裁判離婚とは
- (更新:2024年09月30日)
- 離婚・男女問題
1. 裁判離婚とは?
「裁判離婚」とは、離婚裁判(訴訟)の判決によって強制的に成立する離婚です。
(1)裁判離婚とは
離婚は夫婦の合意によって成立するのが原則ですが、離婚の話し合いがまとまらないこともあります。
この場合、以下のいずれかの法定離婚事由が存在する場合に限り、裁判所の判決によって裁判離婚を成立させることができます。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 強度の精神病に罹り、回復の見込みがないこと
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
協議離婚や調停離婚とは異なり、裁判離婚は配偶者が同意していなくても、強制的に成立します。その代わりに、上記の法定離婚事由の存在が裁判離婚の要件とされています。
(2)裁判離婚で請求できること
離婚裁判における主な争点は「離婚が認められるかどうか(=法定離婚事由が存在するかどうか)」ですが、以下のような離婚条件についても、離婚裁判で争うことができます。
①お金のこと
- 慰謝料
- 財産分与
- 年金分割
- 婚姻費用
②子どものこと
- 親権
- 養育費
- 面会交流
など
これらの離婚条件については、裁判所が離婚を認める判決を言い渡す際に、判決主文において結論が示されます。
(3)離婚裁判は必ず公開になるのか
離婚裁判は、他の民事訴訟と同様に、公開されるのが原則です。例外として、特別の事情がある場合には公開を停止することが許される場合がありますが、実際に公開が停止されることはきわめて珍しいのです。
ただし、裁判が公開されていると言っても、当事者の主張や証拠などが、細部にわたって傍聴人に把握されるわけではありません。主張は書面の形で裁判所に提出され、実際の法廷ではその内容がすべて読み上げられることにはなりません。
また、裁判所に提出した書面や証拠類についても、裁判所に対して閲覧請求をしない限り見られることはなく、全く無関係の第三者の閲覧請求が無制限に認められる可能性は低いと言えます。
2. 裁判離婚の流れ・期間
裁判離婚の手続きの大まかな流れと、裁判離婚が成立するまでの期間の目安を解説します。
(1)裁判離婚の流れ
裁判離婚の手続きは、大まかに以下の流れで進行します。
①家庭裁判所に訴訟を提起する
夫婦のいずれかの住所地を管轄する家庭裁判所に対して訴状や証拠資料などを提出し、訴訟を提起します。
なお、自分が訴訟を提起した場合には、自分は「原告」、配偶者は「被告」となります。
また、たとえば配偶者が不貞行為を行っていたような場合には、訴状を提出する際に、離婚訴訟とあわせて同時に慰謝料を請求することも可能です。
訴状には民法に定められている「法定離婚事由」を記載したうえで、記載した離婚事由の存在を裏付ける証拠も提出します。
②被告が答弁書などを提出する
裁判所に指定された期日までに、被告が反論の書面や証拠資料を提出します。
初回の裁判の期日が決定され、その期日の1週間前を目安に被告から訴状に対する反論が記載された書面(答弁書)や証拠資料が提出されます。
③公開で行われる口頭弁論期日で審理が行われる
書証の取り調べや証人尋問などが行われます。また、必要に応じて非公開で争点整理を行うこともあります。
④和解が提案される
夫婦間で歩み寄りの余地があると思われる場合は、裁判所から和解が提案されることがあります。和解が成立すれば、離婚裁判は終了します。
⑤判決が言い渡される
離婚を認めるか否か、および認める場合は離婚条件の内容を示した判決が言い渡されます。
⑥控訴・上告
離婚裁判の判決に対しては、控訴・上告による異議申し立てが認められています。法定の期間内に控訴・上告が行われなかった場合、または上告審判決が言い渡された場合は、判決が確定し、離婚が成立します。
⑦離婚届の提出
離婚を認める判決が確定した場合や和解で離婚が成立した場合、そのままでは「離婚した」という事実が戸籍に反映されるわけではありません。「離婚した」という事実を戸籍に反映させるためには、裁判をした当事者が、役所へ届け出をする必要があるのです。
たとえば、判決によって離婚が確定した場合には、離婚訴訟を提起した当事者は、離婚を認める判決が確定した日や和解が成立した日から10日以内に、役所に届け出る必要があります。なお、10日以内に届出がない場合には、裁判の相手方が届出をすることも可能になります。
(2)裁判離婚が成立するまでの期間
裁判離婚が成立するまでには、1年から2年程度の期間を要することが多いです。争点が多い場合や、控訴・上告が行われた場合には、さらに長期間におよぶこともあります。
離婚裁判は、離婚調停とは異なり、基本的には書面をベースに進められます。具体的には、1回の期日でどちらか一方の主張が提出され、それに対する反論は次の期日になされることになります。
それに加えて、離婚裁判の期日は、1か月に1回のペースでしか行われないというのも解決までの期間が長くなる要因といえます。
