妖怪とは、陰陽思想で言うところの陰である。 そして、陽の存在に人間を当てはめるとするならば、幻想郷は果たして外の世界よりも明らかにくっきりと影深い地であるのかもしれなかった。 傷病老死、愛別離苦、怨憎会苦、求不得苦、五蘊盛苦。 四苦八苦に塗
制作した二次創作、オリジナルの小説を中心とした雑記ブログです。 ちょっと重めの文章や勘違いを書くのが好きです!
「むぅ」 お日様キラキラ輝く青空の下公園の広いグラウンドにて、オレは大っきな背中を追っかけ駆けていた。 一等賞なんて飽きるほど獲ってきたオレだけど、人に先に行かれることなんて滅多に経験がない。 Tシャツ一枚の下にもりもりとした筋肉の隆起が見
「三番テーブル、天丼2!」 「はい!」 「カサネ、次はカウンター席にBセット持ってきなさい!」 「ほいなっ」 右手に丼ぶり二つ、そして左手におかず日替わり焼肉定食をお盆に持ってオレは指示通りに店内をすたすた。満席の合間を縫って、飯を運ぶ。
「じゃあな、ばかさねー」 「ばかさね君、気をつけて帰るんだよ」 「ばかさねさん。今日は体育の時間、どうもありがとうございました。それではまた明日」 「おお。皆、またなー」 部活に向かう準備をしている奴や、よく片隅でくっちゃべってる(どうやら
オレは双葉 重《かさね》。仲のいい友達には『ばかさね』と呼ばれてる。 下の名前だけじゃ足りないってんで、長く呼ばれちゃってんだ。この愛されっぷり、オレがどれだけの美少女かなんて、語るまでもなく分かちゃうもんだよな。 さて、そんなクールビュー
ばかさねちゃんは元気です!
須賀京太郎は、元来星に手を伸ばす人だった。 希望を持ち、愛に瞳を輝かし、そして夢を求めてやまない少年が彼の基礎。 その大器が幾ら愛のために陳腐化しようとも、怪我の痛苦にて肩より上に手が上がらなくなろうとも、本質的に青年は足掻く者なのだ。 更
白糸台高校は私立であり、また所謂《《いいところ》》の子女が多く通う学校としてそれなりに有名だ。 とはいえ、昔はいざ知らず現在には親に所以した派閥や垣根などは殆どなく、強いて言うならば少しお硬い雰囲気がある程度の普通の高校だ。 ただ、東京にあ
須賀家は、大家である。それは金持ちであるというだけの理由ではない。 遡ることの出来るだけで千年を超えるその積み上げてきた歴史、国に波及した影響力の高さから多くからそう認知されている。 だが、関東の大震等によって経済的な力は随分と衰え、地盤を
雨露零して、空は泣く。ごろりごろりと稲光の音色轟かせ、暗く、黒く天はどうにも鬱いでいた。 今日はずっと突き抜けるような青を望んでいたのに、しかしおおよその予報とも異なり天気は大雨となっている。 いくら待っても数多の水の軌跡滞らない眼前。果た
かいぶつは誅されるもの。 物語ではよくそう描かれるけれども、福路美穂子はそう思わなかった。 大きいからって邪魔者扱いしてしまうのは辛いことだし、理解できないからって除いてしまうなんてとても悲しい。 せっかくだから、《《どうしようもないもの》
好きという言葉がある。 それは、おとうさんおかあさん好き好きと騒ぐ私に、みだりに使ってはいけないと注意された思い出が強い、そんな文句だ。 そういうものは、もっと多くを知ってから使いなさい、と仏頂面を少し緩めながら父は語る。 好きというのは本
愛/哀はそう簡単には止まらない。止まってくれない。 「……咲」 「お姉ちゃん……」 宮永照と宮永咲。紆余曲折は、本音を聞いて考え改めた姉が謝ることで終わりを迎えた。 姉妹二人が涙を流し、心重なり合ったことを喜んだ一幕。華二輪がもとの花瓶に仲
二つの高い背中の後をおずおずと、華の少女は付いていく。 長身二人が人混みを掻き分けて進む中を、宮永咲は頼もしく思いながら、同時に遠慮なく右に左に進む経路をとても覚えきれずに不安に感じもした。 これもし置いていかれたら私東京のど真ん中で右も左
