息子の「おかえり」 コロナ禍、パパ力士は頑張れる

鈴木健輔
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 新型コロナウイルスの影響で、大相撲の力士も外出自粛を強いられている。地方場所がなくなったり、稽古が制限されたり。34歳の幕内宝富士は、そうした我慢の日々にもプラスの側面を見いだしている。

 「家族と触れ合う時間がいっぱいあるので。ありがたい、と思って過ごしています」

 コロナ禍の前、幕内力士は1年の半分ほど家を空ける生活だった。

 年3回の地方場所は、番付発表から千秋楽まで約1カ月ずつの長期遠征。場所のない時期に行う4度の巡業は、移動日を除いて計90日間を超す年もあった。本場所から直接、巡業に入るケースでは、2カ月ほど家族と会えない力士もいる。

 それがコロナの影響で一変した。巡業を開催できず、本場所は大阪で無観客で行った昨年3月の春場所を最後に、東京開催が続く。日本相撲協会が発表した昨年の決算では赤字が過去最大の約50億円に。角界全体で見れば大打撃だが、力士にすれば、慣れ親しんだ家や相撲部屋で過ごす時間になっている。

 宝富士は、妻子と暮らしている。地方にいるときはテレビ電話などでしか顔をみられなかったが、ずっと家にいられるいまは息子とアニメを見たり、車のおもちゃで遊んだり。「ただいま」と言えば、「おかえり」と返ってくる生活。「癒やされます」と、宝富士はうれしそうに言っていた。

 宝富士は今場所、2009年春場所の序ノ口デビューから一度も休まない「通算連続出場」が1千を超えた(9日目時点で1002回)。幕内連続出場は744(9日目時点)で、現在継続している記録では最多だ。

 丈夫な体や豊富な稽古量のたまものだが、家族と過ごす時間もまた、宝富士を土俵に向かわせる活力になっているのだと思う。(鈴木健輔)

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