今日は昨日7月31日(水)に東京有楽町の辻仁成(Jinsei Tsuji)のライブレポートを書いていきます。
ライブ情報
- アーティスト名:辻仁成 (Jinsei Tsuji)
- ツアー名:JINSE TSUJI JAPAN FINAL TOUR“終わりよければすべてよし”
- 会場:ヒューリックホール東京
- 公演日:2024年7月31日(水)
はじめに・・・
このブログでは洋楽中心に私の好きな曲の歌詞和訳を紹介してますが今日は趣向を変えてライブ・レポートです。
辻仁成です。
ミュージシャン、シンガー・ソング・ライターとしては知る人ぞ知る人と信じてますが、80年代から90年代始めに活動していたECHOES(エコーズ)のヴォーカリストです。
ミュージシャンよりもバンド解散後の作家活動が有名です。
1997年に「海峡の光」で回芥川賞を受賞したり、コメンテーターとしてテレビに出たり、南果歩と中山美穂と結婚してワイドショーでも一時期有名だったりしました。
私が辻さんを知ったのは学生時代に図書館で借りた2枚目のソロアルバム「君から遠く離れて」。
ハスキーな声も曲もよいのですが何よりも歌詞。
恋愛だけではなく人との心の触れ合いやすれ違い、あくまでパーソナルな目線の社会的なテーマの歌にどっぷりはまりました。
それから後追いで聴いたのが既に解散していたエコーズ。
学生時代の心の隙間を埋めてくれるような歌の数々は大人なアーティストとなったソロ時代よりも青くて繊細で励ましてくれて心に寄り添ってくれて...
一般的にはクサいとかダサいバンドと思われてたかもしれないですが、歌詞が文学的だけどストレートに刺さったし、サウンドもメロディが素晴らしくて洋楽ロックに追い越せという時代にU2等の影響は感じつつも曲構成がしっかりしていて当時の邦楽ロックの中ではオリジナリティはピカイチで欧米のマネごとバンドという感じが一切なかった。
エコーズがいなかったら今の自分のどこかが欠落してもっと違った人間になっただろうなと思うくらい影響を受けました。
同時代に活躍したBOØWYやTHE BLUE HEARTSや尾崎豊よりも私にとってはいまだに心の中に生き続ける大切なバンドです。
エコーズの影響を上げるはミュージシャンは多いらしくのですが、有名どころではMr.Childrenの桜井和寿くらいしか聞かなかったりします。
そして、テレビの80年代の名曲特集でも取り上げることはなかったり、音楽雑誌が特集するJロックの名盤やバンドランキングでも名前が出ないのがちょっと寂しいなと思います。
お行儀良いお利口さんという意味ではなく辻さんも相当やんちゃでとんがってたと思いますが、真面目でリアルなバンドだったので、バンドブームの当時は個性的な目立つバンドもたくさんいたので、今の時代でいうヴァイラル(バズリ)の要素が今一つ足りなかったのかなと感じます。
辻さんのソロ作も大好きなのですが、90年代半ば以降はより私小説的な詞世界に向かったり音楽も実験的な方向性に行ってしまい、熱心にアルバムやライブを追っかけることなくなってしまいました。
作家活動がメインになったので、ロック・ミュージシャンとしての現役感が薄れてきたと感じたのもあります。
それでも2017年にリリースした久々のアルバム「命の詩」をたまたまサブスクで見つけ、初期のソロを思い出す曲が詰まっていて久々にグッときました。
やっぱり辻さんの本質は何も変わってないんだな、と改めて思いました。
いつかライブまた行きたいなぁとか思っていたのですが、目に止まったのがなんと”引退ライブ”。
音楽活動をやめるという訳ではないようですが、余興活動、いわゆるライブ活動からの引退のようです。これは絶対に行かなくてはならないとチケット購入。
私が参戦するのは東京3公演の二日目の7月31日。
本当は東京最終日の8月5日にしようかと思ったのですが、二日目が一番チケットが取り易くて前の方で見れるかも...という理由で購入。
あっさり買えました。
ちなみに東京最終日はソールドアウト。
事実上のライブ活動引退日となる8月7日の大阪公演のチケットはまだあるようです。
(さすがに大阪まで遠征しませんが...)