その雛は、羽ばたく。空へと向かって。 しかし、何度だって地に落ちるだろう、飛ぶのにその羽根は小さ過ぎるから。 けれども止めはしない。だって、既にインプリンティングされていたのだから。 私の大好きなあの人は飛ぶんだ。だから、私も飛べるはず。
光線弱々しく変遷しながら遠ざかる茜色。紫色に落ち込んで夜に消えゆく陽光を望みながら、少女は思う。再び明日が来るという道理への不安を。 また明日。そんな約束を果たせず両親は没した。ならば、かもしたら太陽すらも。光は儚く、脆い。 「いやだ……」
長野といっても、決して山ばかりではない。街もあれば、野もある。車も通れば、花も咲く。 だがしかし、そんな人と自然のバランスなんて知らないとでもいうかのように、京太郎の父親の実家の周囲は山だった。 山の谷の、限界集落。自然、須賀一家は車での通
宮永照は読書が好きである。 文字となって出力された物語の数々は、本当だろうが嘘だろうが心を大いに刺激する。 徐々に顕になってくるその内容の愉快も憂いも現実を変えるほどの力はないのかもしれないが、しかしだからこそ良かったのだった。 恋しいほど
大星淡は、星星が好きだ。 太陽はおっきくてあったかいし、月は満ち欠けが綺麗。地球だって、とても大切な私達の世界だってことも分かっている。 しかし、夜空というカンバスに思うがままに光を散らしたかのように細々とした星星一粒一粒こそが、淡にとって
タイトル:少女は星にならない ジャンル:二次創作、恋愛、咲-Saki- あらすじ:あなたのためなら、翼だっていらないんだ。 もしもが沢山重なって色々と変わった咲世界での京太郎くんと淡さんが中心の少し重めのお話となります。 麻雀が中心のお話で
藤原妹紅は、不老不死の人間である。 そして、彼女は純粋な人間として蓬莱の薬を飲んで蓬莱人となったただ唯一の存在だった。 それは、同じ蓬莱人である蓬莱山輝夜や八意永琳らとも並べられない孤独。 穢れの少ない生を送る月の民と違い人間は、端から長命
「暇ね」 艶と薔薇色で出来た唇から、吐息の代わりにそんな文句が漏れる。 一時の住み家と定めた太陽の畑。夏には背高の見事な向日葵が立ち上がって風に揺れそよぐその地は、しかし春を前にした今では草花の殆どが雪の底。 辺りには動物のひしめきも聞きと
緋色すら容れずにただひたすらに紅色。それこそくどいほどに紅く染まった館、紅魔館。 美意識がそれこそ同族のものからすら離れているのは間違いない吸血鬼が住まう、窓一つなく閉塞的でもある館の深部。 本に彩られ本で飾られた多数というだけである種の美
「寒い、な」 一年の殆ど湿り気を帯びた空気に包まれている魔法の森とはいえども、枯れに親しむ時期もある。 冬のからっ風には常緑樹ばかりのこの森林ですら痛むようになびいて、彼らが立てる音も寂しげだ。 そして、何より天辺に凍えるような白を多分に乗
幻想郷では最近、スペルカードルールというものを用いた弾幕ごっこが特に少女達に認知され、暗に広まりつつある。 現在、空に理想の輝きを描くその血なまぐさくなくむしろ遊戯染みた決闘方法は、博麗の巫女に賢者達のお墨付きであることもあってか、特に力の
そこは、空間を覆わんばかりに大体が竹に竹に竹に竹で出来ていた。 まだ青いものや朽ちかけのもの、そして目印に難儀する程の似たような太い竹。 そんなものばかりが植わって入れ替わり立ち替わり伸びているそこは、当然縦横無尽に地下茎が張り巡っていて、
「幻想郷史ではなく日本史か……原始の頃だと石器に、竪穴住居。古代で土器に古墳にヤマト王権で……ふむ。こうしてつらつらと並べていくのは問題ないか。いや、しかし目立つ事柄を集めたばかりが歴史ではないだろう。背景や文化なども確り記さねば……信憑性
