東京 有楽町 SusHi Tech Square で「都市にひそむミエナイモノ展 Invisibles in the Neo City」12/15~3/10 開催! 未来の都市生活を想像するヒントをここで体感、入場無料 東京都主催
「あなたにとっての聖地はどこにありますか?」
東京の鉄道路線図が描かれた巨大ボードに、ふせんピンに「聖地の理由」を記してその場所に貼り付ける。
鉄道好きが注目するのは、最近ニュースでも話題になった羽田空港アクセス線の重要拠点。
羽田空港にできる新駅や、アクセス線直通化の要衝のひとつ、京葉線・りんかい線の接続駅、新木場に注目しているということで、こうしてふせんピンを貼り付けてみる。
その鉄道路線図ボードの横には、モニターに映し出された電車の映像―――いったいここはどこ?
ここは「都市にひそむミエナイモノ展 Invisibles in the Neo City」
そう。ここは東京・有楽町。東京都の「持続可能な新しい価値」を生み出す「Sustainable High City Tech Tokyo = SusHi Tech Tokyo」を体現する空間「SusHi Tech Square」。
この SusHi Tech Square できょう12月15日から2024年3月10日まで開催されるのが「都市にひそむミエナイモノ展 Invisibles in the Neo City」(入場:無料/主催:東京都)。
そのイベント名どおり、都市生活に潜む多様な「ミエナイモノ」を、8組の若手アーティストが作品を展示。メディアアート展示のほか、大人も子どもも楽しめるアート体験を通じて、都市生活を支える隠れた技術やミエナイモノを可視化し、未来の都市生活を想像するヒントが体感できる空間に。
―――そこで、その気になる8組の若手アーティスト作品をチェックしていこう。
現実とフィクションの景色に境界はあるのか? セマーン・ペトラ《About their distance》
<現実とフィクションの景色に境界はあるのか?>
クリエイター:セマーン・ペトラ
作品名:About their distance
とある場所が、ある人にとっては「聖地」になる。
最近ではアニメやドラマの舞台をめぐることを「聖地巡礼」と呼びますが、そこでの巡礼者の目には、現実の景色と映像世界の景色とが重なり合って見えていることでしょう。
日本のアニメに深い影響を受けてきたハンガリー出身のセマーン・ペトラは、ファンタジーの世界と現実とがまじりあう映像作品を多数手がけています。
作品内では、セマーン自身をモデルとしたキャラクター「Yourself」が電車に乗って、アニメ、CG、実写映像や写真といった多様なメディアが交錯する風景のなかを進んでいきます。
それは電車内でスマホからマンガやアニメの物語世界に没頭したかと思えば、ふと外の景色を眺めたりもする現代人の日常風景そのものなのかもしれません。
さらに「聖地」のような現実とファンタジーとの境界をゆるがす場所には、まだ見ぬ無限の可能性がひそんでいます。
あなたにとっての「聖地」はどこにありますか?
◆セマーン・ペトラ
1994 年生まれ、ハンガリー出身。アニメやゲームのような風景を用いた映像作品を制作。フィクションで飽和する現代において、記憶や自己イメージがどのように形成されるのかを探求する。2022 年 The Arts Foundation Futures Awards ファイナリスト。
建築・都市の記憶を後世に残すことはできるのか? gluon + 3D Digital Archive Project《Metabolism Quantized》
<建築・都市の記憶を後世に残すことはできるのか?>
クリエイター:gluon + 3D Digital Archive Project
作品名:Metabolism Quantized
かつて「名建築」と評された建築たちが、現代の技術でよみがえる。
gluon を中心とした 3D Digital Archive Project では、老朽化などで惜しくも解体された建築物を精緻な3D データとして保存し、そのリアルな質感や構造をデジタルで人々に体感してもらうことで、建築に新たな命を与えるプロジェクトを展開しています。
これらの技術を使えば、今後は世界中から参加可能な建築ツアーが開催されたり、コンサートなどのイベントがバーチャル空間で実施されることで、姿を消した建物に新たな思い出が生まれていくかもしれません。
物理空間に存在した建物に、現代の技術をかけ合わせ、デジタル上で新たな用途を見出していく。
そのプロセスは、まるで細胞が入れ替わるように、建築のメタボリズム(新陳代謝)を促す試みともいえます。
さらには、現存する建物や都市を 3D データ化することで、デジタル世界と物理世界をつなぎ、人やロボット、アバターなどと共存する世界をつくる「Common Ground」の構想も始まっています。
◆gluon + 3D Digital Archive Project
建築とテクノロジーの両分野に精通し、都市の新たな価値を創出する領域横断型の研究開発やビジョン構築を行うチーム。実空間とデジタル空間を繋ぐプラットフォーム「コモングラウンド」の社会実装を通じて、人とデジタルエージェントが共存する新たな世界を目指す。
都市で AI に見つからないためには? Tomo Kihara & Playfool《How (not) to get hit by a self-driving car》
<都市で AI に見つからないためには?>
クリエイター:Tomo Kihara & Playfool
作品名:How (not) to get hit by a self-driving car
AI はわたしたち人間の姿をどう捉えているのでしょう?
