松田優作さんも患った膀胱がん 新膀胱?ストーマ?手術や装具も進歩

鈴木彩子
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 俳優の故・松田優作さんも患ったという膀胱(ぼうこう)がん。膀胱(ぼうこう)がんは、年間約2万3千人が新たに診断され、60代以上の男性に多い。喫煙が危険因子だ。

 がんは、膀胱内側表面の粘膜にでき、その下の筋層へと外側に向かって進む。がんが粘膜だけにとどまる「筋層非浸潤性」と、筋層に達する「筋層浸潤性」に大別される。

 発覚時の7割は非浸潤性だ。再発することが多く、浸潤性へ移行する人もいる。

 治療はまず、尿道から入れた内視鏡でがんを削り取る「経尿道的膀胱腫瘍(しゅよう)切除術(TURBT)」を行う。手術後、再発を防ぐために、膀胱内に抗がん剤やBCGを注入することが多い。松山豪泰・JA山口厚生連総合病院長は「TURBTの結果、浸潤性だった場合は次の手を考える」と話す。

手術法は主に2種類、QOLは同程度

 筋層への浸潤があると、ほかの臓器への転移のリスクが高まる。根治をめざすためには膀胱全摘手術が標準治療になる。膀胱を取り除き、新しい排尿方法を整える手術で、方法はいくつかある。

 一つは腸の一部を使って体内に袋(新膀胱)をつくり、そこに尿をためて尿道から出す方法。尿意は感じないが、排尿を自分でコントロールできるので「禁制型」と呼ばれる。尿道にがんが再発するリスクが高い人は選べない。

 もう一つはおなかに尿の出口(ストーマ)をつくり、パウチに流し出す方法。回腸という腸の一部を導管に使う(回腸導管)のが一般的だ。尿は自然に流れ出るので「失禁型」と呼ばれる。

 松山さんは「再発のリスクや全身状態など、いろいろな要素を考えながら治療法を選ぶ必要がある」と話す。6~7割が回腸導管、3~4割が新膀胱を選ぶ傾向にあるという。海外の論文によると術後のQOL(生活の質)はほぼ同程度だったという。

 手術は、腹部を大きく切る方法のほか、ロボット支援下で腹腔(ふくくう)鏡で行う方法が2018年4月から公的医療保険の対象になった。出血量が少なく、入院期間も短いため急速に広まっている。また、再発リスクの高い人には、全摘後の化学療法に、免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」が22年から公的医療保険で使えるようになった。

ストーマ装具も大きく進歩

 ストーマ装具は、ここ40~50年で大きく進歩した。特に、肌に貼る部分の素材(皮膚保護剤)が改良された。保水性があり、皮膚炎を防ぎながら尿のもれも防ぐことができる。粘着力の強弱、形状などによって装具は数千種類あり、その人に合うものを選ぶ。もれを防ぐための補助グッズも豊富だ。

 東京医療保健大の青木和恵・立川看護学部教授は「もれがなく、皮膚炎が起こらず、生活がしやすいものがその人にとって良い装具です」と話す。年を重ねて体や生活が変われば合う装具も変わる。青木さんは「手術後も定期的にストーマ外来を受診して、体に合っているかを確認して」と話した。(鈴木彩子)

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この記事を書いた人
鈴木彩子
くらし報道部
専門・関心分野
医療・健康、脳とこころ、アレルギー