霧の湖の畔、結界によって消しゴムのように印象無くした空白地帯に潜んでいるいち建築。 先代、博麗慧音の手による封印結界の中に建つそれは、赤い壁面を更に赤い枠で覆い、隙間なくそれを並べて屋根や何やらで紅く飾った、そんな調和も何もなくどこまでも赤
幻想郷唯一に近い森林地帯、魔法の森。 ここは、高低疎らで密な樹木に凸凹した地面は人の出入りを拒絶し、またその名の由来となったまるで魔法にかかったかのような幻覚をもたらす茸の胞子が飛び交う、そんなジメジメ不快指数抜群の地だった。 魔法の森には
博麗の巫女というのは、巫女として神社の世話をするだけが仕事ではない。 最重要として博麗大結界――幻想郷の幻想性を保持する要となる境界――を維持する役目があり、また妖怪と人間の境が曖昧にならないように働くことだってあった。 そして、それら全て
先代の巫女である博麗慧音は、縁から繋がりしばしば永遠亭に訪れる招かれざる客である藤原妹紅を抜かすと、境界の妖怪以来となる八意永琳お手製の結界を見抜いて訪れた存在だった。 つまり、彼女はまともな人間としてはじめて月の賢者の敷いた術式を破った程
現在魔法の森に住んでいるアリス・マーガトロイドという少女は、魔界から幻想郷に訪れた、当人曰く都会派魔法使いである。 そんな彼女の優れたところは洗練された美貌や所作だけでなく、秘めた七色の魔法の一片にですら綺麗を忘れない洒脱さによっても理解で
幻想郷に洋書は少ない。 それどころかカトラリーのような小物やハグのような文化ですら波及せず、故にずっと幻想郷は和風のままだ。 これに関しては、西洋から遠く離れた日本という極東に幻想郷が位置しているからこそ、忘れられた存在を蒐める力を持つ【幻
内心ライバルとしていた子が博麗の巫女に任命された。 又聞きながらもそんな事実を聞いて黙っていられる霧雨魔理沙ではない。 これはあの才能の塊に負けないように、そして人として置いていかず置いていかれないように、一丁伝手ある魔法使いを頼って魔法の
「……面倒くさいわね。あの人、こんなこと毎日通いながらやってたの?」 博麗神社の境内は、それなり以上に広い。勾配も中々あり、旧ければ隙間だって多かった。 それを日々清めるというのは中々に苦労するもの。そして、現在神社の世話を任されている霊夢
書を捲くるのは苦ではない。私が何千何万回と繰り返したその所作は、思えば風一吹きですら再現できるほどのものだから。 だが、読むとなると中々の労苦が発生してしまう。平に文字を覗くだけなら簡単なのだが、その意味に条理に意志を継ごうとするならば、一
タイトル:霊夢に博麗を継がせたら無視されるようになった ジャンル:二次創作、勘違い、曇らせ あらすじ: お母さん、半獣になっちゃったからかなぁ? 上白沢慧音さんが元博麗の巫女さんだったらという無理くりなIFの話となります! 人の数だけ幻想郷
白黒付けるっていう言葉を私は偶に聞いたりするわ。これって、物事の是非などを決めて決着をつけるっていう文句よね。 確かに、白黒で善悪真偽きっちり分けちゃった方が世の中分かりやすいのかもしれないわ。 二元論はとっても単純だもの。どちらにしようか
「うーん……」 今日は寝坊助したせいで校内に持ち込んだ弁当箱の四角形に米粒ひとつだって詰め込めていなかった残念な日。 そのために残念ながら何時ものクラスメートの皆と仲良しお昼は諦めて、せっかくだからと購買で購入したパンを持ってここ文芸部兼S
あともう少しで6月。女子更衣室の窓から仰いでみれば、梅雨前のこの頃にしては少しばかり重ったい曇り空が広がっていたわ。 今日は予報だと雨と聞いたのだけれど、なんとか曇天のままで、むしろ気温は運動するのに丁度いいくらい。 だから、私達SOS団も
