石川県は20日、能登半島地震からの「創造的復興プラン」(仮称)の素案を公表した。3月末に示した骨子案をもとに、県民や専門家の意見を踏まえ、具体的な施策にまとめた。少子高齢化と過疎化が進み、地方の縮図とも言われる能登半島で、地域の外から継続的に関わる「関係人口」の拡大や、災害時に強い自立型のインフラ整備、デジタル活用などを重点課題とし、2032年度末までの9年計画で取り組む。
素案は、教訓を踏まえた災害に強い地域づくり▽能登の特色ある生業(なりわい)の再建▽暮らしとコミュニティーの再建▽誰もが安全・安心に暮らし、学ぶことができる環境・地域づくり――を四つの柱に据え、具体的な施策を列挙した。特に象徴的なものとして、13の取り組みを「創造的復興リーディングプロジェクト」と位置づけた。
その一つ、関係人口の拡大では、都市と地方の両方に拠点を構える「二地域居住」の推進や、能登と金沢を結ぶ道路の高規格化などを盛り込んだ。
今も約2500戸で続く断水など打撃を受けたインフラについては、自立・分散型を検討。公共の電力網や水道網から自立し、災害時も生活基盤を維持できる「オフグリッド集落」の整備を進める。
平時からドローンの航路を設けて物資を輸送する「デジタルライフライン」の構築や、最大で4メートル隆起した海岸など「震災遺構」の保存・活用策も検討する。
序章で「能登らしさ」説明
このほか、「能登らしさ」とは何かを説明する序章や、「地域が考える地域の未来を尊重する」「若者や現役世代の声を十分に反映する」といった12の基本姿勢が記されている。
馳浩知事は素案を発表した県の能登半島地震復旧・復興本部会議で「市町の応援団として、生活満足度を上げていく理念を忘れないようにしたい。検証と伝承の視点で、私たちが時系列で何をしてきたのか。検証し、教訓をしっかりつないでいく役割を果たしたい」と語った。
県は県議会6月定例会で素案を示してプランを確定させ、その後も必要に応じて改訂する。今後、各市町の復興プランも策定される見通し。(波絵理子、土井良典)
住民の声、届いたか
今回の素案作成で特徴的なのは、住民が参加するワークショップ「のと未来トーク」を開いたことだ。能登の6市町と金沢市で4月に計7回開き、423人が参加。遠方の避難者向けにオンラインでも意見を募り、264件が寄せられた。
「子どもの遊び場を増やしてほしい」「土地を離れたくない住民がたくさんいる」「輪島塗など能登にしかない伝統文化を守ることが、能登を守ることにつながる」。県は、寄せられた多くの声を素案に反映させたとしている。
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