「POG2023厩舎別注目2歳馬」第1回はドバイシーマCを勝ち、世界ランク単独1位になったイクイノックスの美浦・木村哲也厩舎と、昨年のダービー馬ドウデュースが所属する栗東・友道康夫厩舎を取り上げる。
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「2歳馬が入ってきています。クラシックを狙う期待馬たちを任せてもらっているのは素晴らしいこと。しっかりと向き合っていきたい」。イクイノックスがドバイシーマCを勝った直後、メイダン競馬場で木村師はそう言った。言葉通り、今年の木村厩舎も将来性豊かなラインアップだ。
◆ベランジェール(牝、父モーリス、母キャリコ)は母の全妹が重賞3勝を挙げたプリモシーンという血統になる。DMMドリームクラブの所有。「プリモシーンの血統です。骨量が豊かでモーリス産駒らしさがある。生まれが早いのもあるけど、ここまでトラブルなくきていますね。脚質は手探りしながらになると思う」。既に入厩済み。
◆サイレンスホープ(牡、父リオンディーズ、母ローザフェリーチェ)は祖母がローズバドで有名な「バラ一族」の血統。「お母さんがうちの厩舎にいた馬です。エンパイアメーカーの肌で気性の難しさがありそう。上(ヤングローゼス)は手塚厩舎にいるけど、既に去勢されていますし、気性面が大事になってくる。オーナー(六井元一氏)はファインルージュを所有されていた方で、とても熱量のあるオーナーです」。ゲート試験に合格して、放牧に出ている。
◆トリプライトの21(牡、父エピファネイア、馬名予定マーシャルポイント)は3代母がキャサリーンパー。クリソベリルやクリソライト、アロンダイトなどダートで活躍した馬や、マリアライト、オーソクレースなどが近親にいる血統だ。馬主はサンデーレーシング。「母の父がワイルドラッシュなので、血統的にはダートかなという印象。バランスが良くて、格好いい馬です。まだ緩さがあります」。
◆ヴィヤダーナの21(牡、父キズナ、馬名予定カイゼルスベルグ)もサンデーレーシングの所有。ダノンメジャー、ダノンキングダムなどデビューした兄姉6頭がすべて勝ち上がっている堅実な血統になる。「馬格があって、緩いので、仕上がりはゆっくりだと思います。デビューは秋のイメージです。きょうだいは芝2400メートルで走っている馬もいるし、スピードが課題になりそうですね」。
◆レガレイラ(牝、父スワーヴリチャード、母ロカ)は注目の新種牡馬の産駒。父は18年大阪杯、19年有馬記念を制し、3歳時には共同通信杯を勝って、ダービーで2着だった。サンデーレーシングの所有。「フレームが長くて、父に似ているのかもしれません。母父ハービンジャーで馬体にゆとりがあるし、距離の融通が利きそうな馬です。ディープインパクトの牝系で、血統的な魅力もあります」。
◆チェルヴィニア(牝、父ハービンジャー、母チェッキーノ)は早期デビューを期待できる即戦力だ。半兄ノッキングポイントは昨年6月東京の最初の新馬戦を快勝し、3月の毎日杯で2着に好走している。母はオークス2着馬で、母の全兄にはコディーノがいる。サンデーレーシングの所有。「ノッキングポイント(父モーリス)の妹になります。ハービンジャーに父が替わって、兄とは体形が違います。ここまでトラブルなく、順調にきています。東京デビューはもちろん考えていますが、他にも東京デビューの候補がいるので、これからの進み方次第だと思います」。既にゲート試験に合格しており、デビューへ向けて牧場で調整していく。
◆ジューヌエコールの21(牝、父モーリス、馬名予定シャトーディフ)は16年デイリー杯2歳S、17年函館スプリントSを制した快速牝馬の初子になる。オーナーはサンデーレーシング。「順調にきています。ちょっと小ぶりなので、ゆっくり育てていますが、お母さんが短距離で活躍していて、入厩すればスッと使い出せそうな印象。キュッキュッキュッキュという雰囲気です」。
◆ルミナスパレードの21(牡、父リアルインパクト、馬名予定ソニックライン)は昨年の安田記念を制したソングラインの半弟で、近親にはダービー馬ロジユニヴァース、日英G1制覇の名牝ディアドラがいる。サンデーレーシングの所有。「ソングラインの弟になります。順調ですし、早く(美浦トレセンへ)持ってきたいと思っています。パワーがありそうなので、ダート1800メートルでデビューするかも。ゴロッとした体形をしています」。
◆英国産馬インピードの21(牡、父キングマン、馬名予定キングズブレス)は近親にカドラン賞覇者リーフスケイプがいる。父の産駒は日本での活躍が目立つ。サンデーレーシングの所有。「いい馬ですよ。同じ父のシュネルマイスターよりもスラッとした感じの馬に見えます」。
◆イルーシヴウェーヴの21(牝、父ドゥラメンテ、馬名予定ドルフィンスルー)はアドマイヤビルゴの半妹。馬主は吉田勝己氏。「アドマイヤビルゴの下になります。線が細くて、力がつくのが遅いイメージ。トラブルはなくきていて、距離はもちそう。夏から秋のデビュー予定です」。
◆ジュリエットベールの21(父ドレフォン、馬名予定アトリウムチャペル)は社台レースホースの所有。「肩周りがしっかりしていて、骨量もあって、頼もしい馬です。距離は半信半疑ですが、堅実に走ってくれそうです」。
◆スキャットレディビーダンシングの21(牡、父ロードカナロア、馬名予定レッドアレグロ)は東京ホースレーシングの所有。「5月生まれで小さかったけど、だんだん大きく、しっかりしてきた。きょうだいはダートで走っていて、この馬もがっちりしています。堅実に走ってくれそう。4月から5月に入厩予定」。
