「モー、モー」鳴いて流された牛たち 古都の城下に残る水害の記憶

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滝川直広
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古都ぶら

 明智光秀が築いた福知山城とともに、京都府北部・福知山市の風景を特徴づけているのが、由良川だ。市内のあたりは勾配がゆるやかで、普段はゆったりと流れるのだが、大雨が降ると水害をもたらしてきた。そうした被害の記憶をとどめる城下かいわいを歩いた。

 福知山城下の一画を走る旧京街道に面して「福知山市治水記念館」はある。1880(明治13)年に建てられた、市内最古の町家の一つとされる。かつて呉服商だったといい、空き家だったのを市が購入した。

 そのすぐ裏手を流れるのが、由良川。京都、滋賀、福井の3府県境の三国峠のあたりを源流とし、南丹市京丹波町綾部市を経て、福知山市内を流れ、さらには舞鶴市宮津市の市境に沿って日本海に注ぐ。

 堤防を背負うように立つ記念館は、由良川の水害史を紹介する施設であるとともに、建物自体が「水害の証人」でもある。

2階天井近くまで浸水

 開館は2005年。その約半世紀前の1953(昭和28)年9月、台風13号が大雨をもたらした。由良川の堤防は決壊。旧福知山市内では最高水位7・8メートルを記録した。当時、水は町家だった館の2階の天井近くまで上がり、その跡が残るふすまが展示されている。

 住民の体験談をもとに、一家3人の被災当日の行動を再現した映像が用意されており、視聴してみた。

 当時の人々は床下浸水は慣れっこというだけあってか、映像内の架空の一家は床下に水が入ってきそうになると、手慣れた感じで家財道具を2階に上げ、自分たちも上がった。垂直避難だ。夜になると夕飯をとり、ひたすら水が引くのを待つが、緊迫感はない。

 午後8時、サイレンが鳴ると…

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