279: ◆6osdZ663So 2013/07/03(水) 05:36:32.89 ID:j8+zYXDRo



モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ




  
あるところに女の子がいました。

女の子の家は世界でいちばんお金持ちで、

女の子がほしい物はなんでも手にはいりました。


玩具も、本も、服も、宝石も、お金も、家も、人も、国も、


ほしい物はみんなお父さんが買ってくれました。

ただ一つだけ、彼女が欲しくても手に入らないものがありました。


『ならば、わたくしがそれを手に入れてさしあげますわ。』

悪魔は言いました。

こうして少女と悪魔は一緒にくらし始めたのでした。

 







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それは、なんでもないようなとある日のこと。


その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
 
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

 
それと同じ日に、宇宙から地球を侵略すべく異星人がやってきました。
地球を守るべくやってきた宇宙の平和を守る異星人もやってきました。

異世界から選ばれし戦士を求める使者がやってきました。
悪のカリスマが世界征服をたくらみました。
突然超能力に目覚めた人々が現れました。
未来から過去を変えるためにやってきた戦士がいました。
他にも隕石が降ってきたり、先祖から伝えられてきた業を目覚めさせた人がいたり。

それから、それから――
たくさんのヒーローと侵略者と、それに巻き込まれる人が現れました。

その日から、ヒーローと侵略者と、正義の味方と悪者と。
戦ったり、戦わなかったり、協力したり、足を引っ張ったり。

ヒーローと侵略者がたくさんいる世界が普通になりました。



「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。

・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。
・一発ネタからシリアス長編までご自由にどうぞ。


・アイドルが宇宙人や人外の設定の場合もありますが、それは作者次第。





シリーズはここからご覧ください
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズ一覧
    




280: 2013/07/03(水) 05:37:42.32 ID:j8+zYXDRo
――


桃華「いい風ですわね。」


驚天動地とはこの事だろう。


桃華「たまには、いいですわね。外に出るのも。」


『強欲』の悪魔が、屋敷の外に居るとは。


あれほど自分の身を守るために、

自分のフィールドからは出なかった彼女が

今になって外に出た理由。それは


桃華「さあ、散歩に出かけましょう。」


なんて事の無い理由であった。


彼女の身体から漆黒の翼が生える。

――鴉の翼

――『強欲』の象徴

――かつて、全ての空飛ぶ者の羽を得んとして集めた結果

――全ての羽の色が混ざりあい醜く染まった漆黒。


その翼をはためかせ彼女は優雅に空の散歩に出かける。

281: 2013/07/03(水) 05:39:27.19 ID:j8+zYXDRo
『傲慢』の悪魔ルシファーが敗れた。

それは『強欲』たる彼女にとってあまりに意外な事であった。

いや、あの『傲慢』の悪魔であるのならば、

「何らかの手を残し、生き残ってるのでは?」と言う思いも未だに拭えはしないのだが。


まあ、どちらにせよ、

『強欲』の悪魔とサクライの計画は破綻した。

本来であれば末端で動く人間にサクライの名が伝わってるはずなど無く、

失敗するのはともかく、その刃が反転する事などありえ無かった計画。


サクライPは今各地を飛び回り、財閥の建て直しをはかっている。

当分は屋敷にも戻ってこれないだろう。



桃華(例の貧乏神の影響がまだあったのかもしれませんわね。)



――『文香さんの能力を狙うもの、また攻撃意思を決めたもの全員がやることなす事並べて『全部失敗』ます』

――『それは恐ろしいな』

本当に、世には恐ろしい力もあったものだ。

282: 2013/07/03(水) 05:40:49.39 ID:j8+zYXDRo
桃華(もしそうであるなら、わたくしは全てを諦めねばなりませんわ。)


これから何を成してもあの力が邪魔をするのであれば、

『強欲』の悪魔の唯一にして全ての願い「全宇宙の支配」を諦めるしかないだろう。

『強欲』の悪魔が全てを諦める。

それは氏を選ぶ事と同義である。


桃華(馬鹿げてますわね。)

