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カテゴリ:経済の記事一覧

「21世紀に入ってから最悪の不況」である韓国で、「統計開始以来最高の雇用率」を記録……なぜこのような矛盾する数字が出てくるのか

カテゴリ:経済 コメント:(72)
週1時間でも「就業」…こうして積み上げた「雇用率63%」=韓国(中央日報)
大学卒業後2年にわたり就職活動をしているキムさん(28)は生活費を稼ぐために月・水・金曜日の午前9~12時にアルバイトをしている。上半期には10社以上に書類を送ったが、最終合格できなかった。キムさんは「望みを低くしなければならないようだが大企業への就職に対する未練を捨てられずにいる。下半期も失敗すれば大学院に進学するつもり」と話した。 (中略)

韓国統計庁が23日に明らかにしたところによると、15歳以上の雇用率は2014年の60.5%からコロナ禍の2020年には60.1%に落ち込んだが、2022年に62.1%、2023年に62.6%と上昇を続けている。今年の月別雇用率を見ると、先月に63.5%を記録し、1982年7月に関連統計が作成されてから同月基準で最も高くなった。

だがここには就業者統計方式の盲点がある。雇用率は15歳以上の人口比就業者数で集計されるが、統計庁は調査を進めた週に収入目的で1時間以上働いたすべての人を「就業者」に分類するためだ。キムさんの場合も自らは「就職活動生」と考えているが、統計上では「就業者」に分類される。 (中略)

一方、20代女性と男性の雇用率格差が過去最大に広がった。統計庁によると、昨年の20代女性の雇用率は63.4%で同年代の男性の雇用率58.4%を上回り格差は5.0ポイントを記録した。2000年には男性が66.2%で女性の54.9%を11.3ポイント上回っていた。20代でのこうした傾向の変化は女性人材需要が多いサービス業の雇用が増え、男性は軍服務で社会進出が遅れる影響が主に作用したと分析される。
(引用ここまで)


 ここのところ、何度かピックアップしている韓国の雇用状況。
 現在の韓国は「史上最高の雇用率」を誇っているのです。
 「あれ? 楽韓Webで『韓国は21世紀に入ってから最悪の不況』って言ってなかった?」ってなるかもしれませんね。
 もちろん、「最高の雇用率」の裏にはカラクリがあるのです。

 以前、「最低賃金を急激に上げても韓国の失業率は上昇しなかった」とするデービッド・アトキンソンの嘘を喝破したことがありますが。
 その時と同様にまず高齢者を短期雇用している、ことが挙げられます。
 100万人単位で雇っているので、これが相当に雇用率上昇に貢献しているのは間違いないところ。


 そしてもうひとつの要因が「スペックを積むなどして就職の準備をしているのだけども、生活費を稼ぐために短時間の労働はしている」って20代が少なくないこと。
 記事冒頭にもありますが、週に15時間未満の労働をしている層は少なくありません。
 むしろ、週15時間未満のアルバイトは引く手数多ともいえます。

 韓国では週15時間以上働くと、1日分のボーナスを与えなければならないという「週休手当」という制度があります。
 これを避けるために15時間未満のアルバイトが多いのですね。
 それでも一応は「就労者」扱いになるので、雇用率は上昇すると。

 「どこを探しても職がない」わけではないけども、まともな賃金のもらえる就職先は大企業にしかなく、ラクダが針の穴をくらいの厳しい関門が待っているわけです。
 なので「史上最高の雇用率」と21世紀に入ってから最悪の不況が並立しているのです。  あと最後の「20代男子の雇用率が下落していて、女子と逆転している」ってのも面白い統計ですね。
 これ、あとでピックアップするかもしれませんが、男女間の分断を促進している理由のひとつでもありますね。

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韓国で大卒、かつ非経済活動人口が400万人を超える……有識者は「彼らのための良質な働き口がもっと必要だ」と言うものの、実は社会構造自体がダメなんだよね、これ

カテゴリ:経済 コメント:(60)
「ただ休む」仕事も求職もしない大卒者400万人「歴代最大」(MBC・朝鮮語)
仕事も、求職活動もしない大卒者が今年上半期に400万人を超え、過去最大を記録しました。

