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アニメ、コスプレ、音楽フェス、子どもが遊ぶデカい遊具、卓球場(!?)ヨーロッパ最大級のゲームイベントgamescomに「メッチャいろいろある」理由とは。イベントのスタンスや狙いを運営に聞いてみた【gamescom2024】

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ヨーロッパで最大級のゲームイベント・gamescomと言えば、今や多くの日本人にとって配信イベント「gamescom Opening Night Live」におけるボリューム満点の発表の方が印象に残っているかもしれない。

しかし、実際に足を運んでみると、ヨーロッパ最大級の名は伊達じゃない。

とにかく会場がデカい。

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▲写真ではその迫力が十分に伝わらないのだが、とにかく天井が高くてブースもデカい

会場が大きな分、出展企業が多い。そして会場にはビデオゲームに限らず、AmazonやNetflix、Disney+といった映像系のブースも出展。さらには、子供向けの遊具や、なぜか卓球を嗜めるスペースまで存在する。

くわえて、開発者会議であるdevcomが実施されていたり、音楽フェスやゲームの大会が実施されていたりと、とにかく包括的なイベントとなっている。

このたび、gamescomを運営するシュテファン・ハイクハウス氏ティム・エンドレス氏へインタビューをする機会を得た。

インタビューでは、とにかく規模が大きいgamescomのルーツや、包括的なイベントとして運営することの狙い、そして今後の展望なども伺うことができた。

ヨーロッパ最大規模のゲームイベントのバックグラウンドや実態に関心がある方は、ぜひ本記事を楽しんで頂ければ幸いだ。

文/りつこ
編集/実存


企業独自の発表会が増える今、大型ゲームイベントの役割とは。

──昨今ではヨーロッパ最大のゲームイベントとして知られるgamescomですが、そもそもどのような経緯でイベントが始まったのでしょうか。

シュテファン・ハイクハウス氏(以下、シュテファン氏):
gamescomが世界最大のゲームフェスティバルになるまでの物語は長いものです。

今年で16回目のgamescomを迎えますが、かつてはgamescomの前身であるGames Conventionというイベントが存在していました。

Games Conventionとしてイベントを実施していた際に、空間的な制限に達したため、イベントの新しいホームを探すことになったんです。そういった都合もあり、2009年にケルンでのgamescomの創設に至りました。

それ以来、gamescomはKoelnmesse(ケルンメッセ)との協力のもとで実施され、年々成長しています。

ティム・エンドレス氏(以下、ティム氏):
gamescomがはじまったきっかけは、毎年何十万人ものファンを迎え、ゲームとゲーム文化を祝うイベントを作りたいというものでした。

当初から掲げているビジョンを念頭に置いて、私たちのチームは毎年gamescomをより良くするために努力しています。

コミュニティを重視する姿勢、大きなフェスティバルとしての魅力、そして包括的なアプローチが、世界最大のゲームフェスティバルになるために重要な要素となり、現在では他のイベントとは一線を画していると認識しています。

──運営チームとしては、gamescomを他の世界的なゲームイベントと比較して、どのような点において特徴や強みがあると認識していますか。

ティム氏:
他のイベントと比較して、gamescomはひとつのフェスティバルとして理解されています。

私たちは単にゲームパブリッシャーが新作ゲームを展示するだけでなく、フェスティバル内にゲームに関連するすべてのアクティビティを内包しています。

そのため、コスプレやストリーミングプロバイダー、アニメ、トレーディングカードやボードゲームの出版社など、ビデオゲームの周辺にあるコンテンツも出展しています。

くわえて、コンテンツクリエーターや独立系アーティストも参加し、アリーナでのイベントも実施されるなど、さまざまな体験を楽しめるイベントになっています。この包括的なスタンスが、gamescomのユニークなポイントだと考えています。

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▲会場には巨大なアスレチックや卓球場なども存在。家族連れのお客さんの姿も多く、本文でも触れられているとおりゲーマーだけでなく多様な人々に「お祭り」として楽しまれているようだ

──なるほど。確かに会場に出展しているコンテンツの幅広さ、gamescomで楽しめるアクティビティの多さが印象的でした。

ティム氏:
ゲーム開発者向けの開発者会議であるdevcomは、わずか数年でヨーロッパ最大の会議に成長しました。これに関しても、私たちの最大の強みの一つですね。

シュテファン氏:
あとは、オンラインとオフラインの双方でイベントを実施するハイブリッドなアプローチを行う点も、我々の強みだと思います。

ハイブリッドなアプローチは、2019年に初めて開催されたgamescom Opening Night Liveを通じて開始しました。つまり、コロナ禍が起こる前からオンライン向けの展開を始めていたんです。

