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#5283 「解雇規制の撤廃」⇒「大企業に限定」⇒昭和型の終身雇用の破壊が目的… Sep.13, 2024 [8. 時事評論]

 リコーが昨日(9/12)2000人のリストラを発表した。そのうち1000人は希望退職者の募集である。

 自民党総裁選挙真っただ中、小泉進次郎氏は「聖域なき規制改革」を銀座の街頭演説でも繰り返し、「解雇規制の撤廃を叫んでいた。解雇規制には「整理解雇の四条件」があるが、そちらは前回#5282で採りあげたのでご覧いただきたい。
 出馬会見のときに「解雇規制の撤廃」を言い出した小泉氏は、批判を浴びるや「大手企業」の話だと矛先をかわした。大手企業の社員の解雇規制を撤廃することで、優良な労働力が労働市場へ流出し、スタートアップ企業が人材を確保しやすくなるのだという。ほんとうだろうか?
 そういう人たちがリスキリングによって、給料の高い企業へ転職すれば、給与が高くなるとものたまわった。賃金水準が正規雇用の半分以下の非正規雇用の人たちが、リスキリングで高い給料をもらえる企業へ転職しやすくなると言ったのは、河野太郎氏も同じである。ぼんぼんお二人が同意見なのはとっても興味深い現象である。

 4世議員で民間企業への勤務経験がない小泉進次郎氏が民間企業の実態を知らないのは理解できるが、河野太郎氏は日本ゼロックスや日本端子への勤務経験があるのに、どうして大企業の社員をリストラすれば、非正規雇用の年収がアップするようなことを主張するのだろう?不可解である。

 非正規雇用の年収をアップするために、「解雇規制の撤廃」と、小泉進次郎氏は出馬表明のときに明言し、9名勢揃いの討論会では、「大企業の話であって、中小企業のことは言っていない」と軌道修正、今日(9/13)のNHKでの9名の討論会や番組「エブリー」での討論会では、「規制緩和の話ではなく、昭和の時代に行われていた新卒⇒定年までの終身雇用を壊して、時代にあった流動性の高い労働市場を創ること」へ話がズレまくっている。
 終身雇用制はもう30年以上も前に有名無実化しているし、非正規雇用が低賃金であることは企業規模の大小を問わないし、民間も官も同じ問題を抱えている。そんな現状認識すらないらしい。

 新卒で卒業して定年まで勤める終身型雇用なんてとっくにない。大手企業は業績が悪くなると、リストラを断行するのが普通になっている。大手繊維メーカーだった帝人は業績不振から、200名余りを本社のあるビルの隣にフロアを借りて、仕事をさせずに辞めていくのを待ったなんてことは、ワンマン経営の大屋晋三氏が社長を退いた後だったから、40年以上も前だろう。過酷なリストラを経て今がある。日産自動車が村山工場など5工場を処分して、2.1万人の社員をリストラ、カルロス・ゴーンはそんなことを1999年から3年間でやっている。日産はその後も数千人単位のリストラを繰り返している。
 東芝も4月に5000人規模のリストラ案を公表している。
 国鉄に勤務し、JR民営化でJR北海道となり、中学同期の友人は50歳前後で月収が20万円程度になったと嘆いていた。国鉄民営化は1987年、昭和62年のことである。

 だから昭和型の終身雇用制は昭和でジ・エンドになっている。いまごろ昭和型の終身雇用制度が労働市場の流動性を阻害しているなんて認識がどこから出てくるのだろう?

 とっくにないものを、あるかのように言う。そして、「解雇規制の撤廃」を出馬会見で1年間で成し遂げるいくつかの政策とともに挙げて、都合が悪くなると、「大企業の話」とすり替え、そして今日は「昭和型の終身雇用を壊すと労働市場の流動性が高まり、大企業がリストラ社員のリスキリングを支援することで、給与の高いスタートアップへ転職が可能になる」なんてありもしない絵空事を述べていた。社員のリストラやリスキリング支援と、非正規雇用の給与アップは何の関係もない。

 リコーの2000名のリストラを例にとってみよう。
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リコーは(9月)12日、2025年3月までに国内外で2000人の人員を削減すると発表した。連結従業員の3%に相当する。オフィス向け事務機の営業部門や保守メンテナンス、管理など幅広い部門が対象となる。事務機市場がペーパーレス化で縮小するのをにらみ、オフィス業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援に経営資源を集中する。

24年3月末時点の連結従業員数(7万9544人)の3%程度を減らす。

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 利益率の悪い、そして将来性のないオフィス向け事務機の製造・販売保守業務から撤退するので、その部門の社員がリストラ対象になる。その対象者をリスキリングによって、DX事業へ投入するのは不可能だから、リストラするのだ。人間を丸で消耗品=コモディティのごとくに扱っている。あなたたちにスキルは不要になったから、切り捨てるというのだ。リスキリングが可能なら、リコーはオフィスDX事業に投入するだろう。
 リコーだけではない。コピー機を扱っているのはキャノンや富士ゼロックスも同じだろう。業界全体で、リストラ旋風が見舞うから、同じ職種で転職は不可能、つまり大多数のリストラ対象者は、今まで経験のない業種で経験のない職種につかざるを得ないだろう。もちろん、年収は半分以下になる。

 つまり、小泉進次郎氏や河野太郎氏の言う、リスキリングによる、転職で給与アップはありそうもない話である。
 希望退職者を1000名募集しているが、そのうちの10名程度は給与をアップして転職できるかもしれない。そんな程度ですよ。
 
 こういう時に大企業は、子会社への再就職を斡旋する。子会社は親会社よりもずっと規模が小さいし給与も、半額程度である。親会社から転籍して給与が下がらないのは子会社の役員クラスのみである。

 学校を卒業した後に、10年でも民間企業で働いたことがあれば、こんな非常識な人材にはならなかっただろう。つまり、4世議員はこういうところの経験がないので、庶民から見るととんでもない常識外のことを口走る。

 テレビ番組evryの調査では、自民党支持者の支持率は、1位が石破茂氏、2位が高市早苗、3位が小泉進次郎氏、河野氏は3%で番外。
 渡欧論界の会を重ねるごとに、小泉進次郎氏の支持率が落ちつつあるようだ。喋れば喋るほど下がるのかもしれない。質問を理解できずに、自説にこだわってメモを見ながら頓珍漢な答え方が目立った。大人の討論会に子供が参加しているような感じを受けたのは、わたしだけではないだろう。

<余談:大手銀行や自衛隊からの転籍役員>
 臨床検査最大手のSRLへ1984年2月に転職した。最初は経理部経理課所属で、経理部長は大手銀行からの出向者で松山商業卒の人だった。彼はそののち監査役になったが、銀行の同僚たちが小さな病院の事務長や、居酒屋の店長へ出向⇒転籍して、年収が500万円前後に下がっていることを知って悩んでいました。「ebisu、飲み会があって年収の話が出ると、身が縮まる思いがする、言えないよ」、彼の年収は銀行の元同僚たちの4倍ほどでした。「出向がたった3年早かっただけで俺はついていた」、そうしみじみ語っていました。
 大手都市銀行は、1980年代半ばには50歳前後で取引先企業へ出向し、2~3年後に転籍が普通でしたね。定年まで勤めあげるのは取締役への出世が見込める人たちくらいなものでした。
 自衛隊も同じです。防衛調達品の取引先企業の役員クラスや部長職へ転職(もちろん防衛庁が斡旋してました)、輸入業務をしている企業は仕入れ価格を操作して、高い利益率が確保できるという仕組みになっていました。米国へ防衛庁が価格調査に行きますが、それに天下りした防衛庁のOBが同行して、「問題が起きないように」対応していました。
 上場直前の企業には、信託銀行や保険会社からの天下りも多いのです。50歳前後が目安でしたね。

 大企業のリストラはもう40年以上、続いていることなのです。「昭和型の終身雇用」なんてほとんどありません。40代以上の社員はいつリストラされるか怯えています。


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#5282 自民党総裁選挙で見た三世議員二人の感覚と論理と資質 Sep. 7, 2024 [8. 時事評論]

 河野太郎は河野洋平の長男であり、河野洋平は河野一郎(衆議院議員)の息子である。三代目の世襲議員ということになる。
 総裁立候補の際に反町理がMCをやっているテレビ番組に出て、自分の考えを述べていた。気になったのは「労働市場の流動化」と経済政策に関して述べたデジタル化による生産性アップである。民間企業のデジタル化に政府が口出す必要も余地もない。著しく遅れているのは政府です。生産性を上げなければ淘汰されるのが民間企業の世界であることすらご存知ない様子。

 非正規雇用の給与を上げるには、付加価値生産性の高い分野の企業へシフトすればいいというのが彼の意見。どうやって労働市場の流動化をするのか具体策はなかった。
 非正規雇用で付加価値生産性の高い企業の正社員にどうやったらなれるのだろう?民間企業で働いたことがないから、そんなことができるのは正社員だってせいぜい5%未満であることを知らないのだろう。

 デジタル化によって生産性をアップする事例に上げたのは、電卓を残業時間計算でした。
 電卓をたたいて残業時間の計算をしているのをコンピュータ処理すれば生産性が上がるとのたまわった。上場企業では30年以上も前にそんな実務はなくなっている。いったいどこの経済社会どこの国の企業の話をしているのだろう。民間企業の実務をまったくご存じない。こんな人がデジタル大臣をやったら、国の政策は滅茶苦茶になるのはあたりまえだなと思った。マイナンバーがそうなっています。もう一人の立候補者内閣官房長官林芳正氏(三世議員)はマイナンバーと医療保険証の統合を見直すと今日発表しています。国民の声に耳を傾けようとしているように見えます。ごり押しする河野氏とは対照的です。
 mRNAワクチン輸入契約でも製薬企業の免責事項を鵜呑みにして、半分を棄てるような実務を指揮してしまった。外国企業との契約実務に関する専門知識がなかったのです。専門書を読むとか実務に詳し人の話を聞くとかすれば、ピントを外さないで済みました。傲慢な性格が災いして専門家の意見に耳を傾けることもできない。副作用ファイザー社やモデルナ社の副作用被害を契約書で免責したために政府が救済するしかなくなりました。いまだに契約内容が公開されていません。他の国はやっていますよ。
 自分が責任をもつからどんどん打ってしまえと号令をかけて、国内で臨床治験をやらなかったので、実際に死亡事例1900例を含む深刻な副作用が多数出て、いろんなところへ相談しても埒が明かない被害者が、河野氏のサイトに書き込むと2時間でブロック。自分の意に沿わぬ意見はすべて「誹謗中傷」だとしてブロックし、「ブロック太郎」という異名がついてしまいました。そのあたりの対応は兵庫県の齊藤知事によくています。
*コロナワクチン被害者「河野太郎大臣にブロックされた」SNSで苦境を訴えた直後 法廷で証言


 もう一人の三世議員は言わずと知れた小泉進次郎氏。ああ、四代目のようです。曾祖父の又次郎も議員ですから。彼も河野氏と同じように「労働市場の流動化」を主張しています。「解雇規制の撤廃」だそうです。企業が自由に解雇できれば、職を失った人たちが労働市場へなだれ込みます。そうすることで、人手不足が解消すると嘯(うそぶ)きました。これジョークではありませんよ、本人は大真面目なのです。
 人手が足りないのは、介護、保育、外食産業などです。低賃金で非正規雇用が多いことが人手の足りない原因です。働いたことがないから、いろんな業界の実態を自分の目と耳で見聞きしたことがないのでしょう。
 一生懸命に練習したのでしょうね。出馬表明会見で演説するときに、2秒ごとにカンペを見てました。わけのわからぬことばかり喋ると巷で言われているのを気にしたようです。
 もしパネルディスカッションが開催されるとしたら、この二人はどういう議論ができるのでしょう?