◆サファリミスの21(牝、父キタサンブラック、馬名予定ルージュサリナス)はイクイノックス、ゆりかもめ賞を勝ったスキルヴィングと同じキタサンブラック産駒。東京ホースレーシングの所有。「貧相だったけど、だいぶしっかりしてきましたね。皮膚感にキタサンブラック特有の柔らかさがありそう。今年に入って、劇的に変わってきました。ゆっくり進めて夏にデビューできれば」。
◆セブンマイスター(牡、父ドレフォン、母ハピネスダンサー)は新馬、黄菊賞を連勝したセブンマジシャンの半弟。近親にはノームコア、クロノジェネシスがいる良血馬だ。前迫義幸氏が所有。「母系はクロノジェネシスやノームコアなどが出ている血統馬。ドレフォンのがっちりした感じではないので、芝で使い出すつもりです」
◆カンティアーモ(牝、父エピファネイア、母リビアーモ)は好馬体の持ち主。キングカメハメハ産駒の半兄マグナレガーロはダートで4勝、ワークフォース産駒の半姉パルティアーモは芝で4勝を挙げている。シルクレーシングの所有。「見栄えがいい馬ですね。気性の難しさはありそうですが、すごくゴツい馬です」
◆ガルサブランカ(牝、父キズナ、母シャトーブランシュ)は年度代表馬イクイノックスの半妹。3歳上の半兄ヴァイスメテオールもラジオNIKKEI賞を制している。シルクレーシングの所有。「他の先生方がつないできた血統なので、厩舎ゆかりの血統とは思っていません。イクイノックス(父キタサンブラック)とは種馬が違うし、この馬はキズナ産駒らしさがある。前後は詰まっていて、トモにボリュームがある。うちのエースになってくれれば」。
◆ミュージカルウェイの21(牡、父リアルスティール、馬名予定ニュージーズ)は2冠牝馬ミッキークイーンの半弟という血統。シルクレーシングが所有する。「リアルスティールっぽい馬です。きょうだいは距離の融通が利くので、この馬もそうなってくれれば。トラブルはないけど、成長はゆっくりしている」。
◆カーミングエフェクトの21(牡、父フランケル、馬名予定フランクエフェクト)は祖母が13年アシュランドS、スピンスターSなどG1・4勝の名牝。シルクレーシングの所有。「体が立派で、馬格もあります。あとはスピードがあるかどうかですね」。
◆ライフフォーセールの21(牡、父キズナ、馬名予定スティンガーグラス)は18年の阪神JFを制したダノンファンジターの半弟。オーナーはエムズレーシング。「ダノンファンタジーの下で、キズナの子。フレームが立派ですね。1歳の時は背中に肉がなくて、しんどい感じでしたが、たくましくなってきて、さらなる成長力に期待しています」。
◆ミセスワタナベの21(牡、父オルフェーヴル、馬名予定アルシミスト)は、馬主がキャロットファーム。「お母さんはうちの厩舎にいて、ダートの短距離を走っていました。歩きを見ると、ダート適性がありそう。骨格がたくましいし、堅実に走ってくれそうです」。
◆コルコバードの21(牡、父ルーラーシップ、馬名予定ヘデントール)は木村厩舎で5勝を挙げた母の子。キャロットファームが所有。「大きな期待はされていないかもしれないが、ばかにしないでほしい。お母さんがうちにいたけれど、ひいき目なしでいい馬だと思っています。ゆったり走れそう」と楽しみにしている。
◆サンブルエミューズの21(牝、父エピファネイア、馬名予定アルセナール)は半姉のナミュール、ラヴェルが重賞を勝っており、期待が膨らむ。キャロットファームの所有。「骨格がしっかりしていて、たくましい。血統的に注目はされると思います。ダイワメジャー肌で、コロッとした感じです」。
◆ジョプリンの21(牝、父ロードカナロア、馬名予定ジュビランス)は母がドイツ、フランスで活躍。キャロットファームが所有する。「おとなしくて素直な子です。手が掛からない。トラブルなくきていて、4月から5月に入厩できると思います」。
◆メジャーレーベル(牡、父シュヴァルグラン、母フィールドメジャー)は父が注目の新種牡馬。昨年のサマーセールで落札された馬で、オーナーはノースヒルズ代表の前田幸治氏。「いい馬ですね。ハーツクライ系の種牡馬の産駒だけど、まとまっていて、間延びしていない。堅実に走ってくれるのでは、と思っています」。
◆キャロライナバーティの21(牡、父イントゥミスチーフ)は昨年のキーンランド・セプテンバー・セールで、30万ドルで落札された馬。近親に日本で種牡馬として活躍しているビーチパトロールがいる。オーナーは保坂和孝氏。「キーンランドへ自分も行って、落札してきた馬です。骨量が豊かで立派な体つきをしています。将来的にはダートになるかもしれない」。
◆ローズマンブリッジの21(牝、父リオンディーズ)は今年の牝馬クラシック戦線を走るドゥアイズの半妹という血統。オーナーは保坂和孝氏。「上のドゥアイズが走っていますね。小さくて、こぢんまりしていて、成長待ちのところがあります。気のよさそうな感じの馬です」
過去にダーリントンホールで共同通信杯を制しているゴドルフィンの所有馬は2頭が入厩予定。ゴールデングローブの21(牝、父マサー)は父が英ダービー馬。シャマーダル産駒の母は日本の芝で5勝を挙げ、13年ヴィクトリアMに出走(7着)している。ラザルナスカイズの21(牡、父イフラージ)は近親に重賞4勝のマスターオブザシーズがいる。【木南友輔】