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  • 第四話 馬鹿ってなんですかい?

    「むぅ」 お日様キラキラ輝く青空の下公園の広いグラウンドにて、オレは大っきな背中を追っかけ駆けていた。 一等賞なんて飽きるほど獲ってきたオレだけど、人に先に行かれることなんて滅多に経験がない。 Tシャツ一枚の下にもりもりとした筋肉の隆起が見

  • 第三話 催眠ってなんですかい?

    「三番テーブル、天丼2!」 「はい!」 「カサネ、次はカウンター席にBセット持ってきなさい!」 「ほいなっ」 右手に丼ぶり二つ、そして左手におかず日替わり焼肉定食をお盆に持ってオレは指示通りに店内をすたすた。満席の合間を縫って、飯を運ぶ。

  • 第二話 好きってなんですかい?

    「じゃあな、ばかさねー」 「ばかさね君、気をつけて帰るんだよ」 「ばかさねさん。今日は体育の時間、どうもありがとうございました。それではまた明日」 「おお。皆、またなー」 部活に向かう準備をしている奴や、よく片隅でくっちゃべってる(どうやら

  • 第一話 吸血鬼ってなんですかい?

    オレは双葉 重《かさね》。仲のいい友達には『ばかさね』と呼ばれてる。 下の名前だけじゃ足りないってんで、長く呼ばれちゃってんだ。この愛されっぷり、オレがどれだけの美少女かなんて、語るまでもなく分かちゃうもんだよな。 さて、そんなクールビュー

  • 勘違い吸血鬼ばかさねちゃん・目次

    ばかさねちゃんは元気です!

  • 十三話 幾ら想いを焚けども独りには

    須賀京太郎は、元来星に手を伸ばす人だった。 希望を持ち、愛に瞳を輝かし、そして夢を求めてやまない少年が彼の基礎。 その大器が幾ら愛のために陳腐化しようとも、怪我の痛苦にて肩より上に手が上がらなくなろうとも、本質的に青年は足掻く者なのだ。 更

  • 十二話 たとえ水をあげなくても、その花は

    白糸台高校は私立であり、また所謂《《いいところ》》の子女が多く通う学校としてそれなりに有名だ。 とはいえ、昔はいざ知らず現在には親に所以した派閥や垣根などは殆どなく、強いて言うならば少しお硬い雰囲気がある程度の普通の高校だ。 ただ、東京にあ

  • 十一話 だから少年はその広い器を水に浸す

    須賀家は、大家である。それは金持ちであるというだけの理由ではない。 遡ることの出来るだけで千年を超えるその積み上げてきた歴史、国に波及した影響力の高さから多くからそう認知されている。 だが、関東の大震等によって経済的な力は随分と衰え、地盤を

  • 十話 奇跡で星は浮かばない

    雨露零して、空は泣く。ごろりごろりと稲光の音色轟かせ、暗く、黒く天はどうにも鬱いでいた。 今日はずっと突き抜けるような青を望んでいたのに、しかしおおよその予報とも異なり天気は大雨となっている。 いくら待っても数多の水の軌跡滞らない眼前。果た

  • 九話 かいぶつに挑むのが勇者だけでいいのか

    かいぶつは誅されるもの。 物語ではよくそう描かれるけれども、福路美穂子はそう思わなかった。 大きいからって邪魔者扱いしてしまうのは辛いことだし、理解できないからって除いてしまうなんてとても悲しい。 せっかくだから、《《どうしようもないもの》

  • 八話 それが一夜の夢ならば

    好きという言葉がある。 それは、おとうさんおかあさん好き好きと騒ぐ私に、みだりに使ってはいけないと注意された思い出が強い、そんな文句だ。 そういうものは、もっと多くを知ってから使いなさい、と仏頂面を少し緩めながら父は語る。 好きというのは本

  • 七話 愛は喪われず/星は望まれてそこにある

    愛/哀はそう簡単には止まらない。止まってくれない。 「……咲」 「お姉ちゃん……」 宮永照と宮永咲。紆余曲折は、本音を聞いて考え改めた姉が謝ることで終わりを迎えた。 姉妹二人が涙を流し、心重なり合ったことを喜んだ一幕。華二輪がもとの花瓶に仲

