28歳で土俵を去ることを決めた。秋場所3日目から休場中の関脇貴景勝(常盤山)が20日、日本相撲協会に引退届を提出。同協会は、引退と年寄「湊川」襲名を理事会で承認した。28歳1カ月での引退は、平成以降の横綱大関では最年少。今後は常盤山部屋の部屋付きとして後進を指導する。

ケガと付き合い続けた現役生活だった。決断したのは11日目(18日)の夜。部屋を訪れ、師匠の常盤山親方(元小結隆三杉)に「引退します」と伝えた。師匠はこの日、「よくやったと伝えたい」とねぎらった。

175センチ、165キロ。大柄ではない体で大関まで登りつめた。本名の「貴信」の由来である貴乃花部屋に入門し、元横綱の熱を肌で感じながら、歩を進めてきた。14年秋場所で初土俵。16年夏場所で新十両、17年初場所で新入幕と順調に番付を上げてきた。その部屋が暴行問題に揺れ、移籍が決まっても、己の相撲に集中する姿勢は揺るがなかった。18年九州場所で幕内初優勝。19年春場所後には、58年以降の初土俵では9位の若さで大関に“年少昇進”。突き、押しを武器に、通算4度賜杯を抱いた。4度の優勝は大関では魁皇の5度に続き、2番に多かった。

しかし頭からあたるスタイルはもろ刃の剣だった。慢性的な首の痛みに日々悩まされ、大関昇進後に12度休場。今年、15日間土俵に立ったのは名古屋場所だけだった。成績は5勝10敗に沈み、通算30場所在位した大関から陥落。今場所は10勝以上を挙げて特例での大関復帰を狙ったが、初日から2連敗を喫し、3日目に「頸椎(けいつい)椎間板ヘルニア」で今年4度目の休場。返り咲きはならなかった。

大関昇進時にこう誓っていた。「大関の名に恥じぬよう、武士道精神を重んじ、感謝と思いやりの気持ちを忘れず、相撲道に精進してまいります」。その言葉通り、10年間を走り抜けた。今日21日、会見を開き、思いを明かす。

◆貴景勝貴信(たかけいしょう・たかのぶ)本名・佐藤貴信。1996年(平8)8月5日、兵庫・芦屋市生まれ。小4から相撲を始め、埼玉栄高で全国7冠。20年11月に元大関北天佑の次女で元モデルの有希奈さんと結婚し1男。幕内優勝4回、通算441勝254敗116休。175センチ、165キロ。血液型O。