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融合する銀河で超接近した超大質量ブラックホールのペアを発見(NASA)

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Credit: NASA, ESA, Joseph Olmsted (STScI)

 ハッブル宇宙望遠鏡とチャンドラX線観測衛星のコンビが、天文学的には大接近している超大質量ブラックホールのペアを発見したそうだ。

 「MCG-03-34-64」という銀河で発見されたペアの距離はほんの300光年。しかもお互いに近いだけでなく、複数の波長で観測されたものとしては地球にもっとも近いところにあるという。

 この発見は、打ち上げから30年以上が経過したハッブル宇宙望遠鏡が、今でもなお素晴らしい発見ができるという証拠でもある。

銀河の中で発見された地球に最も近いブラックホールのペア

 この超大質量ブラックホールのペアは、銀河同士の合体によって作られた「MCG-03-34-64」という銀河の中にある。

 2つのブラックホールの距離はたったの300光年しかない。天文学的にはかなり近い数字だ。

 このペアは周囲にあるガスや塵を貪り食っており、そのせいで強い光や強力なジェットを放っている。

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ハッブル宇宙望遠鏡が、MCG-03-34-064銀河の中心にある3つの明るい点を発見。そのうちの2つは、X線を放出する超大質量ブラックホールである/Image credit: NASA, ESA, Anna Trindade Falcão (CfA); Image Processing: Joseph DePasquale (STScI)

 銀河中心にあるこうした領域のことを「活動銀河核」といい、ときに銀河全体よりも強い光を放つことすらある。

 お互いに近いだけでなく、ある意味で地球にもっとも近い。地球との距離はおよそ8億光年。

 とんでもなく遠くにあるように思えるが、NASAによるなら、複数の波長(可視光とX線と電波)で観測されたペアとしては、地球に一番近いという。

 もっと地球に近い超大質量ブラックホールのペアも見つかっているが、それらは電波でしか検出されていない。

 このペアは、もともと別々の銀河にあったものだが、その銀河同士が衝突したことで今のように接近したと考えられている。

 そして今後ますますその距離を縮めていく。その間、お互いがお互いをぐるぐると螺旋を描くように接近しながら、「重力波」と呼ばれる時空の波紋を広める。

 それによってブラックホールのペアは互いに角運動量を失いさらに接近し、放出される重力波はますます速くなる。

 1億年も経てば衝突し、ペアが誕生した銀河がそうだったように、ついには1つになる。

 数十億年前の初期宇宙では、銀河同士の衝突が今よりも頻繁に起きており、今回のような活動銀河核連星も一般的だったと考えられている。

 MCG-03-34-64のペアは地球に比較的近いことから、そうした初期宇宙の様子を知る貴重なチャンスであるそうだ。

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Image credit: Robert Lea (created with Canva)

今もなお活躍するハッブル

 なお今回の発見のきっかけは、打ち上げから30年以上が経過したハッブル宇宙望遠鏡だった。

 それが光でとらえた観測データは、MCG-03-34-64内の狭い領域に酸素が濃縮されているらしきことを示していた。

 ハーバード・スミソニアン天体物理学センターをはじめとする天文学者チームは、この銀河の内部で何か特別なことが起きていると察知し、チャンドラX線観測衛星のX線の目でも観測してみることにした。

 するとハッブル宇宙望遠鏡がとらえた明るい光に一致する2つの高エネルギー放射源を発見。

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ハッブル宇宙望遠鏡が2009年5月に撮影したスペースシャトル・アトランティス/Image credit: NASA

 このことは、地上にあるカール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)の電波による観測でも裏付けられている。

 このように可視光・X線・電波の波長で観測できれば、さまざまな可能性を除外することができる。

 最終的に辿り着いた答えが、接近しつつある2つの超大質量ブラックホールというものだ。

 なおハッブル宇宙望遠鏡は、3つ目の明るい光源も見つけているが、その正体はまだ謎に包まれている。

 だが研究チームの推測によれば、超大質量ブラックホールの片方が放った高速プラズマジェットがガスに衝撃を与えた結果ではないかという。それはちょうど、ホースで飛ばした水を砂山に打ちつけるような感じだそうだ。

 これまで数々の大発見をしてきたハッブル宇宙望遠鏡は、30年以上が経過した今もなお素晴らしい発見を人類にもたらしている。

 この研究『The Astrophysical Journal』(2024年9月9日付)に掲載された。

References: NASA's Hubble, Chandra Find Supermassive Black Hole Duo - NASA Science / These 2 monster black holes may be the closest pair ever discovered in visible and X-ray light (video) | Space

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この記事へのコメント、8件

コメントを書く

  1. 費用的に無理なんだろうけど、一度ハッブル宇宙望遠鏡を地球に戻して整備、バージョンアップして再度宇宙空間に送れたらなーと思います

    1. 多分、次世代のを作って新しいのを設置したほうがトータルで安くて高性能になるんじゃないかな。

  2. 8億光年、地球から近いと言われましても、先カンブリア時代、正確には新原生代の始まり頃の光がようやく届いた距離でありまして海にはまだ藻ぐらいしか無かったと思われ

  3. ビッグバンの勢いで拡散している筈の物質同士が
    どうしてこうも引き寄せ合うんだろうか

    1. 天の川銀河とアンドロメダ銀河だって遠い未来には衝突するといわれている
      宇宙が膨張しているといっても銀河間の距離で見ればないも同然なんだよ

  4. たった300光年で一緒になるのに1億年もかかるんか、巨大ブラックホールの引力を持ってすればあっという間かと思った

    1. そりゃ300光年って9.461×10の15乗の300倍有るからね 仮にそのブラックホールがほぼ光速で移動出来ても300年ぐらい掛かるんだからむしろ1億年なら早い方なんじゃないかな。

      ってか光速がこの宇宙の広さに対して絶望的に遅いんだよね
      前に確かこのサイトでほぼ初期にできた天体が観測されたって記事で同じように致命的に遅いってコメしたと思う その時は仮に光速が1億倍速くなってもその初期天体まで138年掛かるってコメしたと思う そのくらい遅いんだよね

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