の映画で見ただけである。で、小説家の川上弘美はよく知らなかったのでウィキペディアで調べてみると、なんともともとSF系の人で、現実と幻想が交じるタイプなんだそうだ。いまでは純文学はSFっぽくないといけないかのようだから、SF出身というのは、まあいいのかもしれない。あまりにSFやファンタジーの…

  • アガサ・クリスティ とらえどころのないミステリの女王

    ルーシー・ワースリー 訳・大友香奈子 原書房 2023.12.25読書日:2024.2.23 遺族が提供した資料を交えたアガサ・クリスティの最新評伝。 母親がミステリ好きだったこともあって、わしの実家には結構ミステリがあったので、アガサ・クリスティももちろん読んだ。たぶん最初に読んだのは「アクロイド殺し」だったと思う。で、面白かったかと言えば、あまり面白くなかった。わしはミステリを読んでも、面白いと思ったことはほとんどない。(例外はシャーロック・ホームズ。これは気に入った)。 そんなわしでも、アガサ・クリスティがいまだ人気だということは知っている。ほとんどの作家に言えることであるけれど、ミステ…

  • 裁判官の爆笑お言葉集

    長嶺超輝 幻冬舎 2007.3.30読書日:2024.2.18 裁判所の傍聴マニアが、裁判官の印象に残ったお言葉をまとめた本。 爆笑と書いてあるけど、それはほとんどない。いくつかクスッと笑えるものがあるだけだ。裁判なんておおむね深刻な状況だから、そもそもそんなに笑えるものにはなりえないのだ。 というわけで、題名に偽りありだなあ、と思っていたのだが、読んでいて古い事例が多すぎるなあと気がついた。不審に思って、奥付をみて驚いた。この本は初版が2007年と古い。そして、わしが読んでいた本は2023年の第33版だったのだ。 えーっ! ネットで調べてみると、本書は累計35万部以上、シリーズ累計で100万…

  • ナチュラル・ボーン・ヒーローズ 人類が失った”野生”のスキルをめぐる冒険

    クリストファー・マクドゥーガル 訳・近藤隆文 NHK出版 2015.8.30読書日:2024.2.7 「BORN TO RUN」で、人間はもともと走るようにできていることを語った著者が、その他に人間がもともと持っている野生の能力をクレタ島の人たちの身体能力を中心に語った本。 「BORN TO RUN」ではウルトラマラソンに挑戦する人たちが出てきて、人間はなぜこんなに走れるのかと問い、もともと人間は走って動物が熱中症で動けなくなるまで追いかけるような猟をしていたということを語る本だった。(そしてもともと裸足で走れるような身体構造をしているのだから厚底シューズは必要ない、とかも)。 でも、人間の失…

  • 万物の黎明 人類史を根本からくつがえす

    デヴィッド・グレーバー デヴィッド・ウェングロウ 訳・酒井隆史 光文社 2023.9.30読書日:2024.2.17 農業の始まりが私的所有と不平等を生み、ヒエラルキーが形成され、都市や国家を生んだというビッグヒストリーの思い込みを破壊し、近年の考古学や人類学の研究の進展から、人類は過去にいろいろな社会を自由に実験しており、今後も社会的な実験を行う自由を放棄する必要はないと主張する本。 この本を読んで、なんでデヴィッド・グレーバーは亡くなっちゃったんだろう、と本当に思う。生きていれば、もっといろいろなことを教えてくれただろうに。彼はこの本を完成させて、3週間後に亡くなったのだそうだ。でも、この…

  • 検閲官のお仕事

    ロバート・ダーントン 訳・上村敏郎、矢谷舞、伊豆田俊介 みすず書房読書日:2024.2.8 フランス、英領インド、東ドイツの検閲の実際を調べて、検閲とはなにか、検閲官はどんなふうに検閲という仕事に関わったのか、ということを比較した本。 ロバート・ダーントンの名前を聞いたのは、「猫の大虐殺」以来である。わしもこの本を読んだ覚えがある。でも細かい中身はすっかり忘れてしまった(笑)。なにしろ読んだのは20世紀だからなあ。(なお、新装版が2007年に出ております)。 まあ、細かい中身は忘れたけど、とりあえず、ダーントンの得意技は、無味乾燥な資料のなかから生きている人間の息遣いを復活させることで、今回も…

  • ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う

    坂本貴志 講談社 2022.8.20読書日:2024.1.28 定年後、収入は大幅に減るが同時に支出も減るため生活には困らず、月に数万〜10万円程度の追加収入があれば趣味をおおいに楽しむことができ、ストレスがほぼないため幸福な生活を送る人が大半だと報告する本。 定年後にもらえる年金額を知って、あまりの少なさに愕然とし、このままでは生活できないと苦悩する人がいる。だが、それは養うべき家族を抱えている現状とくらべているからで、定年後は子供が独立し、教育費などがかからなくなるため、必要な生活費が大幅に減少するから心配ないのだという。とくにすでに自宅を確保している人にとってはそうである。 そして大半の…

  • 「反応しない練習」「Chatter」を読んで思ったこと

    最近、「反応しない練習」と「chatter」を続けて読んだ。 偶然、同時期に読んだのだが、これを読んで思ったことがある。 じつはずっと、わしには大きな悩みがあった。その悩みというのは、昔のことが突然思い出されて、心が苛(さい)まされるという悩みである。 まあ、たぶん、誰にでもこういう事はあることは理解している。しかし、どうもその頻度が自分でも呆れるくらいに多いのである。なんだか数分おきに起きていたような気がする。そして、そのたびに声をあげてしまうほどに心が苛まされた。 その内容は、直近に自分が起こした恥ずかしいできごとはもちろんだが、もう何十年も前のちょっとしたことも思い出される。そのちょっと…

  • Chatter(チャッター) 「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法

    イーサン・クロス 訳・鬼沢忍 東洋経済新報社 2022.12.4読書日:2024.1.26 頭の中では自分の言葉が常に聞こえているが、その声がネガティブなループに入り脱け出せなくなったときをチャッターと名付け、どうすればチャッターから抜け出せるかを指導する本。 誰しも心がネガティブループに入ってしまった経験はあるだろう。何らかの原因で落ち込んだり、自分に嫌気が差したりする。すると、自分を非難する声が自分の中から湧き出てくる。その声を聞くと、さらに気分が落ち込んで、どんどんネガティブな気分が増幅して、心の中が嵐になってしまう。あるいは、何かに怒りを覚えたり、恐怖を覚えたりしても、ネガティブループ…

  • 「若者の読書離れ」というウソ 中高生はどのくらい、どんな本を読んでいるのか

    飯田一史 平凡社 2023.6.15読書日:2024.1.22 2000年代に入ってから中学生の読書は増えており、読書離れとは言えない状況であり、さらに読書の内容も以前と異なりラノベ中心ではなくなっていることを報告した本。 読書が急回復している背景は、「朝の読書」などの読書運動の成果なんだそうだ。きっかけは、OECDの学力調査で日本の子どもの読解力の順位が8位まで落ちて、その原因が読書量が少ないことだったかららしい。 このような国際比較があると途端に、なんとかしなくては、ということになるのが日本なので、読書運動が盛り上がって、その結果8割以上が本を読み、読書量も増えて、読解力の順位も回復したら…

  • 太子の少年 令和言葉・奈良弁で訳した万葉集②

    佐々木良 万葉社 2023.7.21読書日:2023.1.21 人気となった「愛するよりも 愛されたい 令和言葉・奈良弁で訳した万葉集①」の続編。 今回は聖徳太子と飛鳥京の時代が中心だそう。聖徳太子の歌が1首だけ載ってるんだって。それがこれ。 家ならば 妹(いも)が手まかむ 草枕 旅に臥(こ)やせる この旅人(たびと)あはれ 訳:旅人が お腹をすかせて倒れている 家にいたなら 恋人と寝ていたんやろうに… 悲しいなあ… ふーん。聖徳太子ってやっぱり聖人なんですねえ。 他に面白いと思ったものをいくつか。 なかなかに 人とあらずは 酒壷に なりにてしかも 酒に染みなむ(大伴旅人) 訳:てゆーかさー …

  • リアリティのダンス

    アレハンドロ・ホドロフスキー 訳・青木健史 文遊社 2012.10.25読書日:2024.1.18 映画、演劇、芸術などの分野で活躍する奇才のアレハンドロ・ホドロフスキーが、スピリチュアルな世界を探求し、リアリティが目に見えないところで繋がっているという、現実が揺らめいているような人生を振り返る本。 アレハンドロ・ホドロフスキーのことはあまり良く知らなかった。たぶん本人が主演している「エル・トポ」というカルト的な人気のウェスタンは遠い昔に見たことがあると思う。だが、その程度だった。 ところが最近、「ホドロフスキーのDUNE」というドキュメンタリーを見て、すっかり感心してしまった。これは1975…

