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Classic音楽,リュート,宇宙

クラシック音楽とリュート、宇宙・科学 etc

ツィンマーマン:ブラームス vn協奏曲  

ブラームスが1曲だけ書いたvn協奏曲はベートーヴェン、メンデルスゾーン、チャイコフスキーと合わせて4大vn協奏曲とする意見が多いだろう、共通点は特にvn奏者としては活躍しなかった作曲のスペシャリスト達だろうか。ブラームスはvn奏者、ヨーゼフ・ヨアヒムの助言を受けながら作曲したが、ベートーヴェンに回帰したような深い内容となっている。
 
今回はF.P.ツィンマーマンのvn、W.サヴァリッシュ指揮、BPOで聴いた、
録音は1995年、カラヤン亡き後、アバド時代のBPOをサヴァリッシュが指揮した希少な録音でもあり、真にドイツ第一級の顔合わせだ。
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ドイツの正当派ツィンマーマンのvnは研ぎ澄まされ、柔和な美しさももち、サヴァリッシュのがっしり安定したorch.とともに魅力だ。
2018 3 30
フランク・ペーター・ツィンマーマン:vn
ウォルフガング・サヴァリッシュ:指揮
ベルリン・フィルハーモニーO (1995年 EMI)

第一楽章 Allegro non troppoはニ長調の主和音を上下する穏やかなテーマで始まり、[17]からfで活気を帯びる、[78]からニ短調で弦が緊迫した主題を奏で、その延長の中からvnソロが[90]から始まる、
sc 78
[164]からの重音奏法も引きつける、[206]から柔和な美しさのテーマになり、
sc 206
ちょっとメンデルスゾーン風か?「渋い、武骨、」ばかりではない^^[246]から[78]と同じ主題をvnソロが静寂を破って弾く、以降展開部の聴きどころがソロとorch.に盛り込まれる、[332]からはテクニカルなソロにorch.がポリフォニックに重なるのが魅力だ。
sc 332
カデンツァはブラームスに助言したvn奏者、J.ヨアヒムによるもの。
第二楽章 Adagioはobが主題を開始、これが結構長い、ソロvnは[32]から、主題を装飾的に奏でる、6連符、3連符が絡んだデリケートな味わい。
終楽章 Allegro giocoso,ma non troppo vivace-Poco piu prestoはロンドソナタでハンガリー舞曲にも登場するジプシー音楽風の主題が印象的、vnの力強い重音奏法で始まる、変拍子の要素で変化を聴かせる。

you tubeはツィンマーマン、サヴァリッシュのコンビでN響と共演した演奏があった。
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you tube:Zimmermann plays Brahms Violin Concerto
先日のコヴァセヴィチ:pf協奏曲No.1とともに気に入った1枚となった。

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4月1日

category: ブラームス

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絶対零度より低い温度  

絶対零度という言葉を耳にするが、エネルギーがゼロの状態で、宇宙の温度の下限値でこれ以上、下がりようがないはずだが、もっと低い温度があるという実験報告がある。
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*絶対零度:0 k(ケルビン)=摂氏-273.15 ℃

宇宙のあらゆる方向からビッグバンの名残の電波である宇宙マイクロ波背景放射が観測される、元は超高エネルギーが放った光だったが138億年、宇宙が膨張を続けたため、光の波長が引き延ばされ、今はマイクロ波の波長でやってくる、
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WMAP:宇宙マイクロ波背景放射観測図
黒体放射の法則により、このマイクロ波の波長から温度がわかるが、宇宙背景の温度は2.725 k(摂氏-270.425 ℃)を示している、僅かなムラはあるが宇宙のどの方向にも絶対零度の場所はないことになる、BHの表面など理論上限りなく絶対零度に近い場所はあるらしい、これはBHの事象の地平面では限りなく波長が伸ばされてしまうからだ。

水は液体のときは分子が自由に動ける、摂氏0 ℃以下で氷となって分子は配列するが、個々の原子は振動している(エネルギーがある)その原子の振動も止まったとされる状態が絶対零度になる。しかし、量子統計力学で見ると絶対零度においても原子は不確定性原理のために静止せず零点振動を起こしているそうだ、例えばある一定温度の物質の持つエネルギーを考えた時、そこに含まれる粒子のエネルギーは上下に分布していて、その平均値で何 ℃、と決めているだけだ。

今日の話は非常にややこしいのでだいぶ端折るが^^;自然界に普通に存在する系の*ボルツマン分布では、ほとんどの粒子が低エネルギー状態であり、一部の粒子だけが高エネルギー状態となっている。系の中のすべての粒子のエネルギー準位が最低レベルになるときの温度が絶対零度である。
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(資料: LMU and MPG Munich)
マイナスのケルビン温度では粒子のエネルギー分布が通常とは反対になる。
*ボルツマン分布とは、起伏のある場所にたくさんのビーズを置いた状態に例えられる。
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(資料: LMU and MPG Munich)
通常の世界では、ほとんどのビーズは凹んだ谷の部分に集まり動かなくなる(上図/左)、全てのビーズの状態を合計すると低エネルギー状態になりやすい、これはケルビン温度がプラスとなる通常の系でのボルツマン分布に相当する。
一方、状況が逆になり、ケルビン温度がマイナスとなる系は、丘の上にほとんどビーズが集まって動いている状態で(上図/右)、系全体のエネルギー状態は高エネルギー状態になりやすく、ボルツマン分布が反転していることになる。

ドイツのルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンの物理学者Ulrich Schneider氏らは超低温で気体のカリウムを用い、レーザーと磁場を使って原子を操作、ボルツマン分布の反転状態を作り出し、カリウム原子が絶対零度より十億分の数 k、低い温度になったのを測定するのに成功したそうだ。

以上、やたらややこしくて、まとめるのに疲れた^^;ざっくり言うと温度の世界にもマイナス方向がある、ということか・・?
原子の集団は通常であれば重力によって下に引っ張られるが、絶対零度より低い温度においては重力に逆らって上に上がっていく原子が見られるようになるという、この斥力といえる振る舞いは宇宙を膨張させているダークエネルギーに似ているとのことだ。
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category: 科学・自然・雑学

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C.マッカーリ:M.ジュリアーニ ギター協奏曲No.1  

現代から見て、ベートーヴェン(1770-1827)は同時代の作曲家の中でも一人横綱のような存在で、他はあまり重要視されていない、ベートーヴェンは当時の聴衆がついて行けないほど創作欲を込めた曲を書いたが、他の作曲家達は人々の希望に応えて書いた、そこが分かれ目か、音楽家としての技量は優れていて、ライバルだったJ.N.フンメルもそうだろう、近年は再評価されている一人だ。
同じく後期古典派のギター曲で貢献したF.ソルやM.ジュリアーニ(1781-1829)も同じだったかもしれない。見方を変えればそれぞれの楽器の奏法を発展させた重要な存在だが。 
手持ちのCDで特に聴いてみたいと思えるギター協奏曲が、クラウディオ・マッカーリがギターを弾く、ジュリアーニの協奏曲集だ。過去にペペ・ロメロやイエペスなども録音しているが、古い演奏で、こういう曲こそ歴史の垢を取り払うべきだと思った、当時の楽器でバランスを取った演奏は興味深い、最も充実しているのはNo.1イ長調だろう。
ジュリアーニがウィーンで名声を得た頃、よく共演したJ.N.フンメルと作風は共通していて、orch.はtimpこそないがほぼフル編成、楽曲も大がかりな時代になっていた、
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マウロ・ジュリアーニ ギター協奏曲No.1イ長調op.30
Guitar:Claudio Maddari
Orchestra:ENSENBLE OTTOCENTO
Lerder:Andrea Rognoni

第一楽章は約16分の大曲だ、orch.の前奏部はまずまず立派で聴き応えはある、前奏部の最後はぐっと音量を落とし、ギターのサイズに誘う、
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ギターのソロはギター独特の語法ではなく、クラシック音楽の中核を成す楽器達と共通性を持たせたスタイルで、そこはボッケリーニとは違って面白い、
第二楽章はホ短調のシチリアーノ、この楽章が叙情味があって、一番ギターの魅力が出ているだろうか、
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第三楽章、陽気な主題によるロンド楽章は平穏で、もう少し楽想だけでも引きつける内容がほしいところだ。
F.カルリは短調の協奏曲も書いており、ジュリアーニにも1曲は欲しかった。

ギターはグヮダニーニのオリジナル(1812)だそうでマッカーリはこの楽器の奏者として申し分ない、ほっこりとした響きはピリオドorch.とよく溶け合っている。
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you tube:Mauro Giuliani, Guitar Concerto No.1 played on a Guadagnini guitar (1812)

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category: その他・古典派

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コヴァセヴィチ:ブラームス pf協奏曲No.1  

ブラームスの好きな曲はハマると依存症になってくる;このpf協奏曲No.1もその1つで、これまでに6つの演奏を取り上げたが、これらを再度聴き直すだけでも結構楽しみ、 

