今回はPhillip Frazer (Fraser)のアルバム

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「Never Let Go」です。

Phillip Fraser (Phillip Frazer)は70年
代のルーツ・レゲエの時代から80年代の
ダンスホール・レゲエの時代にかけて活躍
したシンガーであり、プロデューサーでも
ある人です。
自身の主催するレーベルRazer Soundsや、
Errol 'Don' Maisの率いるレーベル
Roots Traditionなどで活躍をし、おもに
ジャマイカ国内の小さなレーベルから
アルバムを出している人なんですね。
ルーツからダンスホールの時代にかけて、
ジャマイカ国内ではかなり目覚ましい活躍
をしています。

ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て13枚ぐらいのアルバムと、188枚
ぐらいのシングル盤、2枚ぐらいの
コンピュレーション・アルバムをリリース
しています。

今回のアルバムは1992年にジャマイカ
のRoots Traditionレーベルからリリース
されたアルバムです。

レーベル特集 Roots Tradition (ルーツ・トラディション)

曲を聴けば解りますが、明らかにデジタル
の打ち込みによるサウンドと、デジタル
以前のアーリー・ダンスホールの頃の
生演奏と思われる音源もあります。
実際に表題曲の「Never Let Go」を調べて
みると、1979年のヒット曲なんです
ね。
エンジニアやスタジオの多さから見ても
一度の録音でなく、それまでのPhillip
Frazerの曲を集めたコンピュレーション的
な要素も持ったアルバムなんじゃないかと
思います。

プロデュースとアレンジはPhillip Frazer
で、バックはFire House Crewとなって
おり、表題曲の「Never Let Go」や
「Place In The Sun」、「I'll Be
Lonely」、「I'm Holding On」など、彼の
ダンスホール・シンガーらしいナイスな
ヴォーカルが堪能出来るアルバムとなって
います。

手に入れたのはRoots Traditionレーベル
からリリースされたLPでした。
レゲエレコード・コムで新盤として購入
したアルバムでしたが、ジャケットは
あまりキレイではありませんでした。
ジャマイカの中小レーベルからリリース
されたアルバムは、新盤でもあまり
ジャケットがキレイでない場合があり
ます。
このあたりは日本人とジャマイカ人の、
考えの違いのようなものがあります。
カヴァーなんだから汚れるのは当たり前
みたいなところがあるんですね(笑)。

またもうジャマイカではLPは作られて
いなくて、ずいぶん前に作られた「在庫」
であるという事情もあります。

Side 1が5曲、Side 2が5曲の全10曲。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Musicians: Fire House Crew
Bass: Christopher Merdic, George Fullwood
Drums: Squiddle Cole, Anthony Thomas, Santa Davis
Keyboards: Christopher Merdic, Robbie Lyn
Guitar: Earl 'China' Smith, Tony Chin, Leroy Penecooke, 'Badnesss'
All Track on:
Country Boy Played by: B.J. Jolly Studio, Phillidelphia
Harmony: Ruddy Thomas, Phillip Frazer
Produced and Arranged: Phillip Frazer
Distributed by: Dynamic Sounds
Mastered and Edited by: Spiderman
Photography by: L. Roberts
Recorded at: Jammy's, Channel One, Dynamics, Bobby Digital Studio
Mixing Engineer: Rudy Thomas, Bobby Digital, Mikey Riley, Fatman,
S. Morrison, Scientist

Designed by: Limonious

となっています。

バックはFire House Crewで、ベースに
Christopher MerdicとGeorge Fullwood、
ドラムにSquiddle ColeとAnthony Thomas、
Santa Davis、キーボードにChristopher
MerdicとRobbie Lyn、ギターに
Earl 'China' SmithとTony Chin、Leroy
Penecooke、'Badnesss'となっています。

バックはFire House Crewとなっていますが、
書いたように79年のヒット曲なども入って
いますから、一度に録られたものではない
ようです。
スタジオやミキサーの多さもそれを裏付けて
います。

Side 2の3曲目「Country Boy」のみ
フィラデルフィアのB.J. Jolly Studioで
レコーディングされているようです。

ハーモニーにRuddy ThomasとPhillip
Frazerが参加しています。
プロデュースとアレンジはPhillip Frazer
が担当しています。
レコーディングはJammy'sとChannel One、
Dynamics、Bobby Digital Studioで行わ
れ、ミキシング・エンジニアはRudy
ThomasとBobby Digital、Mikey Riley、
Fatman、S. Morrison、Scientistが担当
しています。

ジャケット写真はL. Robertsで、
ジャケット・デザインはLimoniousと
なっています。
表ジャケは白いスーツを着てハットを
被ったドレッド・ロックス・ヘアーの
Phillip Frazerが、白い車の前でポーズ
をとっている写真が使われています。

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裏ジャケ

裏ジャケは黄色いジャケットのPhillip
Frazerの、クラブか何かのステージの
写真が使われています。

さて今回のアルバムですが、80年代から
90年代にかけてダンスホール・シンガー
として活躍したPhillip Frazerの魅力が
うまく詰め込まれたアルバムで、内容は
悪くないと思います。

