87. 室生犀星『あにいもうと 詩人の別れ』(講談社文芸文庫) 再読したい度:☆★★★★ 図書館シリーズ。8編を収録。表題作『あにいもうと』およびその続編『続あにいもうと』はかなりのインパクトがあった。川師を生業とする一家を描いた本作だが、「いもうと」の口の悪いことよ。おしとやかな印象の彼女から、清流のように軽快で、濁流のように豪華な悪口が出てくると、ギャップに圧倒されると同時に妙に小気味よい。これらの悪口を通して作者の普段押し殺してる文句が垣間見えるようだ。 『つくしこひしの歌』は、想いを寄せてくる男の手紙に対する、女の返事だけで構成されている。「ルビンの壺が割れた」が思い出されたが、それを…