桃華(わたくしは『強欲』の悪魔マンモン。)

桃華(全てを諦めるなどあり得ない話ですわ。)



未央「やっほー、何してるの?」

桃華「なっ!?!」


『強欲』の悪魔の前に突然少女が現れた。

ここは空。

言うまでも無く、普通の少女が現れるはずがない。

そう、普通の少女なら。


桃華「・・・・・・天使、ですの?」


目の前の少女には六枚の羽が生えていて、

『強欲』の悪魔と同じく空に浮かんでいた。


未央「それ聞いちゃう?えへへっ、そうだよ!ラファエルちゃんだよ☆」

283: 2013/07/03(水) 05:41:33.93 ID:j8+zYXDRo
桃華「・・・・・・癒しの天使がわたくしに何の用ですの?」


未央「何の用ってことはないでしょ、ほら私達は一応敵対関係なんだし?」


桃華「笑えますわね。」

桃華「これまでわたくし達の活動を放置しておいて、」

桃華「今更、悪魔を成敗しにきたとでも言うおつもりでして?」


未央「うーん、何もしてこなかった訳じゃないんだけどね。」

未央「人間に力とか貸してあげてるし。」


桃華「それならわたくしもですわ。」

桃華「貴女は『癒し』、わたくしは『欲望』。」

桃華「与える力の属性が違うだけで、やってる事は一緒ですわよ。」

桃華「一方的に断罪される覚えはありませんわね。」


未央「いやいや、別に成敗とか断罪とか物騒なことをしにきた訳じゃないんだけど。」


桃華「あら、そうですの。天使の風上にもおけませんのね。」


未央「それはもう、私がどうすれば満足なんですか・・・・・・。」

284: 2013/07/03(水) 05:44:19.89 ID:j8+zYXDRo
桃華「それで、でしたら尚更に何の用ですの?」

桃華「わたくしはこれからやる事がありますから、忙しいのですわ。」

桃華「手短にお願いしますわね。」


未央「嫌われてるなぁ・・・・・・、私ショックで寝込んじゃうよ?」


桃華「『強欲』を愛するわたくしは、進歩しない者達は嫌いですの。」

桃華「快楽を忘れることを是とし、欲望を滅ぼそうとしている宇宙に居る者達も。」

桃華「その宇宙を脅威とわかっていながら、自ら地上に出て来ない魔王も。」

桃華「そんな世界を変えられる力を持っていながら、行動しない神も。」

桃華「全部嫌いですのよっ!」

桃華「天使ちゃまだって例外ではありませんわ!」


未央「そっか、それで世界征服なんだ。」


桃華「・・・・・・進歩の無い世界は嫌いですもの。」

桃華「だって何も求めない世界なんて、それは氏んだ世界で一緒ではありませんの?」

桃華「人々は『強欲』であり続ける限り、進歩できますわ!」

桃華「そうですわ、人は『強欲』に『知恵』を求めたからこそ進化することができましたのにっ!」

桃華「宇宙も魔王も神も天使も!どうしてそれがわかりませんの!」

桃華「・・・・・・」

桃華「わたくしが世界の全てを支配すれば、停止しようとする世界を変えられますわ。」


未央「なるほどねー、そんな風に考えてるんだ。」

未央「でもさ」

未央「その方法じゃあ、貴女が”本当に欲しい物”は手に入らないんだよね」

285: 2013/07/03(水) 05:45:53.66 ID:j8+zYXDRo
桃華「・・・・・・何を言ってますの?」


未央「マモちゃんは今までずっと、欲しい物は全部奪ってきたんでしょ。」

未央「お金も、物も、力も、心も、全部ね。」

未央「だからマモちゃんが本当に欲しがってる」


未央「”絆”は手に入らない。」


桃華「・・・・・・ウフ、ウフフフフフ。何を言い出すのかと思えば、」

桃華「わたくしが絆を?そんな物を求めてなんて・・・・・・」


未央「一人は寂しいよ。誰だってそうだよ。」

未央「私も一人は嫌、だから友達を作って一緒に遊んだりするんだ。」

