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2.7 hrs last two weeks / 460.4 hrs on record (30.5 hrs at review time)
Posted: 18 Dec, 2020 @ 8:02am
Updated: 25 Dec, 2020 @ 4:44am
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概要
ウィッチャー3』の開発チームが送るアクションADV。

メガコープに支配された2077年の未来都市ナイトシティを舞台にした本作は完全オープンワールドになっており、緻密なグラフィックで描かれた2077年のサイバーパンク世界は見事の一言である。
この箱庭にてプレイヤーは主人公『V(ヴィー)』に扮し、街のフィクサーなどから依頼された多彩なミッションをこなしていく。進行は20時間前後のメインストーリーと膨大なサブストーリーに分岐されている。

おススメできない理由
2012年のアナウンスから発売延期を経てようやく発売された本作だが、その結果はご存じの通りである。
本レビューでは自分が200時間超プレイした今も愛してやまない『ウィッチャー3』との比較を行いながら、本作の問題点を言及していきたいと思う。なお、2020/12/23現在においても尾を引いている不具合について、ここでは言及しないものとする。

世界観
『ウィッチャー3』が14世紀の中世を、本作がサイバーパンク未来世界をそれぞれ担っているのだが、『ウィッチャー3』の世界に初めて放り込まれた際に感じたゾクゾクするような感動を本作からは感じなかった。
確かにARの電飾広告が煌めくネオン街、ゴミの臭いすら漂ってきそうな汚わいに溢れたダウンタウンの風情、通りをうろつくサイボーグの住民や空中を飛び交うホバーカーなど「これがサイバーパンクだ!」という作り手の意気込みは十分に伝わってくるのだが、はっきり言って『GTA』シリーズとどこが違うのかさっぱり分からないし、どこを散策しても同じハリボテのようなロケーションが続く状況に早々に飽きが来るのが正直な感想だ。
映画『ブレードランナー』のようなサイバーパンク世界を再現したかったのだろうが、『ウィッチャー3』で魅せてくれたあの圧倒的な美麗さには及ばないと思った。

プレイの印象
『ウィッチャー3』と異なり、本作は完全な一人称視点となる(ドライブシーン以外変更はきかない)
圧倒的な未来世界を体感して欲しい作り手が企図したものなのだろうが、上手く機能しているとはお世辞にも言えない。移動や視点の動作も全体的にモッサリしているため、スピーディーだった『ウィッチャー3』と比すると箱庭をノタノタ歩かされている感が強く、非常にストレスフルだった。

戦闘
肝心の戦闘だが『ウィッチャー3』が剣と魔法を中心にしていたのに対し、本作は多種多様な銃火器や近接武器、スペルに相当する「クイックハック」という相手の電脳にハッキングをかけるスキルが存在するなど、攻撃手段の多彩さを売りとしている。
とはいえ、先述のとおりゲーム自体が『ウィッチャー3』のようにスピード感溢れるものでないため、本来なら緊迫する銃撃戦や近接戦闘も非常にパッとしないものになっている。銃器のエイムも操作性がお世辞にも良質とは言えないため、必然的に近接武器一択に流れる傾向が強い。
肝心のクイックハックも相手の電脳をハッキングしてダメージやデバフを与えるという、文章にすると格好いいものだが『ウィッチャー3』でゲラルトが駆使した印(スペル)に比べるとカタルシスがに乏しく激しく見劣りする。

グラフィック
重いと評判のグラフィックだが、自分の場合設定を「高」にして問題なく動いた(それでも30FPSを切ることはざらだが)。そうした問題を差し引いてもグラフィックは平凡な部類に当てはまると思う。遥か遠くの城塞都市や風そよぐブナの木まで緻密に描写されていた『ウィッチャー3』と比べても、こちらに訴えかけてくる感動は無かったと思う。
もちろんナイトシティの広大な街並みや荒野の遠景、屋内の作り込みなど流石だと唸らせる代物だが、『ウィッチャー3』が与えてくれたロマンスと比較すると本作は血の通っていない無機質さが強いため、やはり作り物感丸出しで興ざめなのである。

キャラクター
個人的には本作の一番いただけない点である。
『ウィッチャー3』にあって本作にないもの、それは血の通った主人公だと思う。
『ウィッチャー3』の主人公リヴィアのゲラルトを思い出してほしい。凄腕の怪物ハンターであり剣の達人。向かってくる敵を大根のようにバラバラにする冷酷さを持ちつつ、女性や子供に見せるさりげない優しさや紳士さ。自分が『ウィッチャー3』にハマったのも、この人間臭いゲラルトというキャラクターに依るものが大きいと思う。ゲラルトがいるからこそ、他のキャラクターが際立つわけだし、その逆もまた然りだ。
そんな魅力的なゲラルトと比較すると、我らが主人公『V(ヴィー)』は分が悪すぎると思う。プレイヤーの分身という設定上やむを得なかったのだろうが、この『V』をゲラルト級の魅力的なキャラクターに出来なかったことが、本作全体の薄っぺらさの遠因だと思う。

総括
結論として、本作は『ウィッチャー3』のデベロッパーが作ったとは思えない代物だと思う。
言ってしまえば、本作の作り手は『ウィッチャー3』がどうしてあれだけ熱烈に歓迎されたのかを検証できていなかったということだ。不具合等で問題になっている本作だが、そんなものは表面の上澄み程度でしかなく「コンセプトありきで発表してしまった作り込みの甘い作品」というのが本作の実態である。

『ウィッチャー3』のファンとして作り手にお願いしたいこと。
それはコンセプトを「どうすれば売れるか(そして制作費を回収できるか)」ではなく「どうすればユーザーが楽しんでくれるか」にシフトしてゲーム制作をすることだ。あの『ウィッチャー3』を作れるポテンシャルは持ち合わせているのだから、きっと次はいい作品を発表できるはずだ。
『ウィッチャー3』のような名作に巡り合うことができ、今も愛している自分は強くそう思う。
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