<大相撲秋場所>◇13日目◇20日◇東京・両国国技館

関脇大の里(24=二所ノ関)が史上最速、所要9場所での大関昇進を「当確」させた。大関琴桜との結びの一番に、同体取り直しの末に寄り切って快勝。前日12日目は、前頭若隆景に初黒星を喫したが引きずらずに12勝1敗とした。これで「三役で3場所33勝」の大関昇進目安に到達。昭和以降、最速で大関に昇進した羽黒山、豊山、雅山の12場所を3場所更新することになる。出世の早さに髪の伸びが追いつかない、前代未聞の“ちょんまげ大関”が誕生する。14日目に勝てば2度目の優勝が決まる。

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大の里が、小学1年で始めた相撲に夢中になるまでに時間はかからなかった。大きかったのは、アマチュア相撲で全国大会2位の実績がある父知幸さん(48)が購入した往年の名力士らを特集したDVDの存在。知幸さんによると「十数巻あったDVDを隅々まで見ていた」。変わったところでは、89年春場所14日目に、千代の富士が大乃国を破って14連勝で優勝を決めた取組後が好きだったという。当時の伊勢ケ浜親方(元大関清国)が、千代の富士の脱臼した左肩に力ずくで骨をはめる衝撃シーンだ。

そんな相撲マニアだけに「歴代横綱の取組はたくさん見ていた。当然、輪島さんの取組も」(知幸さん)。学生相撲出身で唯一、横綱まで上り詰めた同郷石川県の英雄、輪島(故人)をほうふつとさせる取り口もうなずける。多くの横綱が上手からの攻めを得意とする中、輪島は「黄金の左」と称された左下手、左差しからの攻めで一時代を築いた。左右の違いこそあるが、大の里も右差しから主導権を握る珍しい取り口。知幸さんは「小さい時に、輪島さんが生まれ育った街のあたりに連れて行ったことがある」と明かす。導かれるように、輪島の後を継いで「黄金の右」と呼ばれる日も近いかもしれない。【高田文太】

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