 3世議員はもう災害レベルのようですね。親と同じ選挙区からの立候補を法律で禁止してもらいたい。

 民間企業も三代目が初代の苦労を知らず、無能で会社を潰すことはよく知られた事実です。わたしが勤務した企業でも1社そういうところがありました。初代はスタンフォード大卒でHP社創業者のヒューレットやパッカードと同期、その縁で戦後横川電機とHP社の合弁会社YHPができるまでは、HP社の総代理店をしていました。二代目は慶応大学大学院経済学研究科修了、三代目は東大卒。軍事と産業用エレクトロニクスの専門輸入商社でした。90年代に店頭公開して、2010年頃に業績不振で吸収合併して消滅しています。わたしが仕事したのは2代目が四十代後半のとき、1978年9月~1984年1月末日まででした。6年間仕事して、入社1か月後にできた会社の経営を左右するプロジェクト6つの内の5つを担いました。長期計画委員会・資金投資委員会・為替対策委員会・収益見通し委員会・電算化委員会、担当しなかったのは利益重点営業委員会でしたが、円定価システムを作る仕事がメインだったので、結局、担当していた東京営業所長の遠藤さんに協力要請を受けて担当しています。その結果、劇的に収益構造と財務体質が変わりました。25年は何もしなくてもこの会社は飯が食えると辞表を書いたときに思いました。その会社がつぶれたのは26年目でした。
 世襲国会議員の三世は民間機企業とは違って消滅しませんから「災害」なのです。
 選ぶ側の国民が試されています。国民がバカなら総理大臣もバカがなるだけのことなのでしょう。
 東京都がそうなっていますね。東京都の場合は、候補者が何人出てきても、実際には選択肢がないというのも事実でした。鶏が先か卵が先か、さてどうなのでしょう?

<余談-1:解雇規制>
 解雇規制というとすぐに頭に浮かぶのが整理解雇の四条件である。小泉進次郎氏はこれを廃止するのだろうか?
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「整理解雇の4要件」のポイントは、それぞれ以下の通りです。

(1)人員整理の必要性
どうしても人員を整理しなければならない経営上の理由があること(「経営不振を打開するため」は可、「生産性を向上させるため」は不可)。
(2)解雇回避努力義務の履行
希望退職者の募集、役員報酬のカット、出向、配置転換、一時帰休の実施など、解雇を回避するためにあらゆる努力を尽くしていること。
(3)被解雇者選定の合理性
解雇するための人選基準が評価者の主観に左右されず、合理的かつ公平であること。
(4)解雇手続きの妥当性
解雇の対象者および労働組合または労働者の過半数を代表する者と十分に協議し、整理解雇について納得を得るための努力を尽くしていること。
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 兵庫県庁で内部告発した県民局長を解雇処分して自殺に追い込んだのは斉藤知事と片山副知事など数人の幹部職員。民間企業の解雇規制を撤廃したら、そんなことが普通に行えるようになるでしょう。
 日本をどんな経済社会にしたいのか、小泉進次郎氏に具体的なビジョンあるのかな?


<余談-2:立憲民主党パネルディスカッション>
 党首立候補者4人によるパネルディスカッションが記者クラブで開かれていました。現代表の泉さん、国会議員になる前はデイサービスセンターで働いていたと言ってました。知りませんでしたね。松下政経塾で遊んでいて、まともに働いたことのない元総理の野田さんよりは、庶民の気持ちがわかる人のような気がしました。
 いっそ女性党首に任せてみたらいかが?
 国会議員1期目、異色の経歴の吉田晴美さんは、石原伸晃氏と小選挙区で競って勝ち上がった人でしたね。強運かもしれません。彼女の運に乗っかることができたら、立憲民主に追い風が吹くかも。
 野田氏と枝野氏はもう過去の人、どうして若い人の応援に回れないのでしょう?

 『徒然草』第151段を繰り返し読んで、身の処し方を誤らぬようにしたいものだ。
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或人の伝はく、年五十になるまで上手にいたらざらん芸をば捨つべきなり。励み習ふべき行末もなし。老人の事をば、人もえ笑わず。衆(しゅう)に交りたるも、あいなく、見ぐるし。大方、万(よろづ)のしわざはやめて、暇(いとま)あるこそ、めやすく、あらまほしけれ。世俗の事に携はりて、生涯を暮らすは、下愚(かぐ)の人なり。
ゆかしく覚えん事は、学び聞くとも、その趣を知りなば、おぼつかなからずしてやむべし。もとより望むことなくしてやまんは、第一の事なり。

 <口語訳>
ある人の言うことに、五十歳になるまで上手に至らない芸は、捨てるべきであると。がんばって練習しても見込みも無い。老人の事を、(遠慮して)人も笑えない。多くの人に交わるのも疎ましく見苦しい。大方、あらゆる仕事はやめて、暇であるのが、見た目にもよく、そうありたい姿だ。

<なってほしくない人の1位と2位に...>9/9追記
 国民の眼は案外確かなようですね。
 文春オンラインの標記アンケート調査で、総理大臣になってほしくない人の1位に河野太郎氏、2位には小泉進次郎氏の名前が挙がていました。
 別の記事では銀座での小泉進次郎氏の宣伝活動で菅前総理が全面的なバックアップを表明しています。相変わらず滑舌悪く、身体の動きも認知症の老人のようにぎこちない、あれでは応援になりません。森本総理や菅元総理の全面的なバックアップを受けて、自民党改革なんてできるはずもありません。中身の希薄な絵空事を叫んでいます。叫んでいることとやっていることがまるで逆ですから、頭の中がどうなっているのでしょうと思う人が多いことは自然の成り行きです。
 小泉進次郎氏の演説スタイルが、どこかヒットラーに似てきたと感じるのは、記事に掲載された写真左手が、「ハイルヒットラー!」の挙手に似ていたからだけではありません。短いキャッチフレーズで大衆を先導する政治活動のスタイルそのものがヒットラーに酷似してきたということ。
*石破茂でも高市早苗でもない…自民党総裁「なってほしくない人」アンケート1位は“あの世襲議員”「昔はファンでした。でも…」

**小泉進次郎氏に「日本のかじ取り任せたい」 菅前首相が応援演説

田中真紀子節:小泉進次郎をバッサリ9/9 23時追記
 テレビ番組ミヤネ屋に出演して、田中真紀子さんが次のように述べてました。

第64・65代内閣総理大臣の田中角栄氏(享年75)を父に持ち、’01年には女性で初めて外務大臣を務めた田中さん。現役時代は歯に衣着せぬ物言いで注目を集めた田中さんは、9日の『ミヤネ屋』でも本領を発揮することに。例えば27日に行われる自民党総裁選は候補者が乱立しているが、そのことについて田中さんは「いまの候補者がた、たくさん次から次に出ていらっしゃるけど、まあなんか勘違いしてるっていうか」とコメント。そして、こう続けた。 「私の今の立場で見ますとね、ヘナチョコばっかりが出たいから出てきてると。出したい人じゃなくて、この際、出とかなきゃと売名をかねてですね。与野党ともに。ふざけてますよ」 候補者を「ヘナチョコ」「売名」と吐き捨てた田中さん。さらに“真紀子節”は6日に会見を開き、正式に出馬を表明した小泉元大臣に照準を合わせた。会見で憲法改正について「戦後初めての国民投票を実施したい」などと述べ、総裁になることに意欲を示していた小泉元大臣。しかし、田中さんは「(総裁に)この方がなってもらっちゃ困りますけど、個人的には。できるわけない」と一刀両断。さらに、こう苦言を呈した。 「現実がわかってないんですよ。ライドシェアくらいはできるかもしれないけど。皆さんの声を聞いて勉強しておられない」 小泉元大臣は不勉強だと、手厳しく評価した田中さん。潔い物言いは好評なようで、Xでは賛同する声が続々とこう上がっている。


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#5277 池に石を投げてみた:石破氏の出馬表明 Aug. 25, 2024 [8. 時事評論]

 昨日(8/24)、石破氏は鳥取県の地元の和多理神社で自民党総裁選への出馬表明を行いました。
 朝日新聞(8/25朝刊)の第一面の記事によれば、「裏金事件には厳しく望む」「国民の審判を受けるにふさわしい候補者か、党として責任を持つ」とのべ、裏金事件の処分議員を公認しない可能性に踏み込んだと書いてあります。

 最初に名乗りを上げた小林鷹之氏が、裏金事件で処分を受けた議員も使わなければ回らない」としたのとは、対照的ですね。
 今回の選挙は、統一教会がらみ、裏金事件がらみで岸田首相が自民党総裁選挙に不出馬表明したことによって、様相ががらりと変わりました。

 統一教会との密接な関係が取りざたされている菅元首相がや安倍派の森元首相がバックにいる小泉進次郎氏も、統一教会関連議員や裏金事件議員を公認しないとは言えないでしょう。
 四十代の議員二人が一気に色褪せました。古い自民党の体質そのものを受け継いでいるからです。

 石破氏は5度目となる総裁選挙挑戦を「38年間の政治生活の集大成で最後の戦い」と位置づけ「国民と誠実に向き合う政治にしたい」とのべた。

 政治資金保父記載があった現職議員らは85人ですから、これらを全部敵に回したことになります。実際の処分は不記載総額が500万円以上の議員らと一部の安倍派幹部を含む39人です。