一応区切りとして?今日はスティーヴン・コヴァセヴィチpf、W.サヴァリッシュ指揮、ロンドンPOの演奏を挙げる。
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ブラームスpf協奏曲No.1
スティーヴン・コヴァセヴィチ:pf
ウォルフガング・サヴァリッシュ:指揮
ロンドン・フィルハーモニーO

第一楽章、前奏部はレガート気味に悠然とした演奏も、それなりに魅力がでるが、サヴァリッシュの楷書的でキビキビとした演奏は期待どおり引きつける、コヴァセヴィチのpfソロはアゴーギグは控えめでサラサラと入る、粒立ちとキレのよい心地良さ、[157]からのソロは弱奏で大事に聴こうとさせる、
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木管合奏を挟み、[184]から同じテーマを弦の弱奏でしみじみと引きつける。

*余談だが、pfパート、左手が9連符で上が6つだったり、部分的に3連符の表示があったり、聴いていても難しそう;数の違う連符が重なる場合、考えないほうがいいと聞いたことがある;
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[226]から展開部で、pfが加速気味にffで開始、ここからはダイナミックに追い込んでいき、満足な聴き応えv
[438]からpでtimpが叩かれるのに気づいた、細やかに聴かせてくる。
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第二楽章、orch.はひじょうに弱音基調だ、それが一段と荘厳な雰囲気になる、pfも同様、遠く微かに響く、約14分間、聴き手を集中させる、楽章の最後2小節のみ、timpがpで鳴っているのが印象的。
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第三楽章、pfソロで開始するが、けっこう快速なテンポ、コヴァセヴィチの鋭敏な指さばきが見事で細かなパッセージもくっきり小気味良い、サヴァリッシュもスタッカート気味に切り立て、急き立てるように進む、orch.のみのフガートも聴きどころだ、強弱の起伏が深く、じつに引き締まった終楽章。

この演奏のyou tubeはなかったのでお話だけ、
個人の感想としては特にオススメとしたい1枚だ。

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category: ブラームス

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クマムシ (宇宙空間でも死なない)  

宇宙空間に出ても死なない、というので有名なクマムシについて、ちょっと調べてみた。 
キチン質で節の境目もはっきりしない外皮はこの写真では一見、宇宙服にも見えるが、べつにそういう機能ではない;
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体長は50μm~1.7mm、地球上の海中、陸上、あらゆる場所に多くの種類が生息している、4対(8本)の脚でゆっくり歩く、「緩歩動物門」という大きな分類に入り、この門はクマムシの仲間以外には無い。
体内の構造は単純で、液状の栄養分を口から取り込み、呼吸は体表で直接行う、排泄物は脱皮のときの外皮にくっついて捨てられる。
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you tube:"たる"に変身 クマムシ Water Bear

クマムシの驚異的な耐性は以下のとおり、
乾燥:体内の水分を3%以下まで減らしても乾眠で耐える、(乾眠:無代謝の休眠状態で活動は停止しているが、蘇生できるので死んではいない、ただし急激な乾燥の場合、乾眠の準備ができず死んでしまう)
温度:151℃の高温から、ほぼ絶対零度(0.0075ケルビン)の極低温まで耐える
気圧: 真空から75,000気圧の高圧まで耐える
放射線 : 高線量の紫外線、X線、ガンマ線等の放射線に耐える

上記のうち、極度の乾燥は地球上でもあり得るが、絶対零度とか真空、高線量の放射線はあり得ない、耐乾燥の能力を持てば、ほかの耐性も同時に成り立つ可能性があるらしい。
クマムシの高い耐性は乾眠、蘇生を繰り返す度に他の生物のDNAも取り込んで有益な能力が残されていったという説もある。過去に話題にしたホウネンエビは「耐久卵」によって乾燥を耐え抜けるが成体は死んでしまう。
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ホウネンエビ

ESAの人工衛星「FOTON-M3」などで乾眠状態のクマムシを宇宙空間に直接さらして回収した後、蘇生させたところ繁殖能力も維持していたそうだ。
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FOTON-M3 ESA

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category: 科学・自然・雑学

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S.ラトル:ブラームス Sym No.2(DVD)  

サイモン・ラトル指揮、BPOのブラームスSym全集を買ったとき、CDにDVDも全曲付いていると知らなかった、CDは3枚に分けられ、DVDは2枚でDVDのほうがおまけのようだ。深夜、DVDを見るときは隣の部屋でカミさんが寝ているので、ヘッドフォンになるが;昨夜DVDのほうを初めて見た^^ 
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ブラームス 交響曲第2番ニ長調op.72
サイモン・ラトル指揮
ベルリン・フィルハーモニーO
2008年収録 EMI

先にCDで聴いたときの印象、
LP時代はD.G、EMI、PHILIPS、DECCAなど、レーベルごとに録音技術の個性を感じていて、高域がやけに乾いて聴こえる音盤もあった、2000年以降?あたりからは、個々の録音技術者の技が反映した、潤沢で厚みを帯びた録音がレーベルに関係なく聴けるようで、EMIの当録音も同様、各パートしっかり捕らえた好録音。
ラトルによるブラームス Sym No.2は深い強弱法でしなやかだが、筋肉質な活力もある。
第一楽章の[134]から、cl,horn,va,が奏でるシンコペーションをくっきりと浮かばせ効果を付ける。
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後で映像をみるとラトルは棒を振るのは最小限で、ひたすら音楽の表情を示す動作の所がある。奏でる音楽はカラヤン時代とはだいぶ違うが、BPOの上手すぎる精鋭部隊ぶりは変わっていない;弦は清涼だが肉厚な味わいもある、全パートの演奏の質感が整い、金管も柔らかい立ち上げで安定、高い技術だと思う、orch.が一つの楽器のように感じる、これだけ上手い演奏に文句のつけようはない^^;
ちょうど同じ動画が挙がっていたので、以下ご覧のとおり。
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you tube:Brahms: Symphony No. 2 in D Op.73 - Berliner Philharmoniker - Rattle

緻密に整った演奏ももちろん良いが、一方で良い意味大らかな演奏も好きで、各楽器の天然の味を聴かせ、少々合奏に上手くない所があろうと、一番大事な要素は徹底して聴かせる、そんな演奏にも愛着を覚える。

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category: ブラームス

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アンドロメダ銀河の質量  

我々の隣にあるアンドロメダ銀河は天の川銀河の2~3倍の質量があるというのが定説だったが、星が輝く銀河円盤は大きいものの、質量は天の川銀河と同じくらいかもしれない、という観測結果が発表された。
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アンドロメダ銀河:M31(距離 254±6万光年)
西オーストラリア大学およびオーストラリア・国際電波天文学研究センターのPrajwal Kafle氏らの研究チームはアンドロメダ銀河にある*高速度星の軌道を調べ、その動きからアンドロメダ銀河の重力(質量)を推定した。
結果、天の川銀河と同じくらい(太陽8000億個分の質量)になったそうだ。これまでアンドロメダ銀河のダークマターの量を過大に見積もっていたことになる。アンドロメダ銀河のディスクは大きく拡がっているが、ダークマターを含むハロ領域の規模は天の川銀河と同じくらいかもしれない、また天の川銀河とアンドロメダ銀河は秒速約122kmで接近しつつあり、約40億年後にはディスク本体が衝突すると予測され、両銀河を大きく囲むハロ領域での衝突はすでに始まっているとされたが、結果が正しければ、まだだ、ということに?
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天の川銀河:ハロ領域のイメージ、外側の領域は直径約60万光年で、中心部を含んだダークマターの分布域、内側は球状星団など少ないながら天体があり、電離ガスが囲んでいる。

*高速度星
天の川銀河の重力を振り切って銀河間に飛び出すには秒速550km以上の速度が必要だが、それを上回る高速度天体がいくつも発見されている、それほどの速度を持つに至った原因としては過去記事「高速度星 」に書いた。
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銀河を飛び出す高速度星

両銀河の衝突合体シミュレーション動画も作られていた(最終的に楕円銀河となる)が、今回わかった質量関係で大幅に修正することになりそうだ。
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新しいシミュレーション動画:Andromeda and the Milky Way Collide!
(資料:Chris power (ICRAR-UWA), Alex Hobbs (ETH Zurich), Justin Reid (University of Surrey), Dave Cole (University of Central Lancashire) and the Theoretical Astrophysics Group at the University of Leicester / Pete Wheeler, ICRAR)

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category: 宇宙・天体

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O.スウィトナー:ブラームス Sym No.2  

ブラームス続きです、聴きだすと引きずるんです; 