これにより国際的な注目度が飛躍的に向上しましたし、他のイベントが延期する中でもgamescomは毎年開催されました。

Opening Night Live以外にもgamescom epix、gamescom now、gamescom awesome Indiesなど、ハイブリッドなイベントとして数多くのデジタルオプションを提供しています。

──昨今では各企業が独自にオンラインで発表を実施し、SNSで独自にプロモーションを行う時代になりつつあります。E3でさえ終了してしまった今、改めて大型ゲームイベントの役割についてお伺いしたいです。

ティム氏:
我々のイベントでは、gamescom Opening Night Liveやgamescom awesome indies、その他のさまざまなショーがオンラインで開催されます。

そのいっぽうで、やはりオフラインでのgamescomは、ゲーム業界に携わる人たちが一斉に集まる場になっているんです。実際にさまざまな人と交流する場になっていることが、私たちのイベントを特別なものにしていると思います。

企業間の関係に、パブリッシャーと作品のコミュニティ、ファンが他のファンやお気に入りのコンテンツクリエーターと出会う機会など、gamescomではさまざまなレベルで人々が交流する機会を設けています。

現地での交流は忘れられない思い出を作り出しますし、こういった体験はオフラインの大型イベントならではの楽しみですよね。

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──いっぽう、gamescomは2020年、2021年はオンラインのみで実施され、2022年からオフラインで再び開催されるかたちとなりました。パンデミックを踏まえた変化はありましたか?

ティム氏:
パンデミックは私たち全員にとって挑戦の時期でした。

もちろん、いつものようにイベントに参加できないことを悲しんでいる人もいましたが、私たちのデジタル戦略に対してはかなり好意的なフィードバックをいただきました。ですので、困難な時期にもかかわらず、長年のパートナーが引き続き私たちを支えてくれたことに感謝しています。

また、パンデミック後の数字は明確なメッセージを示しています。それは「人々が直接の交流を愛しており、それを待ち望んでいた」ということです。

パンデミックを経て、2023年には32万人がイベントに参加しました。そして、2024年のgamescomに参加する出展者の数はさらに増加しており、昨年の記録を再び打ち破る勢いです。

プライベートや業界の来場者からのフィードバックは常に好意的なので、ケルンに再び皆さんを迎えられることを嬉しく思います。

──会場の規模も徐々に巨大化し、膨大な数の企業、ユーザーがgamescomに参加します。各参加者をどのようにサポートしてイベントを成立させていますか。

シュテファン氏:
まず必要なのは、各参加者がそれぞれの目標を達成できるように、イベント自体の堅固な基盤を築くことです。

たとえばgamescom bizでは、業界の専門家やジャーナリストがイベントに参加し、他の業界関係者と出会えるようにしています。新しい人々との出会いの機会を得る経路を短縮することで、交流を促進することを目指しています。

ティム氏:
また、我々は世界中からあらゆるジャーナリストやコンテンツクリエーターがケルンに来ていただけるように努力しています。

新しいゲームやデモ版を発表することなどは、出展者にとって非常に価値があります。なぜなら、出展社の皆さんはgamescomで起こっているすべてを自分たちのコミュニティに伝え、大きなリーチを獲得できるからです。

gamescomに出展することで、32万人のプライベート来場者にアクセスできるだけでなく、世界中の何百万人もの人々にリーチする可能性があるのです。

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▲会場は非常に広いが、それでもこのように混雑する箇所も発生するぐらいに人が多かった

包括的な出展企業の意義と、常に変化するビデオゲームシーン

──近年のgamescomではAmazonやNetflix、Disney+といった映像系のプラットフォームやトヨタなど、少しビデオゲームとは縁遠いように感じる企業も出展しています。イベントの盛り上がりを象徴するようなこの状況は、どのように生まれたのでしょうか。

シュテファン氏:
gamescomは、ゲーム文化全般を祝うイベントなんです。

つまり、私たちはビデオゲームのコミュニティが関心を持つすべてのコンテンツをカバーするつもりです。

昨今では、ビデオゲームを原作とするTV番組や、ボードゲームを元にしたビデオゲームなどが存在し、各分野はお互いに関連していますよね。

ですから、それらを切り離す理由はどこにもありません。私たちはゲームコミュニティに適したすべての出展者を歓迎します。

──昨年のgamescomでは60カ国以上の企業が出展し、Tencent GamesやNetEase Gamesといった中国の企業の出展なども印象的でした。長く開催されている歴史を通じて、ゲーム業界がどのように変化していると感じますか。