 自民党国会議員は当選4回以下の議員が過半数を占めています。さて、その議員たちがどういう判断を下すのか見物です。
 石破氏を選ばなければ、すぐに行われる衆議院選挙で屍累々となるでしょう。石破氏を選べば、39人が自民党公認を得られません。そしてそこに、新たな自民公認候補が出てくれば、裏金議員で処分を受けた議員の半数は議席がなくなります。お金をかけない正直な政治をやろうと言ってますから、選挙区への多数の秘書の張り付けは不可能になりそうです。私設秘書を多数抱えてお金のかかる選挙をしている2世3世議員にとってはまことに不都合ですから、政治が変わります。

 石破氏を選ばなければ、50~100人くらい議席を失うかもしれません。
 どっちへ転んでも、現職自民党衆議院議員には厳しいことになります。
 自民党は岐路に立たされているようですね。
 好きな方を選んだらいい。

 健全な保守政治が訪れますように.....m(^-^)m


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石破茂氏「原点に返る」 鳥取の神社で出馬表明、支持者も詰めかけ

 「38年間の政治生活の集大成として、これを最後の闘いとして、原点に戻り、全身全霊で支持を求めていく」。自民党の石破茂元幹事長(衆院鳥取1区選出)が24日、生家に近い鳥取県八頭町郡家殿(こおげとの)の和多理(わたり)神社で記者会見を開き、自民党総裁選(9月12日告示、27日投開票)に立候補する意向を正式に表明した。
 石破氏は和多理神社を出馬表明の場に選んだことについて、「ここは父祖の地。子供の頃の夏休み、ここで夏祭りがあった。本当ににぎやかだった。日本は豊かではなかったが、一人一人に笑顔があった。私にとって一番の思い出だ」と振り返り、「政治家になった原点に返りたい。党よりも、国民一人一人を見る、それが自分の原点」と話した。



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#5275 玉川徹さん、対話するときに「論点ずらし」はご法度ですよ Aug. 22, 2024 [8. 時事評論]

 8月21日のテレビ朝日の朝の番組を見たら、玉川徹さんが、やけに感情的になっているシーンで出くわしました。たまにそういうことがあるので、今日は、彼に俎板に載ってもらいます。程度の差はありますが、類似の傾向の人がときどきいます。自分で意識することで、ある程度は防げますから、駄文の中からヒントをつかんでください。

 それは、神戸市長の久本喜造(ひさもときぞう)さんとタワーマンションについて激論しているシーンでした。
 神戸市はタワマン規制をしていますが、玉川さんの主張はタワマンは規制すべきではない、コンパクト・シティ造りのためにも推進すべきだという立場です。タワマン賛成派としておきます。

 災害時にタワマンの上層階の住人が置き去りになると久本市長が発言すると、玉川さんは阪神淡路大震災の時に取材に入ったら、高層ビルの市庁舎の1・2階に被災者が避難していたのは、建物が頑丈なタワマンだったからだと発言しています。震災時に避難所として役に立ったという事例を具体的に挙げてました。反証事例が、経験に基づき、自分の目と耳で確認した事実なのですから、その点は立派ですよ。
 ところが、市庁舎はタワマンではないわけで、住人はいません。玉川さんは無意識に論点のすり替えをしてしまいました。自覚がないようでしたね。タワマンの1・2階には住民が住んでいるわけですから、避難所として使えるわけもありません。市庁舎は「タワマン」ではなく、「オフイス用の超高層建物」で用途が違います。久元氏は超高層ビル全部を否定しているわけではないのです。オフィスビルには言及していません。話題は「タワマン」に限定されていました。

 たとえば、ある企業が30階建てのオフイスビルを建てたとしましょう。50年後に解体するとすると、取り壊し費用を毎年積み立てる必要があります。企業会計原則上そうなっているのです。会社が倒産しない限り、大丈夫です。
 ところが、タワマンの管理組合で、50年後の取り壊し費用を積み立てているところはないでしょう。50年後には老朽化した住むに堪えない建物が残ります。取り壊し費用の積み立てはありませんから、老朽化し、あちこち傷んでしまった資産価値の減少した建物が残ってしまい、そのまま放置されるというタワマン特有の困った問題が起きます。100mに近い、上の階から順次解体しなければならないので、解体費用は巨額になります。その費用をだれが負担するのかという問題が必ず生じます。もちろん、タワマンの区分所有者達ですが、1戸当たり1000~2000万円にもなるであろう解体費用を最後の所有者達が負担できるでしょうか?解体してしまえば、住む家はないのです。
(法律を作って、管理組合が引き出せない外部積立制度を作り、耐用年数に応じて毎年解体費用積み立てを強制するという手はあります。タワマンの販売価格が跳ね上がりますが、いずれそうしなければいけなくなります。いやすぐにもそうすべきです。)

 久元さんは神戸市生まれで、阪神淡路震災をよくご存じでした。あのときにはタワマンはありませんでしたが、放っておくとニョキニョキとタワマンが中心部の三宮の周辺に建てられてしまうことに危惧を抱いています。タワマンが建つと、小・中学校が必要になりますが、すぐに不要になります。子どもたちは20年もすれば大人になってしまいます。新たに生まれる子供たちの数は20年後には激減しています。20年で不要になる学校建物にお金をかけなければならなくなるのは避けたい。その一方で、郊外の学校は生徒が減少して空き教室だらけです。廃校になり校舎が残っている地域も多いのです。地域社会全体のコストを考えるともったいないと思います。周辺地域からタワマンの林立する地域へ人口移動が起きれば、周辺地域のバスなどの交通インフラが維持できなくなる可能性が出てきます。久元市長はその点を憂慮していました。
 どんな都市にしたいのか、そこに住んでいる人たちが徹底的に議論して、自分たちが住む地域のビジョンを作り、そこに向けて実現の努力をすべきというのが、久元市長の考えでしたね。
 終始穏やかに、玉川さんの反論に具体的に答えてました。意見の異なる人の主張にも耳を傾け、自分の考えているところを丁寧に説明できる穏やかな人柄がよく伝わってきました。

 久元市長の話し方や論理がすぐれたものに見えましたので、経歴を見ると東大法学部で、行政学と国際政治のゼミをとっています。ゼミで議論を戦わせることで、議論のお作法を身につけたように見えました。難関大学出身者でもこういう議論のできる人は100人に一人いるでしょうか?経験上からもとっても少ないと思います。
 玉川さんは京大農業土木です。ゼミについての記述はwikiにはありませんでした。農業土木で京大大学院修士課程を卒業されて修了されています。理系分野の研究室は、意見の異なる人との議論の量が少ないのかなと思いました。

 あの番組では、ときどき玉川さんが感情的になるシーンを目撃します。意見が対立するときに、自分の経験を交えた具体的な反論がなされますが、感情が先に立って、幼児化現象が起きているように見えます。相手の論旨を正確にとらえられなくなります。ちゃんとした方ですから、意見が対立していないときにはそんなことはありません。意見の対立する人との議論に慣れていないように見えるのです。

 大学時代のゼミでの先輩や同期との議論というのは、実はとっても重要な気がします。ゼミで議論することで、議論の仕方、マナーが自然に身に着きます。議論するときには相手の主張に耳を傾け、正確に理解しようとする、そういうことをちゃんとしてから、反論をします。無意識の論点ずらしは、議論を的外れなものにし、有害無益です。

 わたしも投稿欄で意見の異なる方と議論することが、たまにありますが、できるだけ相手の主張を正確に理解したくて、主張がはっきりしていないときや私に理解できないときには、どういうことか敷衍していただいたり、「こういうことでしょうか?」と確認するようにしています。
 FB上でもたまに議論することがありますが、論点ずらしは滅多に見ませんが、あります。無自覚な論点ずらしはなかなか治りませんね。40歳を過ぎたら、本人が自覚して治そうとしない限り、ほとんど直らないと思ってよいようです。だから、中高生や大学生の時代に、意見の異なる人と対話することに慣れておくべきでしょうね。企業で働くときにもとっても役に立ちます。企業の中では、意見の同じ人の方が少ないのが現実です。だから、意見の異なる人とのコミュニケーション能力が要求されます。とくにプロジェクト仕事は専門分野の異なる人が集まります。相手の専門分野の専門用語くらいは承知していないと、誤解が生じます。そういう人たちを束ねるときに、コミュニケーション能力とマネジメント能力の両方が必要になります。
 人格円満で、コミュニケーション・スキルが自然に身につく人は稀ですから、私を含めてたいていの人は、コミュニケーション能力を磨く場が必要です。旬の時期がありますから、それを逃してはいけません。旬の期間は短いのです、せいぜい二十歳ぐらいまでですよ。高校の学校祭のクラスごとのまとめ役、部活、校則改正など、何か責任のある仕事をするときには、意見の異なるメンバたちと調整=コミュニケーションが求められます。受験勉強だって、優秀な先生やそれぞれの科目に秀でた同級生とのコミュニケーションは不可欠です。

 半数を超える人たちが大学へ進学していますが、大学や大学院で、各分野で国内トップレベルの指導教授や、数人の授業で教授や先輩、同期と議論するときには、論点ずらしは通用しません。自分で気がつく人は恥ずかしい思いをしますが、恥ずかしいから、何度もやらなくなります。たいがいは、ゼミに入った当初に先輩から「論点ズレてるよ」と指摘されます。たいていの教授はそんな野暮なことは言いません。大学生は子どもじゃないのですからね、本人の自覚を待っているだけです。自覚ができなければ、それだけの能力と見切られます。自覚の問題ですから、注意はしないのです。それも含めて教育なのでしょう。小学校や中学校、そして高校ともそういう点で、大学や大学院はまるっきり違っています。

 玉川さんを俎板に載せましたが、彼はまともなほうですので...
 同じ番組の出演者にはもっと頻繁に幼児化現象を起こす方がいらっしゃいます。お父様も、意見が対立するときには幼児化現象の強い人でしたね。