統計庁の国家統計ポータルによりますと、今年上半期の月平均の大卒以上の学歴を持つ非経済活動人口は405万8千人で、去年の同じ期間より7万2000人増え、1999年に関連統計が集計されて以来、上半期基準で最も多かったです。

非経済活動人口は満15歳以上の人口の中で就業者でも失業者でもない人々で、すなわち仕事をする能力がなかったり仕事ができるのに仕事をする意思がなく求職活動をしない人を指します。

求職市場を離れた理由としては育児・家事・高齢・心身障害など多様だが、条件に合う働き口を見つけられず就職をあきらめた求職断念者や雇用調査で「ただ休む」と答えた「休んだ」も非経済活動人口に含まれます。

大卒以上の非経済活動は、コロナパンデミック当時の2021年上半期に404万8千人で、初めて400万人を超えた後、翌年大幅に減少しましたが、再び2年連続で増えています。

高学歴者を中心に非活動人口が急増し、全体の非活動で大卒者が占める割合は今年上半期に25.1%を記録、初めて25%を超えました。 (中略)

韓国経済産業研究院のキム・グァンソク経済研究室長は「高学歴者中心の非経済活動人口増加傾向は結局、低学歴者に比べて高学歴者の働き口ミスマッチが激しく、彼らのための良質の働き口が不足しているという意味」と話しました。
(引用ここまで)


 30~40代で「ただ休んでいるだけ」の人口が244万人に達したとのニュースを先日ピックアップしましたが。
 「ただ休んでいるだけ」を含んだ、非活動人口が1000万人ほど。
 そのうち、400万人が大卒。

 「大卒の持つ希少性」がゼロなのですね。
 なので「大学を卒業したけれど、なにもできることがない」層が少なからず生じてしまっている。
 韓国の大学進学率は2008年に83.8%に達し、以降も2023年では76.2%と高止まりしたまま。
 4人に3人は大学に進むという状態。
 ちなみに日本は大学+短大でだいたい60%。
 まだどうにかプレミアムはなくはない、って感じか。


 かといって、韓国で大卒以外の選択肢を選んで幸せになれるかといったら……まあ、ほとんどの場合は否。
 生まれ持ったフィジカルがあるならスポーツ選手とか、運があれば芸能人とかも可能性はあるかもしれませんが。実現可能性はほぼゼロ。
 勉強ができないのならってことで、そちらに賭けるのはありかもしれませんけどね。

 でもかなりの人にとって「大学で4年、無駄に時を過ごしてきた」ことになっているのは間違いない。
 記事の最後に「大卒者にとっての良質な働き口が不足している」って有識者のコメントがありますが。
 違うんですよね。

 高卒や専門学校を出て、はやめに社会に出た場合の突破口がないんですよ。
 なので一縷の望みをこめて大学に進もうとするのですが。
 大学に進んだところで、いまの韓国の内需じゃ無理なのです。まあ……楽韓Webができて22年になりますが、この構造は悪化することはあれどもまともになったことなんて一度もありませんからね。

 ノ・ムヒョンが「大卒しか就職できないなら、大学を増やせばいいんだ」ってやってしまった結果がいまの「非経済活動人口のうち400万人が大卒」って事態。
 さすがはムン・ジェインの師匠筋とでもいうべきか……。

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外資金融機関「韓国には魅力がない」と離脱、ノ・ムヒョンの「金融ハブ構想」から20年、なんの成果もありませんでした

カテゴリ:経済 コメント:(76)
「韓国、魅力がない…」外国銀行11行が韓国を離れた(中央日報)
17日、釜山中央洞にある山口銀行の鉄門は固く閉ざされていた。1986年に釜山支店を設立して韓国入りした同銀行は先月末、国内営業を終了した。現在は韓国・日本人職員の少数が残って事務室を整理している。山口銀行関係者は「住宅・伝貰・信用貸出中心の韓国市場で日本系銀行として収益を出すのが難しかった」として「特にグローバル金融ハブとして育てるという釜山の成長が停滞し、外国系銀行の生存も難しくなった」と話した。

