史上最強の若者頭が定年を迎える。花ノ国(芝田山)は来月65回目の誕生日を控え、今場所が最後の舞台。6日目にNHK中継のラスト解説を終え「いつもと一緒だよ」。通い慣れた両国国技館の若者頭室の前で優しく笑った。
75年春場所で初土俵を踏み、最高位は前頭筆頭。94年九州場所で引退後、若い衆の指導などをする若者頭へ転向した。インターネット掲示板で「史上最強の若者頭☆花ノ国☆」というページも誕生した実力者だ。
横綱千代の富士が1000勝を達成した相手として知られる。それには「もう慣れた」と苦笑しつつ、思い出の一番を明かした。「唯一の金星。今も頭の中に残ってる」。89年秋場所2日目に、横綱北勝海(現八角理事長)を撃破。「思いっきり行くと見せかけて、バッと(突き落とす)。緩急だよ」と振り返った。
約30年の裏方生活は「若者の先頭に立つ」と、強い覚悟で走り抜いた。今後は未定だが「銭湯代くらいは稼ぎたい」。場所以外の日課は2時間半の散歩を終え、43度の湯と水風呂を3往復。そんな銭湯生活がメインと冗談を飛ばしつつ、真剣な表情に戻った。「相撲の伝統を引き継ぎたい。知識はある。誰かそれを見抜いてくれたらなぁ」。角界の“伝道師”となる未来を描いた。【飯岡大暉】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)