好きのサインというのは、色々とあると思うわ。あ、この場合は異性に対する好きね。アイラブユーの伝え方ということ。 たとえばとある鳥さんだとダンスを披露したり、また違った鳥さんなら羽根を大きく広げて美しさをアピールしたりするみたい。それにそもそ
正直に言おう。俺は超能力者というものにずっと、憧れていた。 いや、だってそれはそうだろう? 背を比べ合うことだって楽しみだった子供の頃も、俺にもあるんだ。そうするとちょっと足が速いだけで幼心には凄く感じたってのに、そんな通常能力を超えてる力
「座ってて」 勝手なんて知ったこっちゃない他人のテリトリーの中、俺はそいつの言葉におうだかああだかよく分からない蚊の鳴くような声を返した。 いや、腰の引けたそんなざまで本当に返答になっていたかどうかは分からなかったが、この相手、長門有希には
第十六話 【涼宮ハルヒ】をやらないといけない涼宮ハルヒさんは憂鬱
――――涼宮さんの真似は誰にも出来ない。きっと、彼女自身も意識的には出来ないよ。そこに意思の介入する余地はないんだ。どんな偉大な知恵を持つ何者にも不可能さ。 状況は絶望的。私はただ世界に二人ぼっちという浪漫を求めていただけだったのに。気づけ
私の中にある力って、きっとスパゲッティコードのように複雑に入り固まったものだと思うの。 きっかけがなかったので今までまるっと引き上げることはなかったのだけれど、さあやろうとしたら、世界が変わるくらいのレベルの力って中々引き出せない感じがする
緑のカーテンがひらひらと。淡い光で包まれる、保健室。ヤスリで削った陽光を宙にばらまいたかのような柔らかさの中で、朝倉さんは大きく素直な形のナイフをひゅんと軽く投げ上げたわ。 危ない、と私が口にする前に、三回転くらいしてから戻ってきたその柄を
「……朝からどうしたんだ、涼宮? 何やら、麦茶と麺つゆを間違えたようなたいそう微妙な表情をしているが」 「うーん……うさぎさんになってから意外に、声を掛けられる数が増えたのに驚いちゃって。麺つゆの間違いは谷口から体験を聞いたことがあるけれど
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妖怪とは、陰陽思想で言うところの陰である。 そして、陽の存在に人間を当てはめるとするならば、幻想郷は果たして外の世界よりも明らかにくっきりと影深い地であるのかもしれなかった。 傷病老死、愛別離苦、怨憎会苦、求不得苦、五蘊盛苦。 四苦八苦に塗
人影数多ありながらもすれ違うばかりの、一面。 地べたを通う誰もが互いに意識していないかと思えば避け合うことばかりは皆上手であるから不思議だ。 せかせかした足の動きに、思わずつられそうになる心地を、彼女はスモークガラスの奥からじっと堪える。自
――――がここのところ空元気でずっといることなんて、エルコンドルパサーは当然気付いていた。 存外彼女は役者であるようだけれども、しかしエルコンドルパサーとて仮面を被る者である。 一枚の奥の少々臆病な内心から覗いてみると――――の笑顔は以前と
竹林の迷いは永遠へと繋がる。露わになったのはそんな詩歌のような幻想の体現。 迷いの竹林の中に佇む永遠亭は古式ゆかしい和風建築の趣であるが、一体それが何時何処の流行りのものであったのかは判然としない。 よくよく見れば灼けず錆びずにその材の真新
神代小蒔は、空には太陽以外に要らないと言い切れる人である。 月はあまりに冷たい色をしていて、星星は暖を取るにはあまりに微か。 ならば、ついうとうとしてしまいたくなるくらいのお天道様こそ大事に、想い思って愛していた。 「私は――星に願いません
メモ代わりにチョコザップで何をやったほうがいいか、というものを他ブログを参考に書いたものとのなります。 リンクを辿ってどうか参考ブログ様へと向かってみて下さい!