金融監督院の金融統計情報システムによると、2013年以降、韓国からの撤退を決めた外資系銀行だけでも11ヵ所に上る。韓国に支店を置いて営業中の外資系銀行は33ヵ所残っている。英国のビッグ4銀行の一つであるバークレイズ銀行は2017年に韓国で銀行営業を中断し、2020年にはカナダ3位の銀行ノバスコシア銀行がソウル支店を閉鎖した。

韓国国内に残っている銀行もその規模を減らしている。国内支店が11ヵ所に達した香港上海銀行(HSBC)の韓国支店は、もうソウル支店しか残っていない。韓国シティ銀行は消費者金融事業から撤退し、企業金融を中心に運営する。13年末、57に達した外資系銀行の国内支店数は、今や計39ヵ所で、31.6%(18ヵ所)減少した。

外資系銀行が売ることのできる商品が十分でないことが金融機関「相次ぐ撤退」の主な理由に挙げられる。外資系金融会社が韓国に進出するのは、主にファンドなどの商品を販売したり、金融市場調査と投資の拠点にするためだ。しかし、米国などと比べて韓国株式市場の収益率は遅々として進まない。与・受信中心の収益構造も限界として指摘される。

メリルリンチ韓国共同代表を務めた延世大国際大学院のイ・ナムウ教授は「外国系銀行や証券会社ともに韓国を魅力のない市場と見ている」として「成長率が遅滞した状況で利子商売の他に明確な商品が出せない。韓国株も先進国水準の成長可能性を示していない」と述べた。 (中略)

金融当局の過度な介入と規制も「EXIT KOREA」の原因に挙げられる。 例えば政府は昨年11月から上場株式に対する空売りを全面禁止した。 先進国の株式市場で空売りを禁止するのは異例のことだ。最近、クレディ・スイス(現UBS)に不法空売りの疑いで271億ウォンの課徴金も課した。 クレディ・スイス側は金融当局に「外国では全て許される範囲での空売り行為だった」と主張したが、「韓国では不法」という理由で受け入れられなかった。韓国は規制の予測可能性が低いというのが外資系銀行の認識だ。 (中略)

政府はソウルを香港・シンガポールのようなアジア金融の中心地に育てるとして、2003年に北東アジア金融ハブロードマップを樹立した。フィンテック企業に対する支援強化と外国為替市場の開場時間の拡大などだ。しかし、シンガポールとの格差は縮まっていない。 シンガポールは資本利得や譲渡所得に対しては課税しないうえに、英国・カナダなど全世界100カ国余りと源泉所得に対する二重課税防止条約まで締結した。外資系金融会社と役職員を吸収するために全体インフラを動員するわけだ。 (中略)

韓国を離れるのは銀行だけではない。 コスピやコスダックなど、韓国株に投資していた東学アリは、瑞鶴アリへと衣替えしている。 韓国取引所によると、今年に入って15日まで個人投資家は有価証券市場で11兆3157億ウォンを売り越した。 同期間、彼らの米国株の買い越し規模は78億2126万ドル(約10兆8400億ウォン)に達する。

米国株式に対する投資需要が急増したため、今月に入って国内投資家の米国株式保有額は史上最大値を記録した。
(引用ここまで)


 えー、かつてのノ・ムヒョン政権時代「韓国金融ハブ構想」なるものをぶち上げたことがありまして。
 製造業は強いので、さらに金融方面を強化すれば鬼に金棒だ、みたいな浅い構想でした。
 なにより提唱していたのがあのノ・ムヒョンですからね。

 結果、シンガポールのように金融企業にあるていどの自由を認めることもなく、「金融ハブ……?」みたいな状況が20年ほど続きました。
 まあ、最大の問題は韓国において金融商品って「不動産融資」「賃貸保証金」「クレジットローン」くらいしかなくて。
 かつ、国民も不動産以外にほとんど興味がないって状況が続いてきました。

 近年になってようやく個別株と暗号通貨に手を出しはじめましたが、これも投資というよりは投機に近いもの。
 「階層脱出の手段」として利益が大きいという理由で手を出しているに過ぎないのです。
 というわけで「金融ハブ構想があるなら」として参入してきた外国金融機関はさくさくと撤退中。


 香港が中国共産党からの独立性を完全に失ってしまい、金融都市、国際金融ハブから絶賛没落中なのでその間隙を縫うことができれば……って部分もなくはなかったのですが。
 その香港の代わりは、どうやら東京に収まりそうな雰囲気です。