たくさんの画像データを学習した AI は、人間と犬の違いを瞬時に見分けることができます。
今後の活用が期待される自動運転車は、そうした AI 技術をもとにさらなる安全性の向上が目指されています。
けれど、もし子どもが段ボールのなかに隠れていたら? 犬のマネをしていたら? はたして AI はそれらを「人間」と判断できるのでしょうか。
本作品は、AI に歩行者と検知されないように横断歩道を渡り切るゲームです。
AI に人間と検知されたら負け。
勝つためには AI の目を巧みにだまして、歩行者と見分けられないような工夫をしてゴールまでたどりつく必要があります。
結果、プレイヤーが勝利するたびに「AI が歩行者を検知できなかったデータ」が蓄積されていきます。
本作品はこうした遊びを通じて人々の行動の多様なバリエーションを集めることで、従来のデータだけでは気づけなかった新たな視点を AI に与え、今後の技術発展に貢献する可能性ももっています。
◆Tomo Kihara & Playfool
木原共と Playfool(コッペン・ダニエル)との協働チーム。「遊び」をテーマに、創造性を育む道具のデザインや、社会・都市に介入するアートプロジェクトを国内外で展開。近年、ヴィクトリア&アルバート博物館やアルス・エレクトロニカなどで展示。
人工生命は環境からどんな影響を受けるのか? 菅野創+加藤明洋+綿貫岳海《かぞくっち》
<人工生命は環境からどんな影響を受けるのか?>
クリエイター:菅野創+加藤明洋+綿貫岳海
作品名:かぞくっち
都市の見えないところで、人工生命の家族が自由に暮らしている。
《かぞくっち》は、そんな未来の姿を予見させるデジタル人工生命作品です。
ここでは東京都の勾配を模した展示台の上を、小さなロボットたちが動き回っています。
実はこのロボットは、かぞくっちの「家」。
その家のなかでは人工生命の家族が暮らしています。
それら個々の生命は NFTに登録され、子どもを産んだり、寿命を終えたりといった生の痕跡が記録されていきます。
今回展示された「東京」の舞台では、約 10 分のサイクルで昼と夜が訪れます。
この東京をのびのびと移動する「家」ロボットの周辺環境は、その家で暮らすかぞくっちの生態にも影響を与えます。
よく観察してみると、明るさや時間帯、傾斜などの環境によって、かぞくっちたちの性格や形状、行動パターンに変化が起きていくのがわかります。
人工生命の視点を通して、普段のわたしたちが都市環境から受ける影響との対比を考えてみるのも面白いかもしれません。
◆菅野創+加藤明洋+綿貫岳海
自作の機械やロボットを用いた作品を制作する菅野創、ブロックチェーンが作る新たな社会の可能性を探る加藤明洋、群衆シミュレーションの手法で作品を手掛ける綿貫岳海の 3 名のクリエイターから成るチーム。2022 年《かぞくっち》プロジェクトを始動。
複雑な問題を前に、人と AI はどんな答えを導き出せるのか? Qosmo《Artificial Discourse: すばらしい新世界に向けて》
<複雑な問題を前に、人と AI はどんな答えを導き出せるのか?>
クリエイター:Qosmo
作品名:Artificial Discourse: すばらしい新世界に向けて
日々ニュースや SNS から流れてくる話題について、あなたはどれだけ自分の意見を持っていますか?
昨今は AI の言語学習が発展し、「ChatGPT」などの生成 AI で気軽にAI と擬似的な対話ができるようになりました。
そのとき、なかなか答えの出ない複雑な問題について、AI に尋ねてみたらどんな答えが返ってくるでしょう?