  • 日本の歪み

    養老孟司 ✕ 茂木健一郎 ✕ 東浩紀 講談社 2023.9.20読書日:2024.1.16 日本は生きづらい国であり、それは日本の歪みに由来するのではないかと、三人の賢人が鼎談する本。 三人が考える日本の歪みとはなにかについては、目次から明らかである。「先の大戦」「明治維新と敗戦」「憲法」「天皇」などである。つまり日本が明治維新以来やってきたことがなにも総括されずにそのまま残っており歪みとなっている、ということなのだろう。 憲法9条で戦力は持たないとなっているのに、明らかな戦力である自衛隊を保持しているのだから、それこそ歪みそのものなんだけど、問題はもちろん戦力を保持してることではない。戦力を…

  • 反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」

    草薙龍瞬 KADOKAWA 2015.7.27読書日:2024.1.14 心は常に何かに反応しているが、そのほとんどは実際にはムダなもので、ムダな反応をしないようにすれば悩みがなくなり心が軽くなると主張する本。 この本は2015年の本だが、未だに売れ続けているベストセラーである。多くの人が、この本に感銘を受けたことが分かる。わしも感銘を受けた。 そもそも、わしは仏教が宗教だと聞くと違和感を覚える。たしかに法華経以降の大乗仏教はそうだと思うが、本来のブッダがとなえた仏教は、哲学とか心理学、あるいはカウンセリングに近いものだと思う。現実をどのように見るかという考え方の一種なのだ。 ブッダのいうには…

  • 一生お金に困らない家投資の始め方

    永野彰一 クロスメディア・パブリッシング 2022.12.1読書日:2024.1.12 全国の空き家を100万円以下、できれば1円で手に入れてリフォームすれば、自分が住んでも良いし、貸しても良く、3件以上持てば累積的に資産が増えて一生の財産になると主張する本。 永野彰一さんのことは以前「一生お金に困らない山投資の始め方」で知ったわけだが、そのなかでも家投資についても述べられていた。今回はその部分のみをくわしく解説している。 基本は、全国の空き家で相続などで処理に困っている空き家が多数あるので、そのなかから若干のリフォームで貸し出し可能な物件を格安(100万円以下)で手に入れて、リフォームして、…

  • 宇宙の果ての本屋 現代中華SF傑作選

    立原透耶[編] 新紀元社 2023.12.13読書日:2024.1.19 (ネタバレあり。注意) 中華SFのマニア向けのアンソロジー15編。 やっぱり今1番面白いSFは中国かもしれない。読んでいて感心した。21世紀に入って大きく発展した中国の、科学に対する楽観的な気持ちがSFの発展に寄与しているような気がする。先進国ではすでに行き着くところまで行ってしまって、このようなテクノロジーに対する寄り添い方はもうできないんじゃないだろうか。 どのへんでそう思うかというと、個人の科学者がいとも簡単にあっと驚くような技術を開発するという設定に、なんの躊躇もないところ。もう日本ではこんな技術が可能などと書く…

  • アルツハイマー病研究、失敗の構造

    カール・へラップ 訳・梶山あゆみ みすず書房 2023.8.10読書日:2024.1.10 アルツハイマー病は、脳に蓄積したアミロイドが原因とするアミロイドカスケード仮説が根拠不確かなままにセントラルドグマ化して、この仮説以外は認められない状況が続き、治療方法の研究が20年間以上停滞したと、現役の研究者が報告する本。 読書をしていると、巡り合った喜びを感じることがあるが(せいぜい年に2,3回)、この本もそれを感じた。とても面白い。 内容としては、失敗学の部類に入るのだろう。たとえば帝国陸軍の失敗とか、そんな感じの。そして、人間による失敗というのはまことにどれも似たような経過をたどるのだなあ、と…

  • 母がゼロになるまで 介護ではなく手助けをした2年間の話

    リー・アンダーツ 河出書房新社 2023.9.30読書日:2024.1.8 発達障害でまともに生活できない母を、死ぬまでの2年間手助けしたことをつづった本。 痴呆になると生活能力はなくなり介護が必要になるけど、発達障害の場合はなんか微妙だ。いろんなケースがあるだろうけど、これが生活能力のないというレベルだと、老後は確かに大変なことになるのは目に見えている。 著者の母親の場合は、大変なことになって初めて自分の母親が発達障害ということに気がついたくらいの微妙な感じだ。とりあえず母親は離婚してシングルマザーになっても、娘を高校までは養っているのだから、それなりにやっていけてたはずなのだ。年金ももらっ…