 釜山が一時期、妙に金融に色目を使っていたのですが。
 こちらも「韓国で最初に消滅する特別・広域市」として認定されているほどに没落中。
 なんというか個人的には東京が金融ハブに収まるのもなんか面白くないなぁ、とは思うものの。
 東京以外に香港の代わりになれる都市もないわな、と。

 もしも、「金融ハブ構想」以降、地道に金融機関が動きやすい環境作りをしていたら、香港の没落に合わせて躍進もできた可能性も……ないか。
 ノ・ムヒョンの次、その次と保守政権が続いたので、易姓革命によって前政権の政策は潰されて継続性はゼロ。
 外資が嫌う部分が大きすぎるんだよな。

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韓国経済:望まない失職者が123万人、求職もせず休んでいるだけの30〜40代が244万人、そして最低賃金を受け取れない労働者が300万人……うん、まあ不況だね

カテゴリ:経済 コメント:(63)
韓国で「望まない失職」123万7千人…最も増えたのは40~50代(ハンギョレ)
 韓国で職場の廃業や解雇といった理由で職を失った非自発的失職者の増加幅が、5カ月連続で拡大している。2年あまり続いてきた良好な雇用環境が崩れつつあるようだ。

 18日に野党「共に民主党」のファン・ジョンア議員室と立法調査処が統計庁の雇用動向ミクロデータを分析した結果を確認すると、先月の非自発的失職者は前年同月と比べて16.9%増の123万7千人を記録した。

 非自発的失職者は対前年同月比で5カ月連続で増加している。今年1月には2.3%減少していた非自発的失職者は2月(4.3%)に増加に転じ、3月5.9%、4月6.9%、5月14.7%、6月16.9%と集計されている。

 意に反して職を失った人々が増え続けているのだ。非自発的失職者とは、通っていた職場が廃業した、仕事が減った、解雇されたなどの他意によって職を失った人を意味する。家事、子育て、給与に対する不満などを理由に自発的に仕事を辞めた人は含まれない。

 年齢層ごとに見ると、50代の非自発的失職者の増加幅が27.1%で最も大きく、40代(20.7%)がそれに次いだ。青年層(15~29歳)の非自発的失職者も前年同月に比べ17.8%増の22万7千人にのぼる。3月(1.1%)、4月(8.2%)、5月(16.5%)と増加幅も拡大している。

 産業別に見ると、製造業(43.4%)、建設業(34.1%)、情報通信業(42.3%)などで非自発的失職者が大きく増えている。卸売・小売業でも33.7%増、宿泊・飲食店業でも24.4%増だった。内需の低迷が雇用の減少につながったとみられる。専門科学・技術サービス業でも非自発的失職は21.7%増だった。
(引用ここまで)


 韓国で「望まない失業者が増えている」とのニュース。
 去年から韓国は「21世紀以来、最悪の不況」を迎えていますが、それが雇用関連の数字にも出てきたな……といったところ。

 企業としては正社員を削ることはそうそうしたくないのですよ。
 雇用の調整弁としては非正規でなんとかして、正社員を削るのは最低限にしたい。
 あるていど技術やノウハウを持っている社員を辞めさせたら、景気のよくなった時に再雇用できるかどうか分からないからです。
 でも、もはや「そんなこた言っちゃらんねえんだよ」ってレベルに突入しつつある。


 その証左といえるのが「製造業、建設業、情報通信業」といった韓国において「質のいい雇用」とされている部分で解雇が増えている部分。
 いや、建設業は不動産不況が続いているから当然か。
 製造業で雇用が減っているのはもう相当にきつい状況が続いているからと判断すべきなのでしょう。

 求職することもなく、「ただ休んでいる」だけの30、40代が240万人を突破し、望まない失職を迎えたのが123万人。
 ついでに最低賃金をもらえていない労働者が300万人

 まあ、普通に考えれば「景気がいい」わけがないですよね。
 失業率そのものは低くても、韓国の場合であればいくらでも補正が効くのですし。

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韓国で廃業する自営業者が100万人近くに……前年から13.7%増の背景には「もはや韓国の内需は自営業者を支えられないまでにやせ細っている」事実が

