法定離婚事由とは? 離婚裁判で離婚が認められる5つの理由

  • (更新:2024年09月24日)
  • 離婚・男女問題
弁護士JP編集部 弁護士JP編集部
法定離婚事由とは? 離婚裁判で離婚が認められる5つの理由

夫婦が離婚する際には、離婚について夫婦が合意するのが原則です。しかし、ご自身が離婚を希望しても、配偶者は離婚を拒否するケースがあります。
配偶者に離婚を拒否された場合でも、「法定離婚事由」があれば、訴訟(裁判)を通じて離婚することが可能です。

1. 原則として離婚には夫婦の合意が必要

夫婦が離婚しようとする場合、まずは協議によって離婚条件を話し合うのが一般的です。

離婚協議がまとまらなければ、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、調停委員の仲介のもとで話し合いを続けます(いきなり離婚裁判を起こすことはできません。これを「調停前置主義」といいます)。

夫婦の離婚は上記のように、離婚協議または離婚調停による話し合いを通じて、合意のもとで成立させるのが原則です。ただし、夫婦のうち一方が離婚を希望するものの、他方は拒否するケースも想定されます。

このようなケースでは、「法定離婚事由」が存在する場合に限り、離婚裁判によって強制的に離婚することができます。そのため、配偶者が拒否している状況で離婚を成立させるためには、法定離婚事由が存在するかどうかを確認することが大切です。

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2. 裁判で離婚が認められる5つの「法定離婚事由」

離婚裁判を通じて、判決により強制的に離婚を成立させるためには、離婚を求める側が「法定離婚事由」を立証しなければなりません。民法では、5つの法定離婚事由が定められています。

(1)法定離婚事由とは

「法定離婚事由」とは、離婚判決を言い渡すための要件とされている事由です(民法第770条第1項各号)。民法では不貞行為(不倫)をはじめとして、5つの法定離婚事由が定められています。

法定離婚事由がない場合、裁判で離婚を認めてもらうことはできません。たとえば性格の不一致などは法定離婚事由にあたらず、裁判離婚が認められる可能性は低いです。

これに対して、不貞行為などの法定離婚事由が存在すれば、配偶者が拒否していても、裁判所の判決によって離婚が成立します。

配偶者が勝手に家を出て行った場合や、生活費を全く渡さない場合なども、「悪意の遺棄」などの法定離婚事由に該当し、裁判離婚が認められる可能性があります。

配偶者が拒否している状況で離婚を成立させるには、法定離婚事由を立証できるかどうかがポイントです。

(2)5つの法定離婚事由の内容

民法において定められている法定離婚事由は、以下の5つです。

①不貞行為

「不貞行為」とは、配偶者以外の者と性交渉をすることを意味します。食事やデートなどだけでは足りず、性的接触(いわゆる肉体関係)が必要です。

②悪意の遺棄

「悪意の遺棄」とは、夫婦の同居義務・協力義務・扶助義務を正当な理由なく放棄する行為です。

たとえば、

  • 無断で別居する
  • 育児を放棄する
  • 働けるのに働かない
  • 収入に見合った生活費を支払わない
  • 昼夜を問わず遊び歩いている

などの事情があれば、悪意の遺棄に該当する可能性があります。

③3年以上の生死不明

配偶者から3年以上にわたって全く音信がなく、生死が明らかでない状態が続いている場合は、裁判離婚を請求できます。同居して共同生活をすることが事実上不可能であり、婚姻の目的を達成できないからです。

なお、配偶者の生死不明が7年以上におよんでいる場合は、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることができます(民法第30条第1項)。

家庭裁判所によって失踪宣告が行われると、配偶者は死亡したものとみなされ(民法第31条)、その時点で婚姻関係が消滅します。この場合、離婚裁判を提起する必要はありません。

④強度の精神病に罹り、回復の見込みがないこと

配偶者が強度の精神病に罹り、回復の見込みがない場合は、裁判離婚を請求できます。離婚を認めず長期間にわたって介護などを強いるのは酷だからです。

「精神病」にあたるのは、統合失調症・躁(そう)うつ病・アルツハイマー型認知症などです。これらの症状がきわめて重篤であり、かつ回復が医学的に見込めない場合は、法定離婚事由にあたると判断される可能性が高いでしょう。

⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由

上記①~④のほか、婚姻関係がすでに破綻していること、または婚姻関係を継続させることが夫婦のいずれか一方にとって酷であることを示す事情があれば、「婚姻を継続し難い事由」として裁判離婚が認められる可能性があります。

以下に挙げるのは、「婚姻を継続し難い事由」にあたり得る事情の一例です。なお、これらの事情は「悪意の遺棄」など、他の法定離婚事由にも重複して該当する場合もあります。

  • 暴力、暴言
  • 宗教上の対立
  • 金銭トラブル(借金、ギャンブルなど)
  • 重大な犯罪行為
  • 長期間にわたる別居
  • DV
  • モラハラ

など

裁判離婚を認めてもらうには、上記5つのいずれかの法定離婚事由を、証拠に基づいて立証しなければなりません。弁護士のアドバイスを受けながら、法定離婚事由を立証し得る有力な証拠を確保しましょう。

法定離婚事由については、以下のコラムもご参照ください。

悪意の遺棄とは? 慰謝料を請求できる?

3. 法定離婚事由がない場合の対処法

法定離婚事由が存在しない場合、裁判離婚は認められません。この場合、基本的には協議または調停を通じて、離婚の合意を目指すほかないでしょう。

なお、離婚の合意ができない状況において、どうしても配偶者と離婚したい場合には、数年間にわたって別居を続けることが考えられます。長期間にわたり別居している事実は、「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたり、裁判離婚が認められるようになる可能性があるからです。

ただし、法定離婚事由として認められる別居期間は少なくとも5年以上、状況によっては10年以上が必要ですので、長期戦になることを覚悟しなければなりません。

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