  • ヒトラーの馬を奪還せよ 美術探偵、ナチス地下世界を往く

    アルテュール・ブラント 訳・安原和見 筑摩書房 2023.7.30読書日:2024.1.2 ヒトラー総統の官邸にあり連合軍の空爆により破壊されたと思われた馬の彫刻が、70年後の2015年に発見された経緯を述べた本。 美術界は魑魅魍魎の世界で、有名な作品が、今どこにあり、正式な持ち主が誰か分からないことも多い。最近では、フリーポート(保税倉庫)というグレーゾーンの領域に美術品が次々に飲み込まれて、二度と世間に出てこないのではないかと言われているものも多数ある。 www.hetareyan.com でも、こういうところにある美術品って移動させやすい大きさのものがほとんどだろう。ところが今回の捜索の…

  • 未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること

    河合雅司 講談社 2022.12.20読書日:2023.12.26 日本では少子高齢化で人口が減るという状況なのに、それに対する備えができていないとし、実際に何が起きるのかをリアルに予想し、企業が進めるべき未来の戦略を提示した本。 2部構成になっていて、第1部では実際に人口減少で各業界に何が起きるのかを予想している。これが大変な力作で、各業界の統計や業界ごとの特色をあぶり出して、具体的に示してくれる。 例えば、人口減少で自動車産業で起きることといえば、すぐにドライバーの不足が思い浮かぶだろう。たしかにバスやタクシーの運輸関係ではすでに地方でドライバーの不足が声高に叫ばれている。しかし河合さんに…

  • 99パーセントのための社会契約 会社、国家、市民の未来

    アレックス・ロス 訳・井田光江 早川書房 2023.4.20読書日:2023.12.25 社会契約とは、企業、政府、市民の三者で社会にバランスをもたらすための約束であるが、いまほとんどの国でそのバランスが崩れており、2020年代の選択が重要になっていると主張する本。 この手の本はいまたくさん出版されている。しかし、たいていは企業、政府、市民(労働者)のそれぞれで断片的に語られていることが多い。ここで、社会契約という立場から三者のバランスを考え直すべきだ、という発想はあまりないと思う。しかも、議論は具体的でとても読みやすく、読んでいて飽きない。 簡単に内容を書いていくと次のようである。 1970…

  • 人はどう死ぬのか

    久坂部羊 講談社 2022.4.1読書日:2023.12.21 医者で作家の久坂部羊(くさかべよう)が、人が死ぬということのリアルを教えてくれる本。 人が死ぬときに立ち会うと、医者でも最初は動揺するんだそうだ。しかし、場数を踏んでいくうちに慣れてくるという。不謹慎に思うかもしれないけど、実際に慣れていくという。つまり、人が死んでいく様子には、一定のパターンがあるのだ。そして、人が死ぬということは、特別なことではなく、普通のことで、恐ろしいことでも、いやなことでもないという。 これだ。わしも、死に対しては、このくらいの感覚がぜひ必要だと思う。 所詮、わしらが目にする死は他人の死なので、あまり深く…

  • 社会を変えるには

    小熊英二 講談社 2019.8.1読書日:2023.12.19 デモなどの社会運動が好みという社会科学者の小熊英二が、ギリシャ時代からの哲学を振り返り、運動をして本当に社会が変わるのか、ということを述べた本。 日本の学者ってものすごく頭が良いと思う。教養や学術的なことをまとめさせると、ものすごくよく分かりやすかったりする。ところが、それが自分の意見を述べるという段になると、なんとも力不足なのだ。 この本もギリシャ時代からの哲学の流れを述べるところでは、ものすごくよく分かる。しかし、この本のテーマである「社会を変えるには」に対する結論としては、以下のようだそうだ。 「自分がないがしろにされている…

  • エルドアンが変えたトルコ

    間寧 作品社 2023.6.20読書日:2023.12.19 トルコの公正発展党(AKP)のエルドアンは2002年に政権を取って以来、20年以上に渡って政権を保持しているが、なぜそれが可能だったのかについて、後光力、庇護力、言説力が優れていたからだと主張する本。 最近トルコがウクライナ戦争や中東情勢について存在感を増しているので、トルコの一般的な知識を得ようと思って本書を手に取ったのだが、意外にまじめに数字を扱って説明するような本格的な研究書だったので、ちょっと戸惑った。しかも、そもそも著者の興味は長期政権が成り立つ条件で、日本も含まれており、トルコは分析のサンプルの扱いだ。でもまあ、特に問題…