カテゴリ:経済 コメント:(56)
「もう限界」…韓国で廃業する自営業者が100万人に迫る(ハンギョレ)
 韓国で昨年1年間に廃業を届け出た事業者の数が100万人近くにのぼったことが分かった。前年からの増加数は過去最大の約12万人に達した。高金利の長期化や内需の低迷などがその背景としてあげられる。廃業した自営業者の労働市場への再参入を誘導する対策が急がれると指摘される。

 15日に国税統計年報を確認したところ、昨年1年間に廃業を届け出た事業者は98万6487人。年間廃業者数は2019年の92万2159人から2020年には89万5379人に減り、その後は2022年まで80万人台を保っていた。しかし昨年は100万人近くにまで急増。総事業者数に占める廃業事業者の割合も、2019年の11.5%から2020年10.3%、2021年9.6%、2022年9.0%へと徐々に低下していたが、昨年は9.9%へと上昇した。

 廃業届けが多かったのは内需と直接関係する業種。昨年の小売業の廃業者数は27万6564人で、前年に比べて29.0%増。廃業自営業者数全体の増加率(13.7%)の2倍を上回る。続いてサービス業の廃業事業者数(21万8002人)の増加率も17.7%と大きく、飲食店業(15万8328人)と建設業(4万8631人)もそれぞれ16.3%と15.9%で、増加率が平均より高かった。韓国労働研究院のイ・ビョンヒ先任研究委員は、「廃業事業者数が増加したのは、内需の低迷と高金利に持ちこたえられなくなった自営業者が増えたためとみられる」と語った。

 廃業事業者数は今年も増える可能性が高い。統計庁の経済活動の人口調査マイクロデータを分析したところ、今年上半期の失業者のうち過去1年間に自営業者として働いていた人の数は、月平均で2万6千人だった。昨年上半期(2万1千人)に比べて23.1%もの大幅増だ。今年上半期の非経済活動人口のうち直近の1年間に自営業者として働いていた人の数も月平均で26万8千人で、昨年同期に比べて6.0%増加していた。非経済活動人口とは、満15歳以上の生産年齢人口の中の、求職活動もしていない未就業者を指す。元自営業者の非経済活動人口の増加は、自営業の廃業後に再就職しない人が増えていることを意味する。 (中略)

 明知大学のウ・ソクチン教授(経済学)は、「韓国は就業者全体に占める自営業者の割合が高く(2022年で23.5%)、特に労働市場から押し出された生計型自営業者が多いことが問題」だとし、「彼らが労働市場に再参入できるようにするため、労働市場において良質の雇用を増やす対策が必要だ」と述べた。
(引用ここまで)


 韓国の自営業者の廃業数が100万人に達していたことが判明した、とのニュース。
 その理由として有識者は高金利と不景気を挙げています。
 去年の自営業廃業届が出された数で、正確には98万6487人。
 2022年は86万7292人だったので、13.7%の増加。

 楽韓Webでは「韓国の経済状況は21世紀に入って以来で最悪のものとなっている」と何度か指摘してきましたが、それを裏付ける数字がまたひとつ……といったところですかね。
 自営業者が多いのは「賃金労働から弾き出された労働者が多い」からです。
 これがイタリアとかギリシャだと「観光客が多いから自営業で食っていける。へーきへーき」ってなるんですが。
 韓国の場合はそれ以外に収入のつてがないので背水の陣を敷いてやるものとなっています。


 「チキン屋orダイ」は決して冗談ではないのですよ。多少、大げさではありますが。



 チキン屋はあくまでも「自営業者の象徴」であって、実際にはカフェだのネカフェだのノレバン(カラオケ)屋、コンビニ経営なんかも含まれます。

 まあ……「時給仕事で仕事を命じられるのがいやだ」っていう根本的な問題もあるんですけどね。
 韓国で自営業者が多いのは儒教的な側面での「肉体労働を軽んじる」「年長者が年少者からなにかを命じられるのは苦々しい」って部分も大きいのです。
 なので、コンビニの店長は「コンビニで店長するよりも店をたたんでアルバイトしたほうが稼げる」とかいいながらもやめないでしょうけどね。