これまで AI と人間におけるクリエイティビティの関係を探求してきた Qosmo は、今回の新作において、ChatGPT に複数の異なる人格をシミュレートさせ、複雑な問題について議論させました。
しかし彼らの会話をよく聞いていくと、お互いを否定することなく、一方で少数派の意見を尊重するわけでもない、「ありきたり」な結論に落ち着いてしまうようです。
これは AI のシステムによるものなのか、またはわたしたち自身の普段の姿なのでしょうか。
なんでも YES と答える AI に対して、人はどんな NO を創造することができるでしょうか。
◆Qosmo
Qosmo AI Creativity & Music Lab は、AI 研究者、エンジニア、アーティスト、デザイナーなどから構成される東京を拠点としたコレクティブ。AI を用いた人の創造性の拡張、未知なる音楽の探求などに取り組む。2018 年アルス・エレクトロニカ栄誉賞。
現代都市の「楽園」は、どこにひそんでいるのだろう? 藤倉麻子《あの山の裏/Tire Tracker》
<現代都市の「楽園」は、どこにひそんでいるのだろう?>
クリエイター:藤倉麻子
作品名:あの山の裏/Tire Tracker
いつも目にする景色の「裏側」を想像したことはありますか?
かつて共同体のなかでは、その地にそびえたつ「山の裏」に楽園や死後の世界があるとも考えられてきました。
それは物理的な場所と捉えられることもあれば、人々のイメージのなかにだけ存在する世界であったりもします。
都市郊外で生まれ育った藤倉麻子は、現代の都市がつくりだす風土のなかにも、無意識のうちに「山の裏」を想起してしまう、ささやかな信仰が生まれていると言います。
巨大なインフラ構造のすきまからのぞく遠浅のビーチの看板。
そんなかすかな景色の残像が、人々に現代の楽園を想起させるのだと。
さらに藤倉は日々移動を続ける車のタイヤに着目し、その存在を「ある目的の達成に向かう媒介とみなされたもの」であると同時に「それ自身も達成に向かうもの」と定義します。
しかしタイヤはときに、家や畑の片隅に放置されたりもします。
藤倉はそうした車体から外れたタイヤたちを「達成の途上」と表し、全国のタイヤ情報を集めています。
あなたの生活圏のなかにも、「山の裏」や「途上のタイヤ」がどこかに潜んでいるかもしれません。
◆藤倉麻子
1992 年生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修了。都市・郊外のインフラストラクチャーや 物流に注目し、3DCG アニメーションの手法を用いた映像作品を制作。令和4年度文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業採択。
過去と未来が交錯する「もうひとつの東京」とは? 佐藤朋子《オバケ東京のためのインデックス 序章 Dual Screen Version》
<過去と未来が交錯する「もうひとつの東京」とは?>
クリエイター:佐藤朋子
作品名:オバケ東京のためのインデックス 序章 Dual Screen Version
いま、わたしたちがいる東京に「もうひとつの東京」が生まれるとしたら?
芸術家・岡本太郎は、日本の高度経済成長期であった 1960 年代に「オバケ東京」という都市論を発表しました。
ここでいう「オバケ」とは、幽霊や妖怪の類ではなく、あるものごとを反対の角度から見つめたときに沸き立つ想像力のこと。
「オバケ東京」とは、新鮮で、魅力的で、いまの東京を触発するようなものであるべきだという構想でした。
土地や歴史の膨大なリサーチをもとに、その場所に新たな語りを付与する手法を開拓する佐藤朋子は、この岡本太郎の「オバケ東京」論に着目。
さらに同時代に生まれ、東京を破壊していった「怪獣ゴジラ」という存在の軌跡を追いかけるレクチャー型パフォーマンスと関連資料を展開します。
そこでは、都市の複雑な歴史にひそむ見えないものたちの存在と現在の東京とが接続されることで、まだ見ぬ未来の東京への想像力がかきたてられるかもしれません。
◆佐藤朋子
1990 年生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修了。自身の身体を用いた広範囲な調査をもとに物語を構築し、レクチャーの形式を用いた「語り」の芸術実践を行う。近年のプロジェクトに『往復朗読』『オバケ東京のためのインデックス』など。
未来の技術によって、人々の生き方はどのように変わるのか? 長谷川愛《Parallel Tummy 2073》
<未来の技術によって、人々の生き方はどのように変わるのか?>
クリエイター:長谷川愛
作品名:Parallel Tummy 2073
綿密な科学的リサーチと共に「ありえるかもしれない未来」を提案してきた長谷川愛は、未来の東京を舞台に、「陸地・海上などの住環境を選択でき、人工子宮が可能になった未来」をテーマとした参加型のロールプレイ型インスタレーションを発表。
参加者はそれぞれ自分だったらどんな選択をするか、そこにどんなドラマが生まれるかを話し合っていきます。
過日実施したワークショップでは、未来都市における制度や暮らし、価値観の変化についてさまざまなシナリオが生まれました。
来場者はそのシナリオについて、期待や不安、自分の考える新たな未来像などを自由に書き込むことができ、展示期間中に多様な議論を展開していきます。
それぞれが架空の未来を想像し共に擬似体験することで、いくつもの暮らしのストーリーを生成していくプロジェクトです。
これまでの生活に新たな選択肢を与える技術が可能になった未来で、あなたはどんな生き方を選ぶと思いますか?
