空気が何か水の温度だ。つめたく澄んで濁ったものはむしろ少ない。それは夜でも同じこと。おれの呼吸する世界はつねに或る透明度とその色に見合った温度とを保ち続けているのだ。 共存の不可能な人たちがいる。それは確かに彼らの呼吸する、また彼らの血管(ちずじ)を巡り彼らを形づくる〝流れ〟のようなものが余りにも異質だからだ。汚染地帯。いうなれば彼らそのものがおれにとっては血と肉を犯して殺す汚染地帯なのだろう。生理感覚が本質的なところにあって理屈でひもとくことは難しい。 おれは他人を基本的には嫌わない。出会った人たちの多くは実際心優しいところのある人たちで、そうして社会には、ことにこの国の社会にはすでに見切り…