 それでも韓国で「自営業者100万人廃業時代」はかなりのインパクトがある数字です。
 もはや韓国の内需は自営業者を支えることができなくなっている。
 相当に厳しい経済状況が続いている、と理解していただけるのではないでしょうか。

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韓国不動産地獄:「住居としても使えますよ」として販売された宿泊業用不動産オーナー、「住居としては使えない! だまされた!」として不動産ディベロッパーとの訴訟沙汰に……裁判所は「違法とまではいえない」と棄却するものの……

「実居住可能だと言っていたのに今更」…。家主ら「超非常事態」(韓国経済新聞・朝鮮語)
全国の主要生活宿泊施設(レジデンス)で分譲契約者と建設会社間の法的紛争が相次いでいる。 政府がオフィステルなどに用途変更せずに住居目的で使用するレジデンスを不法と見なすと刀を抜いたことが発端となった。 実居住が可能だという言葉だけを信じて分譲を受けたので、施行・施工会社が責任を負わなければならないというのがレジデンス契約者の主張だ。

最近、建設会社に軍配を上げた裁判所の判決が出て関心を集めている。 だが、集団訴訟が拡散する兆しを見せ「未入居大乱」憂慮も大きくなっている。

15日業界によれば仁川地方裁判所は先月仁川のあるレジデンス分譲契約者が施行会社などを相手に提起した「契約金返還請求訴訟」で原告敗訴判決した。 住居施設目的でレジデンスを分譲された所有者が起こした訴訟だ。 オフィステルに用途を変えずにレジデンスを住居施設として使えば、来年から毎年履行強制金を払わなければならない。 しかし、駐車場や廊下の幅などの規制で用途変更が現実的に容易ではない。

原告は「分譲担当職員がレジデンスに実居住が可能だと言った」として「故意に契約者をだました」と主張した。 しかし裁判所は分譲契約書にレジデンスが非住宅商品である点を明示し、一般住居用建築物との違いを摘示したという点に注目した。 何より裁判所は「居住または住居用途に賃貸することが可能だと広報したとしても、多少の誇張を越えて虚偽事実告知に該当すると断定することは難しい」と判断した。 2021年建築法施行令改正前までレジデンスが事実上規制死角地帯に置かれ住宅用途に使用した事例が多かったためだ。 裁判所は「(建築法)施行令が改正されたとしてもレジデンスを長期に賃貸することが可能であり、相当期間居住する者は転入申告も可能だと見られる」とも話した。

ある施行会社関係者はこれについて「宿泊業登録をした後、長期宿泊する形で本人が住んだり賃貸を置くことが可能だという意味」とし「一種の『セルフ長期宿泊契約』形態で家主が本人のレジデンスに留まることができるという意味」と話した。 レジデンス30室以上を集めて法人を作ったり委託管理業者に任せた後、該当業者に使用料を払って宿泊サービスを受けることができるという話だ。
(引用ここまで)


 韓国でワンルーム、オフィステル、レジデンスといった形態の不動産があるのですが。
 どれもキッチン、シャワールームがあり、ほぼ同じような広さです。

 まあ、レジデンスにはスイートレジデンスとされる4〜5人向けの(日本でいうところの)マンションっぽいものもあるのですが、1人向けのアパートのようなところもあります(というかこっちがメイン)。
 で、この3つの似たような部屋ですが、法的には完全に異なる区分となっていまして。

 ワンルームは住居。
 オフィステルは事務所(住めないこともない)。
 レジデンスは宿泊業用。
 で、そのレジデンスを「住居用として販売しただろう!」として、購入者が不動産ディベロッパーを訴えたものの、裁判所は「違法とまではいえない」として請求を棄却したとのこと。


 「住居用としても使える」(ただし、宿泊業用として登録して、自分で自分の不動産に宿泊する形)として売りつけたのは違法ではない……か。
 韓国の不動産開発がめちゃくちゃなのはプロジェクトファイナンス(PF、不動産開発プロジェクトそのものを担保とする融資形態。実質的には無担保)だけを見ても理解できると思いますが。
 実際の販売現場でもだいぶめちゃくちゃだったのだろうな、とは感じられます。