スウィトナー指揮するorch.演奏に親しんでくると、弦、木管、金管、打楽器が各々の天然さをを活かし、以心伝心でorch.の自発性を引き出して進める、"自生"の美しさのように感じる。
全楽器の物腰に統一感を持たせ、すべて意のままに操るカラヤンとは対極の美質に思える。
肩の力の抜けた清潔サウンドにピリっと張り詰めた内面性がある、ブラームスの第2番にはそんな期待がぴたりと嵌る気がする、録音会場の旧東独、キリスト教会の響きと、D.シャルプラッテンの好録音で快適に聴ける。
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ブラームス交響曲第2番ニ長調op.72
オットマール・スウィトナー指揮
シュターツカペレ・ベルリン 1984年録音

第一楽章、Allegro non troppo、
始まりはさすが清々しく、hornが長閑に鳴り、いきなり「田園」を印象づける、vn群は控えめで清涼、vc、vaによる第二主題も滋味を持たせた歌い方、
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木管が奏でる残響音までよく聴こえ、音場に透明感がある。
[218]から出るtrb.とB tub.のペアは特別な存在のようで、このあとも金管らしく生々しく唸る、その分、展開部や再現部でのダイナミズムが効いてくる。
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第二楽章 Adagio non troppo - L'istesso tempo,ma grazioso
は第一楽章の印象に対し、意外に豊かな響きで始める、概ねソナタ形式でこの楽章も各パート間で複雑な綾が組まれ味わい深い、hornに木管が重なるアンサンブルが一際美しい、劇的な展開部~終結もかなりエネルギーを帯びた演奏に引き込まれる。
第三楽章 Allegretto grazioso (Quasi andantino) - Presto ma non assai - Tempo I
A,B,A,B,A形式でobが長閑に始め、hornや他の木管が絡む、Bの Presto ma non assaiがスケルツォ的で、小気味よい。
第四楽章 Allegro con spirito
楽章の手法は交響曲第3番にも似た感じだ、スウィトナーは穏やかに始めるが[23]のfからシフトアップ、ぐいぐい攻め込んでいく、主題の性格でチェンジしながら進める、清潔な響きを崩すことなく、あのフルトヴェングラーにも負けず熱烈に運んでいく、[395]から終結まで思い切った加速で終わる。
ブラームスやシューマンの演奏では第一楽章が控え気味で、終楽章でエネルギッシュになるのはスウィトナーの特徴のように思える。

動画は第一楽章のみ、DMMレコードの再生を見つけた、
sui br sym you tube
you tube:Brahms, Symphony No 2, 1mov, Suitner

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category: ブラームス

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H.グリモー:ブラームス pf協奏曲 No.1   

ブラームスの協奏曲は一度や二度では味わい切れない内容で、最初に親しんだのはvnとvcのための二重協奏曲だった、2番目がpf協奏曲のNo.1で、vn協奏曲とpf協奏曲No.2はまだ聴ききれていない気がする;pf協奏曲No.1は曲が素晴らしいので、最初にE.ギレリスによる剛腱の演奏を聴いて以来、様々な演奏を聴きたくなる。
新しいところで、エレーヌ・グリモー:pf、アンドリス・ネルソンス指揮:バイエルン放送交響楽団のNo.1を聴いてみた。
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H.グリモーはフランス出身でアメリカへ移住、自国の作品にはさほど興味がなく、ドイツ・ロマン派が主なレパートリーだったが、近年は演奏対象を広げているそうだ。
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エレーヌ・グリモー:pf
アンドリス・ネルソンス指揮、
バイエルン放送交響楽団
2012年録音 D.グラモフォン

you tube:Brahms - Piano Concerto No. 1 (Helene Grimaud)

ブラームス pf協奏曲No.1 ニ短調 op.15
第一楽章、まずネルソンス指揮、バイエルン放送響の充実した前奏が気に入ってしまった、爽快な響きで十分な力感を出す、[76]から弦がセンスよくレガート、[79]から金管,timpがくっきり打ち出す対比が良い、対位法的なところに立体感をだす。
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pfソロは柔軟なアゴーギグを伴って始まる、pfが最初に弾くffのトリル[110]だけゆっくりにして力感を入れている、
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全般に詩的な緩急の表現で進める、[157]からのようにorch.が沈黙するソロでは一段とそうだがorch.が伴う部分も息を合わせる、pfと1つのhornが合わせる所もある[211]、
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pfのffで入る展開部では急き立てる感覚を徐々に増していき、清々しさを挟みながら、熱気をもって終結へ運ぶ。
第二楽章、弦の弱奏の涼やかなタッチは現代的、pfソロはより夢想的でppは本当に微かで引きつける、cl.が奏でる音はレクイエムの雰囲気、
終楽章、快活なテンポでソロが開始、鮮やかな切れを聴かせorch.のダイナミズムが量感を加える、ロンドテーマによるorch.のフガートを挟み、再び活気を帯びて終結へと運ぶ。
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D.グラモフォンの録音は潤いがあり、バランスのとれた好録音。

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category: ブラームス

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北欧の古典派:J.M.クラウス  

先般は南欧イタリアからスペインに移ったL.ボッケリーニについて書いた、同じラテン諸国だが、他の諸国とは一風違うエスパーニャな曲を書いていた。 
今日はドイツ出身でスウェーデンに移り、王室付き音楽家になったヨーゼフ・マルティン・クラウス(1756-1792)、モーツァルトと同年生まれである。
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Joseph Martin Kraus(1756-1792)
スウェーデンはスカンジナヴィア半島の西に北上してくるメキシコ湾流のおかげで、緯度の高い地域にありながら、極寒が和らぎ、四季のある気候で、白夜、オーロラの見られるところ、こういう環境に居ると芸術的感性も一風変わってきそうな気がする、
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クラウスの作品もいくつか聴くと、国際趣味だったり、独創性が出ていたり、興味深い、1781年に国王グスタフ3世の宮廷作曲家になり、翌年から4年間、イタリア、ウィーンなどへ音楽修行に出ている。ハイドンの所も訪れ、交響曲を献呈している。

グスタフ3世に捧げられた弦楽四重奏曲は3楽章が多く、2楽章の曲もあり、芸術に造詣の深い国王の希望に叶った作品に違いない、型どおり楽章を揃えて退屈させるより良いと思う。
その1曲、弦楽四重奏曲ニ長調、op.1-4(VB184)の終楽章、とくにこの楽章は印象強い、
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J.M.クラスス四重奏団
you tube:J. M. Kraus - VB 184 - String Quartet Op 1 No. 4 in D major
この情熱を帯びたリズム感覚はどこかラテン的血統に似ている?北欧人だってこれくらい書くよ、って言われりゃそれまでだし、民族音楽にあるかもしれない、しかし標準的でありふれた古典派音楽とは異風のところがやはり面白い。
このほかクラウスはフーガの技法を用いた曲が魅力で、その1つ、弦楽四重奏曲ト短調op.1-3(VB183)
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J.M.クラスス四重奏団
you tube:J. M. Kraus - VB 183 - String Quartet Op 1 No. 3 in G minor
第一楽章は導入部でテーマを予告、このテーマのフーガに入り、テーマは少しずつ変形する、
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中間部らしき部分があり、再び導入を聴かせて再現部か、ここでもフーガに変化を付けて聴かせる、こういうのもインテリ?国王の好みだったかもしれない。
因みにクラウスの師、J.C.キッテル(1732-1809)は大バッハの弟子だった人だ。

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category: J.M.クラウス

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ホグウッド:モーツァルト&ハイドン 協奏交響曲  

C.ホグウッド指揮する(未完の)ハイドン交響曲全集にも入っていなかったHob.I-105だが、バーゼル室内Oを指揮した録音があった、一緒に入ったモーツァルトK.364も興味深い。 
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2006年4月録音(ARTE NOVA)
バーゼル室内Oは演奏作品に応じ、スタイルを変更する、この演奏でも「モダン・ピリオド」で、モダン楽器を用いながら、弦はガット弦、金管&timpは古楽器を使用している、十分に古楽orch.風の印象だが、録音の状態は、あのT.ファイ盤に近い気もする。

まず1曲目に入ったモーツァルト、vn&vaの為の協奏交響曲変ホ長調 K.364が弦楽六重奏に編曲された版による演奏が面白い、
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クリストファー・ホグウッド:指揮  バーゼル室内O
you tube:C.Hogwood W.A. Mozart Grande Sestetto Concertante KV 364
これは当時の無名の編曲者によるもので、モーツァルトの初稿から編曲しているらしい、また原曲ではソロvaの響きをvnと対等にする目的で、通常より半音高く調弦し、楽譜はニ長調で書かれていて、実際の音は変ホ長調になる、
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原曲
という具合だが、この六重奏編曲ではvaは通常の調弦にし、vaのソロパートの多くをvcに移すという方法をとっている、カデンツァもvn、va、vcの3つが弾く。
vnのJ.シュレーダーはじめ、演奏もすばらしいが、これはひょっとして原曲のorch.版より魅力的なのではないか!?
ホグウッドはザロモン編曲によるハイドンの交響曲の室内楽編を初めて録音したように、さすが興味あるところを打ち出してくる。