イクスは光彦の家、白河家の屋根裏に住み着いてる。 いや、以前見た光景を思い出すに、屋根裏にて大量の漫画本の隙間にて過ごしているといった方が正しいのかもしれない。 千の次の単位は、確か万だったよな。きっとそれくらいは漫画の数はあったろうし、何
先生。 それはここ幻想郷の人里において小さな寺子屋などを運営する教師達の呼称としてよく用いられているものだ。 そして、この頃新たに先生と呼ばれるようになったのは、稗田の家お抱えの賢者とされる上白沢慧音。 里の中程に新設された寺子屋にて彼女は
抜けるような蒼穹。自然こそがこの世の美しさのベーシック。だがある日、それはナンバーツーに堕した。 「よくないよねー」 世界に天井があることがつまらないというのは、一般人杉山ゆずだからこそ考えることだろうか。 いや、それとも彼女が天を射抜かん
アリス・マーガトロイドは魔界生まれの少女である。 そのため生まれつき魔法使いである彼女には、本来衣食住に対する意識は希薄であっても良い筈だった。 だが、神綺という魔界の神を手本にした彼女曰く子供達同士の相互扶助により大いに学んだアリスは心に
親知らず後に鼻から口まで空気の流れを感じたならばどうすべきか。 それに対してまずは対応医への相談を自分はお勧めいたします。 その理由、結論に至った流れを羅列しますので、どうか判断の一助にして下さい。
町田百合というのは最低値、いやそれこそマイナスから開始した小さき命である。 実親ならまだしも余所人が愛するには些か地獄的に過ぎていた子。 踏みしだかれるべき最低値、哀れまれるべき地獄の蓋はだがしかし。 『トップアイドルになるですぅ!』 地獄
ウマ娘達がその速さを競うということは、人が薄氷を渡ることと似ているのかもしれないと、彼は思った。 そもそも遅ければ氷の下に堕ちてしまうだろうし、そしてほんのちょっと力を入れすぎただけで氷は脆くも砕け散って足を取られてしまう。 最悪没した先に
前衛的を通り越した狂的。赤の強弱だけでどうして美観を創れたのか見るものが見たら唸ること間違い無しの紅魔館。 今日も今日とて湖の霧に包まれた館の底。地下を居住地として構え、むしろ館をただの日光を遮る蓋と捉えている出不精の魔女は手近に居た悪魔に
百合は、ひゅ、と緊張に喉からよく分からない音が出たことを感じた。 それが唐突に乱入し楽曲を中断させた招かれざる客に向けられた、数多の視線の物理的に迫る程の印象の圧力によるものであるのは、語るまでもない。 沈黙の中知らずぎゅ、っと握ったマイク
幼少の妄想。人を殺めかねない不安。崇め立てるべき神聖。 それらは妖怪、怪人、神等など。彼ら発生が空想信仰に依る者どもは、空から生まれた単一であるからこそ、多くが親愛など知らない。 だからその存在が絶対であろうがなかろうが、殆どを対面のみで済
紅美鈴というよく分からない妖怪は、出自を辿ると神獣へと行き着く。 ドラゴン、龍。大いなる自然の具現で、混沌たる力の根源。少し傾けば善となり、反対に向いてしまえば悪となる。そんな、茫漠とした上澄み。 そこから誕生したのが、紅美鈴という妖怪だっ
夢幻。それは、創造に至らぬ想像。とりとめもない、不確か。 夢は消えるもので、幻だってそれと同じ。だがしかし、強度が違うばかりで、ひょっとしたら現実もそれらと変わらないものではないか。 胡蝶の夢。邯鄲の夢。主体は果たしてゆらゆらと、思考を待っ
蝶よ花よの言葉はあれども、誠に野花の生は辛いもの。 日に灼かれて虫にたかられ、水を蓄えることすら難儀する。そもそも、身を委ねた地に命を預けることすら生半可な生き物であっては出来ないこと。 だが、それでも花は咲く。歪であっても汚れていようが、
「はっ、今日も生きるには丁度いい天気だっ」 独り言つ、晴天に白を混じえた黒き一線。 逃げゆく金の長髪を魔女帽で押さえながら昼に忘れた闇夜を空に描くように飛翔しているのは、魔法使いの少女霧雨魔理沙だった。 彼女は霧雨店のお嬢様を辞めて久しく、
蘭が魔法少女というものにハマったのは、第二の生をお母の作った献立と共に再出発をしたその直後のことだったらしい。 普通の人と同じものも食べられず、家族での食卓にてよく吐いてすらいた彼女は、それでもお姉ちゃんお姉ちゃんと付いてきてくれていた妹に
オレは動物の中ではくまさんが一番に好きだが、別にうさぎさんが嫌いという訳でもない。 いや、むしろよく考えたら結構好きな方かもしれなかったな。何せ、干支に選ばれた程のその俊敏さは中々だし、そもそもちっこくて柔い。可愛いと言えばその通りだろう。