 これに類する訴訟が他に14件。
 しかも中には原告が100人を超える集団訴訟もあるという。
 入居予定者がローン支払いを停止しているために、不動産企業、金融機関にまで余波があるかもしれないって最後にはあるんですが……どんだけ脆弱だ。

 記事の最後は「レジデンスも住居用として政府が認めちゃったら?」みたいなテキトーなまとめがされていますが。
 そしたら近所で賃貸に出しているマンションオーナーとかが「いや、あそこがレジデンスだっていうから買ったんだが?」みたいな話になりそうだよなぁ。

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韓国、最低賃金の1.7%上昇を決定。3%近いインフレを記録していてもそこに賃金を合わせることができない事情とは?

カテゴリ:経済 コメント:(44)
韓国の最低賃金ついに1万ウォン超え…11年で倍増、中小企業は悲鳴(朝鮮日報)
韓国の来年度の最低賃金が1万30ウォン(約1149円)になることが12日に決まった。これは今年の9860ウォン(約1130円)よりも170ウォン(約19円)高く、1988年に最低賃金の制度が導入されて以来、37年間ではじめて1万ウォン(約1150円)を突破し、また最低賃金が5000ウォン(約573円)となった2014年から11年で2倍になった。 (中略)

 時給1万30ウォンは週40時間勤務での月給に換算すると209万6270ウォン(約24万243円)となり、今年よりも3万5530ウォン(約4071円)高くなる。来年度の上昇率1.7%は2021年の1.5%に続いて過去2番目に低い。最低賃金は文在寅(ムン・ジェイン)前政権発足直後の2018年に16.4%、2019年に10.9%と2年連続で10%以上も上昇するなど、ここ5年で41.5%も高くなった。しかし尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権発足後の2023年は5%、今年は2.5%の上昇にとどまっている。

 今回の決定後、民主労総は「最低賃金の上昇率は3年連続で物価上昇率に満たず、実質賃金はさらに減少した」と指摘し、韓国労働組合総連盟(韓国労総)も「低賃金労働者の叫びが鮮やかに目に浮かぶ」と反発した。これに対して小商工人連合会は「小商工人の経済的、心理的マジノ線(最終防衛ライン)である最低賃金1万ウォンの壁が崩壊した」「もはや耐えられないレベルの人件費上昇は最終的に事業主に1人だけの経営を強要する形となり、雇用の減少につながるのは避けられない」と批判した。中小企業中央会も「営業利益で利子さえ返済できない中小企業が今や過半数を占めており、今後破産や廃業が予想される今の経済状況を考えると、中小企業経営者が強く求めてきた最低賃金の凍結が実現しなかったことは非常に残念だ」とコメントした。
(引用ここまで)


 韓国における来年の最低賃金が1万0030ウォンに決定。
 今日のレートで1151円くらいですかね。
 170ウォン(約19円)の上積み。伸び率としてはコロナ禍であった2021年の1.5%以来、史上2番目の低さとなる1.7%。
 ユン政権的にも苦肉の策として「名目上、1万ウォンを超えよう」とした……って感じです。

 というのもインフレ具合はここ数ヶ月は収まりつつあるものの、いまだに高い状況が続いています。
 1~6月の消費者物価指数はこんなところ(前年同月比)。

1月 2.8%
2月 3.1%
3月 3.1%
4月 2.9%
5月 2.7%
6月 2.4%

 ちょっと目を離すと3%台に再突入してしまう感じ。
 なのでスタグフレーションを起こさないためにも賃金を追随させたいのは山々なのですが。
 韓国の内需そのものがついてきていない。


 「韓国は外需頼りの国」との話を幾度となくしてきています。
 原料や部品、製造機械を輸入して半導体、船舶、自動車などを輸出する。いわゆる加工貿易国。
 特に半導体、というかメモリは韓国経済そのものの行方を左右するほどの存在となっています。

 その一方で内需はまったく育っていない。
 外需関連の企業に就いていれば(実質定年となる45歳くらいまでは)それなりの賃金を得ることができるのですが、そうでなければ……まあ暮らすのも厳しいくらいの賃金しか得られない。

