運転士不足対策など福井県内鉄道3社が連携で協会設立
福井県内の鉄道3社は5日、鉄道事業の連携を推進する「福井県鉄道協会」を設立した。運転士不足による人材確保など共通課題に重点的に取り組む。今年度は合同での就職説明会を開く。
3社は、ハピラインふくい(福井市)、えちぜん鉄道(同市)、福井鉄道(越前市)。協会によると、県域でこうした団体を設立するのは全国でも初めてという。
今年度はこのほか、鉄道の維持管理に必要な資材を共同で調達したり、工事を共同発注したりするなど事業の効率化とコスト削減も進め、経営基盤の安定を目指す。また、県内外の利用促進に向けたPR活動に共同で取り組むことも検討している。
設立後、ハピラインの小川俊昭社長は「人材確保は喫緊の課題。3社が連携して福井の鉄道の魅力を打ち出しながら良い人材を確保したい」と語った。(長屋護)
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3社とも新幹線開業効果が表れるなか、目標を上回る滑り出しをみせたのがハピラインだ。
ハピラインは、3月の北陸新幹線敦賀延伸で、JR北陸線の福井県内区間の運行を引き継いで開業した。その利用者が、当初目標の1日2万人を上回る約2万3千人だった。特急はなくなったが、通勤・通学時間帯を中心に快速の運行や、1日29本増便を行うなど利便性を高めたことが要因とみている。
沿線市町の自治体や経済団体などで構成する「ハピラインふくい利用促進協議会」で報告された。
同社によると、3月16日から5月31日までの利用者は171万8562人で、1日あたり2万22508人だった。協議会で、小川俊昭社長は「好調なスタートをきった」と話した。
ただ、経営計画では1日2万人を11年間維持することが掲げられる一方で、人口減少で利用者が今後減るとの予測調査もある。このため、越前市の県立武生商工高前に新駅「しきぶ駅」を設置するほか、福井市内でも新駅設置に向けた協議に入っている。
鯖江駅(鯖江市)と春江駅(坂井市)では、駅を中心としたまちづくりに着手。同様に北陸線を引き継いだ「あいの風とやま鉄道」(富山市)、「IRいしかわ鉄道」(金沢市)と3社で、観光客を呼び込む観光PR、企画切符の発売、観光列車の共同運行なども手掛ける。
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えち鉄の2023年度の利用実績は前年度比6・1%増の359万8903人となり、3年連続で増加した。ガソリン価格の高騰などを背景に定期券など「日常生活型」利用が増え、この分類では、コロナ禍前の19年度も上回った。
日常生活型は、鉄道事業の経営安定に重要で、えち鉄の場合、23年度は利用の3分の2を占めた。19年度比で3・4%増え、通学が同3・0%増、通勤が同8・9%増。一方、回数券は同6・3%減だった。
少子化に加え、コロナ禍の影響でリモートワークも一部で続き、19年度の水準に届かない私鉄も少なくないなか、堅調に利用者を増やした。
同社は背景として、ガソリン価格の高騰で、マイカー通勤から切り替える人が増えたこと、私立高校の授業料無償化で福井市中心部の私学に通う生徒が増えたことが要因とみている。
一方、普通乗車券や1日フリー切符など「非日常型」利用は19年度比8・1%減。沿線の主要観光地の県立恐竜博物館(勝山市)のリニューアルオープンが7月中旬だったことに加え、元日の能登半島地震で観光需要が伸び悩んだとみている。(長屋護)