<余談:タワマン建物廃棄費用>
 久元神戸市長は、タワマンはいずれどうしようもない廃棄物になると主張していました。理由は廃棄費用の積み立てがなされていないことと、タワマンは住民の区分所有であることの二点です。数百所帯も入るような大型のタワマンでは、耐用年数が過ぎて取り壊すときに全所帯から解体費用を徴収しなければいけませんが、高齢化した所帯も若い所帯も、巨額の解体費用を拠出するのは甚だしく困難ですし、協議がまとまらないでしょう。まとまらなければ放置されてしまいます。
 東京都では昨年は150棟を超えるタワマンが新築されています。小池知事、50年後や首都圏大震災の時のことを考えているのでしょうかね。
(築地の移転問題や、東京オリンピック跡地の例に見るまでもなく、不動産デベロッパーと都政との癒着が目につきます。)

 この点でも玉川さんが、1週間過ごせるだけのものを備蓄してあれば、タワマンの住人は震災をやり過ごせると主張しました。論拠は阪神淡路大震災では停電が1週間後に復旧したからだそうです。
 久元神戸市長は電気だけではない、上下水道が困ると仰っていました、90日間ストップしていたと。30年前に神戸にはタワマンがなかったことが幸いでした。水道もトイレもお風呂も90日間使えないのです。どうしますか?糞尿はビニール袋に入れて室内に保管するしかありません。
 25階に住んでいたら、飲み水をどうやって運ぶのでしょう?2018年9月6日の北海道胆振東部地震で3日間、北海道全域が停電しました。水道も一部止まりました。5階建ての集合住宅に住んでいる高齢者は、水の確保に困りました。塾へ来ていた女子高校生が、「無理だから、水を運ぶの手伝いました」って、笑顔で報告してくれました。これが20階まで18Lの容器に水を入れて運び上げることなら、話はまるで違ってきます。住居を放棄するしかありませんが、避難所は一軒家の人たちだけしか、想定されていません。避難所の外に、何倍もの人たちが取り残されるでしょう。電気が復旧しても、エレベータは点検が必要です。首都圏のエレベータを点検するのに何か月間かるでしょう?
 仮設トイレが、外にできても、上層階から階段で降りるのは30分かかりますよ。漏れちゃいます。たいへんなことになります。汚物だらけの室内で何か月間も暮らさなければなりません。実際には不可能ですから、避難場所に殺到します。タワマンに限らず、マンション住人は、避難所には来ない前提で災害対応計画が組まれています。
 首都圏で大震災が起きたら、上下水道の復旧は1年間でできるでしょうかね?腕の良い上下水道職人が首都圏にそんなにいないと思います。完全復旧にはおそらく1年以上かかりますよ。能登半島沖地震で8か月がたった現在でも、水道がいまだに普及していない地域があるようです。

 首都圏大震災のときには、トイレがたいへんな問題になります。弊ブログで何度も取り上げています。行政に任せっぱなしではいけません、住民の方から声をあげないと具体的な整備がなかなかなされません。
 先月7月に行われた都知事選挙で、首都圏震災時のトイレ問題に言及した候補者はいたでしょうか?

 一番好いと思われる策は、内部留保を使って社員に給料を保障して、首都圏の外へ1年間避難してもらうことです。数百万人が避難できれば、復興はずいぶん効率的にできます。いまから具体的な手順を考えておき、いざ災害発生時には間髪入れずに実行できる準備をしておくことが大事です。

 玉川徹さん、俎板に載せてごめんなさい。実はあなたのファンなのですが、時折感情的になる欠点も含めてのファンです。だから、今のままで結構です。変わらないでください、人間欠点があるところがかわいさでもありますから。


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#5267 日本企業の変化を読む:日経平均2216円下落 Aug. 4, 2024 [8. 時事評論]

 経済同友会代表幹事の新浪 剛史氏(サントリー代表取締役)がブラックマンデー(1987年10月29日)に次ぐ8/2の日経平均の下落に、次のようにコメントしています。

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株価の急落について経済同友会の新浪代表幹事は2日の会見で、「株価上昇の大きな要因として円安があったのは事実で、円安で株価が上がった分がはげて今後のことを考えたら、リスクを回避しようという投資家がいるのは当然のことだと思う。また、私はアメリカの消費経済はそれほど強くないと思っていたが、それがデータに出てきて、サプライズになったのではないか。アメリカの景気は底堅いけれど、厳しいなということになり、景気の先行きが怖くなってきたのではないか」と述べました。

そのうえで「本質的に日本の経済の状況、とりわけ企業は足腰がしっかりしているので、一喜一憂せずに株式市場は調整局面だと見ていくべきだと思う。円安に支えられた株価ではなく、実体経済と合った株価に変わっていくのではないか」と述べました。
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 新浪代表幹事、自画自賛ですね、立場が言わせる意見のように聞こえます。
 経済や企業経営の見方にはさまざまな視点があります。
 別の視点、たとえば、この30年間の日本企業の経営スタイルの変化と日本経済の変わりようを俯瞰してみましょう。まったく別の姿が浮かび上がります。

①非正規雇用が増えて、約40%も占めている
②上場企業経営者の報酬が大幅にアップした
③実質賃金はほとんどアップしていない

 雇用形態と上場企業経営者の報酬に大きな変化が読み取れます。経営者と株主だけが利益を享受すればいい、そこで働く人たちの平均給与は、非正規雇用の拡大で30年間ほとんど伸びないということになりました。強欲が日本の企業経営者たちに蔓延したのです。感染力の大きな「強欲ウィルス感染症」が流行ったかのように見え、企業経営者は右へ倣いしてます。人件費を削ることで簡単に利益が出せるからです。企業を支える人たちの雇用を不安定にし、平均賃金を抑えることで、利益を増やし、それを手柄として自分単たちの報酬は2~30倍にしました。


 日本企業には普遍的なビジネス倫理として受け継がれてきた、「売り手よし・買い手よし・世間よしの三方よし」という伝統的な価値観がありました。その灯が消えつつあるように見えます。動物本能に駆られた強欲な経営者が増えたということです。大数学者の岡潔先生は「自他弁別能」と言っています。経営者とそこで仕事をする人たちは同じではない、別のカテゴリーだということです。自他の区別はない、彼も我も同じというのが「平等性智」の働きです。人間の理性ですよ、その働きがとても弱い、人として問題のある経営者が増殖しました。
 悪名高い日産のカルロス・ゴーン元社長だけではありませんよ、豊田章男氏も10億円を超える報酬を手にしています。最近の検査の不祥事では「不正を撲滅するのは無理だ」と言ってましたね。でも、ユーザーの信頼にこたえてもらいたい。自動車業界ナンバーワン企業がこれでは困ります。トヨタ一社だけが巨額の利益を上げて、3万あると言われる下請け企業の大半は、青息吐息の経営です。これも動物本能の働き「自他弁別能」のなせる業ではないでしょうか?
 ところで、30年前には、上場企業の取締役で報酬が1億円を超えている人は一人もいなかったのではないかと思います。2023年度のデータでは2億円以上が267人いるそうです。ご覧ください。
*「年収1億円超」の上場企業役員ランキングTOP500

 株価(日経平均)がアップしているのは、GPIFや日銀が大量に株を購入したからです。
④日銀がETFで東証上場企業株を時価で70兆円保有している
⑤年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)の国内株式保有額は61兆円
⑥上場企業は自社株を購入・消却して株数を少なくして株価を吊り上げている

 両方で上場企業株の15%も購入したのだから、現在の株式相場は、政策的に作られたものといってよいでしょう。日本銀行は総資産が膨らみ過ぎているので、早晩売却処分すべきであるし、GPIFも年金支払いに充てるために、売却せざるを得ません。だから新たな買い手が欲しいのです。政府が新NISAのような投資信託を勧めていますが、理由のあることなのです。

 上場企業の多くは、内部留保を長期的な投資・新規事業分野の開拓に使わず、自社株買いをして株価のつり上げを行っています。経営能力がないと宣言しているようなものです。
 本来は、新規事業に投資すべきですが、それができないので、溜まり続ける内部留保の一部を自社株買いで株価つり上げに利用しています。

 日本企業は、社員を少なくして非正規雇用を増やすことで、人件費を削る一方で、利益を増やし、内部留保を積み上げてきました。その内部留保は、これから起きる首都直下型地震や東南海連動型地震が起きたとき、富士山噴火が起きたときなどの大災害復興資金に充てられるべきものです。日本列島に拠点を置く日本企業はそういう特殊なリスクを抱えています。意識している意識していないに関わらず、日本企業の内部留保が高いことにはこのような理由があります。1年間、勤務せずとも給料を支払い地方へ避難してもらえば、首都の復興はずっと楽にできます。いまのままでは、それが可能な企業がすくない。ぜひ意識して、マネジメントに当たっていただきたい。

 日本企業の経営者は強欲になりすぎました。最近、"greed capitalism"という言葉をときどき見かけます。「強欲資本主義」ということです。
 30年というスパンで見ると、日本企業のファンダメンタルズ(土台)は腐り始めていると言えませんか?

 「売り手よし、買い手よし、従業員よし、世間よしの四方よし」
 こういう経営哲学でマネジメントをしてもらいたい。従業員の給料を上げてから、社長の給料を上げるべきでしょう。それが人として当たり前のことではないでしょうか。

<余談:相対的なものの見方あるいは三つの視点から観察すること>
 見る角度が違えば、モノやコトは違った様相を呈してくれます。円柱を正面から見れば長方形に見えます。真上から見ると円形に見えます。斜め上から見ると円柱に見えます。経済同友会代表幹事の新浪 剛史さんが、どの角度からモノを見ているのか、チェックする必要があります。そして、別の角度から事象を眺めましょう。
 できれば、モノゴトは三つの視点から眺めるようにふだんからトレーニングしたほうがいいのです。角度を変えてみるなんていうのは易いですが、行うのは難いのです。もちろん、周辺の専門分野の知識が必要なことは言うまでもありません。日経平均大暴落に関係するのは、経済学、マネジメント、外国為替などの金融、簿記、会計学、労働法規、など多岐にわたります。
 できれば自分の経験智を通してモノゴトを理解しましょう。その人の視点に個性の色がつき、ユニークさが加わります。

 わたしがそういうものの見方に気づいたのは小学4年生のときでした。北海道新聞のコラム「卓上四季」を読み始めたときからでした。当時の新聞にはルビが振ってあったので、知らない語は国語辞典を引けば意味が解りました。小学生でも3か月も引けば新聞記事のほとんどの専門用語に慣れます。「社説」「政治経済欄」と好奇心から新聞記事に目が釘付けになりました。いまでもそうした傾向が残っていますが、北海道新聞は社会党の政治思想に染まっているものが多かった。NHKニュースや映画のニュースとは趣が、そしてモノゴトを見る視点が違っていました。だから、違う二つの見方が、新聞を読むことを通して身に着いたのです。
 高校に入ってから、公認会計士2次試験の受験勉強を始めると、当時の7科目の中には「経済学」があり、近代経済学でした。マルクス『資本論』は知っていましたから、受験勉強には関係がありませんが好奇心から高校図書室にあった『資本論』を読み始めました。会計学説も黒川清先生と沼田嘉穂が対立する学説で両方を比較しながら読み始めました。
 そうしたものの見方が面白かったからです。