2曲目がハイドン 協奏交響曲変ロ長調 Hob.I-105
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you tube:C.Hogwood Joseph Haydn Sinfonia Concertante Hob.I:105 (1792).
ユリア・シュレーダー:vn  マティアス・アルター:ob
クリストフ・ダンゲル:vc  トーマス・テューリング:fag
クリストファー・ホグウッド:指揮  バーゼル室内O
 

ここでも古楽器のtrpやtimpの鋭く粗野な響きは心地よい刺激となる、J.シュレーダーのvnが清潔で引き締まった演奏を印象付け、各奏者、装飾も楽しませる、
第二楽章はハイドンならではの温もりの楽章、各ソロの澄み切った音色と節目をつけた感覚で端正にまとまる。
終楽章は幾分快速、orch.の助奏とソロ楽器同士の室内楽的な掛合いが巧みで、さほど長くない楽章にバランス良くソロ楽器を活躍させる。
このHob.I-105の音盤は随分集まってしまったが、このホグウッド盤とC.アバド盤あたりがトップに来るかな、古楽器orch.ではJ.コーエン盤が優れていた。

なお、当盤の最後に近代の作曲家ボスラフ・マルティヌーが書いた、ハイドンへのオマージュ作品と言える協奏交響曲変ロ長調が加えられている。

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category: 古典派

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昭和のCMソング 2  

モノクロTVの頃、画面は本当にフォーカスもコントラストもぼんやりしていた、またラジオやTVの音声も今みたいにクリアじゃなかった、そのボンヤリ加減がほっこりする。 

毎日のように聴いていたCMソングは楠トシエさんが歌ったのが圧倒的に多かったが、たぶん、とても聴こえやすい声の持ち主だったからでは?歌手、女優、声優で大活躍、「ひょっこりひょうたん島」のサンデー先生でもお馴染みだった。
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you tube:ヴィックスドロップCM
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you tube:とんとんトマト 楠トシエ
you tube:38年ハウスバーモントカレーの唄 楠トシエ
kao sekken
you tube:花王石鹸の歌
古い録音からもしっかり聴こえる、

天地総子さんも同様に結構多かった、
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you tube:ロート製薬 初代パンシロン CM 昭和37年 天地総子
you tube:懐かしのCMソング大全②(1959~1966)/サクマのチャオ
CMソングには地方版もあり、当地はこれ、ずーっと長期間聴いている、
you tube:名古屋トヨペットCM

歌手では弘田三枝子さんも多かった
you tube:弘田三枝子さん アスパラで生きぬこう
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you tube:レナウン ワンサカ娘 引田三枝子

清酒「菊正宗」のCM、これは西田佐知子さんの「初めての街で」のCMヴァージョンだった、
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you tube:初めての街で 西田佐知子(CMバージョン)
ノンヴィブラートにさらりと入る小節がいいv

PS.もちろん、すべて昭和は良かったとは思わない、古い因習が消えてきた今だからこそ、快適に過ごせるところも多く、一長一短だろうv

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category: 昭和の記憶

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バレンボイム:ブラームス pf協奏曲 No.1(DVD)  

自分としては珍しい買い物?で、バレンボイムのpfとチェリビダッケ指揮によるブラームス pf協奏曲のDVDを思わず取り寄せた、 
チェリビダッケは厳しいリハーサルで、通し稽古も納得いくまで普通の3倍行うと言われるが、「ソリストがバレンボイムだと妙に解釈がソリスト任せになり、スコアをめくり間違えるほど不勉強なコンサートもビデオに残されている(wikipedia)」とあるがこのDVDのことか?それらしき所はわからない;pfは場内に響く音がよく入っている。
b br pf con1 03
ダニエル・バレンボイム pf
セルジュ・チェリビダッケ 指揮
ミュンヘン・フォルハーモニーO

b br pf con 3
you tube:Brahms Piano Concerto No 1 - Barenboim, Celibidache, 1991
ピアノ協奏曲第1番ニ短調 op.15
第一楽章 Maestoso、チェリビダッケによる前奏は悠然と力を抜いたレガートタッチ、[76]からがひじょうに好きなところ、
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pfが始める第二主題[91~]の前ぶれにも思えるが威風堂々と聴かせる、
バレンボイムは要所でじっと指揮者に目を向ける、「御老体、オレの指示どおり振ってるか、」みたいな目配りに錯覚してしまう^^
pfソロの入りもフワっとデリケート、弱奏ぎみにじっくりアゴーギグで引きつける、
pf 01
展開部に入るとぐっと覇気を帯び、orch.の総奏をpfが再現する部分など、上体の重みを鍵盤に下ろし、pfの技巧も白熱してくるが、Maestosoの落ち着いた感覚も持たせながら、終結までじりじり運んで行く、この楽章を終えて汗びっしょり、
第二楽章、Adagio 亡くなったR.シューマンへの哀悼が込められているとも伝わる、orch.の弦の低音、pfソロも深い安らぎがあり、木管で哀愁を聴かせる、中間部では情熱を帯びる。
終楽章 Rondo: Allegro non troppoはロンド形式の最もpfコンチェルトらしい楽章でpfソロで快活に始まる、バレンボイムは比較的快速に切れ味で聴かせる熱演だ。
[238~274]でorch.によるやや複雑なフガートが挟まれ、ブラームスらしい聴きどころ、短く行進曲風な部分があり、終結へ繋ぐ。

DVDはTVにヘッドフォンを繋いで聴いている、今、最も耳に馴染んでいるのはSONYのMDR-7502で耳を覆わないタイプがいい。
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ご覧いただき、ありがとうございました。

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category: ブラームス

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フルトヴェングラー:ブラームス Sym No.2('52)  

ブラームスの「田園交響曲」とされるsym No.2、この曲でもフルトヴェングラーには熱気あふれる演奏を期待してしまう。 
1945年、スイスに亡命する前日にVPOを指揮した録音は鬼気迫るものだったが、手元にあるのは1952年のBPOとのライブ録音、こちらも内容はさほど劣らず、録音状態も良い。
w f br sym2 01
ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮
ベルリン・フィルハーモニーO 1952年 EMI

w f br sym2
you tube:ブラームス: 交響曲 第2番 ニ長調 作品73 フルトヴェングラー / ベルリン・フィル 1952
第一楽章の開始は大らか、[54]のcresc.からぐっと熱気を発し、期待に応える、
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vcとvaで登場する第二主題[82~]も深々と温もりを聴かせる、
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ダイナミズムでのtimpの爆音、trpの劈くほどの響きは不可欠の運びとなる、展開部での対位法部分は弦が威厳を帯び、続いてトロンボーン、バスチューバが轟々と唸る、終結部はとって置きのエネルギー感だ。
第二楽章はまさにロマンティックな時代の表情、弦楽と柔らかなhornの味わいがよい、しかしcb.など低音は凄みをもって出る、この楽章もダイナミックな部分は痛快、
第三楽章、A,B,A,B,Aの構成でAllegretto graziosoがobにより平穏に始まり、弦が深々と聴かせる、Presto ma non assaiは急き立てる切れ味。
終楽章、弱奏の導入部に続き、とびきりの爆奏に突入、熱気を冷まして第2波攻撃に備える、繰り返したのち、終結部はすべてを制圧して閉じる。

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category: ブラームス

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シュトローヴァイオリン  

レコードの原点に遡ると面白いものが出てくる、 
蓄音機で聴くSP盤も初期の頃は電気を使ったマイクロフォンが無く、蓄音機の仕組みを逆方向に利用するアコースティックな方法で録音(カッティング)していた。当時は奏者が何人であろうと全員がこの集音ラッパの前に集まり、吹き込んでいた、打楽器などは後ろにさがり、音の弱い楽器は別の楽器で補強したりしたそうで、オーケストラの録音も行われた!
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壁を隔てた別室で録音(カッティング)している
録音機能に楽器や奏者が歩み寄るしかなかった。

シュトローヴァイオリンという、ラッパ管の付いたヴァイオリンがあるが、この時代の副産物らしい、こういう音を狙って単独に作られた楽器か、と思い込んでいたが;
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Stroh Violin *小さいラッパは奏者自身が聴きやすくするため
蓄音機の機能をヴァイオリンにくっつけたようなもので、駒で受けた振動が金属の鼓面に伝わり、それをラッパ管で拡声する仕掛けで、音が一方向に集中するので、前述のアコースティックな録音法で音が受けやすい。つまり当時は録音の場合のみ、普通のvnに代わってこれが弾かれていたそうだ。電気を使ったマイクロフォンや増幅装置が出来てからは普通の楽器で、奏者も普通の配置で録音できるようになった。

