すっと直立したレッサーパンダの風太はいま あのブームを振り返ると
「あ、こっちに来たよ」。1月下旬、千葉市動物公園。レッサーパンダの「風太」の展示場には、多くの人が集まっていた。2005年、「立ち姿が人間のようだ」と大ブームを呼んだ。高齢になったいまも人気は根強い。
レッサーパンダは、国際自然保護連合(IUCN)が定める「絶滅危惧種」。生息地で「シセン」と「ネパール」に分かれるが、世界中の動物園で飼育されるシセンレッサーパンダの7割以上が国内にいる。いわば日本は「レッサーパンダ王国」だ。
日本平動物園(静岡市)の獣医師、塩野正義さんらによると、生息地の中国に近いことなどから、1990年代に国際的会議で「シセンは日本で増やして保護する」と決まったのが理由だという。
レッサーパンダは飼育に必要なスペースが狭く、繁殖のための移動も簡単なため、頭数を順調に増やしてきた。風太ブームで、多くの動物園が飼育を希望したことも大きかったという。
いま20歳の風太は人間でいえば90歳くらい。18年には白内障で右目が見えなくなった。腸の不調時期もあり、飼育員の樽川修さん(56)は「歩くのもゆっくりで、腰の毛も抜けた。おじいちゃんです」。この3年ほどは立ち上がることもなくなったという。
そもそも、多くのレッサーパンダが立ち上がることができるという。では、なぜ風太がこれほど人気を集めたのだろうか。
樽川さんは「ゆっくりと立ち…