第4回「私に宿題ください」 夜間中学の存続を訴える69歳生徒会長の目標
「大人の私たちも夜間中学の学生です。学校をなくさないでください」
昨年12月18日の午後、大阪市中心部のJR天王寺駅近くの広場。冷たい風が強く吹きつける中、50人以上の男女が通行人にチラシを配っていた。
拡声機で訴えていたのは、ニット帽にダウンジャケットを身にまとった金沢仁美さん(69)。天王寺夜間中学の生徒会長だ。
昨年11月、大阪市内に四つある夜間中学を三つに減らす統廃合案が明らかになった。市教育委員会は天王寺と文の里、二つの夜間中学の廃止を検討している。天王寺は1969年開設で関西の夜間中学の先駆け的な存在。21年3月末時点で1272人の卒業生を送り出している。
金沢さんは認知症の夫の介護をしながら通学している。通学には片道1時間かかる。授業終了の午後8時50分を待たずに下校し、ヘルパーの女性が帰る午後9時半ぎりぎりに帰宅する。「私は他の学校には通えない」
金沢さんが入学したのは2019年9月。その少し前、夫のヘルパーをしているネパール人女性がカタカナを書くのをみて「どこで習ったの?」と聞くと、夜間中学の存在を教えてくれた。彼女が帰るや否や、「やかんちゅうがく」とスマホに打ち込み、一番近い天王寺に電話した。
「夜間中学のことを最近聞いて電話しました。40年前に韓国から嫁に来た者です」
電話を取った男性が言った。
「言葉はいけますね」
「何とかしゃべるのはいけるけど、書くの、読むのできないです」
男性は当時の教頭先生だった。「すぐ来てください」
面接後、入学が決まった。
税務署で漢字書けず「退室してください」
韓国・ソウル出身の敬虔(け…
【秋トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら
- 【視点】
文字を読んだり書いたり、理解する力、すなわち「識字」(しきじ)の力は、社会生活を支障なく営んだり、社会に参加するにあたって重要な能力であり、その力を身に着けることは重要な権利であると言えます。 日本における識字率は100%近く(99.
…続きを読む