シュテファン氏:
ゲーム業界は常に変化し続けており、近年ではスタジオの閉鎖や大規模なレイオフが目立ちます。

そのいっぽうで多くのインディーデベロッパーが新作や続編をリリースし、成功を収めていることも印象的です。中国や韓国のスタジオがAAA市場に参入しているのもその一例です。

そして、そういったムーブメントがイベントにも反映されていると思います。現にgamescomには何百ものインディーデベロッパーが参加し、gamescom awesome indiesという専用のデジタルショーケースも開催しています。

とはいえ、インディーズデベロッパーの盛り上がりは変化の一例に過ぎないんです。VRやXRなどのトレンドや、特定のジャンルの発展など、さまざまな変化がイベントで見られると思います。

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▲インディーゲームエリアもメインホールに負けず劣らずの盛況だった

──先ほど仰られたように、昨今のビデオゲーム業界においてはインディーゲームの存在感が年を重ねるごとに増加しているように思います。gamescomとしてはどのようにインディーゲーム文化をサポートしているのでしょうか。

ティム氏:
インディーシーンをサポートするために、3つの主要な取組みがあります。

まず、gamescomのインディーエリアやグループオーガナイザーとしての申請が可能な仕組みにより、インディーズのデベロッパーさんたちはgamescomで展示するための2つの方法が用意されています。

これにより、割引されたブーススペースを確保したり、グループブースでプロモーションをするといったメリットを得られると思います。

インディーシーンをサポートするために作られた3つ目の取組みが、gamescom awesome indiesです。このショーでは、インディーデベロッパーがgamescomの公式デジタルショーの一環で作品をプロモーションするチャンスがあります。

本企画では、開発者インタビューやトレーラーの公開など、新作ゲームに最高の形でスポットライトを当てるためのさまざまな選択肢を用意しています。私たちは毎年インディーゲームに焦点を当て、今後も全力でサポートし続けます。

──gamescomはゲームの展示のみならず、同時開催のdevcomやコスプレイベント、ゲームの大会、音楽フェスなど、巨大なお祭りのように包括的なイベントになっています。とくにヨーロッパ在住の参加者やケルン市にとって、どのようなイベントとして認識され、楽しまれているのでしょうか。

ティム氏:
gamescomは一つの大きなイベントであり、その中に多くのアクティビティが集約されています。

たとえば、gamescom city festivalでは、gamescomの来場者だけでなく、ケルンの街全体、そして近隣の地域の人々が集まり、音楽やお祭りならではの雰囲気を楽しんでいます。

なので、開催期間中はケルンにいる誰もが楽しめるイベントになっていると思います。

シュテファン氏:
ドイツで世界最大のゲームフェスティバルが開催されるのは、本当に素晴らしいことだと、ドイツやケルン在住の方から伺っています。

イベントに取り組むたびに、私たちが置かれているこの特別な状況に感謝しています。

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▲ケルン中心街の一角
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▲有名なケルンの大聖堂。大きすぎて写真に入り切らない

──以前に公開されたインタビューでは、gamescomの強みは「ゲームビジネスとゲーム文化が社会全体と関わるためのプラットフォームである」と語られていました。イベントには政治家なども参加していますが、この点はゲームファンや業界にとって、具体的にどのようなメリットをもたらすと考えていらっしゃいますか。

シュテファン氏:
簡単に言えば、私たちの政治家がゲーム業界を支援すれば、より多くのスタジオが設立され、より多くの仕事やゲームが生まれます。

もちろん、現実はもう少し複雑ですが、第一にゲームが育まれる強力な環境が、経済にとってどれほど価値があるかを理解してもらう必要があるでしょう。

そのために、政治家に出席してもらい、ゲーム文化の価値や実態を実際に見て、感じてもらう必要があると考えています。

──最後に、今後も続いていくgamescomに関して、今後の展望や目標などをお願いいたします。

シュテファン氏:
ゲーム業界は常に変化しており、私たちもその変化に合わせて新しいアイデアや技術を導入し、コミュニティのニーズに応えています。業界の変化は予測できませんが、我々としてはできるだけ変化に対応できるよう今後も努めてまいります。

ティム氏:
私たちは、gamescomが設立された際のビジョンを大切にしています。そして、毎年何十万人ものファンを迎え、ゲームとゲーム文化を祝うイベントを作り続け、さらに発展させたいと考えています。

くわえて、ハイブリッドなアプローチも強化し、ユーザーさんがgamescomを体験しやすくできればとも思っています。

すべての取組みを引き続き改善し、今後10年、20年後にも「世界最大のゲームフェスティバル」であると、誇りを持って言えるようにしたいです。

──ありがとうございました。(了)

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編集者
ゲームアートやインディーゲームの関心を経て、ニュースを中心にライターをしています。こっそり音楽も作っています。
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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