  • 大規模言語モデルは新たな知性か chatGPTが変えた世界

    岡野原大輔 岩波書店 2023.6.20読書日:2023.12.18 chatGPTなど大規模言語モデルがどのような構成になっているのか、さらに大規模言語モデルの結果分かったことを分かりやすく解説した本。 chatGPTが驚異的な文章生成能力を確保していることについてはいろいろ言われているが、いまいち具体的にどう実現しているのか、わしには理解できなかった。いわく「注意機構」とか「トランスフォーマー」という単語が出てくるが、これらは具体的に何を表しているのだろうか。 この本は薄いながらも(たった130ページ)、しかも上記の特徴ある仕組みについても10ページ程度しか説明していない。でもこれまで読ん…

  • 人生は苦である、でも死んではいけない

    岸見一郎 講談社 2020.3.1読書日:2023.12.12 人は何もしなくても生きているだけで価値があり、今をありのままで生きることで幸福になれると主張する本。 生きているだけで価値があるとはどういうことだろうか。そんなこと説明できるんだろうか。 まずは赤ちゃんである。赤ちゃんは自分では何もできないが、生きているだけで親はありがたいと思う、という。これは、まあいいだろう。 では、大人はどうだろう。大人でも同じことだという。 もしある人が倒れて病院に運ばれたら、家族や友人はあわてて病院に駆けつけて、生きているだけでもありがたいと思うだろう。入院した人が寝ているだけで何もできないからと言って、…

  • 私とは何か 「個人」から「分人」へ

    平野啓一郎 講談社 2012.9.20読書日:2023.12.8 作家の平野啓一郎が、人間とは「個人」という分けられないひとつの人格ではなく、相手によって別の人格がたち現れる「分人」の集合体であり、こう考えることで多くの人間関係が理解でき、悩みも解決すると主張する本。 相手によって自分の態度が変わる(変える)ことは誰でも経験していることであるから、分人が存在することには特に違和感はない。しかし著者の主張は、ひとりの特定の人格をもつ個人がいろいろな側面を見せている、ということでない。そうではなくて、ひとには特定の人格という核になるものは存在せず、その時どきに見せているいろいろな側面自体がひとつひ…

  • エンタの巨匠 世界に先駆けた伝説のプロデューサーたち

    中山淳雄 日経BP 2023.1.30読書日:2023.12.12 エンタメ社会学者を自称する著者が、日本を席巻するコンテンツを生み出したプロデューサーたちにインタビューし、その思考回路を解明しようとした本。 著者がこんな本を書こうと思ったのは、日本のエンタメが低迷していると映っているかららしい。日本が今稼いでいるのは、ポケモン、遊戯王、ウルトラマン、ガンダム、ドラゴンボールなどの20世紀のレガシーばかりで、21世紀になってから世界的なヒットを生み出していないという。 そうだっけ? 「進撃の巨人」とか、21世紀にも世界を席巻したコンテンツはそれなりにあるような気がするけど? まあ、わしが知って…

  • 2035 10年後のニッポン ホリエモンの未来予測大全

    堀江貴文 徳間書店 2023.6.30読書日:2023.12.3 ホリエモンが58のトピックスについて未来の輪郭を手っ取り早く示す本。 うーん。なんか意外性がない。既視感に満ち溢れている。まるでChatGPTに未来予測のトピックスを書かせて、それに少し手を加えたという感じだ。 というか、ホリエモンはそんなふうに原稿作成にChatGPTを使っていると、この本に書いてある。この本は本当にそうやってできたんじゃないのか、という気がしてきた。(苦笑)。 やはり未来予測という限りは、意外性がほしい。それが当たっているとしても、そりゃそうだろう、というものにはあまり価値はない。ウィーン氏のびっくり大予想が…

  • 「言語哲学がはじまる」を読んで考えたこと

    「言語哲学がはじまる」を読んでいろいろ思うところがあったので、それを書いておこうと思う。 わしは哲学者でもないし、脳科学者でも機械学習のエンジニアでもないけど、両者はかぶるところもあるし、ちょっと違うところもあるようにも思った。それでその辺について考えたことをまとめてみようと思う。 まず、わしは脳の処理というのは基本的に空間を処理する機能だと思う。具体的にはマップを作っているのだと思う。この辺については以下の本に詳しく書いてある。 www.hetareyan.com このようなマップを作る機能は、最初は、動物が空間を把握し、物体の形を把握し、自分が正確に動くために必要だから発達したのだろう。言…