シュトローvnはその後も面白さからマニアックな楽器?として存続しているようだ。
普通のvnとは風情がだいぶ違い、中国の二胡と勘違いしたりする(部分的には構造が似ている、木のボディではなく小さな鼓面を鳴らすところ)、G線はふっくらしない;
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you tube:Polske on stroh violin
このスウェーデン民謡にも音が合っている気がする。

PS.シュトローチェロ、ヴィオラもある、
Stroh cello
Stroh cello

PS.アルトゥル・ニキシュ指揮によるSP録音
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you tube:Arthur Nikisch cond. Mozart: Le Nozze di Figaro - Overture(1914)
you tube:Arthur Nikisch cond. Weber: Der Freischtz - Overture
「録音音楽」という独自性は今も変わらないかもしれない;

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category: 楽器について

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訃報:S.ホーキング博士 <追記あり>  

「車椅子の天才物理学者」と呼ばれ、宇宙物理学を先導してきた、スティーヴン・ホーキング博士が3月14日、亡くなったと報じられた(享年76)。
21歳で筋萎縮性側索硬化症と診断された後も宇宙の謎に迫り、我々の「知りたい」と思う欲求を満たしてくれた重要な一人でした。謹んで哀悼の意を表します。
s h
2015年7月、NASAの探査機「ニューホライズンズ」の冥王星接近飛行の成功を祝うホーキング博士
you tube:Professor Stephen Hawking Congratulates the NASA New Horizons Team

最も興味深かったのは「宇宙の始まり」について理論で迫ったことだ。
それまでA.アインシュタインの一般相対性理論によると宇宙の始まりは、エネルギーも密度も無限大の特異点というのが現われ、無限大では全ての物理の計算が破綻してしまい、先に進めない、ホーキング博士をはじめ物理学者は一般相対性理論に量子力学を取り入れ、宇宙誕生時の超ミクロな状態に迫った。
宇宙は無の揺らぎから生まれた、量子力学を取り入れた宇宙の始まりにはトンネル効果と関連する虚数時間が導入され、特異点という特別な瞬間が無くなり、「宇宙の始まりはほかの時期と区別されない」という方向に導いた、円錐の先に尖った一点はなく、球面のように丸まったイメージだ。
*虚数(i=√-1で2乗すると-1になる)
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Newton:1999年1月号 72,73ページ

重力でなにも逃がさないと思っていたブラックホールも量子効果でやがて蒸発して消滅する、というのも不思議だったが、永遠に存在するものはないという観点からは自然に思える。
過去へのタイムトラベルは不可能、というのは理論はともかく、何だかわかる気がする。
こうした話に書物や科学番組でいろいろ接してきた。
虚数時間など想像のしようがないし;イメージは描けず、数式の世界だけで説明される、というところ、本当にわからないが、およその筋立てと結論には興味が湧く。
博士は身体の自由を失った分、全エネルギーを頭脳に向けていたのだろうか、現代物理学のトップであり続けたのは凄いことだと思う。

追記:ホーキング博士の誕生日(1942年1月8日)はガリレオ・ガリレイの忌日(1642年1月8日)からちょうど300年、また忌日(3月14日)はA.アインシュタインの誕生日(1879年3月14日)と一致する、人間の作った暦上のことだが、科学では説明のできない、何かの力が働いているのかも?

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category: 科学・自然・雑学

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DMMカッティングのLP  

アナログ盤時代にも音質向上のため様々な技術が開発され、振り返ってみると面白い。
その1つにDMM(ダイレクト メタル マスタリング)というのがあり、手持ち盤に2枚あった、
通常のレコード盤の製造法はざっと以下のような行程で、ラッカー盤からスタンパーまで凹面,凸面・・とメッキ加工で転写され、スタンパーでプレスしてレコード盤が出来上がる。

マスター音源(磁気テープ等)
  ↓カッティング
ラッカー盤マスター盤マザー盤スタンパーレコード

柔らかいラッカー盤から、硬い金属のスタンパーへと転写されるところ、DMMはマザー盤(銅盤)に直接カッティングする方法で、前の行程が2つ省かれ、転写の繰り返しによる情報劣化が少ないとのことだが、音質を良くする一要素だろう、総合的に良くないと意味はない。
TELDEC-DMM.jpg
テルデックのDMMカッターマシン
不思議に思うのは、よくこの旋盤加工にも似た方法でppのデリケートな音楽まで記録できるもんだ、とか、カッターマシンのカッター針が盤面を彫っていく際に多少なりとも切削音が発生する?と思うのだが、あくまで音溝に反映するのは"録音された音"のみで切削音は入らない、また再生時にも塩化ビニル盤の無音部分は本当に滑らかでノイズの支障なし、という都合の良さ^^発明が良かったのか技術が凄いのか?
重量300トン前後もの旅客機が空を飛べるってのも都合良すぎてウソみたいだが現実だ;

最近取り寄せた、ハイドンsym No.94&101のドラティ盤がDMMだった、
dmm 01dmm 02
DECCA
意外だったのはA面のNo.94「驚愕」がすいぶん細溝のカッティングで内側がだいぶ余っている、普通こういうカッティングは中低域の痩せた薄っぺらなバランスにされているが、このLPはボリュームを高めにすると、HiFiバランスで十分厚みをもった音が再生される、歪みも押さえられ、DMMならではのカッティングに思える、*クリーニングはしっかりやる必要がある;

もう1枚、O.スウィトナーのシューベルトsym No.5 &「未完成」のLP、
dmm 03dmm 04
エテルナ(D.シャルプラッテン)
これはデジタル音源で同録音がDENONからもPCM録音のLPとしても出ているが、それをDMM方式でアナログ盤に仕上げているのが興味深い、確かに針を下ろせば最上の逸品だ。

アナログ盤は同じマスター音源からカッティングし直された盤が出ていて、その度にエンジニアの技が反映して面白い、スタンパーはプレスのたびに劣化するので、出来たてのスタンパーでプレスされたものが良い。と言っても選べないが;

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category: 音響機器

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カラヤン:ブラームス sym No.2('83)  

カラヤンはブラームスsymもD.グラモフォンに60年代、70年代、80年代の録音があるが、sym No.2で手元にあるのは最後の録音のみ。 無料に等しいお値段で、無傷の美品が入った^^;
h k br sym2
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ベルリン・フィルハーモニーO
1983年 D.グラモフォン

you tube:Brahms: Symphony No. 2 conducted by Karajan and BPO (HD)
弦楽に厚みはあるが柔軟な感覚なのがベームとは異なる。カラヤン独自のorch.奏法と言うべきか、弦五部は厚みを持ちながら、しなやかな身のこなし、その弦楽の語り口に管もぴたり質感を合わせたようだ、低音楽器は音が遅延するので、早いタイミングで出るように指示されていると聞く、orch.がカラヤンの"独奏楽器"のように感じる。
そんな感じで第一楽章、レガート基調で湧き上がるようなサウンドはある種魅力でもあるが、今は少ないタイプの演奏かも。
第二楽章、始まりから弦楽の深いヴィブラートでふんわり膨らみがつき、かなり量感をもたらす、vcを中心としたレガートな響き、hornや木管も同化した奏で方だ。金管、timpが入る終結部はスケール大きく聴かせる。
第三楽章、Allegretto graziosoで始まり、Presto ma non assaiになるスケルツォの量感を持たせ快活なところは心地よい、スケルツォの終り[101~105]でTempo primoに戻るのをobやfag、hornが予告する書き方が面白い。
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終楽章はやや快速、厚みのある良い意味でやや武骨な響きだが、ここでは敏腕な合奏が効いて、[142]からの弾むようなところでさえずっしり量感を付けるが、歯切れ良く心地よい。
sc01 b

参考:過去録音
h k br sym2 78
you tube:交響曲 第2番 ニ長調 Op.73 カラヤン BPO(1977,78)
you tube:交響曲 第2番 ニ長調 Op.73 カラヤン BPO(1963)

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category: ブラームス

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新案:スターショット計画  

当ブログでも何度か話題にした、ブレイクスルー・スターショット計画だが、当初の案はソーラーセイル探査機を地上に設置したレーザー光線発射台からレーザーを当てて加速させ、目標の恒星系へ送るというものだが、 
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ソーラーセイル(NASA)
目標へ接近しても減速する手段がなく、超高速で通り過ぎながら観測するだけ(ボイジャー1、2号やニューホライズンズもそうだった)、しかも光速の20%の速度なので、観測時間はほんの数分しかないという、これで有益なデータが得られるのか?