授業、というのは中々に面白い時間だとオレは思う。 イミフが先生の説明によってなるほどに変わっていくのはかなり面白いし、そもそもカツカツ黒板に叩き込まれるチョークの音が結構好きだったりもする。 それに、先生方って結構年取っているのもあって個性
「ふぁ。結局、よく分かんなかったな……」 あくびとともに、ひと言。天才のばかさねちゃんらしからぬ言葉を、誰にも聞かれなかったのは幸いだっただろうか。 まあでも仕方ない。ラブコメにシリアスにファンタジーはオレの専門外だからな。そんな感想を鈍い
人生が万華鏡だとしても、思い返せば最近色々ありすぎた気がする。 キラキラがごちゃごちゃパリン。そんなこんなを続けていたら、オレも大変だ。まあ、これからはそんなことにならないだろう、と思いながらオレは語りを終える。 「――――と、そんな感じだ
暑いにはまだ足りていないけれども、日差しが眩しい今日このごろ。 最近雨天が続いていたので、これはお出かけ日和だと三咲も女友達と買い物に出かけている。オレもそれにならいたいところだったが、ちょっと用事があると学内に留まった。 なんか、クラスの
愛することは、簡単なようで難しい。心のままに素直にぶつかるというのは、どうしたって恥ずかしくなってしまうもの。 薄皮一枚すらない真心は、傷つきやすくって仕方ないから。 『光彦! オレ、お前のこと好きだぞー!』 『また唐突だね……そもそも、好
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オリジナルで描いている漫画、【羽根つき吸血鬼のグラビティ】です! 吸血鬼の少女と最高という謎の位置の男の子を中心としたお話になる予定ですねー。
眼前に赤が、飛び散る。 オレは赤がキライだ。それは当然だろう、自分の死の際に嫌というほど目に入れてしまったものなのだから。 赤は停止、終わりの色。オレは思い出す、赤い血の海に沈んだ前世の《《自分の姿》》を。 『ふふふ』 そしてどうしてだか唐
右手左手を交互に突き出し、わんつー、わんつー。 さて。オレは実は意外な程に、人をぶったりけったりしたことなんてなかったりする。 いや、だって相手が痛いとか嫌だし、手なんて出さなくたってどうとでもなること沢山あるしさ。 もっとも、ばかさねちゃ
「あ、カレー食べたいデス!」 「ふぅん。唐突に中々面白いヤツだな! 後で一杯おごってやるか」 「えっと、ちょっと面白すぎない? さっきまでジェーンちゃんが覗き見てたコンクリ練ってDIYしてる人、びっくりしてるよ? それに重ちゃん。カレーは飲
白河邸にはプロテインが存在しない。それは光彦の身体の隆々ぶりを見るに、恐るべきことだった。 オレはてっきり、お高いプロテインを泥棒の魔の手から逃れさせるためにどこかにひそひそ隠しているものだと思っていたが、それは違う。 昔エロ本隠してたベッ
オレは、これでも絵が得意だ。 何しろ、目の前にあるものを描くなら、オレの頭の中の景色をそのまま写せば良い。そういえば、前世だとその能力を買われて、光彦に格闘キャラのパンチラドットを描かされたこともあったな。今思い出してもドン引きだ。 まあ、
オレは基本的にお金をあんまり持っていない。理由のひとつとしてそれは、使わないからだ。 お年玉とかあんまりいらんからそのまま渡す度によくお母には金かからない子だね、と言われるが、いや、使わないのをただ持ち歩いててもなあ。紙幣とか軽すぎてオレの
「むぅ」 お日様キラキラ輝く青空の下公園の広いグラウンドにて、オレは大っきな背中を追っかけ駆けていた。 一等賞なんて飽きるほど獲ってきたオレだけど、人に先に行かれることなんて滅多に経験がない。 Tシャツ一枚の下にもりもりとした筋肉の隆起が見
「三番テーブル、天丼2!」 「はい!」 「カサネ、次はカウンター席にBセット持ってきなさい!」 「ほいなっ」 右手に丼ぶり二つ、そして左手におかず日替わり焼肉定食をお盆に持ってオレは指示通りに店内をすたすた。満席の合間を縫って、飯を運ぶ。
「じゃあな、ばかさねー」 「ばかさね君、気をつけて帰るんだよ」 「ばかさねさん。今日は体育の時間、どうもありがとうございました。それではまた明日」 「おお。皆、またなー」 部活に向かう準備をしている奴や、よく片隅でくっちゃべってる(どうやら
オレは双葉 重《かさね》。仲のいい友達には『ばかさね』と呼ばれてる。 下の名前だけじゃ足りないってんで、長く呼ばれちゃってんだ。この愛されっぷり、オレがどれだけの美少女かなんて、語るまでもなく分かちゃうもんだよな。 さて、そんなクールビュー
ばかさねちゃんは元気です!