  • 言語哲学がはじまる

    野矢茂樹 岩波新書 2023.10.20読書日:2023.11.20 19世紀末から20世紀にかけて、フレーゲ、ラッセル、ヴィトゲンシュタインらがたどった言語哲学の潮流について、著者の考えを述べた本。 言語とは不思議である。人は初めて聞いた(読んだ)文でもその内容を理解できるし、いくらでもこれまでなかった新しい文を生み出すことができる。これはなぜなんだろうか、というのが著者の問いである。 現代の言語哲学を始めたのはフレーゲという人なんだそうだ。この人の画期的なところは「文脈原理」という考え方を導入したことだ。文脈原理とは、文の意味との関係においてのみ語の意味は決まる、と考えることである。 フレ…

  • イラク水滸伝

    高野秀行 文藝春秋 2023.7.30読書日:2023.11.23 チグリス・ユーフラテス川の河口の湿地帯はメソポタミア文明が興った地域であるが、5千年の昔から現在に至るまで敗れた者や迫害された者が逃げ込む地域でもあり、辺境作家の高野秀行が中国の水滸伝になぞらえてその実情を報告する本。 なんといいましょうか、既に全てのことがネット上に答えがあるんじゃないかと思える現代で、なぜか誰も答えを知らないポッカリと空いた真空地帯がこの地球上に存在しているのです。高野秀行はこの真空地帯を見つける名人で、本当にその嗅覚には感心する。目の付け所がタカノである。「謎の独立国家ソマリランド」にも驚いたけど、今度は…

  • 無人島、研究と冒険、半分半分

    川上和人 東京書籍 2023.9.10読書日:2023.11.18 人の手がまったく入っていない文字通り手付かずの無人島、南硫黄島での10年ごとの生物調査に赴く研究者たちの奮闘の記録。 この本に書かれているのは2007年と2017年の調査であるが、わしは2017年の調査の様子をNHKのドキュメンタリーで見ている。なので、南硫黄島の独特の状況はなんとなく理解している。 やはり、浜がほとんどなく、海から垂直な崖がいきなり立ち上がっている独特のフォルムが印象的で、調査のためには崖をロッククライミング並みに登らざるを得ず、本当に研究に来ているのか登山に来ているのか分からない状態である。 というわけで、…

  • ドゥルガーの島

    篠田節子 新潮社 2023.8.20読書日:2023.11.14 (ネタバレあり。注意) 建設会社に勤めているもうすぐ50歳になる男が、インドネシアで未知の文化遺産に出会い、これを人生後半の生きがいにしようと奮闘する話。 篠田節子って名前だけ知っていたけど、どんな作家かまったく知らなかった。オカルトとSF、ミステリーが主な活動領域なんだそうだ。へー、知らなかった。そしてたくさんの賞を受賞している。こっちも知らなかった。どうも申し訳ありません。 というわけで、初・篠田節子ですけど、この作品が初めてで良かったのかしら。まあ、縁というものもありますし、良かったのでしょう。 どうして篠田節子の主たるフ…

  • ナマコは平気! 目・耳・脳がなくてもね! 5億年の生命力

    一橋和義 さくら舎 2023.8.10読書日:2023.11.11 失恋の結果、ナマコの研究を始めたという著者が、ナマコの魅力を物語とコラムでつづった本。 むちゃくちゃ簡単な生物でも、生物って分からないことだらけ。なので、もちろん、ナマコも謎だらけです。 ストレスをかけると全身が溶けたり、半分にしてもそれぞれが再生して2匹になったり、捕食者に襲われると内蔵を出したり皮を脱いだりして捕食者がそれを食べている間に逃げたり、強力な毒を持っていたり、むちゃくちゃ粗食で生きていけるから浅い海から深海までいろんな海に住んでいたり、おしりの穴に魚が住み着いていたり、棘皮(きょくひ)動物で仲間にはヒトデやウニ…