 小学生の時から高校卒業までビリヤード店の店番をしてました。ほとんど、大人相手に遊んでもらっていたようなものですが、さまざまな職種のお客さんとコミュニケーションして、学んだことがたくさんあります。職種特有の考え方、性格の違いによる考え方の相違やゲームの仕方の違いなど。短歌を詠む歯科医の田塚源太郎先生と、時代小説や現代小説を地元新聞に連載していた歯科医の福井先生にはずいぶんかわいがってもらいました。好いインテリがそばにいました。信金前のお菓子屋さんの鷲尾さん、大工の羽田さん(お父さんは元々宮大工)、焼き肉店を開くことになるケンジ、信金本店の数人のお客さん、ヤクザの親分のTさんと幹部数人、ビリヤード店の常連客のみなさんが育ててくれました。
 ヤクザ屋さんはとっても紳士的でした、それが怖いところです。ビリヤード店への出入りは幹部数人しか許しませんでした。遣い走りが用事があってきたことがありましたが、「お前たちはこの店へきてはならぬ」と言っているのを聞いたことがあります。終戦後の闇市で落下傘部隊の生き残りのオヤジと元気のいい同士、当時は若頭だったそうです。一度トラブルがあってから、どういうわけか兄貴分扱いでした。オフクロのことを「姉さん」と呼んでました。いえ、オヤジはヤクザではありません、まっとうな商人&職人でした。
 自然にそういう人たちにどう接したらいいのか学んでいました。コミュニケーションの幅が広がりました。Tさんとは一度もビリヤードゲームの相手をしたことがありません。けじめのはっきりした人でした。私は少し元気のいい方でしたし、根室高校は根室商業時代からの封を受け継いでいて坊主頭の校則と総番制度のあるバンカラな学校でした。丸刈り校則は生徒会会計に1年生の3学期に指名されて、副会長に相談したら、「言い出しっぺのお前がやれ」と指示があり、先輩の言うことは絶対ですから、2年の4月からスタート、3か月かけて改正規則通り前好手会で廃止を決定して、長髪で2年生のときに週学位旅行へ行きました。総番制度も総番長のヒロシと同じクラスになり、A野と3人で相談して廃止しました。じっさいにはヒロシが決断、一人でやった仕事です。大事な友人の一人であるあいつも、一昨年亡くなりました。
 母親が亡くなる数年前に、「お前が高校生の頃、Tが息子に何かあったら、知らせてくれ」と言っていたことを知りました。「Tがそんなこと言ったの」と笑ってました。アブナイ奴だと見抜いてましたね。あの世界の人たちは人を見る目は確かです。あるとき、お祭りの露天商の縄張りで、ルール違反があったようで、子分3人を引き連れて叩き壊しているところを目撃しました。ふだんの紳士的な様子は微塵もありません。あれが本性です、ふだんはしっかり隠しています。見事なものです。こういう経験も役に立つことがありました。

 モノの見方は複数の視座を確保して、ふだんからよく見たり考えたりしておくこと。自分の経験智を通して自分の文脈の中でものごとをとらえることの大切さが言いたくて書き記しました



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#5253 首都圏大震災が起きたら復興資金はどうしたらいい? June 27, 2024 [8. 時事評論]

 千葉や茨木を震源とする地震が増えています。
 首都直下型の地震はいずれ起きますが、復興資金はどうするのでしょう?国債が発行可能かどうかもわかりません。

 被害額は1000兆円という推計もあるようです。政府の借金はすでに1300兆円を超えています。国債で賄おうとすると、金利は5%ではすまないでしょう。

 本来なら災害に備えて、公的部門と民間部門が資金を積み立てておくべきです。
 たとえば、東京都で200兆円、上場企業で300兆円積み立てるとしたら、どのような方法があるでしょう?

 100年間に一度首都直下型地震が起きると仮定すると、民間企業は1年間首都圏に住む社員にそれぞれ地方へ避難してもらい、給料を支払い続けるとしたら、その分の資金が必要です。もちろん、オフイスや工場も被害を受けるのです。売上高の2年分くらいを災害積立金としてつい積み立てるとしたら、毎年売上の2%を積み立てたらよいことになります。

 公的部門はどうでしょう?東京都の予算規模は約16.5兆円((2024年度予算)は、一般会計が8兆4530億円、特別会計が6兆1908億円、公営企業会計が1兆9146億円、合計で16兆5584億円)です。
 毎年、2兆円を積み立てたらいいことになります。目安ですよ。

 円では不安ですね。首都直下型震災が起きれば、経済へのダメージは甚大ですから円相場が影響を受けます。
 だから、民間企業も東京都もで災害積立金を保有すべきです。
 
 なかなか厄介な実務上の問題があります。金の保管機構を作る必要があります。民間と東京都と両方合わせて、最大500兆円の金を保管することになります。セキュリティの問題、保管手数料の問題、出し入れの管理の問題など、そして大きな組織が必要になります。この組織は「金地金保管証」を発行することになります。「金地金保管証」は実質的な兌換紙幣になります。保管するだけで、貸出業務はしませんから、信用創造もありません。とても特異な兌換紙幣ですね。

 金価格の変動をチェックしてみましょう。1980年は1トロイオンス607ドルでした、2024年は2179ドルになっています。
 金で災害積立金を保有して置けば、災害時に円安になっても影響を受けません。毎年4兆円もの金のインゴットを買い続けたら、金相場は上がりますね。菱刈鉱山が世界一品位の高い鉱山ですから。品位の低い鉱山で増産すればコストが膨れ上がります。

 昨日の金相場は13,055円/gでした。
 500兆円÷13,055円/g÷1000÷1000=38,299t
 金の比重は19.32ですから、19.32(1立方メートル=19.32t)の金のインゴットが1982個ということになりそうです。たいへんな量ですね。菱刈鉱山のような高品質の金鉱がまた日本のどこかで発見されるかもしれません。日本列島は金が湧いて出てくる島のようです。

 日銀は保有している国債に実質評価損が出ているので、すでに債務超過です。先進国の中央銀行が実質債務超過になった例はありません。昨日160円/ドルを超えました。この極端な円安は、日銀の債務超過を反映して円への信認が崩れてしまっている兆候のひとつかもしれません。消費者物価ベースの購買力平価では100円/ドルに近い。一月前だったか、9兆円の円買いドル売り介入を財務省がしていますが、2度目は決断できなかったようですね。使えるドル資金は25兆円くらいしかありませんから、2度目をやったら、次の手がなくなります。もう裸も同然なのです。神田財務官、きっと困り果てていますよ。
 1300兆円の債務を抱えた政府財政も破綻目前です。
 「災害対策のための金保有機構」で1万トンを超える金保有が現実のものになったら、実に心強いことです。

 東京都に本社を置く企業には、売上の0.2%ほどの法人事業税を特別加算したらどうでしょう?外資の日本法人にも、日本市場での売上について同じ額を負担してもらいましょう。
 金融業などは純資産へ課税したらいいと思います。業種によって最適な課税方法を選択すべきでしょう。実務デザインはなかなかたいへんです。

 1923年9月1日の関東大震災が起きていますが、次の震災は明日かもしれませんので、間に合いませんが、その次の大震災には間に合いますから、すぐに始めてもらいたい。

 ああ、いま都知事選挙ですね。首都圏震災復興資金をどのように調達するのかという視点がの候補者たちにはありません。1300兆円もの債務を抱えた政府や、すでに600兆円もの国債を保有してしまっている日銀を当てにしているのでしょうか?
 候補者のみなさんのに考えてもらいたい問題です。
 百年をかけて復興資金の準備のある都市になっていれば、大災害があっても生き残った人たちが乗り越えられます


<余談:数学の学び方・教え方>
 概念の拡張や一般化の仕方を、具体例で説明してあります。数学のセンスを磨くにはこういう概念の拡張や、一般化操作に習熟すればいいのです。
  大切なことは深い理解と、問題演習による習熟、そして常に具体的な問題意識を持って考え続けることです。覚えることが中心の学習では、数学のセンスが育ちません。

#4138 多角形の内角の和:一般化と拡張 Dec. 4, 2019 



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#5243 ビジネス倫理とトヨタ型式認証不正について June 4, 2024 [8. 時事評論]

 自動車5社で型式認証試験に関わる不正があった。過去10年間を調査した結果見つかったものだ。
 トヨタはこの業界のリーディングカンパニーであり、下請け会社が訳40,000社と言われている。2023年度決算で、売上は45.0兆円、営業利益5兆円を計上する日本最大規模の企業。
 だからこそ、その経営哲学やビジネス倫理も高い水準を追及してもらいたい。トヨタ社員はいま恥ずかしい思いをしているだろう。

 6/4朝日新聞朝刊1面の記事によれば、「歩行者保護試験で、左側のフェンダーのデータを右側で代用した虚偽データを使用」「衝突試験では、エアバッグがタイマーで展開するように試験車両を不正加工」となっている。
 7面を見ると会長の豊田章男氏は「トヨタは完璧な会社ではない。問題が出てきたことは、ある意味ありがたいことだと思っている」。そして不正撲滅を問われて、「撲滅はね、ぼくは無理だと思います。故意で間違いをやろうという人はゼロにしなければいけないが、問題が起こったら事実を確認し、しっかり直すことを繰り返すことが必要なのではないかと思う」
 どんな企業も「完璧」ではありえませんが、不正を自社で検出し、適正に対処している企業はいくらでもあります。トヨタにはそういう普通のことができないような企業体質があるのかもしれません。
 自社の利益を優先すると、生産性を下げてしまうとか、商品発売のスケジュールが遅れてしまうというときに、現場で不正が発生するような風土が根付いてしまいます


 さて、トヨタは売上高営業利益率が11%、過去最高の売上と営業利益を記録しています。しかし、下請けの40,000社は「トヨタカンバン方式」に泣いているのでしょう。生かさず殺さずそういう経営哲学がトヨタの下請け管理方式に垣間見えます。

 国土交通省の調査が入るまで社内の不正が社長や会長にわからないという体制は、どのように培われてきたのでしょう?
 品管部門が一部機能していないようにみえます。社内基準が型式認証試験よりも厳しいから、型式認証試験は手を抜いたり、虚偽データを作成してよいなんてことはあってはならぬことです。
 工場に配置されている社員は、生産性を上げることばかりに目が行っているのではないでしょうか?不正はしない、ズルはしない、しっかりした製品をユーザーに届けるという職人魂はどこへ飛んで行ってしまったのでしょう?