  • 六話 たとえそこが青空でなかったとしても

    二つの高い背中の後をおずおずと、華の少女は付いていく。 長身二人が人混みを掻き分けて進む中を、宮永咲は頼もしく思いながら、同時に遠慮なく右に左に進む経路をとても覚えきれずに不安に感じもした。 これもし置いていかれたら私東京のど真ん中で右も左

  • 五話 デカい安心毛布はカップリング成立の夢を見る

    その雛は、羽ばたく。空へと向かって。 しかし、何度だって地に落ちるだろう、飛ぶのにその羽根は小さ過ぎるから。 けれども止めはしない。だって、既にインプリンティングされていたのだから。 私の大好きなあの人は飛ぶんだ。だから、私も飛べるはず。

  • 四話 泡の手のひらは水月を拾う

    光線弱々しく変遷しながら遠ざかる茜色。紫色に落ち込んで夜に消えゆく陽光を望みながら、少女は思う。再び明日が来るという道理への不安を。 また明日。そんな約束を果たせず両親は没した。ならば、かもしたら太陽すらも。光は儚く、脆い。 「いやだ……」

  • 三話 織姫は十五光年先の彼の姿を見つめる

    長野といっても、決して山ばかりではない。街もあれば、野もある。車も通れば、花も咲く。 だがしかし、そんな人と自然のバランスなんて知らないとでもいうかのように、京太郎の父親の実家の周囲は山だった。 山の谷の、限界集落。自然、須賀一家は車での通

  • 二話 風が本を捲らないから

    宮永照は読書が好きである。 文字となって出力された物語の数々は、本当だろうが嘘だろうが心を大いに刺激する。 徐々に顕になってくるその内容の愉快も憂いも現実を変えるほどの力はないのかもしれないが、しかしだからこそ良かったのだった。 恋しいほど

  • 一話 サモトラケのニケの美は翼にあるのか

    大星淡は、星星が好きだ。 太陽はおっきくてあったかいし、月は満ち欠けが綺麗。地球だって、とても大切な私達の世界だってことも分かっている。 しかし、夜空というカンバスに思うがままに光を散らしたかのように細々とした星星一粒一粒こそが、淡にとって

  • 少女は星にならない・目次

    タイトル:少女は星にならない ジャンル:二次創作、恋愛、咲-Saki- あらすじ:あなたのためなら、翼だっていらないんだ。 もしもが沢山重なって色々と変わった咲世界での京太郎くんと淡さんが中心の少し重めのお話となります。 麻雀が中心のお話で

  • 第十六話 貴女を決して独りには

    藤原妹紅は、不老不死の人間である。 そして、彼女は純粋な人間として蓬莱の薬を飲んで蓬莱人となったただ唯一の存在だった。 それは、同じ蓬莱人である蓬莱山輝夜や八意永琳らとも並べられない孤独。 穢れの少ない生を送る月の民と違い人間は、端から長命

  • 第十五話 私はずっと貴女の

    「暇ね」 艶と薔薇色で出来た唇から、吐息の代わりにそんな文句が漏れる。 一時の住み家と定めた太陽の畑。夏には背高の見事な向日葵が立ち上がって風に揺れそよぐその地は、しかし春を前にした今では草花の殆どが雪の底。 辺りには動物のひしめきも聞きと

  • 第十四話 恨まないで

    緋色すら容れずにただひたすらに紅色。それこそくどいほどに紅く染まった館、紅魔館。 美意識がそれこそ同族のものからすら離れているのは間違いない吸血鬼が住まう、窓一つなく閉塞的でもある館の深部。 本に彩られ本で飾られた多数というだけである種の美

  • 第十三話 娘に遠慮しちゃ、ダメ

    「寒い、な」 一年の殆ど湿り気を帯びた空気に包まれている魔法の森とはいえども、枯れに親しむ時期もある。 冬のからっ風には常緑樹ばかりのこの森林ですら痛むようになびいて、彼らが立てる音も寂しげだ。 そして、何より天辺に凍えるような白を多分に乗