私にとっては2000年の12月28日のエコーズ再結成ライブ(場所は日本武道館!)以来の24年ぶりの辻仁成。夢のような一夜だったのを今でも覚えてます。
プチ?引退ライブということでドキドキ感と心地よい緊張感を感じながら当日を待ちました。
辻さんのライブ前の意気込みが下の彼のWebサイトに掲載されています。いかにも辻さんらしくニュートラルなコメントです。
滞日公演「いよいよ引退の朝、引退について思うこと」 | Design Stories
その他今回の公演で演奏した曲の半数が収められた今回のバンドセットに近い編成での最新ベスト的再録アルバムの記事では辻さん自身のライナーノーツ(曲解説)があったので、個人的な備忘録としてリンクします。
退屈日記「ジャパニーズソウルマン、本人自身によるライナノーツ」 | Design Stories
ほとんど思い入れのみの前置きが長くなりましたが以下がライブレポートです。
開演前・・・
会場時間の少し前の18時半前に会場のヒューリックホール東京に行きました。
ヒューリックホール東京は、有楽町のシンボル「マリオン」の11Fにあるキャパ900人程のイベントホールです。
元は映画館のスクリーンをコンサートにも対応できるように改装したホールです。
元映画館の作りなので清潔な作りで、座席も座り心地が良く左右前後のスペースもゆったり目でこれは騒ぐライブの会場ではないなというのは予想通り。
会場はほぼ満員です。
チラホラと空き席がある程度でたまたま自分の左横も空いてました。
ちなみに私の右横は50代位の品の良さそうな女性が旦那さん?と来てました。
いつもはツアー中のアーティストのライブを東京で見る、というケースが多いのでセトリをWebでチェックして予習するのですが、今回は予習は一切なし。
10,20代の時に聴き馴染んだ曲を敢えて聴き直す事なく今聴いてどう感じるかという想いと、当日のサプライズ感を味わいたかったからです。
観客層は私と同じか少し上の50,60代が中心、40代がチラホラという感じです。
20,30代の若い人は見かけなかったかかなり少なかったと思います。
女性が6割位で多かったのはやっぱりいつまでも熱心でライブ好きな人が多いからか。
皆さんそれぞれのエコーズへの想いを持って今日に望んできたんだなと思うと知らない人達ですが嬉しくなります。
開演中は撮影・録音禁止なので写真はここまでです。
後ろ姿でファン層がわかると思います...
ライブ・レポート
そして公演前には辻仁成の曲が流れる中、定刻の19時にライブがはじまりました。
1曲目は[Crossroad Again]。エコーズの隠れた名曲です。
昔何度も聴いた曲なのですが迂闊にもサビが流れるまで気づかず。
何のアルバムに入っていたかも思い出せず聴いてました。(No Kidding でした...)
そしてライブでは辻さんは何一つ気負うことなくさすがの百戦錬磨のミュージシャン、ロックから距離を置いてしまったと感じても相変わらず辻仁成の本質はロックでした。
アコギのボディを叩いてリズムをとりながら時折巻き舌風のフェイクをかけながら気持ちよく歌って行きます。
曲のアレンジやバンド編成が変わっても辻さんのヴォーカルはエコーズ時代から本質は何も変わらず。ちょっと癖強になったかな。声もよく出ていて、時に熱く、楽しそうに気持ちよさそうに歌ってくれます。
そしてMCも相変わらず楽しかったです。
初っ端のMCは、辻仁成を解散しますと言いつつ、リアクションのない会場に向かって「誰も受けないね、信じてないでしょ、うちのメンバーも誰も信じないんだよね~」という一言。
緊張感のない自然体な明るい口調は引退という感慨を良い意味で吹き飛ばします。
「解散」という言葉もしばしば言ってたのは、エコーズを含めてメンバーの想いも汲んでの言葉だったと思います。
編成は辻さんヴォーカルとアコギ、キーボード、ドラマ、バイオリン、アルトサックス、トランペットという弦楽器中心の構成。
ヨーロッパの文化を吸収した今の辻さんらしいオリジナリティが出ていて、静かな演奏という訳ではなくホットな演奏でした。
ちょうどTsuji名義再録ベストアルバムの「JAPANESE SOUL MAN」の世界をもっと熱くしたような感じでした。