 話題を他の業界に振ってみましょう。他社の事情はよく知りませんから、16年間勤務した臨床検査最大手のSRLを採り上げます。SRLは国内の品質管理基準では飽き足らず、強固な品質保証体制を構築するために、世界一厳しい品質管理基準である米国CAPライセンスを1988年に取得しました。2年に一度米国から臨床病理学会の専門家グループが査察に訪れます。そのために実施している3000項目の臨床検査全ての標準作業手順書をの整備と更新を日本語と英語の両方で徹底しています。もう36年間もそういうことを継続しています。標準作業手順書は検査項目だけではありません。例えば電子天秤の較正も定期点検でなされますが、それも標準作業手順書がつくられています。紫外線で劣化する、クリーンベンチや安全キャビネットのパイロットバーナーのシリコンチューブの交換についても、1988年頃にクリーンベンチ内でのガスの爆発事故があって以来、定期点検関係の標準作業手順書に明記されています。HIV(エイズ)検査室のへパフィルターの交換についてももちろん標準作業手順書があります。業界大手の2社(BMLとLSIメディエンス)も数年遅れて追随しています。
 リーディングカンパニーの社会的責任とは、業界に先駆けて世界一の品質管理基準でラボを運営する、そういうところにもあります。業界ナンバーワン企業が実施すれば、他社もそれに追随せざるをえませんから、業界全体の品質向上や安全性に寄与することができます。臨床検査項目コードの日本標準制定も、SRLが産学共同プロジェクトを提案して、大手六社と臨床病理学会の作業部会で4年の検討を経て、1991年に制定されています。日本中の医療機関のシステムがこの日本標準臨床検査項目コードで稼働しています。世界中で日本だけです。日本標準コードは医療システムの未来に多くく貢献するものです。一企業の利害を超えたプロジェクトでした。それもリーディングカンパニーの社会的責任のひとつです。そういうことを明確に意識して、大手六社の項目コード検討会議を、産学共同プロジェクトに切り換え、臨床病理学会(現在の臨床検査学会)から日本標準コードとして公表がなされました。自治医大の櫻林郁之助・助教授が(当時)臨床病理学会の項目コード検討委員会の委員長でした。二つ返事で、産学共同プロジェクトに賛成してくれました。当時彼はSRL顧問でもあったのです。

 マネジメントを担う側が、社員を人とした扱っているか、人件費と見ているかは社員の年収や平均年齢に現れます。業界ナンバーワンのSRLは836万円(47.6歳)、業界2位のBMLは565万円(42.1歳)です。SRLの社員はBMLの社員の年収の約1.5倍です。SRLのラボ自動化は分注工程から始まりました。毎日毎日社員が手分注作業をしていました。朝から晩まで、血液をスポイトで分注器で吸い込み、検査のために他の試験管に小分けするのです。数か月で嫌になって社員が辞めていきます。そんな非人間的な単純作業をいつまでも人にやらせてはいけない。お金に糸目をつけず、1984年頃から自動分注機の開発が行われました。SRL御用達の自動分注機開発会社がPSS社でした。創業社長の田島さんはそのころ勤務していたアドバンテック東洋社をやめて独立したのです。PCR自動検査機で有名なメーカーになりましたね。フランスが数十台購入してます。

 1990年頃のことですが、創業社長の藤田光一郎さんが2度目の社長をやっていました。毎週2通ほど内部告発の手紙が届いていました。現場で仕事している真面目な社員からのものが時々ありました。違法なことを管理職が容認している、言ったけど聞く耳を持たないので、藤田さんへ直接内部告発の手紙を書きます。なぜ、真面目な社員がそういうことをするかというと、創業社長の藤田光一郎さんが効く耳をもっていたからです。藤田さんは社員の良心の最後の砦でした。
 内部告発して会社を辞めた社員を二人知っています。この二人は会社を辞する覚悟を決めで内部告発しました。ろくでもない人を管理職にすると、真面目な社員がキレます、そして内部告発して会社を辞める、会社にとっても内部告発をした人にとっても不幸なことです。だから、社長が効く耳を持っているかどうかはとっても大切なことに思えます。社長がふだん何気なく言っていることや、行動を社員はしっかり見ています。藤田さんは毎月30項目ほどの達成リストを持って、項目ごとにできたかできなかったかをチェックしていました。「今月は25勝5敗だった!」なんて笑いながら話されてました。「社員とランチを一緒にするというのが月に10日」なんていう項目もありました。よく営業所を回って、お客様のところへ担当者と訪問していました。目標値は「月に12ユーザー訪問」という風に。朝7時半ころ出社して、8時ころにはもう外出しているのが普通でした。9時ぎりぎりに走ってくる社員も少なくありません。(笑) とても残念なことに、取締役で藤田さんのように働く人は一人もいませんでした、しかし藤田さんは自分のやり方、価値観を押し付けない人でした。背中でモノを言うタイプの経営者でした。一度、東芝ビルのジャフコ本社へ、CC社との資本提携を解消するために必要な交渉へ御伴したことがあります。本社のオープンスペースのテーブルで、わたしと打ち合わせたときには強引な交渉をすると言い切っていたのですが、ある事情があって情報が筒抜けになるので、配慮した交渉をして、後の撤退交渉を有利に運びましょうと勧めたのですが、ノーでした。喧嘩腰の交渉をすると言い切るので、その後30分ほど雑談してました。すぐに意見を変えるはずがないですから、1時間ほど間を置くしかないのです。浜松町駅で降りて東芝ビルまで歩いていく途中で、「ebisuさんの言うとおりにやりましょうか?」をういってにこっと笑いました。CC社は藤田さんの特命案件で、それまで15か月間逐一状況を電話と文書で報告していましたから、藤田さんが思う通りに動いてくれると思っていました。信頼できたのです。ジャフコの役員と交渉が始まると、言葉が少なくて、間があきます。その間があいたときに圧力がグーンと高くなるのを感じました。交渉の仕方を教えてくれたのです。藤田さんに同行するのは2度目でした。藤田さんの特命係として3回仕事しました。交渉の場では一流の俳優のような、演技のできる人でした。現役社長として2社を一部上場したのは当時は藤田光一郎さんだけでしたから、ジャフコの扱いもとても丁寧でした。交渉が終わって、ジャフコの方から、「お車はどちらへ?玄関前に回すように手配します。」「二人で電車できました」、そう伝えると、びっくりしてました。そういう人なのです。ところで、当時のジャフコ(野村証券の子会社)の社長は極東の町の光洋中学校の隣のクラスの伊藤君でした。(笑)

 ところで、広く普及した日本の商道徳には「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」「信用が第一」「浮利をむさぼらない」などがあります。400年間も日本の老舗企業はそうしたビジネス倫理を大切にしてきました
 こうしたビジネス倫理は、日本人の宗教や伝統的な価値観に根差しているのでしょう。卑怯なことをしてはいけない、ズルイことはするな、弱い者いじめをしてはいけない...そうした価値観が広く日本人の心の奥にあります。折々の四季の変化に対する感受性の高さと情緒も日本人の特性のひとつです。
 会津藩にの掟というのがあります。薩摩藩の郷にも類似の掟がありました。

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幼い子どもたちが自らを律する―「什の掟」

什長が申し聞かせる「お話」は、以下のようなものだった。

  • 一、年長者の言ふことに背いてはなりませぬ
  • 一、年長者にはお辞儀をしなければなりませぬ
  • 一、卑怯な振舞をしてはなりませぬ
  • 一、弱い者をいぢめてはなりませぬ
  • 一、戸外で物を食べてはなりませぬ
  • 一、戸外で婦人と言葉を交へてはなりませぬ

そして、最後に「ならぬことはならぬものです」と、厳格に教戒する。
これが、「什の掟」と呼ばれるものだ。

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 わたしはこうした若者たちを律していた、若者の組織の掟が日本人の道徳観に大きな影響を及ぼしたのだろうと思います。全国各地の村にあった若者の自治組織である、若衆宿や娘宿などは性の実践的なトレーニングの場であっただけでなく、こうした価値観も伝えてきたのです。

 トヨタは自社は巨額の利益を上げながら、下請けからの仕入れ価格を容赦なく叩き、採算ラインぎりぎりに低利益構造を強いる、それがトヨタカンバン方式の実態です。これは買い手のトヨタの利益にはなりますが、売り手である下請け企業の犠牲の上に積み上げられたものです。
 下請け苛めについては日産も問題になっています
 ところで、日産の元社長のカルロス・ゴーン氏は日産の村山工場の土地を売却し社員を20,000人リストラして赤字を脱しました。その一方で会社経費を私的に流用した不正を働いた。自分への報酬も一部隠蔽したことがわかっています。数十億円の報酬を手にしていました。自分一人がよければいい、自我本能の化け物でした。残念なことに、メディアは彼の犯罪が明らかになるまで、こぞってその経営手法を褒め称えていましたよ。
 業界1位と2位の経営の実態がこうでは、業界全体の経営規律が危うい。

 型式認証で不正を行うことは、売り手のトヨタに利益はもたらしますが、買い手であるユーザーには不利益をもたらすものです。

 トヨタや日産、マツダなど錚々たる巨大自動車メーカーが型式認証で長年にわたって不正をやっていたことが、国土交通省の調査で明らかになりました。三菱が発端でしたね。

 さてこうした巨大企業からも企業献金がなされているのでしょう。
 昨年12月のビジネスジャーナルの記事によれば、豊田章男氏が経団連会長職を狙っているそうです。今度の騒ぎで潰えましたね。経団連会長になれば、政界とのパイプも太いものになりますから、こういうときは国土交通省の調査に影響力を及ぼすことが可能になるやもしれません。企業の政治献金は危うい。お金をもらっている国会議員は企業側と同一歩調をとるのはあたりまえです。

 経団連は日本人が400年間育ててきたビジネス倫理からどんどん遠い存在になりつつあるようです。強欲な資本主義(Greed Capitalism)は御免被りたい。
 上場企業の取締役の報酬は30年間で3倍になっていますが、従業員の給与は上がっていません。正規雇用を非正規雇用に切り換えることで人件費を削り、貯めた内部留保で自社株を購入、償却して株価を高く維持する。
 日本企業の経営者は30年間で、がらりと変わってしまったようです。1990年頃は日本企業で役員報酬が1億円を超える上場企業はなかったと思いますが、いまや2億円以上に限定しても267人います。従業員の平均年収も上がっていれば云うことありませんが、それは横ばい。どうして経営者がこんなに強欲になってしまったのでしょう?

