津軽の小正月料理“けの汁”
かつて青森在勤中、寒い日に心身ともに温まれる「けの汁」という料理を教わった。
「けの汁」と言うのは“粥の汁”が訛ったものらしい。
見た目は地味だが、食べて深い味わいがあり、栄養バランスが抜群の料理だ。
“粥の汁”というくらいだから、粥状のものか・・・食べた感じはそうでもないが、一見は野菜粥に見えなくも無い。
この「けの汁」は、作る時には、ひたすら刻む手間が掛かるが、毎日火を通して、数日は日持ちがする.
だから、昔の嫁さんは暇を見つけては野菜を刻んで「けの汁」を作り、あとに時間を作ったのだ。
つまり、正月は来客や親戚の集まりで、本家の嫁ともなれば座る間も無く立ち働いたことだろう。
そして、やっと正月が一段落して、実家に里帰りしたくても、義父母や夫、小姑たちの食事が・・・。
そんな時のために「けの汁」を作り置けば、数日は手抜きが出来、留守も出来たらしい。
津軽の「けの汁」は、小正月(女正月)の料理と言われているが、嫁たちの苦肉のアイデァ料理だったかも知れない。
正月の忙しさ、慌しさも一段落して、実家に息抜きに行く・・・「けの汁」を用意してるから、留守中の食事はそれで間に合わせて・・・と、嫁が精一杯の気持ち。
そんな「けの汁」が、いまはお土産用の缶詰で売られていると、先日の「いちご煮」と一緒に送られて来た。
本来の「けの汁」は、豆腐や油揚げ、蒟蒻、根菜などに、保存した山菜、乾燥した昆布や豆類を入れて煮込んだものだが、缶詰には帆立も入っていた。
缶詰なら、簡単で手間無しだが、一応は昨年作った時のレシピと写真も載せよう。
❤津軽郷土料理「けの汁」
簡単に言えば、具沢山の味噌汁と思えばいい。
- 大きめの鍋に、油少々で豆腐を崩しながら炒めて(炒り豆腐)、水を注ぎ入れ、煮え難い材料から順次刻んで入れていく。
- 大根(大1本)、人参(大1本)、牛蒡(細ければ2本・太ければ1本でも)を、細かく5ミリ角くらいに刻んで入れる。
- 蒟蒻(1枚)、油揚げ(2枚)も同じように細かい角切りに。
- 野菜が柔らかくなったら、蕗の水煮(7~8本)、ゼンマイの水煮(大袋1)も5~7ミリ長さに切って入れる。
- 弱火にかけながら、合わせ味噌400g(保存のため多め)を溶き、高野豆腐(3枚)と焼いた昆布(5×20センチくらい)を、揉み砕いて入れる。
※好みでは、豆(大豆や金時豆)を入れてもいい。地域によっては呉(大豆を擂ったもの)を入れて煮込む家庭もある。
基本的には、此処までが下拵え。
- 食べる時は、同量程度の出汁(水でも)で薄め、好みの薬味(七味や柚子、擂り胡麻など)で食べる。
- 保存は一回分くらいをチャック式密封袋に入れ、空気を抜いて冷凍室に。
昔は冷凍設備が無かったので、味噌を多くして保存性を高めたのだろうが、現代なら直ぐに冷凍し、レンジで戻して食べられる。
また、食べ切る分だけ作るのなら、味噌の量は薄めることを考えず、最初から普通の味噌汁程度に減らして。
実際、薄味に煮た方が、素材の味が活きて美味しいようだ。
野菜がたっぷりで、栄養的にもいい上に、細かく“粥”状になっているから、高齢者にも幼児にも食べ易い。
❤小分けに保存した「けの汁」は、餅を入れても変化が出る。
卵でとじた雑炊にすればもっと栄養が完璧になる。
見た目の美しさは無いけれど、優しさと暖かさを感じさせる「けの汁」。
“粥の汁”の訛りと言うが、“健(康)の汁”と言ってもいい一品。
「けの汁」は手間をかけても、充分に元が取れる(暇も戻る)。
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