独:マックス・プランク太陽系研究所のミヒャエル・ヒプケ氏らは別の方法を提唱している、まずレーザー光発射台などは作らず、001_20180313120659ab8.jpg
太陽の光を利用し、できるだけ加速して星間飛行させるというものだ。ただしサッカー場14面分ほどのセイルが必要となり、速度は当初案の1/5になる(ここらが難点となるが)。
目標はアルファ・ケンタウリA,B、又はプロキシマ・ケンタウリになるが、アルファ・ケンタウリA,Bは太陽と同じくらいの大きさで、接近とともにこれらの光をセイルに受けて減速することができる、
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左上:アルファ・ケンタウリA、右:アルファ・ケンタウリB、左下(赤丸):プロキシマ・ケンタウリ、肉眼では1つの星に見えるが3連星
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太陽、アルファ・ケンタウリ系のサイズ比較
その後、アルファ・ケンタウリ系を周回する軌道に入り、じっくり探査するか、あるいは減速後プロキシマ・ケンタウリに向かわせてもよいが、減速しているのでこの移動には時間がかかる、試算ではアルファ・ケンタウリ系まで行くのに約95年、プロキシマ・ケンタウリに着くのに46年かかるらしい、結果を受け取るのは子孫の代になる;
なお、当初案の方法で複数機送り出して、"数"でデータを補うという方法も考えられている、複数の望遠鏡をシンクロさせて解像度(データ量)を上げるのと同じ原理。

人の一生のうちに結果がわかる(かもしれない)当初案と、じっくり次世代へと進める新案とどちらが良いか?まず大まかに恒星周辺の様子を探るには当初案か、
どっちにしても他に難題が多々ある、まず、恒星間の飛行中にも高エネルギーの銀河宇宙線や微粒子との衝突によるダメージはどれほどなのか(セイルは多少穴があいても支障ないらしい)、探査機の微妙な軌道制御は可能なのか、プロキシマ・ケンタウリでは激しいフレアを起こすようなので、どこまで接近できるのか、まだ大まかな空想の段階に思える。

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category: 宇宙・天体

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一番近い星の巨大フレア <追記あり>  

地球に一番近いのでお馴染みのプロキシマ・ケンタウリ(4.2光年)は赤色矮星だが、地球サイズの惑星があり、距離だけ考えれば水が液体である可能性も考えられた。しかし、このような赤色矮星は大規模な*フレア(表面爆発)が起きやすいことが別の赤色矮星で観測されていた。このフレアには強力なX線が含まれる、御来光を拝むなんて呑気な状況じゃなさそう; 
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米・カーネギー研究所のMeredith A. MacGregor氏らはアルマ望遠鏡の観測データから、2017年3月24日にプロキシマケンタウリで巨大フレアが起こっていたことを発見した、2017年1月から3月の間の計10時間ほどのデータに約2分間、フレアが起きていた。電磁波の強度は太陽の最大フレアより10倍も強く、しかも惑星は太陽と地球の20分の1の距離を廻っている。この惑星が受ける放射線量は地球の4000倍になるという。惑星に大気や水が過去にあったとしても、完全に蒸発していると考えられる。
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プロキシマケンタウリのフレアの明るさ変化のグラフ、最も大きなフレア(赤)、それに先立つ小さなフレア(オレンジ)、それぞれのフレア後の残光(青)(資料:Meredith MacGregor, Carnegie)

赤色矮星を廻る惑星は見つけやすく、ケプラー宇宙望遠鏡が多く発見していて、地球外生命の探査で有力視されてきたが、見直しが必要かもしれない、少なくともプロキシマ・ケンタウリは望み薄か、
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ブレイクスルー・スターショット計画の目標をここにしてもフレアが起きれば探査機はひとたまりもないのでは;?これに関しては後日、別記事で。

*フレアとは、強力な磁場を持つ恒星の大気層で磁力線が輪ゴムのようにはじけた時に起こる爆発現象だ、赤色矮星は、質量(重力)が小さく低温の主系列星で、高温ガスの深い対流により強い磁場ができ、比較的若い星はフレアが発生しやすいと考えられている、
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太陽の黒点(温度が低い部分)は小さなものだが、赤色矮星ではこれに該当する暗い領域が広くなるらしい、その領域の変化で明るさが変わり変光を起こす。

追記:我々の太陽は大気の対流が浅いので、大規模なフレアは起きにくいが、
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それでも放射線の影響は強い、幸い地球は磁気圏を持っているのでこれがバリアーの役割をして壊滅的被害から守っている、
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you tube:地球を守るバリア-地球磁気圏
you tube:躍動する磁気圏 磁場から宇宙の謎にせまる

しかし僅かに放射線は侵入してきて、これが生命の突然変異→進化には必要だった。

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category: 宇宙・天体

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K.ベーム:ブラームス Sym No.2  

ブラームスは第1番の作曲に21年の期間を要したのに対し、第2番は4か月と短期間に書かれている、準備はもっと前からされていたという説もあるが、「第1番」という大仕事を済ませた、ゆとりの中からできたような、穏やかな牧歌的な始まりは対照的な魅力がある。
まずはK.ベーム盤を聴く、この曲でもベームは楷書的で、音の線一本ずつに芯が通った感覚、
boh br sym2
カール・ベーム指揮、ウィーン・フィルハーモニーO.
you tube:Brahms : Symphony No. 2 in D Major, Op. 73 / Karl Bohm & Vienna Philharmonic Orchestra 1975
第一楽章はhornにふさわしい第一主題が始まり木管が続く、
br sym2 00
弱音は極端に小さくせず明確にする、好きなのが[82]から出る、やや憂いをもつ第二主題、
br sym2 01a
ここはvaの3度上をvcが弾いている、vcの高域のほうが豊かに響くからだろうか。第二主題は後で長調に転じて出てくるが「ブラームスの子守歌」に近い旋律だ、[118]からの付点は穏やかな流れを引き締め心地よい、
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ここでtimpが入ってもよさそうだが、ここでは使える音がない(再現部では入る)。
展開部は対位法でさすがに聴き応えあり、[246]からffでtrb.とtub.が交互に第一主題を吹くのが目立つが、
br sym2 02
次でoct.下がる動きになり、意外な様相に変わる。
第二楽章は自由なソナタ形式、後半にはダイナミックな山場が置かれている、timpの用い方が弱奏部でも効果的でデリケート、こうした用い方はハイドンのSymの頃からよく見られる。
第三楽章、Allegretto graziosoとPresto ma non assaiのスケルツォが交互に現われる形式。
終楽章は静かな始まりだが、躍動する楽しさが、あの手この手と駆使して書かれている、ベームの演奏は引き締めると同時にけっこうエネルギッシュだ、sym No.3終楽章でも同様の印象があった、しかしNo.2は歓喜に湧いて終結する。

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category: ブラームス

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O.スウィトナー:ブラームス Sym No.1(ライヴ)  

以前も取り上げたO.スウィトナーのライヴCDだが、セッションとは明らかに違う白熱した演奏で、ブラームスsym No.1のベスト盤の1つとしている。 
sui br sym 1a
オットマール・スウィトナー指揮、シュターツカペレ・ベルリン 音源:NHK
1988年、O.スウィトナーがSKBを率いての最後の来日時、サントリーホールでのライブ録音、この1か月前には同ホールでカラヤン&BPOが最後の来日演奏をしたばかり、同じブラームス1番を演奏している(こちらもNHKによる録音がDGから出ている)、(旧)東西ドイツのまったく個性の違う巨匠のライヴを聴くのも興味深い。
スウィトナーは1986年にD.シャルプラッテンにブラームス交響曲の全曲録音をしていて、この演奏が基盤に思えるが、
sui br sym 1 s
D.シャルプラッテン盤
これがライヴのほうは尋常ではない熱気で流動変化したような演奏になっている。
同演奏がyou tubeに上がっていた。(動画あり)はこま切れなのがちょっと面倒;
sui br sym1 d
you tube:(動画なし)
ブラームス/交響曲第1番/全楽章
you tube:(動画あり)
第1楽章(Part1)  第1楽章(Part2)
第2楽章
第3楽章
第4楽章(Part1) 第4楽章(Part2)

第一楽章、序奏は意気込まずさらりと入り、徐々に熱気を高める、主部はじっくりテンポ、弦楽は清涼な音を保ち、低音部はしっかり、timpのffは強力、休符の溜めを効かせ、決めどころはびしっと締める、展開部[293]からコントラfagがppで唸るような半音階を始める、
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ここはじわりとテンポを落とし、頂点の[321]からはtimpの強打とともに熱烈、終結まで見事に引きつける。
第二楽章、熱気をさますように弦、木管それぞれが清涼かつ深みを帯びた美音を聴かせる。
第三楽章からがセッション録音とは随分様子が違う、意外に速いテンポで、終楽章の前口上のように急き立てる、じっくりritしてこの楽章を終り、かなり時間を置いて終楽章を開始、
終楽章、無から立ち上げ、timpの強烈な連打へ導くのがまず凄い、序奏部の60小節までは気合いのこもった切り立った演奏、そして61小節からのアレグロ・ノン・トロッポ、
br sym1 4rs 01
ここは一際ゆっくり、しみじみ、弦から管へ引き継ぐにつれ加速していき、94小節からの総奏ffで一気にアクセルを踏み込む、この切り替えに驚く、
br sym1 4rs 04
[185]でふたたびアレグロ・ノン・トロッポに戻ると前以上にじっくり歌い、同様の表現を強める。展開部でポリフォニックな部分を整然と聴かせ、[285]のブラス群の高鳴りが極めて透明かつ鋭い。終結の間合いの溜め方も予感どおり、最後まで白熱の演奏が続き、いつも理性で控えていた熱気がこの日は解放されたかのように思わせる名演だ。