 日本が誇りにすべきは「売り手よし、買い手よし、仕事する人よし、世間よしの四方よし」です。創業200年以上の日本の老舗企業は従業員を大事にしているところが多い。これからはそういうビジネス倫理とビジネスモデルを世界中に「輸出」してもらいたい。

<ビジネス倫理はどこへ?>
*「30センチ必要なのに厚さわずか3センチ」"空洞だらけ"のトンネル施工不良 原因は「施工業者の倫理観欠如」調査報告書で結論付ける 知事「規模は車の認証不正に匹敵」と糾弾

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 和歌山県の串本町と那智勝浦町を結ぶ「八郎山トンネル」でコンクリートの厚さが不足するなど施工不良が見つかった問題。専門家らによる「技術検討委員会」は今回の問題に関する調査報告書を取りまとめ、建設会社の技術員や現場監督らの倫理観の欠如やミス、さらに県の監督体制に不備があったなどと指摘しました。
南海トラフ地震の災害時のう回路として去年12月に供用開始予定だった問題と。
 問題となっているのは和歌山県の串本町と那智勝浦町の町境をつなぐ県道のトンネル「八郎山トンネル」です。県などによりますと、全長711mのこのトンネルは、南海トラフ地震などの災害時には、海沿いの国道42号の迂回道路として、重要な意味合いを持つ県道として、整備中で、トンネルはおととし9月に完成し、去年12月に供用開始の予定でした。
 コンクリの厚さ30センチ必要なのに…わずか3センチしかなく
 浅川組などによりますと、今回のトンネル工事を担当した現場所長は社内でも経験が豊富で「トンネル工事」と言えばこの人と称される“敏腕社員だった”ということです。
 所長は社内でのヒアリングに対して「覆工コンクリートの厚さが確保できないことを認識しながら、本社に相談することなく工事を進め、数値を偽装して検査を通した」と回答、さらに、「手直しをすれば工期に間に合わなくなる。赤字にしたくない。1次覆工で強度は保たれているのでトンネルの安全性に問題はないと判断した」と話したということです。また、「何よりも自分はトンネル工事の専門家であり、本社に相談してもどうなるものではない」とも回答していたということです。
 さらに、所長は『覆工コンクリートは、化粧コンクリートのようなもので厚さが足りなくても問題ない』などという発言もあったということです。この内容について報告を受けた県の担当者は「全く信じられない発言で、あり得ない」とも話していました。
 全コンクリートをはがして工事は全面やり直し

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#5239ぽんぽこタヌキとキャンキャンキツネの前代未聞の選挙戦 May 27, 2024 [8. 時事評論]

 8年前に、ぽんぽこタヌキが都知事に当選した時、キャンキャンキツネが表敬訪問してほめちぎっていた当時のニュース録画を、どこかのテレビ局が流していました。
 そのキツネがキャンキャンキツネが今度はぽんぽこタヌキをこき下ろして、吠えまくっています。都知事選挙に立候補するのだそうです。
 8年前は人を見る目がなかったのでしょうね、反省の弁はありませんが、いまもそうでなければ幸いです。
 組織の長としては我の強すぎるところが気になります。自我を抑えられたらいいのですが、「自我本能」ともいいますから、五十数年間育てたものはもう乗り越えようがないのかもしれません。

 我の強い石原慎太郎都知事が2期目に新銀行東京を立ち上げて1400億円をどぶに捨てたことを思い出します。銀行経営や貸付実務なんてことにまったく関心がない人が、人気取りのために大きな事業をやろうとしても、頓挫するのは目に見えています。マネジメントができないのですから。それどころか誰に任せたらいいのかも判断ができません。
 大きな組織での実務経験のない人が、大きな組織の長となって仕事をすると、しばしば絵に描いた餅のような政策を強引に推し進めます。だれも止められない。
 キツネさんだけでは申し訳ないから、タヌキさんの事例も挙げます。東京オリンピックの予算オーバーもそうした事例の一つでした。元々は石原慎太郎都知事の時代に立ち上げた事業でした。タヌキさんは築地の豊洲移転も2転してます。通勤地獄を解消するために地下鉄を2階建てにするなんて言う荒唐無稽な公約もありましたね。
 一度、タヌキさんが公約に掲げた事項をリストして、一つ一つの実現程度を評価し、点数をつけて並べてみたらいかがでしょう。そうすれば、タヌキ都政リセットの意味が明確になります。

 思い起こせば、支持基盤のない本物の無所属の「意地悪ばあさん」が1995年に都知事選挙に立候補して当選した時に、つくづく都知事選挙は知名度が最重要だと知りました。知名度の低い者は泡沫候補同然ですから、中身なんてどうでもいいのかもしれません。

 学歴詐称疑惑という濃厚なスープが大好きなぽんぽこタヌキと「(スーパーコンピュータの問題で)2番ではなぜいけないのですか?」と叫んでいたキャンキャンキツネのどちらも、都知事にふさわしい人材とは、どんなに贔屓目にみても、見えませんよ。
 キツネさんは、二重国籍問題を隠蔽したままです。いくらなんでも現在は解消しているでしょうけど、国会議員であった期間に二重国籍の疑いがあるのですから、みずから正直に説明すべきでしょう。タヌキの某国大学首席卒業と似たような問題に見えます。

 どなたが都知事になるのでしょうか?
 いずれ首都圏で直下型の震災が起きて、1000兆円の被害が想定されています。国は借金を1300超円も積み上げて、それも年々膨らみ続けています。巨大自然災害が数十年ごとに全国各地で起きる日本で、首都直下型地震が明日にも起きるかもしれないのに、オリンピックにうつつを抜かして、首都圏震災が起きたときの備えの資金がまるっきりないのです。
(災害復興資金も国債の新規増発に頼るしかありませんが、果たして国債の発行ができるでしょうか?日銀引き受けはアウトですから金利を大幅に上げるしかない。3%程度で収まるはずもありません。日銀保有国債も株も下落し、巨額の債務超過が明らかになります。円の国際的信認が根底から崩れます。)

 大阪も同じですね。万博なんてしている場合じゃありません。東南海連動型地震が起きたらどうするのでしょう?

 立憲代表はどうしてキャンキャンキツネの立候補を止めなかったのでしょう?こんなことを繰り返していたら、次の国政選挙に影響が出やしませんか?党指導部の大局観のいい加減さに飽きれて、有権者の40%もある浮動票が離れます。あの人だけは大嫌いだという有権者が多いのです。党内の論理は浮動層には通用しませんよ。

 パーティ券での資金集めを幹部2人が屁理屈付けて強行しようとしましたが、世論の批判を受けて屁理屈は木っ端みじん。東大法学部卒の小頭のいい男は、自分の利害が関係すると途端に大局の判断を誤ります。屁理屈の主は日本最大のスーパーの創業者の御曹司と党代表でした。キツネさんの二重国籍問題に「あなたには説明責任がある」と党代表はなぜ言えないのでしょう。同じ口で他党の裏金問題をあげつらっても説得力がありません。

 目が覚めてもらいたいと思いますが、腐りきってしまっているのかもしれませんね。
 でも知名度なら、ぽんぽこタヌキとこんこんキツネは抜群です。
 かくして、タヌキとキツネの化かしあいの始まり始まり...
 
 わたしは、どちらもノーサンキューです。
 政党とわたしたち東京都民の良識が問われ続けています。

 炎上市長の安芸高田市長の石丸伸二さん(42歳)が立候補を表明しました。いま名前が挙がっている中で都知事の実務がやれるかもしれない可能性のあるのはのはこの人ぐらいかな。知名度の差はいまのところいかんともしがたいようです。
  彼に関する「現代ビジネス誌」の記事を6/7朝見つけたので、紹介します。小頭のよい男にありがちなタイプでした。これで政策立案やその実行に使える頭脳の容量が1/3以下になるでしょうね、とっても残念です。

*「都知事選に出馬表明した安芸高田市・石丸伸二市長は「恫喝裁判」「73万円踏み倒し裁判」で相次ぎ敗訴…!それでもSNSで大絶賛される若きエリートの「実像」」

<余談-1:石川かおり
 例えばですよ、石川かおり(40歳)という国会議員がいます。キャンキャン叫びませんし、穏やかで感じのよい語り口の人です。こういう人を都知事候補に擁立するにはどうしたらいいのでしょう?
 人柄がよくて、政策センスもいいだけでは都知事としての仕事で活躍は期待できませんから、政策を立案し、実行を管理できるブレーンが3名くらいいたらいいと思います。
 机上の空論ではなくて、実行可能な政策を立案し、それを実行管理するのは、マネジメントそのものです。民間企業でそういう仕事に長けた人材が立憲民主党にはほとんどいないように見えます。松下政経塾出身者は大事な30歳代で責任ある仕事をした経験がありません。大事な時期に、お勉強ごっこをしていたのですから。
 マネジメントに長けた人材がいませんから、常に机上の空論をかざします。だから、政権をとってもすぐに自滅しました。頭を下げて、そういう人材を抱えることができるか否かが、大人の政党への脱皮のカギに見えますがいかがでしょう?

<余談-2:党内事情>
 立民の国会議員たちは狐さんの都知事立候補に喜んでいるようです。党内でも誰からかまわずキャンキャン吠えるので、邪魔だったようですね。党内の持て余し物を都知事に立ててどうするのでしょう?この党も東京都民をバカにしてます。パーティ券に関わる裏金問題で屁のような改革案しか出せない自公とどれほどの違いがあるのでしょう?

