がれきから甦る酒米 能登の蔵元 震災乗り越え伝統銘柄で新たな一歩

有料記事能登半島地震

柴田悠貴
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 能登半島地震で被災した石川県珠洲市の桜田酒造が、「天狗舞(てんぐまい)」などで知られる車多(しゃた)酒造(同県白山市)の協力で、酒造りの再開に向けて歩み始めている。がれきから見つけ出した酒米を使って、蔵の創業時の銘柄「大慶(たいけい)」を仕込み、この秋には販売にこぎつける予定だ。

 柔らかい朝日が窓から差し込み、室内を明るく照らす。白い作業服に身を包んだ親子が、こうじ室(むろ)から取り出した米こうじをゆっくりと手で広げていく。光が米の一粒一粒に反射し、小さく輝く。「いい香り。ええ感じや」

 昨年5月に震度6強の地震に襲われ、蔵の壁が大きくはがれるなどした「令和5年奥能登地震」から立ち直ろうとしていた矢先だった。桜田酒造4代目杜氏(とうじ)の桜田博克(ひろよし)さん(52)は、店の横にある酒蔵にいた。蔵が大きく揺れ、頭上の屋根が崩れ落ちてきたが、蒸した米を冷ます機械に支えられ、助かった。家族も無事だったが、酒蔵や貯蔵庫、店、住居の全てががれきになった。

 地元の漁師らに愛され続けてきた酒の味を100年以上家族でつないできたが、再建は絶望的だった。「これからどうすればいいのか」と、眠れない夜が続いた。2週間がたった頃、がれきの中から、雨にぬれずに残った酒米が150俵ほど見つかった。「もう一度酒を造りたい」。消えかけていた酒造りへの情熱に火が付いた。

 桜田酒造のファンだという人…

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    倉田徹
    (立教大学法学部教授)
    2024年6月3日17時20分 投稿
    【視点】

    「大慶」や「のとざくら」など、桜田酒造のお酒には東京ではなかなかお目にかかれないのですが、私は金沢を訪れたときにはいつも楽しみに頂いていました。震災被害から立ち直って、再び「大慶」を飲めるならば、まさにその名の通り大きな慶事ですね。ほかにも

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能登半島地震

能登半島地震

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