日本株を下落前に売り抜けたジム・ロジャーズ氏: 日本は50年後にはなくなる

ジョージ・ソロス氏とともにクォンタム・ファンドを創業したことで有名なジム・ロジャーズ氏がThe Real Javier Novoaのインタビューで日本株の下落について語っている。

日経平均急落

日本株が下落している。円安も助けとなって長らく上昇を続けていた日本株だが、円高に転換してから調子が悪い。

日経平均のチャートは次のように推移している。

それまで日本株は非常に調子が良かった。ここ数年は米国株よりも上がっていたくらいで、海外の著名投資家がこぞって日本株を褒め称えていた。

日本株がそれまで上がっていた理由についてロジャーズ氏は次のように説明している。

日本の株式市場は35年間も下がったままだった。言い間違いではない。(訳注:バブル崩壊前の高値である)1990年から35年だ。

長すぎてもう何年か分からない。多くの理由で下がったままだったが、ここ最近は上昇していた。

そして日本株はついに市場最高値を更新した。日本政府は紙幣印刷を行い、株式を買い入れ、あらゆる手段を使って日本株に投資させようとしていた。

だから日本ではあらゆるものがバブルになっていた。

ロジャーズ氏も日本株を買っていた著名投資家の1人である。

ロジャーズ氏が日本株を買った理由

だが今思えばロジャーズ氏だけがまともな理由で日本株を買っていたように思う。ロジャーズ氏が日本株を買っていた理由は、日銀の量的緩和である。

紙幣をばら撒けば株価が上がるのは当たり前である。日銀は刷った紙幣で株式を買い入れていたのだから、株価が上がるのは尚更である。

他のアメリカの投資家が日本企業はコーポレートガバナンスを受け入れて生まれ変わっているとか、妙な夢を見て日本株を買っていたのを筆者は訝しんでいた。だがロジャーズ氏だけは紙幣印刷を株価上昇の理由だとして、一方で日本経済は政府のばら撒きのお陰で酷い状態だと主張していた。

そしてどうなったか? 日銀は低金利政策を止めようとしている。量的緩和も徐々に縮小する。株高の原因がなくなるのである。

ロジャーズ氏が正しければ、日本の株高は終わる。他のアメリカの投資家が正しければ、株高は継続するだろう。

そしてどうなったか? ロジャーズ氏が正しかった。彼は次のように言っている。

そして誰かが突然気付いた。これはいつまで続けられるのか? 日本株はもう何年も上がり続けている。もう長らくバブルになっている。

そして日経平均は8月に暴落したのである。

日経平均急落の理由

だが1つ問題がある。ロジャーズ氏は金融緩和がなくなったことが原因だと考えているが、筆者はそうだとは考えていないことである。

筆者の分析によれば、日経平均の下落の原因は日本経済の減速である。下落直後の記事で長期金利が別段上がっていないことを指摘した上で、次のように書いたことを思い出したい。

金利が上がっていない以上、金利上昇が株価下落の原因であるわけがない。

厳密には、市場では金利は上がっていなかった。だから利上げによる株安はまだ起こっていないのである。

問題はむしろ、それでも日経平均は下落したということである。だから景気減速による今の株安に加え、金融市場が日銀の利上げを本当に織り込み始めたらどうなるだろうか。

日本経済の将来

結局は、日本経済の弱さが問題である。日本経済が弱いために利上げに耐えられない。だから日本市場はまだ利上げを織り込んですらいない。

ロジャーズ氏は次のように述べている。

同時に日本経済は深刻な問題を抱えている。人口はもう15年も減少し続けている。政府債務はもう何年も毎月増加し続けている。

解決策は見えない。彼らは移民は嫌がっている。子供も作らない。誰が日本を救済するんだ?

ロジャーズ氏は、それでも紙幣印刷があれば株価は上昇するとして、日本株を買っていた。だがロジャーズ氏は日本株を既に売り払っている。彼は次のように述べている。

あれほどの上げ相場があって、あのように下げ相場が始まってしまったら誰が買うんだ?

少なくとも自分は買わない。日本株はもう売った。売るタイミングは早すぎたが、今では喜んでいる。

ロジャーズ氏は春頃には日本株を売っていた。

当時はまだ日本株は下落していなかったので、ロジャーズ氏は売ったことを後悔していた。だが結果的にはこれはほとんど完璧なタイミングだった。日経平均のチャートを再掲しよう。

しかもロジャーズ氏は日経平均の下落直前の7月に次のように言っている。

こういうことは歴史上何度かあったが、ほとんどすべての市場が最高値を更新している。そうでないのは中国ぐらいだろう。

それは素晴らしいことだ。多くの人が上げ相場を楽しんでいる。だが長年生きたわたしの経験によれば、状況がこれほど良い時、誰もが楽しんでいる時は、上げ相場の終わりが近いということだ。

ほとんど完璧なタイミングである。クォンタムファンドではトレーダーをソロス氏に任せ、優れたアナリストでありながらも投資のタイミングについては世界最悪だと自称するロジャーズ氏だが、今回の日本株の投資タイミングは素晴らしいと言える。

結論

ということで、今回はロジャーズ氏がタイミングまで正しかった珍しいトレードである。

日本株はどうなるのか。経済がそもそも減速しつつあるのに、そこに本当に利上げが来てしまえば日経平均はどうなってしまうのか。

ロジャーズ氏は次のように述べている。

奇蹟でも起こらなければ50年後には日本はもうないだろう。

著書ロジャーズ氏の日本経済に対する見方はもう何十年もブレたことがない。著書『捨てられる日本』などでも書かれているので、興味のある人はそちらも読んでみてもらいたい。


捨てられる日本