正解はひとつじゃない。トラウデン直美と考える、絵本から見る平和のかたち【SDGs連載】

大人になった今だからこそ…絵本が教えてくれる平和のかたち

今、世界中で注目されている「SDGs」という言葉。これは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の頭文字を合わせたもので、世界193か国が貧困や環境問題の改善を2030年までに達成するために掲げた17の目標のこと。2020年からスタートした連載では、CanCamモデルのトラちゃんことトラウデン直美が「SDGs」について読者の皆さんと考える機会を作っています!

今回は、大きくて難しくて、どこか遠い問題…というイメージのある「平和」を、絵本の世界から見つめ直してみました。

体験したのは…ITOCHUSDGs STUDIO/「わたしが夢中のSDGs、はじまる。」をコンセプトに、生活の中で自分なりのSDGsとの関わり方に出合える場を提供。未来を担う子供から大人まで幅広い世代に向けて企画展やイベントを行う。※「えほんでへいわ?展」は終了しています。現在の展示は公式ホームページで確認できます。
トラウデン直美/環境省サステナビリティ広報大使。高校時代に環境問題に興味をもって以来、エシカルな生活を模索。『SDGs』にまつわる勉強や発信に力を入れ、情報番組コメンテーターとしても活躍。初のフォトブック『のらりとらり。』(小学館刊)が好評発売中。

置かれた状況によって変わる平和…自分にとっての平和を知ろう

今回は、「平和」をテーマに選ばれた絵本を読みながら色々な角度から平和を考えることができる『えほんでへいわ?展』を訪れました(※現在は終了しています)。「平和=戦争撲滅」だけではない多様な平和のヒントを見つけられるように…という思いで企画された展示では、毎日の暮らしにある衣食住遊から出合える当たり前の幸せにフォーカスすることで、「こういう日常を守りたいな」とか「こんな視点があると気持ちや関係性がやわらかくなるんだな」など、様々な気づきをもらえると感じました。

そもそも、絵本を読んでいる時間や、これってどういうことなんだろうと考える時間は、その余裕があること自体がもう既に平和ですよね。一方で、置かれている状況が違えば、同じ事実や出来事でも平和を感じられないかもしれない。自分にとっての平和が何かわかっているということは、幸せなことなんだろうなと思います。そういう意味では、平和の在り方を問いかける「もんだい」と絵本の中から見つかる「かいとうれい」の展示にはヒントがいっぱい! シンプルなんだけど質問される機会はあまりない問いで、答えを模索するうちに自分の中にある点と点がつながっていく感覚がありました。

例えば、「世の中をうつくしくするのは、だれの仕事だと思いますか?」という問いでも、その前段階にもうひとつ聞いてみたい問いがあるなと思い浮かんだんです。「美しい世の中か汚れた世の中、あなたはどちらに住みたいですか?」と。〝美しい世の中〟を選ぶなら、「やっぱり自分も参加するべきだな、参加しよう」と思えるかもしれない。「あなたも社会を構成するひとり」と言われたら重圧を感じてしまいそうな課題も、スッと受け入れられるというか。自分に目を向けるだけでなく、「人とのつながりがないとやっぱり苦しくなる」と伝えてくれる作品が多くて、平和ってひとりでは実現できないんだなとイメージもできました。展示されていた「もんだい」の一部を紹介するので、ぜひ想像が広がっていく感覚を味わってみてください♡

「平和=戦争の『反対』」だけじゃない!

■問いから〝平和〟を捉え直してみよう

Qかなしいことが起きて不安になったとき。あなたなら、どうしますか?

Q大きなことをなしとげるために必要なことは、何だと思いますか?

Q正直にあやまりたいけれどあやまれないとき。あなたなら、どうしますか?

Q世の中をうつくしくするのは、だれの仕事だと思いますか?

Qみんなが自分らしくいられるためには、どうすればいいと思いますか?

Q海をきれいにすると、人にとってどんなうれしいことがあるでしょう?

Q勇気が出ないとき。どうすればいいと思いますか?

Qなぜ、人はだれかを抱きしめるのだと思いますか?

※展示内「もんだい」から一部抜粋。「かいとうれい」は、ITOCHU SDGs STUDIOの公式インスタ(@itochu_sdgs_studio)でチェックできます!

