今回は小野薬品工業<4528>について取り上げます。2020年初頭に2,000円台だった株価は、好調な業績を背景に2022年には4,000円近くまで達しました。しかし、その後わずか2年足らずで株価は半値以下に下落し、2024年9月現在、2,000円前後で推移しています。これはコロナショック以来の安値水準です。業績が好調を維持しているにもかかわらず、なぜこのような急激な株価下落が起きているのでしょうか。
この株価の乱高下の背景には、オプジーボの特許切れ問題、新薬開発の不確実性、グローバル展開の課題など、小野薬品工業を取り巻く複雑な状況があります。しかし同時に、この株価下落は新たな投資機会を示唆しているのでしょうか。本記事では、小野薬品工業の株価動向を詳細に分析し、その背後にある要因を探ります。業界動向や同社の戦略を多角的に検討し、現在の株価が企業の真の価値を反映しているのか、そして今後どのような展開が予想されるのかを考察します。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
300年以上の歴史を持つ製薬会社「小野薬品工業」
小野薬品工業は、1717年に創業した日本の製薬会社で、300年以上の歴史を持つ老舗企業です。同社は「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」という企業理念のもと、革新的な医薬品の創製を通じて人々の健康に貢献することを目指しています。
事業の中核は、新薬の研究開発、製造、販売です。特に注力しているのが、がん、免疫疾患、神経疾患などの領域です。同社の最大の特徴は、独自の創薬アプローチによる革新的な医薬品の開発力にあります。その代表例が、がん免疫療法薬「オプジーボ」(一般名:ニボルマブ)です。オプジーボは、がん治療のパラダイムシフトをもたらした画期的な薬剤として世界的に高い評価を受けており、小野薬品の成長を牽引しています。
研究開発においては、自社創薬を基本としながら、アカデミアや他企業とのオープンイノベーションも積極的に推進しています。特に、京都大学の本庶佑教授との共同研究から生まれたオプジーボの成功は、産学連携の重要性を示す好例となっています。
グローバル展開においては、オプジーボを通じて世界市場への足がかりを築いています。米国ブリストル・マイヤーズ スクイブ社との戦略的提携により、オプジーボの全世界での開発・商業化を進めています。一方で、自社での米国展開も視野に入れ、段階的に販売網の構築を目指しています。
財務面では、オプジーボの成功により高い収益性を実現しています。2024年3月期の売上高は5,026億円、営業利益は1,599億円と、過去最高を更新しました。また、研究開発費は売上高の約20%を維持しており、将来の成長に向けた積極的な投資を続けています。
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