中盤から、「ライブはこれから〜!」といって私のとっても永遠の名曲、「ジャック」と「ジェントルランド」もやってくれました。
そこで熱心なファンは立ち上がってましたが、メドレー形式だったのでちと消化不良だったな。
これをやっぱりクライマックス聴きたかった!というのが本音です。
このバンド編成でも後期の熱いエコーズ時代をフラッシュバックさせるロックな辻仁成もしっかり聴きたかったです。
とはいえ40年以上音楽活動をした辻さんの今がこの形態なのでしょう。
それでもここからはエコーズの名曲の連続。
「SOMEONE LIKE YOU」「友情」「GOOD-BYE BLUE SKY」「ALONE」
正直、嗚咽しそうなのを何とか抑えて見てました。
座っていても体が汗ばみ、時には名曲に目頭が熱くなりとにかく辻さんの声も相変わらず絶好調でパフォーマンスも元気。これが何よりでした。
本人もいっていて、元気が辻さんなのですが、老け込んだ辻仁成でステージに立ちたくない、その前に潔く引退!というタイミングが今なんだとつくづく実感しました。
前方の熱心なファンは立ち上がってましたが、客席の中盤の私は後ろの席の人達に気を遣いつつ立ち上がらず座って拳を突き上げるという今までにない不思議な体験をしました。
ライブはほぼ2時間ぴったりでアンコールの最後は「ZOO」。
正直、個人的にはこれではなく別の曲を...と思ってましたが、これをやらないとやっぱり終わらない、エコーズ最大のヒット曲。
今は亡き川村かおりがヒットさせ、脚本を辻さん本人が、菅野美穂主演ドラマの主題歌でリバイバルヒットもした、辻さんとファンにはとても大切な曲。
隠れた名曲もやってくれましたが、聴きたかった曲は当然もっとたくさんありました。
書いていたらキリがありません。
そして辻さんはまた10年後、いや30年後かな。引退は撤回するから、といってました。
10年後はまだまだ辻さんもファンも現実味がありそうですが、30年後はもうここにきている半分以上?この世からいなくなってるだろう年代のファン向かって笑いをとりつつ楽しみを与えてくれながらステージから去って行きました。
最後に・・・
辻さんのパフォーマー引退ライブ、十分堪能しましたし、そして私でも心にずっと住んできた約30年のエコーズにここで区切りがつきました。
(とはいえ暫くはライブを思い出してエコーズを聴くと思いますが...)
変にベストオブベストの3時間超えのライブをやられたらこれで終わり感が強すぎて終わった後の脱力感としんみりしてしまいそうなので、これはこれで辻仁成を堪能したという体験ができつつ、ある意味普段通りっぽいこの引退ライブも良かったと思います。
パリ在住の辻さん、パリ・オリンピック真っ最中に自身の大事な引退公演をしてくれて「今までご苦労様でした、そして今まで自分の心のよりどころとなる歌を歌ってくれてありがとうございます。」と言いたいです。
しんみりした涙涙のライブではかったですが、私の中でもエコーズと辻仁成は一旦終了。
という気持ちにします。
8月5日の東京と8月7日の大阪の最後の二日間は何からのサプライズはあるのだろうけど、それでも辻さんは自然体でライブ・パフォーマー辻仁成に幕を下ろすのでしょう。
この先は辻さんの体がバラバラになって活動していくという言葉もあったように、アーティストとしてやりたいことがたくさんある中で一番体力勝負となるパフォーマーの部分に幕を下ろすことにした辻さん。
正直、ミュージシャン、シンガー・ソングライター以外の辻さんにはあまり興味がないのですが、"X(エックス)"での心にグッとくる言葉やテレビに出てくれれば目にすることでしょうし、辻さんが言ったように10年後にまた再開できれば...という密かな楽しみを残してくれる終わり方でした。
ですので、皆笑顔で帰ったであろう最高で楽しい引退ライブ。
私も騒ぎまくった脱力感や寂しさもなく晴れやかに帰路につきました。
セットリスト
セトリはすみません。
もしかしたら抜けがあるかもしれないし”不明”と書いた曲にもタイトルがあるかもしれません。参考までに記録します。
辻さんと再会できる○十年後を楽しみに終わります。