「蓮舫氏の都知事選出馬で思わず喜んだ立憲議員らの〝本音〟 国政出戻りを避けるべく一致団結」
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一方で、大注目となった蓮舫氏の転身に「良かった」と話すのは立憲関係者だ。「朝の速報で思わず笑顔になりました。ある議員も会うなり笑顔で『良かった』って」と明かした。

一体、何が良かったというのか。蓮舫氏の攻撃力がなくなるのは痛手ではないのか。「蓮舫氏は国会で追及型の質問を担当してくれるのでその点はありがたい。しかし、実は党内でも国会で見せる姿と同じなんです。議員同士で打ち合わせをやると、『そんなんじゃダメなんじゃないか』と詰めてくるタイプ。それがなくなるのは良かったなあと」(同)

国会での厳しい追及は国民にとっても有益なもの。だが、蓮舫氏には同じノリで党内議論もやってしまう生真面目さがあるという。「負けたら衆院にくら替えっていう話もあるんですか? いや、そうならないためにも絶対に勝ってもらわないといけない」(同)と、国政出戻りを避けるため党内は勝利に向け一致団結しそうだ。




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#5205 台湾地震 Apr. 3, 2024 [8. 時事評論]

 今朝8時58分(日本時間)ころ、台湾花蓮県近くの海で地震があり、与那国島や石垣島、沖縄本島に3mの津波警報が出た。12時のNHKニュースでは与那国島の30cmが最大だった。
 花蓮県は太平洋岸、台中に位置している。

 気象庁の発表によれば、震源は台湾花蓮県の海岸付近でM7.7、深さ23㎞だから、震源地が浅いので大きな津波が予想されたようだ。台湾当局の発表ではM7.2である。能登半島沖地震はM7.6だから、同規模の地震ということ。

 花蓮県では山崩れが起きて、数十メートルの高さに砂塵が舞っていた。ビルがいくつか傾いていたり、1階がつぶれている様子がテレビに映っており、まるで、能登半島沖地震の再現に見えた。

 1986年と1999年に同じところを震源とするM7超の地震が起きている。
 いずれにしても震度6~7のところは大きな被害があったのではないかと思う。日本政府は支援を表明していた。
 わたしたち一般の国民ができることは金銭による被害地住民の支援だろう。
 災害に見舞われたときはお互い様、相手を思いやる心を持ちたい。
 日本には惻隠とか憐憫の情という言葉があり、そういう価値観を数十世代にわたって継承し大切に育んできた。

 一昨年、極東の町から首都圏へ戻ってきたが、関東大震災が近づいていることも忘れないで、できる限りの準備をしたい。千葉県のいずこかでM7クラスの直下型地震が起きたらどうなる?具体的な想定で、準備をしなければならない、他人ごとではないのである。

 東京都庁の地震対策関連部署は否応なしに来る直下型地震に備えて大忙しなのだろう。もちろん、首相官邸スタッフも。

*「【解説】 台湾地震 20年前の経験が被害を最小限に

 倒壊建物100超、死者7人、負傷者736人、77人が身動きの取れない状態に陥った。なぜこんなに被害が小さいのか?(4/9現在、死者は13名)
 日本の気象庁はM7.7と発表したが、台湾政府はM7.2のまま訂正なし。こちらが正しいように思える。能登半島沖地震の1/3のエネルギーである。台湾全体で100棟を超える建物が全半壊したとある。とても少ない。
**「台湾の地震、死者7人 負傷者700人以上




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#5191 春闘5%賃上げの経営への影響はどの程度か? Mar.16, 2024 [8. 時事評論]

 春闘で5.28%の賃上げが実現したそうだが、それでも実質賃金がアップできるかどうかは微妙のようです。

 仕事で作成したさまざまな資料が8cmのファイルで10本ありました。稟議書の原稿や経営改革提案書、さまざまなシステム設計書、新規事業提案書、コストカット提案書、経営分析報告書、企業買収交渉報告書、開発プロジェクト標準作業手順書、出向時の親会社社長への定期報告書などです。それを2022年11月の引っ越し時に処分しました。仕事で作成した5ディメンション、25ゲージの経営分析報告書資料のほとんどを廃棄してしまったので、手元に実データがないのです。そこで、簡便な損益計算書モデルを設定し、製造業で5%の賃上げがどれくらい営業利益率に影響するのか試算してみたいと思います。
 次のように数字を仮定します。

 売上高  1000億円
 原材料費 200億円
 人件費  450億円
 物件費  250億円
 営業利益 100億円...売上高営業利益率10%

 人件費比が5%アップするとどうなるか?
 売上高  1000億円
 原材料費 200億円
 人件費  472億円
 物件費  250億円
 経常利益     78億円...売上高営業利益率7.8%

  売上高営業利益率が10%から2.2%ダウンして7.7%になります。影響はそれほど大きくありませんが、ボーナス支給額には影響しそうな額です。基本給がアップして、ボーナスが多少減るということになるでしょう。

 規模を小さくして、売上高10億円の中小企業はどうなるでしょうか?トヨタ自動車を見ても、トヨタ本体は史上最高の利益を上げても、下請けは「カンバン方式」にあえいで、利益は薄い。
 次のような、経営構造を仮定して、人件費5%アップが可能かどうか見てみます。

 売上高  10.0億円
 原材料費 2.2億円
 人件費  5.0億円
 物件費  2.0億円
 営業利益 0.8億円...売上高営業利益率8%


 仮に、こういう経営成績だったとしたら、5%賃上げの影響は、次のようになります。物価高で原材料費は10%増、物件費は5%増を仮定すると...

 売上高  10.00億円
 原材料費 2.42億円
 人件費  5.50億円
 物件費  2.10億円
 営業損失 0.02億円...売上高営業損失率0.2%

 この中小企業に5%の賃上げは不可能となります。どこかで生産性をアップしないといけません。自ら生産性をアップする提案をして、実行できる優秀な若者を雇用しようとしたら、初任給を18万円から30万円へアップしなければならないなんてことも起きるでしょう。収益構造からみて、そういう有能な若手の人材を雇用するのはむずかしい。リスクを覚悟で人材を確保しやらせてみるしかありませんが、そんな人材はめったにいませんから、ほとんどは失敗に終わります。

 これらのことから、利益率の薄い大量生産品を製造している中小企業は、赤字へ転落することになるので、賃上げができないのです。ますます、優良企業と経営基盤の不安定な中小企業の給与格差が拡大することになります。

 労働組合は、経営に参画しなくてはいかない時代です。マネジメントの拙劣な企業は生産性をアップできません。それゆえ、賃上げが不可能となり、人材確保が難しくなって、ジリ貧になります。生産年齢人口が急激に縮小し始めているので、人材確保ができなければ、生き残れないというふうに経営環境が激変し始めたのです。

 2週間ぐらい前だったか、土木建設企業の山崎組という企業が、重機のオペレーターに女性を使っている例がテレビで紹介されていました。リモートなんです。現場は人が入らないように整備されていて、本社のオペレータールームで、モニターを見ながら女性が重機の操作をしていました。横の部屋では子供が遊んでいました。現場に行かなくてもいいので、子供を産んだばかりの母親でも勤務出来ます。生産性も2倍以上にアップしたとか。
 ゼネコンでは、完全無人でリモートで土木工事をしていました。いままで10人いた重機のオペレーターは3人と言ってました。基本的にGPSで位置を確認しながら、プログラムで重機が動いています。3人のオペレータはモニターがたくさん並んだ部屋で監視業務です。400㎞離れたところの土木工事をしていると説明してましたね。

 自動化で古い話をさせてください。1988年ころに、仕事でセイコー社の腕時計組み立て工場を見学させてもらいました。自社開発したアームロボット十数台で腕時計の組み立てをしていました。Aという種類の時計の組み立て100個が終わると、次はB製品の組み立てが、十数秒の間を置いて始まっていました。パーツフィードはおそらく人間の手がかかっていますが、セットし終わったら、完全自動で、組み立て工場内に人はいません。モニターで監視しているはずです。
 SRLではこのアームロボットを利用して結石の検査の前処理工程を自動化しました。精密加工に向いていたんです。結石を金槌で叩いて、粉状にして、穴あきの五円玉のようなステンレス製の金属板に固めます。それを赤外分光光度計にかけて、ライブラリーと突合して、結石の成分の分析をして、検査報告書を出力します。臨床医は検査報告書を見て、患者の結石がどのような成分から構成されているのかを確認して、治療薬を処方します。

 ここからはまとめです。
 日本の上場企業の多くは、非正規社員を増やして、人件費総額を削ることで利益を上げてきましたが、そうした構図が人口減で生産年齢人口が急激に減少し崩れ始めました。高い初任給を提示しないと、有能になる可能性の高い若者を雇用できなくなりました。新入社員の給与をアップさせたら、その上の20代の真ん中から30代の社員の給料もアップしなければ、新入社員の方が給料が多いなんて現象が起きかねません。経営上けっこう大変なことなのです。
 生産性を上げる工夫のできない企業は、給料をアップできませんから、たとえいま優良企業であってもいずれ長い時間をかけて淘汰されます。
 若手の有能な人材が何人も辞めていく企業も、たとえ現在が優良企業で、業界ナンバーワンでも、20年後にはナンバー2に転落します。経営能力のない取締役が何人もいたら、有能な社員は十数年も経つうちに嫌気がさしてやめていきます。長期的に見ると大きな戦力ダウンを招くのですが、長期の変化には気がつきにくいものです。

 春闘満額回答が相次いで、そこで働いている正規雇用の社員人たちにとってはうれしい限りですが、マネジメントが拙劣な企業はこれから利益率を低下させて、窮地に陥るということです。そういう風にして企業の新陳代謝が進みます。
 働く人にとっても、消費者にとってもいい企業が生き残ればいいのです。

「売り手よし、買い手よし、従業員よし、世間よしの四方よし」

<余談-1:生産性アップをマルクスはどのようにとらえたか?>

 労働価値説に立てば、生産性アップは「労働強度の増大」としか理屈のつけようがないのです。いままで、10人が8時間かかって作っていたものを、5人で8時間で同じ量が生産できるようになったとしたら、生産された商品の市場価格は同じですから、労働強度の増大としか説明のしようがないのです。ところが、先に山崎組とゼネコンの例であげたように、労働強度の増大はありません。つまり、労働価値説は「観測的事実」と違うのです。労働価値が商品価値を決定するという命題が誤謬だということです。労働価値説が誤謬なら、剰余価値学説も誤謬ということになります。企業の利潤の源泉は不払労働の搾取ではないということ。生産性の高い企業が利益を上げます。生産性を上げられない企業は、市場価格を生産と販売コストが上回ってしまいます。生産性の高い企業は高い給与を従業員に支払えますが、生産性の低い企業は低い給料しか払えません。利益の源泉の重要なポイントは生産性の高さにあります。

 中国やロシアは、生産性アップは労働強度の増大ですから、生産性アップという動機が働かないのです。経済が停滞して当然でしょうね。
 


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