第一生命保険(東京)は9日、周南市の徳山分室に勤めていた元保険外交員女性(89)が架空の金融取引で顧客から約19億円をだまし取った問題で、不正の経緯などを盛り込んだ報告書を公表した。同日、金融庁にも報告した。
問題を初めて発表した10月2日時点より被害者は3人増え計24人となった。被害額は9200万円増の計19億5100万円に上る。同社によると、元外交員は2002~20年に「成績優秀者のみに認められた高い利子がつく自分専用の特別枠がある」などと顧客に架空の資産運用を持ち掛けた。手書きの「お預かり証」を手渡し、現金を受け取っていたという。
元外交員は7月3日に解雇されるまで、社内で唯一の「特別調査役」の肩書だった。報告書は「社内外において一定の影響力を有する存在だった。その処遇の特別性を背景に権勢を誇示しうる状況を作ってしまった」と指摘。「元社員に対する適切な管理ができておらず、内部監査が不十分だった」と認めた。
17年に元外交員の不審な取引について外部から問い合わせがあり、社内調査をしていたことも明らかにした。本人を含めて関係者がいずれも否定したため、調査を打ち切ったという。
第一生命は被害者に順次、被害額の3割を肩代わりして払う。不正が疑われる外交員を直接監督する新たな組織を設ける方針。広報部は「事案の早期把握と抑制ができなかった。全容を解明しつつ、再発防止策に取り組む」としている。山口県警に詐欺容疑で刑事告発している。(川上裕)
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