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#五輪をどうする

気鋭の政治学者が説くこの国の病巣 コロナ下の五輪で見えたもの

コロナ下の東京五輪で、日本の病巣が表面化したと指摘する気鋭の政治学者の白井聡氏=大阪市北区で2020年7月11日、山田尚弘撮影
コロナ下の東京五輪で、日本の病巣が表面化したと指摘する気鋭の政治学者の白井聡氏=大阪市北区で2020年7月11日、山田尚弘撮影

 新型コロナウイルスの感染再拡大が懸念されるなか、東京オリンピックが強行されようとしている。政府は開催に突き進み、国民の間には不安や不信、諦めにも似た感情が広がる。気鋭の政治学者で、京都精華大専任講師の白井聡氏が指摘する、コロナ下の五輪であらわになったこの国の病巣とは。

五輪を「私物化」

 いま五輪の開幕を楽しみにする、待ちわびるような人々はどのぐらいいるのでしょうか。これほど多くの国民が開催に疑問を抱く五輪はかつてありませんでした。なぜ、こうなってしまったのでしょうか。

 直接的な理由は、五輪が菅義偉政権維持のための装置となっているからです。政権が描くストーリーは次のようなものです。五輪が始まれば「がんばれ! ニッポン!」と盛り上がる。自国開催の地の利を生かして金メダルラッシュとなれば、やって良かったとなる。その余勢を駆って解散・総選挙に臨む――。

 この姿勢こそ安倍晋三政権以降、「モリカケ(森友学園・加計学園)」や「桜を見る会」に代表される「政治の私物化」の行き着いた先にほかなりません。「フェアネス(公正さ)」に欠けるのは、安倍政権の「継承」を掲げた菅政権も同じです。

 コロナ下の五輪は改めて菅政権の不公正さを浮き彫りにしました。感染症対策として、子どもたちの運動会や遠足の中止が相次ぎ、飲食店も規制される一方、政府は五輪開催のためならば大会関係者らの入国制限を大幅に緩和しました。国民の間では「五輪は特別なのか」と不満が高まっています。

 最近の菅首相の五輪を巡る矛盾した言動が象徴的です。国会では「開催の決定権は国際オリンピック委員会(IOC)にある」「私自身は主催者ではない」などと述べてきましたが、英国での主要7カ国首脳会議(G7サミット)では各国首脳から開催の「支持」を取り付けました。

 首相の「決定権」を巡る発言は手続き的にはそうなのかもしれませんが、疑問が残ります。パンデミック(世界的大流行)の下で五輪を開催する、しないというのは国家主権に関わる話。開催国の政府が中止すべきだと判断すれば、民間団体に過ぎないIOCが開催できるはずがありません。首相の発言はむしろ開催ありきのレトリック(巧みな言い回し)と言えるでしょう。

 しかし、政治にこのような「私物化」を許しているの…

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