 そんな中、ムン・ジェイン政権は「内需関連で働く人たちの情勢が厳しいのなら、賃金を上げればいいじゃない」とばかりに2年で最低賃金を30%も上げてしまったわけです。
 あれでそれでなくても脆弱だった内需はだいぶやられた感じです。
 パイの奪い合いが起きて、その結果が「なにもせずに休んでいる」244万人の30・40代の働き盛り、ですね。

「ただ休んでいる」人口が244万人で歴代最大…「経済の腰」 30代・40代で急増=韓国(中央日報)

 これは6月時点での数字。5月は233万人だったので、1ヶ月で11万人ほど増えました。
 なので、インフレ気味であっても最低賃金を増やそうにも、わずかしか増やせない。
 かといって現状から減らすこともできない。
 二律背反の状況に追いこまれているわけです。

 ムン・ジェイン政権の経済政策、即効性もあった上で遅効性でも次政権にまで効いてくるっていうね。
 希代の政治家でしたわ……。

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韓国自営業者「もう店たたんでバイトしたほうが稼げるよ」……300万人が最低賃金を受け取れていない中、さらに今年も上積みか

カテゴリ:経済 コメント:(56)
来年の最低賃金1万ウォン認定へ……「社長の代わりにアルバイトする」(フィナンシャルニュース・朝鮮語)
来年度の最低賃金交渉が本格化し、中小·小商工人のため息が大きくなっている。 何より来年度の最低賃金が1万ウォン時代になるという予想と共に「社長の代わりにアルバイトを選ぶ」という意見も出てきている。 (中略)

汝矣島でコンビニを運営する事業者は「アルバイト生は引き上げ要求のための集団行動ができるが、事業主はアルバイト代を稼ぐために集会に出ることもできない状況」とし、「継続してこのようにしていては自営業者が皆滅び小商工人もほとんど消えるだろう」と不満を提起した。

また別の自営業者は「配達プラットフォーム手数料引き上げの話に最低賃金上昇まで割れたかめに水を注ぐように体だけが濡れている」とし、「景気が難しく販売価格引き上げも難しく、むしろアルバイトをした方が良いと考える」と伝えた。

このような中、労働界の引き上げ案が適用される場合、小企業9万6000社が廃業する可能性があるという研究結果が出て関心を集めている。

財団法人のパイタチ研究院は、来年度の最低賃金を13.6%引き上げる場合、4人以下の小企業9万6000社が廃業することになると発表した。
(引用ここまで)


 韓国の最低賃金について、雇用側の求めていた業種別最低賃金制度は導入が見送りとなりました。
 以前も書いたように、地方のコンビニでは最低賃金も払わず、かつ週に15時間以上働くともらえると法的に規定されている週休手当も出さないことを納得ずくで働いてもらっている状況が続いています。

韓国経済:地方のコンビニから「最低賃金なんて守ってられない!」と悲鳴、人を雇えずに店主は1日16時間労働も(楽韓Web過去エントリ)

 かつ、最低賃金をもらっていない労働者は300万人超。7.3人にひとりは最低賃金を受け取ることができていない。

韓国メディア「……韓国の最低賃金制度おかしくない? 300万人が最低賃金を受け取れず、中央所得の60%なんてどの国もやってな……」→労組「うぉぉぉぉおおお、最低賃金大幅引き上げ、全業種拡大適用じゃああ!」(楽韓Web過去エントリ)

 もはや「最低賃金とはなにか?」くらいのところまで行き着いているのが韓国の現状です。


 ムン・ジェイン政権が経済成長もしていないのに、最低賃金を2年で30%も引き上げてしまってからこっち、こうした状況が続いています。
 労組側はふわふわとした理想を追い続けて、今回も「時給1万2600ウォンを求める!(その後、1万1200ウォンに要求を減額)」ってやってますが。
 300万人が最低賃金を受け取れていない中で、さらに最低賃金を上積みしようってのがもう意味不明すぎる。

 誰のための、なんのための最低賃金なのかって話が置き去りにされていて、「とにかく最低賃金を上げればそれが我々の業績になる」ってだけで突っ走っているのですね。
 自営業のおっちゃんたちもガチで「もう店辞めてバイトしたほうが儲かる」って言い出している。
 ま、雇ってくれる店がそもそもなくなるのではって話ですが(笑)。

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