因みにカラヤン&BPOの同ホールでのライヴもDGのセッション録音よりテンポはゆっくり、ひときわ重厚な演奏だった。

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category: ブラームス

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宇宙最初の星:初観測  

宇宙初期のことをざっとおさらいすると、ビッグバンで誕生した宇宙は膨張とともに温度が下がり、一旦真っ暗闇となった(暗黒時代)、 ビッグバン後の物質は殆ど水素とヘリウムだったが、物質分布の僅かなムラが起因となって、局所的に重力で集まってきた、これにはダークマターの重力も必要とする。
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質量が増して中心で核融合が始まり、初代の星が生まれ、宇宙に最初の明かりを灯した。
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2月28日、米アリゾナ州立大学などの天文学者チームは宇宙誕生後、最初に生まれた星々に由来する電波の証拠を初めて捉えたと発表し、科学誌natureにも掲載された。
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(資料:N.R.Fuller, National Science Foundation)
宇宙最初の星を光学望遠鏡で見るのは遠すぎて不可能であり、その星々が発した紫外線が宇宙マイクロ波背景放射(CMB)に与える変化を検出する方法で、ファーストスターの間接的証拠を探していた。
水素原子は波長21cmの電波を吸収・放出する性質を持つ、宇宙最初の恒星が生まれ、暗黒時代の宇宙を満たしていた中性水素ガスが星からの紫外線を受けると、その影響で水素原子の特性が変わり、21cm線を放出するよりも、吸収する傾向が強くなる。そのため、CMBの電波強度を精密に観測すると、21cm線の吸収の跡がシルエットで現れる、今回はこの検出に成功した。この検出は地上の電波や天の川銀河からの電波など、圧倒的に強いノイズの中から見つけるという、技術的な困難があったそうだ。また、吸収が現われる周波数範囲から、最初の恒星が生まれたのは宇宙誕生から1億8000万年後であることも導かれる。

まだ暫定的な所見らしいが、追加観測や検証によりこれが正しければ、重力波の初観測にも匹敵する最大級の発見となる。また、新たにわかったこととして、初期宇宙の温度が-270℃と今までの推定より2倍も低かったことが判明した。
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ファーストスター:想像図(資料:N.R.Fuller, National Science Foundation)

一昨日の「最も遠い超新星」の話とも関連づいてくるかもしれない、宇宙初期の星は殆どが水素、ヘリウムといった軽い元素で作られ、太陽数百個分の大質量星だったと考えられる(恒星の分類では種族Ⅲとされる)。当然、星の寿命は数百万年ほどと短く、宇宙で最大規模の超新星爆発が考えられる、このとき出来た超大質量BHがその後、殆どの銀河の中心に鎮座するBHの元となったという説もある。また初期宇宙は温度が高かったと考えられていたが、それでは恒星を作る物質は動きが速く、纏まり難くかったはず、という矛盾も上述のとおり、予想外に低温だったことで解決されるかもしれない。

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category: 宇宙・天体

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ドホナーニ:ドヴォルザーク Sym No.8  

ドヴォルザークのsym No.8は民族音楽的な屈託のない旋法を用い、orch.を魅力的に鳴らす、曲の進行も快調とあって、人気の高い曲だ、アメリカに渡ってからのNo.9「新世界より」に対し、チェコ時代に書かれた重要な作品になる。
ブラームスが弦楽の中低音域の渋い響きを好んで使うのに対し、ドヴォルザークのオーケストレーションは高域をよく使い華やかで、ブラスの輝き、木管の色使いが印象強い。
手元のCDはいくつかあるがC.von.ドホナーニとクリーブランドOの録音が特に好みでオーディオ的にも満足、これより前に聴いた音盤より、刷り込みになっている。
dvo sym 8 doh
クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮、クリーヴランドO
1984年 DECCA

you tube:Antonin Dvo?ak, Symphony No. 8 in G major, Op. 88
全般に程よく快速で、あまり粘った表現なく、自然の慣性に乗ったような進め方が曲にふさわしく心地よい、録音は滑らかで音場も鮮明、帯域バランスも良く、trpはじめブラスの澄んだサウンドが心地よい、
興味深いのは終楽章の変奏形式で、ブラームスのsym No.4を参考にしたと言われる、あくまで初めの主題に基づいて変奏されるのだが、多彩に様変わりしていくのが面白い、ここではトルコの軍楽調に変化(へんげ)する、
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category: ドヴォルザーク

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最も遠い超新星  

2月20日、英・ポーツマス大学、研究チームの発表によると、観測された中で最も遠い超新星を捉えたそうだ。 チリのセロ・トロロ汎米天文台で行われているプロジェクト、ダークエネルギーサーベイ(DES)で2016年8月に得られた観測データから、ろ座の方向に超新星DES16C2nmを発見した、
DES16C2nm 01
DES16C2nm 02
超新星DES16C2nm(上)爆発前(2015年9月15日)、(下)爆発後(2016年9月29日)(資料:Mat Smith and DES collaboration)
同年10月にVLTなどで分光観測を行ったところ、赤方偏移(Z)が1.998であるとわかった。ハッブル定数で距離計算すると約105億光年、すなわち105億年前に起きた超新星爆発になる、
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*ハッブル定数(H)の設定により結果は変わるが、スピッツァー宇宙望遠鏡で求められた、H=74.3km/s/Mpcを用いると105億光年になる、先日の最新:宇宙の「ものさし」で書いた数値H=73.45km/s/Mpcを入れると106億光年、宇宙マイクロ波背景放射に基づく数値H=66.93km/s/Mpcを入れると117億光年になった。

またスペクトルから、これは超高輝度超新星(superluminous supernova; SLSN)という稀なタイプで、この桁違いの明るさは通常の超新星の10~100倍になる、この現象の原因として、「大質量星が一生を終え超新星爆発を起こすと、中性子星が残り、その出来たての中性子星に向かって物質が落ち込むことで非常に明るく輝く」と解説されているが、過去には「高速で回転する超大質量BHに恒星が激しく破壊された際の光」とか、「爆発前に既に周囲にあった大量のガスと超新星爆発の噴出物が衝突して生じる光」などの話を取り上げたが、どのようなプロセスの爆発かまだ解明されていない。
また、SLSNが放射する紫外線を分析すると、爆発で作られた金属元素の量や爆発温度がわかり、解明の手がかりになるそうだ。
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ざっと考えて、これほどの光りを放つ現象には、宇宙の初期に作られた超大質量BHなど、極大の重力が関係するだろう。

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category: 宇宙・天体

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スメタナSQ:シューベルト《死と乙女》  

一昨日の「清水ミチコが面白い」という話題ならランキング・サイトのけっこう上に居させてもらえるようですが^^めげずに今日もクラシックです; 

スメタナ弦楽四重奏団のシューベルト「死と乙女」、ライヴだが、いつものPCM好録音。
smetana sq sc
1978年、岐阜市民会館
昔、弦楽四重奏なる地味そうな楽曲に親しむきっかけとなったのが「死と乙女」だった、ハイドンのSQなど聴いたのはもっと後になる。
スメタナSQは気負い過ぎず引き締め、作品そのものを純度高く聴かせるようでこれまたいい、
第一楽章は"運命的"動機があり、休符で緊迫させるが、[41]で再び現われたあと、vn1~vaで緊迫が具現化されゾクゾク来る、続くvcも、ここだけで最初、嵌まってしまった。
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第二主題はおだやかに対比を作る、展開部も深みがあり、コーダでは一度活力を見せ、沈むように終わる。
第二楽章はシューベルトの歌曲「死と乙女」の伴奏を主題とした6つ変奏、各変奏の非凡さが引きつけていく。
スケルツォは短いが切分音の主題が多声的に絡み、充実した楽章だ、
終楽章はタランテラ風の意外なリズムを持つロンド・ソナタ、プレストでこの楽章も切れ味をもち、多声的な聴きどころ十分、vaやvcの活躍も凄みを持って迫ってくる。

スメタナSQの動画はなかったが、1964年、W.ボスコフスキーほかVPOメンバーによるSQを挙げる、VPOのトップ奏者らしい、しなやかな音づくりで引き締まった好演に思える。
Death and the Maiden vpo sq
you tube:Franz SCHUBERT: String quartet in D-, D810 "Death and the Maiden" (1964)
VIENNA PHILHARMONIC STRING QUARTET