  • 第十二話 拾い上げてもいい

    幻想郷では最近、スペルカードルールというものを用いた弾幕ごっこが特に少女達に認知され、暗に広まりつつある。 現在、空に理想の輝きを描くその血なまぐさくなくむしろ遊戯染みた決闘方法は、博麗の巫女に賢者達のお墨付きであることもあってか、特に力の

  • 第十一話 だから、私は嘘をつく

    そこは、空間を覆わんばかりに大体が竹に竹に竹に竹で出来ていた。 まだ青いものや朽ちかけのもの、そして目印に難儀する程の似たような太い竹。 そんなものばかりが植わって入れ替わり立ち替わり伸びているそこは、当然縦横無尽に地下茎が張り巡っていて、

  • 第十話 おっこっちゃう

    「幻想郷史ではなく日本史か……原始の頃だと石器に、竪穴住居。古代で土器に古墳にヤマト王権で……ふむ。こうしてつらつらと並べていくのは問題ないか。いや、しかし目立つ事柄を集めたばかりが歴史ではないだろう。背景や文化なども確り記さねば……信憑性

  • 第九話 ラブアンドピース

    霧の湖の畔、結界によって消しゴムのように印象無くした空白地帯に潜んでいるいち建築。 先代、博麗慧音の手による封印結界の中に建つそれは、赤い壁面を更に赤い枠で覆い、隙間なくそれを並べて屋根や何やらで紅く飾った、そんな調和も何もなくどこまでも赤

  • 第八話 才能は、ない

    幻想郷唯一に近い森林地帯、魔法の森。 ここは、高低疎らで密な樹木に凸凹した地面は人の出入りを拒絶し、またその名の由来となったまるで魔法にかかったかのような幻覚をもたらす茸の胞子が飛び交う、そんなジメジメ不快指数抜群の地だった。 魔法の森には

  • 第七話 背中合わせ

    博麗の巫女というのは、巫女として神社の世話をするだけが仕事ではない。 最重要として博麗大結界――幻想郷の幻想性を保持する要となる境界――を維持する役目があり、また妖怪と人間の境が曖昧にならないように働くことだってあった。 そして、それら全て

  • 第六話 きっと、朝は

    先代の巫女である博麗慧音は、縁から繋がりしばしば永遠亭に訪れる招かれざる客である藤原妹紅を抜かすと、境界の妖怪以来となる八意永琳お手製の結界を見抜いて訪れた存在だった。 つまり、彼女はまともな人間としてはじめて月の賢者の敷いた術式を破った程

  • 第五話 魔界の神の

    現在魔法の森に住んでいるアリス・マーガトロイドという少女は、魔界から幻想郷に訪れた、当人曰く都会派魔法使いである。 そんな彼女の優れたところは洗練された美貌や所作だけでなく、秘めた七色の魔法の一片にですら綺麗を忘れない洒脱さによっても理解で

  • 第四話 惚れさせないほうが、いい

    幻想郷に洋書は少ない。 それどころかカトラリーのような小物やハグのような文化ですら波及せず、故にずっと幻想郷は和風のままだ。 これに関しては、西洋から遠く離れた日本という極東に幻想郷が位置しているからこそ、忘れられた存在を蒐める力を持つ【幻

  • 第三話 皆がなんと言おうと

    内心ライバルとしていた子が博麗の巫女に任命された。 又聞きながらもそんな事実を聞いて黙っていられる霧雨魔理沙ではない。 これはあの才能の塊に負けないように、そして人として置いていかず置いていかれないように、一丁伝手ある魔法使いを頼って魔法の

  • 第二話 ぶっ飛ばしたい

    「……面倒くさいわね。あの人、こんなこと毎日通いながらやってたの?」 博麗神社の境内は、それなり以上に広い。勾配も中々あり、旧ければ隙間だって多かった。 それを日々清めるというのは中々に苦労するもの。そして、現在神社の世話を任されている霊夢

  • 第一話 私は私

    書を捲くるのは苦ではない。私が何千何万回と繰り返したその所作は、思えば風一吹きですら再現できるほどのものだから。 だが、読むとなると中々の労苦が発生してしまう。平に文字を覗くだけなら簡単なのだが、その意味に条理に意志を継ごうとするならば、一

