運命をわける「クマ撃退スプレー」遭遇してきた記者が実験で得た教訓

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神村正史
【動画】「クマ撃退スプレー」の噴射実験を試みた=岡戸佑樹、原知恵子撮影
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 北海道では7月に入り、夏山登山、渓流釣り、海岸トレッキングなどが盛期だ。ただ、その多くのフィールドにはヒグマが生息し、クマ対策は自らの運命を左右する重大案件だ。特に、クマ撃退スプレーは「最後の生命線」「お守り」とも言われる。どのようなものなのか。

 私(55)は通算で約10年、世界有数のヒグマ高密度生息地域である知床半島を取材エリアに持つ支局に勤務している。取材以外のプライベートでも野山や海岸を歩くのが好きなため、知床を中心に年に数回はヒグマに出合っている。

 自然に入る際、腰には必ずクマ撃退スプレーを専用のホルダーに入れて携行している。首からはクマよけ鈴とホイッスルをぶら下げている。これら3点セットは知床取材の必需品で、場所によっては大きめのマキリ(漁業用小刃)を腰に装着している。

 過去にヒグマに最も近づかれたのは知床岬そばの赤岩地区で、昆布番屋の取材をしていた時だ。ゆっくりとした速さで鼻を上げながら50メートル、30メートル、10メートルと近づいてきて、とうとう5メートルを切る距離まで接近された。私の持っていた物の匂いに興味を示したようだった。

 昨年4月に起きた小型観光船「KAZUⅠ(カズワン)」沈没事故の捜索ボランティア隊で隊員として活動した際も、何度も行く手をヒグマに遮られた。

 私は一般の民間人の中では、ヒグマとの遭遇率が高い部類に入ると思う。しかし、実は過去に一度もクマ撃退スプレーを噴射したことがない。

実験には、期限が切れ処分予定のクマ撃退スプレー(現在の価格は約1万8千円)を使用しました。後半では、実際に噴射してみてわかったこと、改めて気をつけたいことを記者目線でつづります。

 ヒグマが接近した際などに…

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