  • わたしたちが光の速さで進めないのなら

    キム・チョヨプ 訳・カン・バンファ ユン・ジヨン早川書房 2020.12.15 (ネタバレあり。注意) 1993年生まれのキム・チョヨプが2017年の18歳のときに出した、かなり衝撃的なSF短編集。 これはもしかしたら最近読んだSF短編集の中でいちばん面白かったかもしれない。圧倒的な傑作「息吹」を除けばだけど。でも、あれは表題の「息吹」以外は質にばらつきがあったように思う。でもこの短編集はどれも面白かった。 作者が工学系の学生なだけあって、科学的な知識に問題はない。意外な科学技術はほぼ出てこないし、予想可能な科学技術の進歩(空想、スペキュレーション)の範囲内で描いている。だからここで描かれた世…

  • なぜヒトだけが老いるのか

    小林武彦 講談社 2023.6.20読書日:2023.11.2 動物は死ぬ瞬間まで老いない事が多いのに、ヒトだけが老いるのは、老いることで種としてメリットの方が多かったからだと主張する本。 動物は老いないんだそうだ。たいていの動物は死ぬ直前までばりばりの現役で、最後の瞬間に急速に老いてそのまま死んでしまう。著者が例としてあげているのはサケで、生まれた川をさかのぼって産卵場所に来るときまではまったく元気なのに、産卵と受精を終えると老いのスイッチが入って急速に衰えて死んでしまう。それはまさしくシャットダウンという表現がふさわしいくらいだ。子孫を残すという役割を終えると、それ以上生きていてもしょうが…

  • 電鉄は聖地をめざす 都市と鉄道の日本近代史

    鈴木雄一郎 講談社 2019.6.1読書日:2023.10.31 私鉄の電鉄は都市と郊外とを結んで、郊外では住宅地を売り、住宅地の通勤、通学の客を運ぶことをビジネスモデルにしていると思われているが、鉄道を作った最初のビジネスモデルでは寺社を中心とした参詣と物見遊山の客を運ぶことだった、ということを明らかにした本。 何もないところに電車を走らせ、沿線を高級住宅地として売り出し、その郊外の住人を通勤通学の客として毎日運ぶというビジネスモデルは、阪急電鉄の小林一三が始めたものと言われ、東京では東急電鉄をはじめ、各社がそれを真似した……ということを、わしも信じていたが、これはまったくの誤解であったこと…

  • 賃金の日本史 仕事と暮らしの一五〇〇年

    高島正憲 吉川弘文館 2023.9.1読書日:2023.10.30 賃金とは生活そのものであるから、賃金を通して過去の生活の水準や質を考えるとともに、その分析方法に種々の方法があることを伝える本。 そもそも古代の賃金をどうやって測定するのか、とか、その水準や質をどう判断するのか、という疑問はもっともなことで、この本の中で主に述べられているのはそういう話である。 しかしわしがもっとも驚いたのは、昔は一度賃金が決まると、長いこと、それこそ100年、200年というスパンで、賃金が変わらないことだった。 たとえば14世紀から16世紀の後半まで、熟練職人の賃金はほぼ100文に、非熟練職人の場合はほぼ10…

  • トヨタのEV戦争 EVを制した国が、世界の経済を支配する

    中西孝樹 講談社ビーシー 2023.7.25読書日:2023.10.25 トヨタは1000万台の車を売り上げる巨大企業であるが、EV化への事業構造転換は、過去のしがらみなく最初からEVを前提に事業を組み立てられるテスラ、BYDなどの新興企業と比べてはるかに難しく、そのEV化戦略をアナリストの立場から追った本。 トヨタがEV時代を生き残れるのかどうかというには日本経済の帰趨に直結するので、この本を手にとって見たのである。で、トヨタは生き残れるのだろうか? この本を読んで分かったのは、さっぱり分からん、ということである。EV化への道はあまりにいろんなことが不明であり、なにか下手を1回でも打てば、ト…

  • 新冷戦の勝者になるのは日本

    中島精也 講談社 2023.6.19読書日:2023.10.27 グローバリゼーションの間、日本に不利だった状況が新冷戦の世の中になってすべて逆転し、日本は勝者になると主張する本。 ほんの数年前まで、わしは日本の景気が良くなるという本は好んで読んでいたものである。もう日本にいいことが書いてあればなんでもいいくらいの勢いだったのである。(多少オカルトでもオーケーなくらい(笑))。 しかし、現在、日本に追い風が吹き始めると、いったいこれがどのくらいの規模で、今後どうなるかという具体的なことが知りたい、あるいはどんな落とし穴がありえるのかというリスクについて具体的に知りたいと思うようになってきたので…

