3月の米雇用者数は予想以上の増加:FRBの利下げ期待はさらに後退
…くるのではないか。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy…
(出典:NRI研究員の時事解説)


木内 登英(きうち たかひで、1963年11月29日 - )は、日本のエコノミスト。元日本銀行政策委員会審議委員。元野村證券金融経済研究所経済調査部長。千葉県出身。 1987年3月 早稲田大学政治経済学部経済学科卒業 1987年4月 野村総合研究所入社、経済調査部内国経済調査室(日本経済担当) 1988年…
8キロバイト (1,136 語) - 2023年3月13日 (月) 22:06



(出典 mainichi.jp)


米労働省が4月5日に発表した3月雇用統計で、雇用者増加数が予想以上に増加したことで、金融市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測がさらに後退した。現状では、年内の利下げ観測はなお維持されているが、この先の経済指標次第では、年内の利下げ見送り、あるいは利上げ観測が浮上する可能性も考えておかねばならないかもしれない。その場合には、米国市場では大幅な債券安、株安、ドル高が引き起こされるだろう。

3月の雇用統計で、非農業雇用者数は前月から30.3万人増加した。これは、事前予想の20万人程度を大きく上回った。足もとではレイオフの増加を示すデータが見られていたことから、雇用者増加数は過去数か月の水準を下回ることが広く予想されていた。3月の雇用者増加は、ヘルスケアや娯楽・ホスピタリティ、建設業がけん引した。また、失業率は3.8%と2月の3.9%から低下した。4%を下回るのは26か月連続となる。

他方で、3月の時間当たり賃金は、前年同月比+4.1%と2月の同+4.3%から低下した。雇用増加数が上振れるなかでも、賃金上昇率は着実に低下している。この数字によって、FRBの年内利下げ観測は維持され、金融市場の動揺が回避されている、と言えるだろう。

雇用者増加数の動きを見ると、足もとでは増加トレンドに転じつつあるようにも見える。他方で、失業率は緩やかな上昇トレンドが続いている。これらは、足もとの新規雇用の増加が、失業者の減少よりも新規に労働市場に参入した労働者によってもたらされていることを示唆している。実際、3月の労働参加率(16歳以上の人口に占める就業者と失業者の合計)は62.7%と2月の62.5%から上昇した。

さらに、労働市場への新規の参入は、移民の増加によってもたらされているとみられる。労働供給の増加を伴う新規雇用増加であれば、労働需給の逼迫、賃金上昇率の上振れによるインフレリスクの高まりを強く警戒する必要はないことになる。

NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】