◆長谷川愛
アーティスト。バイオアートやスペキュラティヴ・デザイン等の手法によって、生物学的課題や科学技術の進歩をモチーフに、現代社会に潜む諸問題を掘り出す作品を発表している。 IAMAS、RCA、MIT Media Lab 卒。2023年度から慶應義塾大学理工学部准教授。
東京藝術大学大学院 美術研究科 先端芸術表現専攻 八谷和彦研究室 平野真美《蘇生するユニコーン》
≪特別展示≫東京藝術大学大学院 美術研究科 先端芸術表現専攻 八谷和彦研究室
クリエイター:平野真美
作品名:蘇生するユニコーン
実在しない空想上の生物であるユニコーンは、現代において純真さやジェンダーに対して自由であることなど、様々な期待や憧れの象徴として描かれています。
しかし、この作品のユニコーンは生気なく床に横たわっています。
平野は、ユニコーンの骨格・内臓・筋肉・皮膚など、身体を構成するあらゆる部位を制作し、そこに酸素や液体を送り込んで擬似的な呼吸や血液循環を促すことで、ユニコーンの蘇生を試み続けます。
私たちが実生活のなかで見失いがちな夢や希望などのミエナイモノもまた、この作品を通して未来に蘇生されうるのではないでしょうか。
◆平野真美(東京藝術大学大学院 美術研究科 先端芸術表現専攻 八谷和彦研究室)
東京藝術大学大学院 先端芸術表現専攻在籍。不在や死への向き合い方を問いながら、闘病中の愛犬や架空のユニコーンなど、実在/非実在生物の生体構築や生命の保存、蘇生を試みる作品を制作している。近年の展示に「ab-sence/ac-cept 不在の観測」 岐阜県美術館(2021)など。
東京藝術大学大学院 美術研究科 先端芸術表現専攻 八谷和彦研究室 島田清夏《おとずれなかったもう一つの世界のための花火》
クリエイター:島田清夏
作品名:おとずれなかったもう一つの世界のための花火
両国の川開きの花火を起源とする日本の花火大会は、歴史的に「祭り」と「鎮魂」の意味を併せ持ち、江戸時代から都市の夜空を彩ってきました。
島田は、COVID-19 によって 2020 年に中止された日本の花火の時間的・地理的データを収集・分析し、あり得たかもしれないもうひとつの世界として、実際にそれらの花火を打ち上げました。
日本地図上で、1 日を 1 秒に見立てた 365 秒の花火パフォーマンスは、はるか上空と横から撮影され、下から見上げるシミュレーション映像と組み合わせて展示されます。
パンデミックという災禍を乗り越えた今、現代人のカタルシスを多視点で捉え直し、鎮魂と未来への祈りを試みます。
◆島田清夏(東京藝術大学大学院 美術研究科 先端芸術表現専攻 八谷和彦研究室)
東京藝術大学大学院 先端芸術表現専攻在籍。花火の持つエネルギーに魅了され、火薬学や文化・歴史など多角的な観点から花火についてリサーチし、作品を制作している。また花火師としても活動し、ハノーヴァー国際花火競技会をはじめ、国内外の花火大会に花火演出家として参加。
未来を想像するヒントがいっぱいのイベントも毎日開催
「都市にひそむミエナイモノ展 Invisibles in the Neo City」(入場:無料/主催:東京都)では、こうした8組の若手アーティスト作品展示のほか、アートコミュニケーターによる展示鑑賞ツアーや、金曜夜の哲学カフェ、未来の光る街をつくろう!〜みんなの創作ワークショップ〜など、さまざまなイベントや体験コーナーがあるから、気になる人は、公式サイトをチェックして行ってみて↓↓↓
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