理性と論理だけではない平和への道。自分を大事にすることも一歩になる


私自身、幼い頃から絵本が大好き! 知っている絵本でも、今読み返すとまた違う見方ができたり、記憶の奥底に沈んでいた思い出がよみがえってきますよね。今回の展示では「自分を大事にすること、誰かに手を差し出すこと、あるいはもっと単純に、あたたかい思い出をもつことや新しい可能性にわくわくすることも『平和』につながる」という考えのもと、選書されたとか。

直感的にわかりやすい表現なのに、すべてを説明するわけではないからこそ、「正解はひとつじゃない」「この先は想像におまかせするよ」…という余白を与えてくれるのも魅力だなと感じました。

■トラちゃんの心に残った4冊

ピンチも楽しめたらどうにかなる! 『もう ぬげない』 作:ヨシタケシンスケ/ブロンズ新社
頑張るのも親切にするのも、行ったり来たり双方向で。『さかなくん』 作:しおたにまみこ/偕成社
大きな変化も初めは小さな動きから。『もこ もこもこ』 作:谷川俊太郎/絵:元永定正/文研出版
生み出すのは自分自身。『きみとぼくがつくるもの』 作:オリヴァー・ジェファーズ/ほるぷ出版

絵本だけではなく、平和にまつわる「もんだい」と「かいとうれい」をセットで展示し、17作を紹介。子供は素直に答えられるのに、大人はつい考え込んでしまうような「もんだい」も! 答えは人それぞれであるという前提で、絵本のストーリーに基づいた「かいとう〝れい〟」にも新たな視点をもらえるはず。※写真は、ヨシタケシンスケさん作の『もう ぬげない』の一場面より。

障壁も偏見も自分がつくり出すもの。物語の力を借りて変えていける

最後は、〝絵本を作る〟体験を通して私なりの平和を探ってみることに。子供たちの作品例に発想の柔軟さを学んだり、「あ、自分は先にテーマが浮かんでから絵を選ぶタイプなんだ」と気づけたり、新鮮でしたね。展示で読んだ『きみとぼくがつくるもの』にも通じるのですが、実際に創作してみて湧いてきたのは、なんだってつくればいいんだなということ。モノだけじゃなく、気持ちもつくれるんですよね。平和を考えるなら、障壁も偏見も所詮は自分がつくり出したものだからその台本を変えていけばいい。絵や色彩や擬音語を交えた物語に向き合うと、自分の中に眠る言葉にならない感情を引き出すことができるんですよね。目に見えない心の平和を保つ上でも、大切にしたい時間だなと思います。

想像力をはたらかせて…自分だけの物語が完成!

トラちゃん作の『そんな日も。』。「少し疲れが溜まっていたこの日。家に帰っても何もやる気が起きないけど、明後日ぐらいには回復するだろうこともわかってる。完ぺきにできない自分を許すこともひとつの平和なんじゃないかな?という気持ちを込めてつくりました」

大人になって忘れかけていた、身近にある平和の種に気づく

体験しながら癒やされて、夢中になれる時間でした! ホロッと温かい気持ちになったり、子供の頃を思い出して切なさに泣きそうになったり…ふだんの自分のルーティンの中では出合えない感覚を思い出させてもらえた気がします。

目指せ「SDGs」! トラちゃんの今月の一歩

なるべく自転車で移動するように!

環境に優しい交通手段としてヨーロッパ各地の主要都市では専用レーンが整備されている自転車。東京でも好きな場所で乗り降りできるシェアサイクルが増えていて私も活用中! 寒い季節も自転車をこぐとポカポカです♪

今月の1冊は…『たいせつなきみ』

何度も読み返す一冊。誰しも人からの評価は気になるものですが、そのままの自分を愛する尊さを教えてくれます。

作:マックス・ルケード/絵:セルジオ・マルティネス/訳:ホーバード 豊子/いのちのことば社/¥1,760

今月のSDGsブランド「GANNI」

デンマーク・コペンハーゲンを拠点に2009年に誕生。鮮やかな色使いとプリントを組み合わせたカラフルなコレクションが世界で人気を集める。その多くにオーガニック素材や低環境負担素材、リサイクル素材を継続的に使用し、2022年には国際認証「B Corp」を取得。

ジャケット¥66,000・ワンピース¥55,000・中に着たTシャツ¥18,700・サンダル¥63,800[すべて参考価格](GANNI)、ピアス¥53,900(ホワイトオフィス<GIGI>)
2023年CanCam4月号「トラウデン直美と考える 私たちと「SDGs」」より 撮影/花村克彦 スタイリスト/町野泉美 ヘア&メイク/KIKKU モデル/トラウデン直美(本誌専属) 撮影協力/柴崎芙優 構成/佐藤久美子 web構成/坂元美月 ◆この特集で使用した商品はすべて、税込み価格です。