未央「ついこの間も、人だとか妖怪だとか竜だとか、集まるところに遊びにいったりね♪」


桃華「ふ・・・・・・ふざけないでくださいましっ!」


未央「ふざけてないよ。」

未央「だって・・・・・・マモちゃんさっき言ったよね。」

未央「『わかってほしい』って。」


桃華「なっ!そんな事言って・・・・・・」

――『どうしてそれがわかりませんの!』


桃華「くっ!」

286: 2013/07/03(水) 05:47:13.87 ID:j8+zYXDRo
未央「『わかってほしい』って事はさ、仲良くなりたいって事なんだよ。」

桃華「ちがう」


未央「傍に居て、一緒に隣で歩んで欲しい。」

桃華「やめ・・・・・・・」


未央「一人で出来ないこともみんなと居れば超えられる。」

桃華「聞きたくありませんわっ!!」


未央「マモちゃんは全宇宙を支配して、『強欲』で満たせば世界は動き続けるって言ったけど。」

未央「そうやって出来るのは、マモちゃん一人の意思で動く世界だよ。」

未央「一人の意思で出来る事なんて少ないよ。」

未央「一人で考えて、一人で行動して、その内一人じゃあ超えられない壁にぶつかるんだ。」

未央「その時、マモちゃんだけだと立ち止まるしかない。」

未央「それは、マモちゃんが嫌う『進歩の無い止まった世界』じゃないの?」


桃華「だったら、どうすれば良かったと言うんですの・・・・・・?」

未央「簡単だよ、話し合って仲良くなればいいんだよ。」

桃華「・・・・・・馬鹿げてますわね。」

未央「そうだね、馬鹿かもしれない。それでも仲良くなれば開ける道もあるよ。」

未央「1人なら一つの道しかないけど」

未央「2人集まれば二通りの道が。」

未央「3人集まれば三通りの道ができるってね☆」

287: 2013/07/03(水) 05:48:51.69 ID:j8+zYXDRo
未央「私はね、”あの日”色んな世界からこうしてみんなが集まったのは」

未央「きっと、みんな友達になるためだって信じてるんだ!」

未央「そうじゃなくても、せっかくの機会なんだから仲良くなれたらいいと思うんだよね。」


桃華「馬鹿ですわね、頭の中お花畑ですの?」

桃華「そんな簡単に自分とは異なる者を信じられるわけがありませんわ。」


未央「でも、信じられないから、嫌って傷つけるなんて悲しすぎるよ。」

未央「マモちゃんも、まずは信じてみない?」


桃華「・・・・・・そんなキレイゴトは力のある者だから言えるのですわ。」

桃華「持たざる者が求める物を、貴女は持っているから言えるのですわ。」


未央「・・・・・・それは、やっぱり自分の持ってない”絆”を求めてるってこと?」

桃華「・・・・・・。」

288: 2013/07/03(水) 05:49:49.87 ID:j8+zYXDRo
桃華「わかりましたわ・・・・・・認めましょう。」

桃華「百歩譲って貴女が言うように、わたくしが”絆”を求めているのだとして・・・・・・。」

桃華「わたくしにはPちゃまが居ますわ。」

桃華「Pちゃまはわたくしを裏切らない。」


未央「・・・・・・それはその子から奪った絆じゃないの?」

未央「マモちゃんが『櫻井桃華』から奪った親子の絆」


桃華「違いますわっ!!」

未央「!」

桃華「あの時まで、”お父様”はわたくしの傍には居ませんでしたものっ!」


未央「・・・・・・あぁ、そう言う事だったんだ。」

未央「やっぱり話してみないと分からない事もあるよね。」

289: 2013/07/03(水) 05:50:52.96 ID:j8+zYXDRo
桃華「わたくしは『強欲』に全てを求め続けますわ。」

桃華「貴女がわたくしに絆を持ってない、と言うならそれも手にするまでのこと。」

桃華「それで、貴女はどうしますの?ここでわたくしと戦いますの?」

