(社説)機能性表示食品 残る課題さらに議論を
小林製薬のサプリメントを摂取した人に健康被害が広がった問題を受けて、政府が機能性表示食品制度の見直し策をまとめた。「応急措置」としてはうなずける内容だが、残された課題も多い。消費者の目線で、さらに議論を深めるべきだ。
見直し策の柱は、健康被害の情報提供の義務化だ。医師の診断による被害情報が事業者に寄せられた場合に、保健所や消費者庁への報告を求める。これまでは国の指針による努力義務だったが、食品衛生法の施行規則や食品表示法の基準に明記し、違反すると営業停止などの措置をとれるようにする。
今回、小林製薬に被害の疑い事例が寄せられてから消費者庁に届けるまで約2カ月かかった。製品との因果関係が不明の段階でも速やかに情報提供するよう義務づけるのは前進だ。ただ、その情報をいつ、どのような形で公表するのか。消費者本位の運用にしなければならない。
見直し策は、錠剤やカプセルなどサプリ形状の機能性表示食品については、厳しい製造管理を法的に義務づけることも盛り込んだ。これも、これまでは推奨にとどまっていたものだ。
小林製薬のサプリでは、原料から製造過程では想定されていない物質が見つかり、青カビの混入があった可能性が指摘されている。ただ、被害との関係や混入の原因はなお不明だ。今後、全容を解明したうえで、さらに対策が必要かどうか、検討すべきだ。
制度のあり方についても疑問が残る。特定保健用食品(トクホ)は安全性や有効性を国が審査するが、機能性表示食品は、事業者が一定の情報を届け出る仕組みだ。
見直し策では、新しい機能性成分について慎重な確認を要すると消費者庁が判断した場合は、専門家からの意見聴取などのために確認期間を延ばす方針が示された。だが、中身の審査をするのなら、届け出制自体を改めるのが筋ではないか。
消費者庁は、個々の機能性表示食品の安全性や機能の根拠について、消費者への情報提供のあり方を見直すとともに、正しく理解してもらうための消費者教育を強化する方針も掲げている。だが、そもそも消費者の混乱を招くような複雑な制度体系自体を見直しの対象にすべきだ。
濃縮成分を継続して摂取するサプリ状の食品については、機能性表示食品以外も含めて、規制のあり方が今後の検討課題とされている。揺らいだ信頼を取り戻すためにやるべきことはまだある。
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