根気強く離婚裁判を戦うためには、弁護士へのご依頼をおすすめします。
(3)離婚裁判期間が短くなるケース
離婚裁判は、上記のとおり解決までに長期間を要することになりますが、一定の場合には解決までの期間が短くなることがあります。
①被告が争わない場合
離婚裁判が長期化する原因としては、当事者間に離婚や離婚条件をめぐって争いがあるからです。争いがある事項については、当事者双方で主張や立証が繰り返されるため、何度も期日を重ねなければならない結果、解決までの期間が長くなってしまうのです。
しかし、被告が答弁書を提出せずに裁判を欠席したり、積極的に争わなかったりする場合には、原告側の主張立証だけで判決まで行くことになりますので、解決するまでの期間が大幅に短くなります。
なお、民事訴訟では、被告が答弁書を提出せず、第1回口頭弁論期日を欠席した場合には、擬制自白(民事訴訟法159条1項)が成立しますので、被告欠席のまま判決が言い渡されることになります。
しかし、人事訴訟である離婚裁判では、擬制自白の制度は適用されません(人事訴訟法19条1項)。そのため、被告が答弁書を提出せず、第1回口頭弁論期日を欠席したとしても、当然に原告の訴えが認められるものではなく、証拠に基づいて主張立証をしていく必要がありますので注意が必要です。
②裁判の途中で和解した場合
離離婚裁判が終了する原因には、判決以外にも和解という方法があります。
和解とは、当事者がお互いに譲歩して合意により争いをやめる手続きのことをいいます。離婚裁判がある程度進行してくると、その時点の主張や証拠に基づいて裁判官から和解が提案されることがあります。
提案された和解案にもよりますが、和解を受け入れることによって、その時点で離婚裁判は終了しますので、解決までの期間を短縮することができます。
ただし、和解よりも判決を選択した方が有利になることもありますので、和解を受け入れるかどうかについては、弁護士に相談をしながら慎重に判断するようにしましょう。
3. 裁判離婚のメリット
離婚裁判は、期間がかかるというデメリットはありますが、離婚裁判をするメリットも存在します。
(1)判決によって必ず解決できる
協議離婚や調停離婚は、夫婦の話し合いによる解決になりますので、お互いが譲歩しなければ、いつまで経っても解決することができません。
これに対して、裁判離婚は、当事者の主張立証に基づいて最終的に裁判官が判断を下してくれますので、離婚や離婚条件に争いがあったとしても必ず結論が出るというメリットがあります。
話し合いを続けるよりも、早めに離婚裁判に切り替えた方が早期に解決することができる可能性もあります。
ただし、自分の望んでいる結論を裁判で得るためには、自分の意見を裁判所に対して効果的に主張して立証するための、準備や戦略が必要となります。したがって、裁判を提起するなら、法律と訴訟の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
(2)判決には強制力がある
離婚にあたっては、養育費、慰謝料、財産分与などの金銭給付が伴うことがあります。離婚後に不安になるのが、相手がきちんとお金を払ってくれるかどうかという点ですが、判決には強制力がありますので、その点も安心です。
相手が離婚裁判によって決まった内容に従わなかった場合には、強制執行の手続きをとることによって、相手の財産から強制的にお金を回収することができるようになります。
協議離婚では、離婚協議書を作成することがありますが、単純な離婚協議書では直ちに強制執行をすることができず、金銭の支払いを求める裁判を別途起こさなければなりません。
このように、解決後の手続きを考えた場合にも離婚裁判をすることにはメリットがあります。
4. 裁判離婚を弁護士に依頼すべき理由
離婚裁判では、法定離婚事由の存在を立証できなければ、離婚が認められません。また、離婚が認められるとしても、離婚条件について適切な主張・立証を行わなければ、ご自身にとって不利な条件で離婚が成立するおそれもあります。
そのため、離婚裁判を提起する際には、事前に弁護士へご依頼いただき、十分な検討と準備を行うことをおすすめします。
できる限り早い段階で弁護士にご相談いただければ、裁判離婚を見据えて適切な準備を整えることができます。配偶者との離婚をご検討中の方は、お早めに弁護士へご相談ください。
5. 裁判離婚の弁護士費用の相場
裁判離婚を含む離婚手続きを弁護士に依頼する場合の費用は、依頼時に支払う着手金が50万円程度、離婚成立時に支払う報酬金も50万円程度が標準的です。配偶者に対して多額の金銭を請求する場合は、弁護士費用がさらに高額となる場合もあります。
実際の費用は弁護士によって異なるので、依頼前に必ず金額をご確認ください。
- こちらに掲載されている情報は、2024年09月30日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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