  • 戦争とデータ ―死者はいかに数値となったか

    五十嵐元道 中央公論社 2023.7.10読書日:2023.10.22 戦争中に死者の数を一つ一つ数えることは不可能で、とくにタグをつけている兵士たち以上に文民の犠牲者の数を数えるのは至難であるため、統計的に解析する方法が開発されて来た経緯を述べた本。 19世紀の後半になるまでは、そもそも兵士の死亡数をカウントすることすら行われていなかったそうだ。ところが、徴兵制で国民が徴兵されるようになると国民のひとりひとりの死について説明する責任が国家にあると考えられるようになり、さらに人道的な発想が浸透するにつれて、兵士以外の文民についても、できるだけ説明することが求められるようになってきた。 このよう…

  • スターメイカー

    オラフ・ステープルドン 訳・浜口稔 国書刊行会 1990.5.20初版 2004.1.30新装版読書日:2023.10.26 (ネタバレ注意) イギリスのヒースの丘に座っていた「わたし」は、霊体となって地球を飛び出すと宇宙を飛び回り、宇宙の端から別の宇宙すら覗き込み、テレパシーで時空を超えて他の知性体とコミュニケーションを取り、数々の人類が滅んでいく顛末を見て取り、宇宙の星々、さらには銀河が知性を持つ存在であることを知るが、宇宙が限りなく広がり死を迎えようとする中、どこかにスターメイカーという宇宙の創造主がいることを確信し、スターメイカーに迫ろうとするのだが……。 わしが読むものは、最近出版さ…

  • なぜ燃やすのか シバター伝

    シバター KADOKAWA 2022.5.26読書日:2023.10.23 YouTuberのシバターが、これまでの生い立ちと意外に堅実な人生観を披露する本。 なぜこんな本を読んだかと言うと、息子が格闘技ファンで、面白いから読んだほうがいいとわしに回してくれたからだ。というわけで、面白い本はみんなで回しあいましょう。 炎上系と言われがちなシバターであるが、自分から炎上させているわけではないという。炎上しているやつに絡んでいるだけなんだそうだ。炎上させているように見えても、それはかなり演出なんだそうだ。それも相手がちゃんと相手をしてくれるから成り立つ話で、たとえば朝倉未来はうまく相手をしてくれる…

  • 無料の読書三昧

    最近、世の中は無料、というか、おまけの読書にあふれています。ネット小説とかではなくて、ちゃんとした本です。(ちゃんとした本とは、編集や校正とか、普通の出版の手続きを踏んでいる本のこと)。 無料の読書といえば筆頭は図書館でしょう。 無料と言っても、住民税は払っているから遠慮することはありません。どんどん読みましょう。当然ながら、読みきれない量の本があります。人気の本は予約して待たなくてはいけないという縛りがありますが、何10冊も予約していると、次から次へと予約が届いて、ときには恐ろしいことになることもあります。 えっ、あなたは10冊しか予約できない、ですって? それは住んでいる地元の図書館しか使…

  • フキダシ論 マンガの声と身体

    細馬宏通 青土社 2023.6.20読書日:2023.10.19 マンガにおける声(内言を含む)を示すフキダシについてあれこれ考察した本。 マンガは日本人のほとんどが日常読んでいるもので、フキダシについて特に思うことはなかったのですが、こうしていろいろなパターンを見ていくと、マンガ家の皆さんは様々な工夫を重ねているんだなあ、と思う次第です。 ともかくマンガ家としては、読者に次のコマ、次のコマとどんどん進んでいってほしいので、次のコマに対する興味を引き立てるようにフキダシも配置するわけです。 たとえば、そのコマに描かれていない人の声のフキダシがあるとすると、読者はこれは誰が話しているんだろうと興…

  • 日本の死角

    現代ビジネス編 講談社現代新書 2023.5.20読書日:2023.10.17 講談社のウェブマガジン「現代ビジネス」に掲載された論考16本をまとめた本。 どれもウェブマガジンに掲載されたもので、短いものだ。深く考えるには足りないけれど、新しい視点を得られて、気になった部分は読者が掘り下げてくれればいいという発想だろう。 当然、発表された時期とは状況も変わっているものもあるので、今回の出版では論者により加筆されたものもある。その最もたるものは、藤田祥平という作家が書いた2017年の中国に関する論考だろう。(『日本が中国に完敗した今、26歳の私が全てのおっさんに言いたいこと』) 1991年生まれ…

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