未央「・・・・・・」


未央「いや、戦わない。」

未央「今日の私はあなたと・・・・・・あなた達と話に来ただけだからね。」

未央「できれば友達になりたかったけど。」

桃華「丁寧にお断りしますわ。」

未央「残念。」

桃華「・・・・・・天使ちゃま、貴女はわたくしが今から何をするかわかってるのでしょう?」

未央「だいたいの予想は付いてるよ。」

桃華「止めませんの?」

未央「止めて欲しい?」

桃華「・・・・・・。」

未央「ごめんごめん、意地悪だったね。今のは。」

未央「でも安心して、私は止めないよ。」

未央「だって信じてるからね。」

桃華「人間や死神ちゃまがわたくしを止められると?」

未央「それもだけど、マモちゃんのこともね☆」

桃華「本当に馬鹿ですわね。」

未央「えへへ♪」

290: 2013/07/03(水) 05:51:38.62 ID:j8+zYXDRo
桃華「・・・・・・天使ちゃま、もしこれからわたくしがする事失敗しても」

桃華「世界からカースは、”呪い”は消えませんわよ。」

未央「・・・・・・そうだろうね。」

桃華「『原罪』を求める者にお気をつけなさい。」

未央「!」

桃華「強欲に全てを求める者としての忠告ですわ。」

未央「えへへ、ありがと。マモちゃん。」

桃華「・・・・・・世迷言に惑わされましたわね。わたくしも落ちぶれましたわ。」

桃華「わたくしは行かせて貰いますわよ。」

未央「長々と引き止めてごめんね♪」

桃華「謝る気ありますの?ま、いいですわ。」


桃華「さよなら」

未央「またね」


桃華「・・・・・・最後まで不快ですわね。」

未央「えへへ」


こうして、『強欲の悪魔』と『癒しの天使』は出会い、そして別れた。

291: 2013/07/03(水) 05:52:25.76 ID:j8+zYXDRo


『櫻井桃華、あなたともここまでですわね。』


『力になれなくて申し訳ないと思わなくもありませんけれど、』


『やはりあなたは自分でそれを手に入れなさいな。』


『わたくしは行きますわよ。全てを手に入れるために。』

292: 2013/07/03(水) 05:52:52.36 ID:j8+zYXDRo
 
あるところに女の子がいました。

女の子の家は世界でいちばんお金持ちで、

女の子がほしい物はなんでも手にはいりました。

ほしい物はみんなお父さんが買ってくれる、

けれど

世界ではたらくお父さんはいつも帰ってこれるわけではありませんでした。


「神様。玩具も、本も、服も、宝石も我慢しますわ。」

「ですから神様、わたくしにお父様との時間をくださいな。」

『ならば、わたくしがそれを手に入れてさしあげますわ。』


女の子と悪魔は一緒にくらし始め、

お父さんは娘のために帰ってくるようになりましたとさ。


めでたしめでたし?
 

293: 2013/07/03(水) 05:53:44.74 ID:j8+zYXDRo
おしまい

この夏、ひきこもりが外に出るのが流行る。
ちゃまが狩られる前に盛大に氏亡フラグ立てておくだけの話でした。


『グリードガーデン』
強欲なる庭。マンモンがその翼を広げ展開する結界。
『強欲』の証であり、強欲なる悪魔の奥の手。
この庭に存在するものは全てマンモンの所有物になる。
進入する者も、如何なる意思も法則もすべてマンモンの思うがまま。

マンモンは櫻井桃華の庭園に敷いていたこの結界を片付け、何処かに移動するつもりらしい。

295: 2013/07/03(水) 06:20:07.94 ID:NljtLaCR0
乙です
ついにちゃまが外に出てきたかー




【次回に続く・・・】



: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part3