移民の子を拒まない タイの「ミャンマー人の町」で校長が語った思い
木造の校舎に、子どもの笑い声が響いていた。肌の色も年齢も、言葉もばらばらだが、同じ制服を着て、同じ教室で授業を受ける。
タイの首都バンコクの南西にあるサムットサコン県マハチャイ。オレンジ色の屋根が特徴的なタイの仏教寺院の隣に、ワット・シリモンコン小学校がある。
この日は移動図書館が来ていた。運動場に集まった1年生約200人が本棚に駆け寄り、絵本を手に取る。さっそく地面に座ってページを開く。
タイ語の文字をゆっくりと指でなぞっていく。この学校ではタイ語が母語でない、外国にルーツがある子が大半を占めるからだ。
タイは世界的にみても高齢化が急だ。そのスピードは日本を上回っていると推定されている。そんなタイの経済を底辺で支えているのが近隣国からの移民労働者。特に、国軍による2年前のクーデターの後、ミャンマーからの労働者が急増している。移民労働者の子どもにどう教育の場を与えるかは深刻な課題だ。
マハチャイはタイ湾に注ぐターチン川の河口にあり、「海鮮の町」として知られる。道路脇には魚介類の露店が並ぶ。中でもエビが有名で、日本に輸出されるエビの多くが郊外の養殖場から出荷される。
マハチャイのもう一つの顔が「ミャンマー人労働者の町」だ。海産物加工場の労働者の多くがミャンマー人だからだ。
ワット・シリモンコン小学校は、タイの公立校の中でも最も移民が多い学校の一つだ。この3年間で児童数が98人から658人に増えた。タイの義務教育(6歳から9年間)は無償のため労働者の子どもたちも集まる。在籍児童の9割以上がミャンマーからで、ビルマ、モン、カレン、ロヒンギャなど民族も多様だ。カンボジアやラオス、インドからの移民もいる。校内にはさまざまな言語が飛び交う。
整備が追いつかない…それでも
「児童」の年齢も幅広い。1…
- 【視点】
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