このPhillip Frazerですがジャマイカの
ローカル・シンガーとして、マイナー・
レーベルでおもに活躍した人で、ちょっと
ハスキーでソフトな歌声がなかなか魅力的
な人です。

彼はよくルーツ・シンガーと書かれたり
していますが、ルーツの時代はルーツ・
レゲエを歌い、ダンスホール・レゲエの
時代になればダンスホールを歌った、
ジャマイカの地元に密着した、良い意味
でのローカル・シンガーだった人なんです
ね。

そんな彼の80年代以降のダンスホール・
レゲエの楽曲を集めたのが今回のアルバム
で、そのソフトで艶のある歌声はなかなか
魅力的。
書いたようにデジタルの音源とアナログの
音源が混ざっており、寄せ集めの為か多少
バラつきはありますが、内容はなかなか
悪くありません。

Side 1の1曲目は「Place In The Sun」
です。
Lee PerryプロデュースのDavid Isaacsの
ヒット曲として知られている曲です。
ポンポンという出だしはデジタルを感じ
ますが、彼が歌い出すとそのソフトな歌声
にアーリーな空気が漂い出します。

Philip Frazer - Place In The Sun


2曲目は「Friday Night」です。
デジタルっぽいキーボードを中心とした
メロディに打ち込みのドラミング、ソフト
なコーラス・ワークに乗せたPhillip
Frazerのムーディーなヴォーカルが
イイ感じ。

3曲目は「Please Stay」です。
リズミカルなキーボードの明るいメロディ
に、Phillip Frazerの柔らかいヴォーカル
が魅力的な曲です。

4曲目は「Wish It Was Me」です。
バックのサウンドにはデジタルのリズムが
少し混ざっていてとてもリズミカルです
が、ピアノに乗せたPhillip Frazerの
エコーの効いたヴォーカルは情感が込め
られています。
そのホットとクールの対比が面白い曲
です。

PHILLIP FRAZER ~ Wish It Was Me


5曲目は「I'll Be Lonely」です。
こちらはジックリと聴かせるソフトな曲
です。
リズムカルナキーボードとピアノの
メロディに、丁寧に歌うPhillip Frazer
の歌いぶりがとても魅力的。

Phillip Fraser - I'll Be Lonely


Side 1の1曲目は「I'm Holding On」
です。
リディムはMoodicのヒット曲Dennis Walks
の「The Drifter」です。
ちょっとデジタルの入ったリズムに乗せ
て、Phillip Frazerの丁寧な歌いぶりが
良い空気感を出しています。

Philip Fraser - I'm Holding On


リズム特集 Drifter (ドリフター)

2曲目は表題曲の「Never Let Go」
です。
リディムはStudio Oneのヒット曲
「Answer」。
書いたようにこの曲は79年のヒット曲の
ようです。
ギターとキーボードのワン・ドロップの
メロディに、Phillip Frazerのソフトな
ヴォーカルがイイ感じの1曲。

Phillip Frazer - never let go


リズム特集 Answer (アンサー)

3曲目は「Country Boy」です。
リディムは映画「オズの魔法使い」で知ら
れる「Over the Rainbow」か。
この曲はB面の中でも長い曲で、軽快な
キーボードのメロディに、Phillip Frazer
の情感を込めた歌唱が強く印象に残る曲
です。
なかなか素敵なスロー・バラードなんです
ね。

"Country Boy" By Phillip Fraser


4曲目は「La La Means I Love You」
です。
オリジナルはソウル・グループの
The Delfonicsの同名ヒット曲。
そうした曲をレゲエのリズムに乗せ、
うまく自分の曲として歌っています。

5曲目は「Dark End Of The Street」
です。
こちらはJames Carrという人のポピュラー
のクラシック・ヒット曲のようです。
そうした曲をデジタルなバックに乗せて、
うまくレゲエの曲に作り変えています。
彼のカヴァー曲のウマさが光る歌唱です。

ざっと追いかけて来ましたが、ダンス
ホール・レゲエの時代にマイナー・
レーベルを中心に活躍したPhillip Frazer
という人の魅力が、うまく収められた
アルバムだと思います。
マイナーで活躍した彼ですが、やはり
カヴァー曲なども含めた歌のウマさは
秀でたものがあります。
その実力があってのマイナーでの活躍なん
ですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Phillip Frazer(Phillip Fraser)
○アルバム: Never Let Go
○レーベル: Roots Tradition
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1992

○Phillip Frazer(Fraser)「Never Let Go」曲目
Side A
1. Place In The Sun
2. Friday Night
3. Please Stay
4. Wish It Was Me
5. I'll Be Lonely
Side B
1. I'm Holding On
2. Never Let Go
3. Country Boy
4. La La Means I Love You
5. Dark End Of The Street

〈2019年04月18日修正〉

●今までアップしたPhillip Fraser関連の記事
〇Phillip Fraser「Blood Of The Saint Vintage: Phillip Fraser Showcase 79-80-81-82」
〇Phillip Fraser「Blood Of The Saint」
〇Phillip Fraser「Loving You」
〇Phillip Frazer (Phillip Fraser)「I Who Have Nothing」
〇Phillip Frazer「Come Ethiopians」