先日、都内の日本外国特派員協会で行われた、第77回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション「ある視点」部門正式出品「ぼくのお日さま」(奥山大史監督、9月6日公開)上映後、会見を取材した。同作で映画主演デビューを果たした越山敬達(15)、演技デビューとなった中西希亜良(13)の充実した表情が印象的だった。

同作は雪の降る街を舞台に、少し吃音(きつおん)のあるアイスホッケー少年のタクヤ、フィギュアスケートを学ぶ少女さくら、元フィギュアスケート選手でさくらのコーチ荒川の3人の視点で紡がれる物語。ドビュッシー劇場での公式上映後には約8分のスタンディングオベーションでたたえられたという。

中西は4歳からフィギュアスケートを習い、シングルの他、アイスダンスでは全日本フィギュアスケートノービス選手権大会にも出場経験があるなど、フィギュアスケート上級者。緊張した面持ちで会見に入ったが、質疑応答には全て流ちょうな英語で回答。「スケートの経験を生かせたので、演技的に力足らずな部分があってもスケートの技術で補うことができました。ただ、裏を返せばスケートの経験があったからこそ、役をいただけたんだと思います」。自信に満ちた表情だった。

越山は昨年好評を博し、10月からシーズン2放送がされる、BS-TBS系「天狗の台所」のメインキャストとしても話題。昨年9月に行われた同ドラマの製作発表では、人生初の記者会見に「本当に緊張しているのに。いつもまったりしているから緊張しているように見えないのかな…」と会場を和やかなムードにしている姿が印象的だったが、今回の会見では貫禄すらも感じさせる回答を返していた。

越山はスケートは4歳から経験があったが、今回アイスホッケーとアイスダンスに初めて挑戦した。「右膝を3回、自然のリンクに強打して痛すぎて泣いてしまいました」と笑顔。2人は撮影時、事前に脚本を渡されなかったとも明かし、「自然体を引き出してもらえる一番いいやり方じゃないかと思いますし、一番やりやすかったと思います」と言及した。

2人と共演した池松壮亮はこれまでも多くの若手俳優と共演経験がある中で「役を演じる以上のこと、これまでたどってきた人生を役にのせていて魅力的だった」と絶賛。さらに、同作で商業映画デビューを果たし、撮影、脚本、編集も手がけた奥山監督にも「越山君と中西さんには、その場でセリフを伝えてなじませていくような作業でしたので、そういう意味で珍しい撮影の進め方だった」と監督の演出力にも言及した。

会見開始は夜遅めに設定されていたため、残念ながら、越山と中西は未成年の就労時間制限で記者会見を途中退出。2人への質問が打ち切られる合図が惜しまれた空気感があった。作品を鑑賞した人々を魅了した俳優の力を実体験した取材だった。【加藤理沙】