G.マーラー編曲による、弦楽orch.版もある、
death and maide arr
you tube:Schubert Death and the Maiden Quartett for Strings
スコア表示あり
はたして、これが良いのかどうか?絶対音量のダイナミック効果は出るが、SQののほうがぐっと集中させる、力を感じるのだが。

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category: シューベルト

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D.ジンマン:ベートーヴェン sym No.8  

C.ジンマン指揮、ベートーヴェンの続きです。
第7番の姉妹作品だが、ベートーヴェンは8番を「小さいほう」と呼び、愛着があったらしい。じっくりドラマティックに進む《英雄》に対し、切り替えの思い切りよく、聴きどころが凝縮されたのが8番の魅力、簡潔だが両端楽章は展開部以後が充実している。
例によってジンマンの演奏は各パートはくっきり聴こえ、快速な中で精密に整っている心地良さは例がないほど。全演奏時間は22:55という速さで終える。
zin be sym 8
you tube:ベートーヴェン:交響曲第8番 ヘ長調 Op. 93 / デヴィッド・ジンマン指揮 チューリヒ・トーンハレ管弦楽団 1997年12月
第一楽章では[12]からvn2、vaの切分音が粒立って押し出す快速感が良い、
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[70]から付点の頭を強く、後を余韻にする、
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展開部の[218]からhornがバスと掛合いになっているのにこの演奏で気づいた。
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第二楽章は聴き慣れたテンポだ、もともと4分ほどの短い楽章だが、強弱と音の粒立てが効いて活気がある。
第三楽章、Tempo di Menuettoで必ずしも「メヌエット」ではないが、トリオがあるのでその位置づけだろう、3拍子が強調されず、雄大な流れがある、やや速めだがゆったり感じる。トリオはhornのとclの掛合いだが、[47]からはvcをソロにするアイデアが効いている。
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終楽章は快速、第一楽章同様、かっちり決める。
これも新鮮な楽しみ一杯の演奏だ。

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category: ベートーヴェン

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清水ミチコが面白い 4  

しばらくぶりに検索すると清水ミっちゃんの新しい動画が挙がっていて楽しんでしまった^^
彼女はレパートリーの多さ、それぞれの上手さ、さらに本家風の「勝手な新曲」まで作ってしまえるのが群を抜いた存在。

ギタリスト、渡辺香津美の一流の伴奏が入り、これは"本家"に負けない聴き映えでは^^
オマージュ又はリスペクトの極みだろう、
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you tube:清水ミチコ 渡辺香津美 春よこい / ユーミン
歌のあとでミっちゃんが言っている「ツカミ」が大事ということ、共感した。出だしが良いといつも練習している良い状態が引っ張り出せる気がする(極々僅かな経験から^^;)もちろん稽古不足ではあり得ないが;

こちらは本元のユーミン、
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you tube:春よ来い 松任谷由実

同じ人の真似でも、やる度に切り口を変えてくるのが面白い、井上陽水、忌野清志郎、美輪明宏は強力ネタ、
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you tube:清水ミチコ モノマネSPメドレー

you tube:清水ミチコ【ずっと歌っていられる忌野清志郎】

CDで聴くとさすが仕上がりは入念で楽しめる。
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しかし、ライヴやラジオ放送で、人々の反応があるのも面白い。

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category: ポップス・歌謡・etc

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O.スウィトナー:ベートーヴェン《英雄》LP  

このところ、カートリッジはMM型のAT44Mbをよく使っている、過去にはAT7Vを使っていてフラットで癖がないのが気に入っていたが、楕円針だったのが降格して今は丸針(AT5V)しかない、AT440Mbは音質的には似通っていて、ML針が付くところが普段聴きに申し分ない。 
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DENON-PCM音源のアナログ盤は最高レベルだろう、エジソン時代から続いてきた録音原理の発明も偉業だが、ここまで水準を上げた、技術開発はそれ以上の偉業に思える。
DENON盤でO.スウィトナーの《英雄》を久しぶりに聴いた、反復演奏があるせいか、1面全部に第一楽章が刻まれ、2面に第2~4楽章が収まっているのは珍しい、優れたカッティングで、AT440Mbで聴いてもCDに勝る充実サウンドだ。
su be sym3
オットマール・スウィトナー指揮
シュターツカペレ・ベルリン 1980年

K.ベームが楷書的ならスウィトナーは程よく行書的、
第一楽章は落ち着いたテンポ、終止肩の力が抜けた物腰で、物量感で押し出してくるところはまったくない、弦楽はしなやかで総奏部分でも木管群のハーモニーがきれいに浮き立つ、心地よいサウンドで、1面(18:40)が長く感じない、終結部[659]からのtrpは原譜どおりだが、
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柔らかく奏でているので自然に木管に継がれて聴こえる。
第二楽章は普通のテンポくらい、ここでも透明感のある弦楽と木管の色彩が鮮やか。
スケルツォは期待どおり快速で、清涼サウンドを保ちながら十分に快活、トリオのhornが狩りの角笛を思わせて大らか。
終楽章も速めにサクサクと行く、荒々しい表現はなく、最後まで美音で仕上げ、聴き手を放さない演奏だ。
1面だけ聴くつもりが、全部聴いてしまった。

動画にはN響とのライヴ録音があった、
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you tube:ベートーベン作曲 交響曲第3番「英雄」全楽章
1980年11月14日 NHKホール
*少しボリュームを上げる必要あるが音質は良い、SKBとのセッション録音と同年の演奏。

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category: ベートーヴェン

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最新:宇宙の「ものさし」  

天体までの距離を正確に知ることは天文学や宇宙物理学の重要な出発点であり、それ自体非常に興味深く思っている。今までも宇宙の距離梯子については度々書いてきたが、その一部になるハッブル定数がこれまでで最も高い精度で求められたそうだ。
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距離梯子のおよその繋がり
【*ハッブル定数は(km/s/Mpc)という単位のとおり、距離1Mpsあたり、毎秒、何km遠ざかっているという定数で、遠い天体ほど遠ざかる速度が加算され、赤方偏移が大きくなる】
NASAの観測衛星「WMAP」やESAの「プランク」が宇宙マイクロ波背景放射の精密な観測から2016年現在、ハッブル定数は66.93±0.62km/s/Mpcという値を出している。

一方で、米・宇宙望遠鏡科学研究所のアダム・リース氏らはHSTを使い、銀河に含まれるケフェイド変光星とIa型超新星を距離の指標として使うことでハッブル定数の精度を向上させる研究を6年間にわたり続けてきた、
【*ケフェイド変光星は変光周期と実際の明るさに比例関係があることから、変光周期と観測上の明るさから距離が割り出せる距離梯子の重要な一部だ】
距離梯子でケフェイド変光星の段階の誤差を減らすため、ケフェイド変光星の距離を最も信頼度の高い年周視差の方法で高い精度で測定した、距離梯子の根元の信頼度を上げるわけだ。(最大12000光年まで測定)さらにこれに繋がるIa型超新星の信頼度も高めることになる。
【*Ia型超新星は実際の明るさがどれも同じであり、地球から見えた明るさで距離がわかる】
同じ銀河内にケフェイド変光星とIa型超新星が観測されれば梯子が繋がることになる。
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今回分析された19個の銀河のうちの2つ。(左)おおぐま座のNGC 3972、距離6500万光年、(右)くじら座のNGC 1015、距離1億1800万光年。黄色い丸は銀河内に存在するケフェイド変光星の位置、+印はそれぞれの銀河に現れたIa型超新星【資料:NASA, ESA, A. Riess (STScI/JHU)】
この観測で得られた値で導かれたハッブル定数は、73.45±1.66km/s/Mpcという値になった、宇宙マイクロ波背景放射の観測による値とは9%開きがある。
仮にこの値でM104銀河(赤方偏移=0.003642)の距離を出すと、4837万光年になる。
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これらの不一致はまた謎を生み出したが、いずれも高い精度で求められた結果であり、価値は高い。誤差ではなく、まだ知られない根本的な理由があると考えられているようだ、宇宙を膨張させるダークエネルギーの関与が過去とは変化している?など・・
今後は位置天文衛星「ガイア」の距離データを使い、さらに精度を上げて値を求めるそうだが、当面どの値を使えばよいのやら?;

PS.ハッブル定数の信頼できそうな値が得られたのは21世紀に入りHST等の観測がされてからで、それまでは50~100km/s/Mpcだろうという、ごく大まかな値しかわかっていなかった。
上記のように年周視差など、測定には高精度の観測機や時間を要する方法が多いが、赤方偏移は天体のスペクトルを解析するのみで、ハッブル定数による算定は最も手早い。

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category: 宇宙・天体

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