  • 霊夢に博麗を継がせたら無視されるようになった・目次

    タイトル:霊夢に博麗を継がせたら無視されるようになった ジャンル:二次創作、勘違い、曇らせ あらすじ: お母さん、半獣になっちゃったからかなぁ? 上白沢慧音さんが元博麗の巫女さんだったらという無理くりなIFの話となります! 人の数だけ幻想郷

  • 第二十話 ロージン+ハイエナ

    白黒付けるっていう言葉を私は偶に聞いたりするわ。これって、物事の是非などを決めて決着をつけるっていう文句よね。 確かに、白黒で善悪真偽きっちり分けちゃった方が世の中分かりやすいのかもしれないわ。 二元論はとっても単純だもの。どちらにしようか

  • 第十九話 メロンパンな代打

    「うーん……」 今日は寝坊助したせいで校内に持ち込んだ弁当箱の四角形に米粒ひとつだって詰め込めていなかった残念な日。 そのために残念ながら何時ものクラスメートの皆と仲良しお昼は諦めて、せっかくだからと購買で購入したパンを持ってここ文芸部兼S

  • 第十八話 キュウリをピンどめ

    あともう少しで6月。女子更衣室の窓から仰いでみれば、梅雨前のこの頃にしては少しばかり重ったい曇り空が広がっていたわ。 今日は予報だと雨と聞いたのだけれど、なんとか曇天のままで、むしろ気温は運動するのに丁度いいくらい。 だから、私達SOS団も

  • 第十七話 井戸端会議なシーソーゲーム

    好きのサインというのは、色々とあると思うわ。あ、この場合は異性に対する好きね。アイラブユーの伝え方ということ。 たとえばとある鳥さんだとダンスを披露したり、また違った鳥さんなら羽根を大きく広げて美しさをアピールしたりするみたい。それにそもそ

  • 番外話② 古泉一樹の望月

    正直に言おう。俺は超能力者というものにずっと、憧れていた。 いや、だってそれはそうだろう? 背を比べ合うことだって楽しみだった子供の頃も、俺にもあるんだ。そうするとちょっと足が速いだけで幼心には凄く感じたってのに、そんな通常能力を超えてる力

  • 番外話① 長門有希の願望

    「座ってて」 勝手なんて知ったこっちゃない他人のテリトリーの中、俺はそいつの言葉におうだかああだかよく分からない蚊の鳴くような声を返した。 いや、腰の引けたそんなざまで本当に返答になっていたかどうかは分からなかったが、この相手、長門有希には

  • 第十六話 【涼宮ハルヒ】をやらないといけない涼宮ハルヒさんは憂鬱

    ――――涼宮さんの真似は誰にも出来ない。きっと、彼女自身も意識的には出来ないよ。そこに意思の介入する余地はないんだ。どんな偉大な知恵を持つ何者にも不可能さ。 状況は絶望的。私はただ世界に二人ぼっちという浪漫を求めていただけだったのに。気づけ

  • 第十五話 願いはアンビバレンツ

    私の中にある力って、きっとスパゲッティコードのように複雑に入り固まったものだと思うの。 きっかけがなかったので今までまるっと引き上げることはなかったのだけれど、さあやろうとしたら、世界が変わるくらいのレベルの力って中々引き出せない感じがする

  • 第十四話 ナイフ÷友達

    緑のカーテンがひらひらと。淡い光で包まれる、保健室。ヤスリで削った陽光を宙にばらまいたかのような柔らかさの中で、朝倉さんは大きく素直な形のナイフをひゅんと軽く投げ上げたわ。 危ない、と私が口にする前に、三回転くらいしてから戻ってきたその柄を

  • 第十三話 隠し味はナルキッソス

    「……朝からどうしたんだ、涼宮? 何やら、麦茶と麺つゆを間違えたようなたいそう微妙な表情をしているが」 「うーん……うさぎさんになってから意外に、声を掛けられる数が増えたのに驚いちゃって。麺つゆの間違いは谷口から体験を聞いたことがあるけれど

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